越境ECのはじめ方|中国市場が注目される理由と参入方法

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インターネットをつかって海外とEC事業を行う「越境EC」。しかし、一口に越境ECと言っても様々な手段や注意点があります。

現在、日本からの越境EC市場は大きくはアメリカ向けと中国向けの2つです。しかし、2014年に中国向けの越境ECの市場がアメリカを追い抜くほどの成長をしているという調査があり、特に「中国越境EC」と呼ばれる中国向けの市場に注目が集まっています。

参考:平成 26 年度我が国経済社会の情報化・サービス化に 係る基盤整備

そこで今回は、「越境ECとは、そもそもどんなものなのか」「具体的にはなぜ中国が注目されているのか」「越境EC事業に参入する場合の有効な手段や注意点」などを、最近のトレンドや事例と合わせてご紹介します。

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越境ECとは、「国境を越えた電子商取引(EC)」のこと

インターネットが発達する以前は、海外の商品を手に入れるためには、直接海外まで買い付けにいくか、日本の代理店や買い付けの代行業者を利用するなど間接的な購入が主流でした。

しかしインターネットの普及・成長によって、個人でも自国にいながら海外の商品を直接買うことができるようになりました。

越境ECは、これらの国境を越えた取引全てのことを指しますが、さらに現在は特に「海外の企業が消費者に商品を販売するオンラインショップのこと」を越境ECと呼ぶことが多いです。

今、「中国」越境ECが盛り上がっている2つの理由

冒頭でもお伝えしたとおり、現在は中国向けの越境ECが非常に注目されています。注目される2つの理由を解説します。

理由1:もともとの市場として大きい上に、これからさらに伸びていく余地がある

まずはマクロな視点から中国の市場を見てみましょう。
中国は、日本と比較すると人口は約10倍、GDPはおよそ1.5倍です。

またネット利用ユーザーは6.7億人とすごい数ですが、それでもインターネットの普及率はまだ50%程度です。日本でのインターネット普及率は82.8%なので、中国にはまだまだ成長する見込みがあります。

理由2: 購買に対する意識の変化により、中国ではBtoCのECが主流となってきた

次にECの市場についてみてみましょう。

中国のECの取引総額は50兆円に及び(※BtoB取引は除く)日本の約4倍。これだけでも非常に大きなマーケットであることがわかります。

これまで中国ではECといえば、日本でいうところの楽天オークションやメルカリなどの個人間取引によるCtoC取引が主流でした。

しかしニュースでも度々騒がれている通り、中国では偽物が非常に多いという消費者にとっては悩ましい問題があります。例えば、中国のCtoCネット通販で最大のシェアを持つサービス「タオバオ(淘宝)」に流通している商品の6割以上がニセモノであるという調査結果を政府が発表したほどです。

しかし現在、中国でも「食品や化粧品のように粗悪品だと人体に害を及ぼしてしまう可能性がある商品は、お金をだしてでも本物・より良いものを手に入れたい」というニーズが高まっています。

そこで個人間取引ではなく、企業からモノを買うのBtoC取引の市場が拡大しており、2015年には中国のBtoC市場はCtoC市場を追い抜くとの予想もされています。

参考:タオバオ商品の6割以上がニセモノ 中国当局調査 – (大紀元)

成功事例から考える中国越境ECに向いている商品とは?

【事例】関西を中心とするドラッグストアチェーンの「キリン堂」

関西を中心とするドラッグストアチェーンのキリン堂が、中国の越境ECへ出店したのは2014年3月。

まだ他社の成功事例などもほとんどない中で、リスクをとって進出し、結果として大きな売上を上げています。

もちろんただ進出したことだけではなく、会社として重要なプロジェクトとして位置づけ、異文化とも言われる中国の商習慣に合わせて即断即決できる体制を構築したことなども、売上に大きな貢献をしました。

参考:「独身の日」4億5,000万円突破!キリン堂&アリババ・ジャパンに聞く、商品と組織|ECzine(イーシージン)

それでは、中国での越境ECが向いているのは、一体どういった商品や企業なのでしょうか。

1.口に入れるもの、肌に塗るもの、またそれらの関連商品を取り扱う企業

具体的には化粧品、家電、日用品、ベビー用品、菓子、健康食品などが挙げられます。

前述の通り、これらは粗悪品であると人体に害を与えてしまうため、日本の高品質なものが好まれる傾向にあります。

2.相応の費用・人的リソースを割くことができる企業

昔に比べればかなりリスクやコストを少なく進出ができるようになった中国市場ですが、やはり費用面・人的リソース面でのリスクは残っています。

とても魅力な市場ではあり各種支援サービスも整ってきてはいますが、自社の体制が中途半端な状態で始めてしまうことはおすすめしません。

具体的にするべき準備などは、後述いたします。

中国越境EC進出の2つの方法とは?
「モール出店」と「自社EC」のメリット・デメリット

中国向けの越境ECが非常に魅力的な市場だとわかったところで、実際にどのような手段があるのかをみていきましょう。

ECを行うとき、大きく分けてふたつの手法があります。

①ECモールへ出店する
※ECモール:日本では楽天やYahooショッピングに代表されるような、ECサイトの集合体・プラットフォーム。
②自社で、ECサイトをゼロから構築する

これは中国においても同じです。それぞれの方法の概要とメリット・デメリットを説明します。

①中国でECモールへ出店するなら「天猫」か「京東」!抑えておくべきメリット・デメリット

中国には、日本で言うAmazonや楽天のようなECモールがいくつも存在します。その中でも、「天猫(T-mall)」と「京東(ジンドン)」が中国の二大ECモールです。これらのモールの中の海外向けの商品を取り扱う場所を通じて、自社の商品を販売することが可能です。

この2つのモールだけで、中国のBtoC向けECの流通総額の80%を占めています。そのため、モール出店を検討する際はこのふたつをまずは検討するのが現実的です。また、それぞれが独自の決済サービスをもっているのも特徴です。

実は少し前までは、天猫・京東ともに出店できるのは中国企業だけでした。つまり日本企業のような海外の企業がモールへ出店をする場合には、まず現地法人の設立が必要でした。しかし、外資の企業が出店できる場所がそれぞれのECモールの中に設立され、中国現地法人をもたずとも出店が可能になりました。その海外企業が出店できる場所の名前はそれぞれ「天猫国際」「京東全球構」といい、越境ECにおいてはこちらを使います。

天猫(T-mall):流通総額8兆3325億円

モールのモデル:店舗に場所を貸すモデル(日本でいうところの楽天型のモデル)

▼天猫国際(天猫(T-mall)で海外企業が出店できる場所)

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引用:天猫国际Tmall.HK -100%正品保障 100%海外直供 100%售后服务-上天猫,就够了
※現在、天猫国際は現地側のニーズなどに照らしあわせて出店規制を設けているため、必ずしも出店を希望するすべての企業が出店できるとは限りません。

京東(ジンドン):流通総額5兆166億円

モールのモデル:店舗に場所を貸すだけではなく自社で仕入れも行うモデル(日本でいうところのアマゾン型のモデル)

▼京東全球構(京東(ジンドン)で海外企業が出店できる場所)

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引用:京东全球购jd.hk -正品保证 全球直供 优质品牌 售后保障-购物无境

中国のECモールを使う2つのメリット

・中国で電子商取引を行うための特殊なライセンス(ICPライセンス)を取得する必要がないため、進出コスト/リードタイムが比較的小さく済む(初期費用+保証金で数百万円程度)
・モールのブランドを使えるので集客や信頼構築などが相対的に楽に行える

中国のECモールを使う2つのデメリット

モールを使う場合、売上に対して一定の決済手数料が必要です。そのため、相対的に利益率が悪くなる
・モールのルールが変更されることも多いため、商品が取り扱えなくなるなどの不利益が突然発生する可能性がある

②中国での「自社EC」を立ち上げるとは?抑えておくべきメリット・デメリット

自社ECとは、中国向けに自社でECサイトを構築することです。

自社ECで成功している事例では、無印良品で有名な良品計画があります。良品計画は全世界の在庫管理システムを連携し、在庫がない場合でも他国からの取り寄せの仕組みによって圧倒的な速さで消費者に届けることを可能にし、成功を収めています。

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引用:无印良品官方网络商城

自社ECを使うメリット

・自社ECであれば、顧客データベースの構築が可能なためマーケティングの施策を行いやすくなる(モール出店だと顧客データの管理が難しい)
・モール出店時に発生する決済手数料が自社ECでは不要なので、相対的に利益率が高くなる

自社ECを使うデメリット

・中国で電子商取引を行うための特殊なライセンス(ICPライセンス)の取得に、多額の初期投資と取得までに短くないリードタイムが必要
認知拡大・信頼構築までに広告費が必要で、集客ハードルが高い

初めて中国越境ECに進出するならば、自社ECによりも「モール出店」がおすすめ。

ECモールと自社ECのメリット・デメリットをまとめると、まず収益性は自社ECの方が高いです。しかし、自社ECは進出コスト・集客コストは高く、より多くの時間が必要です。

そのため、中国では企業独自のECサイトよりモールで買う文化が根付いていることもあり、現時点で、これから中国越境ECをはじめる場合はまず「モールに出店する」ことがおすすめです。

もし、どうしても自社ECから始めたいという場合は、メリット・デメリットを踏まえ、さらにモールに出店している他の企業にも圧倒的に勝てる勝算がある場合は参入しても良いと思います。

「モール出店」よりも、さらに低コスト・低リスクで進出するには「出品」という方法も。

中国越境ECを始めるならば、自社ECサイトをもつよりも、モールに出店することがおすすめというのは前述してきました。しかし、やはりコストやタスクが存在し、それなりのハードルが残っています。

そこでモールの中に店を出す「出店」ではなく、まずは一部の商品だけ販売する「出品」をするサービスを各社が展開しています。

「出品」のメリットは「出店」よりもさらにコストやタスクを軽減できることにあります(自社出店の場合の十分の一ほど)。またやりとりはほぼ国内で完結することが多いため、日本でおこなっているECに近い形で運営をすることができます。

反面で、デメリットとしては「出店」よりもさらに利益率が低くなることが挙げられます。そのため出品サービスのみを利用して売上を一気にあげる、というよりはテストマーケティングの色合いが強まります。

そういう場合は、まず出品サービスを利用して自社の商品がどれくらい中国でニーズがあるのか把握し、売れ行きによってモールへの出店をする。そして、さらにその後ブランド構築ができてきたら自社ECの立ち上げを検討していく、といった流れになります。

どれくらいの投資をして参入し、どれくらいのリターンを見込むのかは、各社様々です。そのため、自社の戦略に合う進出方法を選ぶことが重要です。

中国越境EC参入における出店までの流れと、その際に発生するタスクとコスト

それでは、実際に中国のECモールの中に店を持つ「出店」の際のどういったことが必要か?をまとめました。

実際にモールに出店すると仮定した時の契約の流れは大きく6つに分かれます。(下図参照)
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また、その際に発生する主なタスクとコストは下記のとおりです。

中国へのモール出店のために必要な9つのタスク

1.モールへの契約書の提出

・モールに出店するためのモール側との契約。
・英語と中国語で記載されているため法務のみならず語学の知識も必要。

2.モールとやりとりする決済用の口座開設

・モールに付随する決済サービスを使用するための電子銀行口座が必要

3.カスタマーサポートの構築、またその人材の教育

・中国ではカスタマーサポート業務は電話ではなくチャットで行われる。
・やりとりで値引き交渉など営業的側面ももつため、相応の人材の教育も必要。

4.モール内店舗や商品ページの制作

・商品写真撮影やそれに紐づくクリエイティブ制作など。

5.集客・購買促進のための広告運用

・必要に応じて用意する必要あり。
・モール内での広告が中心になる。

6.商品の配送網整備

・商品をどこに保管し、どう消費者へ届けるのか、また返品先はどこになるのかなど。
・モールによって指定の配送業者をもっている場合もあり。

7.実店舗や日本のECサイトとの在庫連携

・データベースの設計やWMS連携は企業様のご状況に合わせた連携をすることが必要。

8.モールへの販売許可証

・モールに販売権を委託する契約書の準備

9.販売する商品情報やその他モール内店舗情報などの翻訳

・商品ページなどで使用する商品情報などの翻訳全般。(単に日本のECで使っている文面を中国語訳すれば終わりではなく、中国人に響く翻訳が必要なため、相応のノウハウと知識が必要。)

中国のECモールに出店するために必要な9つのコスト

1.初期費用

・出店時にモールに払う費用。

2.決済手数料

・売上に対して一定の決済手数料を収める。利率は商品によって異なる。

3.カスタマーサポートの構築とその運営に必要な人件費

・前述のチャットセンターの構築とその人件費・教育費

4.集客・購買促進のための広告宣伝費

・前述の広告宣伝費。必要であれば都度発生。

5.商品の配送費

・商品の配送費。配送方法によって異なる。

6.販売商品の倉庫代

・商品保管のための倉庫代。

7.関税

・商品によって税率は変化。

8.商品ページやモール内店舗ページなどの制作費

・写真撮影やページの制作に関わる費用。

9.販売する商品情報やその他モール内店舗情報などの翻訳費

・前述の翻訳に関わる費用。

中国進出における注意点とは?よくある3つの失敗パターンと回避法

魅力的な市場である中国越境EC。しかし、もちろん失敗する場合もあります。ここでは、よくある3つの失敗パターンと回避方法をまとめました。

「どんなものが売れるのか?」などのデータ不足

いくら魅力的な市場だとはいえ、なんでも売れるというわけではありません。どんなものがだれにいくらくらいで売れるのか等、まず少額投資でテストマーケティングなどを行ってからの進出が望ましいです。

それを避けるため、日本の場合は訪日中国人の方が多いため、インバウンド消費のデータが豊富です。インバウンドで売れているものはアウトバウンドでも売れる可能性が高いので、そちらのデータを調査することは非常に有効です。

進出のための初期のリスク/コストが大きすぎる

具体的には現地法人を設立したり、自社でECなどを立ち上げる等、 はじめから大きな投資で参入することはおすすめしません。

本記事でもご紹介しているように、まずいきなり高いコストをかけるのではなく、テストマーケティングなどからはじめ、可能な限りリスクとコストを軽減し、試行錯誤を繰り返すことが重要です。

現地パートナーや専任担当者などの人的リソース不足

中国は、商習慣の違いや流動的な法律事情など、まさに異文化です。

そのため信頼できる現地のパートナーや日本側の専任担当や国内パートナーがいない状況では投資事業としてうまくいかないことが多いです。

自社の状況から割ける人的リソースを考えて、全てを自社で行うのか、サポートしてくれる業者を使うのか、などを決定しましょう。

最後に

今、中国の越境ECは非常に盛り上がっています。
しかし、実際に進出するとなると、文化の違い、ビジネス戦略などさまざまに考慮すべきことがあります。

本記事でまとめてあることは、これから中国のオンラインショッピング市場に参入したい場合、最低限押さえておかないといけない基本知識です。こういった情報が、貴社の中国の進出にとってお役に立てば幸いです。

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早川良太

リクルートグループにて、国内大手ECクライアント向けにwebマーケティング・O2O販促に従事。その後、クラウドソーシング事業会社にて中国IT企業とのアライアンスプロジェクト、組織・採用戦略、各種新規事業などに携わる。2015年に、ソウルドアウト株式会社へ入社。中小・ベンチャー起業向けの中国越境EC百貨店にて、数百商品の販売代行を手掛ける。
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