One to Oneマーケティングとは?成功例と4手法まとめ

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One to Oneマーケティングとは一人ひとりの消費者のニーズや購買履歴に合わせて、個別に展開されるマーケティング活動です。ITによる自動化が進むことで大勢に向かったマスマーケティングから、個人に合わせたOne to Oneマーケティングに時代は変化しています。

しかしまだ変化に対応できていない、何からやったらいいのかわからない、やってみたけど最適な手法なのかわからない、そんな方も多いと思います。


One to Oneマーケティングは一人ひとりに合った情報発信

One to Oneマーケティングとは、顧客ごとに最適化した情報を訴求・アプローチするマーケティング手法です。

以下はOne to Oneマーケティングに関するWikipediaの説明文です。

「マスマーケティングという多数をターゲットとする一律のマーケティング手法に対して、顧客一人ひとりを意識したマーケティングを行うこと。製品単体ではなく、提供の仕方やサービスなど、顧客の体験から差別化を図るものである。」

引用:ワントゥワンマーケティング|ウィキペディア

「マスマーケティング」という、不特定多数の人々を対象に画一的な訴求・アプローチをする手法とは対照的で、顧客の属性や趣味嗜好などに合わせて最適な方法でマーケティングを行っていきます。

近年では、価値観の多様性や、インターネット・SNSの普及による消費者自身の情報収集能力の向上の傾向があることにより、「顧客それぞれに合わせたマーケティング」が重要とされてきています。

自社のターゲットをセグメントし、それに合わせて商品開発や訴求を行うことで、ターゲット顧客に刺さり、購買活動につなげやすくします。

参考:マスマーケティングとは?メリット・デメリット、成果を出す方法を紹介

法人営業をしている企業では、アカウントベースドマーケティング(ABM)も注目を集めています。

One to Oneマーケティングが「個人」に最適化するのに対し、アカウントベースドマーケティングは「企業」をターゲット軸に置きます。

ABMを上手く活用することで、自社に利益をもたらす顧客を見極めることができます。

ABMの始め方は「ABM実践の手引き」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

どちらも重要な考え方なので、この機会にご参考ください。

アカウントベースドマーケティング(ABM)とは?メリットから実践方法まで解説


顧客を判断できるCookieにより個人に合わせた発信が可能に

Cookieの登場により、One to Oneマーケティングの手法が変わりました。

Cookieとは、パソコンやスマートフォンなどのブラウザから特定のサイトにアクセスした際に、ブラウザにゼッケンのようなものが貼られ、その後の行動を追跡することができる技術です。

cookieの仕組み

ブラウザを訪問すると、サイト側がCookieの情報をブラウザに送るため、ブラウザに情報が記憶されている状態になります。そのため、同じブラウザが再度サイトを訪問した際、Cookie情報をサイトが読み取り、再訪問のユーザーだと判別できるようになります。

このように、Cookieのデータをもとに個人の特定を行うことができるため、このCookieを活用して最適なマーケティングを行えるようになりました。

しかし、このCookieがプライバシーの観点で問題視され、各プラットフォーマーによる規制が行われたことにより、ターゲティング広告の配信やコンバージョン計測の精度に影響が出ています。

詳しい情報については、以下の記事を参考にしてください。

参考:【総まとめ】Cookie規制の影響とマーケティングにおける対策


One to Oneマーケティングのメリット

One to Oneマーケティングは、ユーザーに合わせて最適な訴求・アプローチを行うため、以下のようなメリットがあります。

  • コストを抑えて効果的なアプローチができる
  • ユーザーから嫌がられにくい
  • 購買率の向上を目指せる

コストを抑えて効果的なアプローチができる

One to Oneマーケティングは、限定されたユーザーにアプローチ・訴求を行うため、コストを抑えることができます。

マスマーケティングの場合、不特定多数の多くのユーザーの認知を獲得するため、テレビや新聞などの「マス広告」に出稿するのが一般的です。

しかし、このようなマス広告は、多くのユーザーに情報を届けられる分、多大なコストが必要です。

一方で、適切なユーザーだけに絞って発信をすることで、かかるコストを抑えることができます。

ユーザーから嫌がられにくい

ユーザーの属性や趣味嗜好に合わせて最適なメッセージを配信するため、嫌がられることを防げます。

たとえば、ターゲティングせずに広告配信をした場合、興味がないユーザーからは嫌悪感を持たれてしまいます。

しかし、One to Oneマーケティングであれば、商品やサービスに対してもともと興味がある人にだけ広告を表示できます。そのため、自社の広告にネガティブな印象を持つユーザーを減らせます。

購買率の向上を目指せる

ユーザーに最適な配信を行うことで、購買率を高めることができます。

たとえば、一度でもサイトを訪問したユーザーに限定して広告配信をしたとします。ほかのユーザーよりも自社商品・サービスに対する興味はあるため、広告をクリックし、購入してくれる可能性が高いです。

このように、自社商品・サービスのニーズが高かったり、興味がありそうなユーザーに絞ってアプローチをすることで、コンバージョンを高めることが可能です。


アプリ、自社サイトを活用しOne to Oneマーケティングを実現した2つの成功例

事例1:広告費を10%以上削減しながら売上高は上昇【すかいらーく】

すかいらーくは全国に約1300店のファミリーレストラン「ガスト」を展開しています。同社は2014年上半期の広告宣伝費を前年同期比で10%以上削減しながら、売上高39億円2.9%の成長がありました。これはPOSデータからブランド別にキャンペーンの成果を集計、分析、改善した結果です。

POSデータとはレジで入力したデータをサーバに貯めることで、何が・いくつ・いくら・どのように売れたのか分かるシステムです。売上高を把握するような基幹事業に使用されています。しかしこのPOSデータは基幹事業に使用するだけではなく、データを分析することが大切なのです。すかいらーくは実施する各種キャンペーンやクーポン施策のさらなる精度の向上と効率化のために膨大なデータを分析しました。
 
その大きな成果が2014年に自社開発した「ガスト」のスマートフォンアプリです。リリースから半年で約300万件のユーザーにダウンロードされ、収益に繋がりました。

公式モバイルアプリ「ガストアプリ」

 
このアプリの大きな特徴は、配信する内容が一人一人異なることです。年齢や性別、子供の有無などユーザーがアプリの登録時に設定した内容に合わせてクーポンを配信しているのです。例えば未成年のユーザーにお酒のクーポンを配信しても意味がないです。また配信する時期もユーザーによって異なります。来店した次の日にクーポンが届いても行こうとは思いませんよね。ユーザーが行きたいと思い出す頃を見計らってクーポンを配信しています。
 
アプリでのクーポン配信による来店率はメルマガの約10倍。コストは新聞広告の100分の1ほどでマーケティングは大きな成功を収めました。

参考:ブレインパッド、すかいらーくのビッグデータ分析基盤として「SAP® InfiniteInsight®」を導入|brainpad

事例2:配信するメルマガを個人で変え、購買率で約12.6倍に【リンナイ株式会社】

リンナイはガスコンロを取り扱う会社。メーカーのOne to Oneマーケティング成功例として知られています。メーカーとしては珍しく「リンナイのある暮らし」というコンテンツサイトを開設しており、商品だけではなくガスコンロに関連するレシピやコラム、暮らしに対する情報などを提供しています。また「リンナイスタイル」というECサイトも運営し自社商品など販売しています。

リンナイのある暮らし

こうした背景には、メーカーでありながらも消費者と積極的に接点を持ちたいという気持ちがありました。今では(2016年1月時点)、ECでの売上はリンナイ株式会社全体の部品売上の20%を超え、また会員数は35万人を超えています。

リンナイはこの自社サイトの登録ユーザー情報を分析し、行動履歴に基づいたメール配信をしています。行動履歴を分析することによって、例えばある商品に反応しそうな顧客を抽出し、高い反応を示しそうな顧客だけにメールを配信することができます。無作為抽出をした場合と比べて同じメールを配信したところ、開封率で約3.7倍、クリック率で約2.4倍、購買率で約12.6倍もの差が生じました。顧客の行動にオウンドメディアとECサイトを連携させ誘導することで、顧客との関係性を構築した例です。
 
以前のリンナイは同じ内容のメールを顧客全員に一斉に送っていました。しかし顧客は特別求める情報ではないメールが何度も届くことによって、押し付けがましいと感じることも多かったようです。メルマガを退会してしまう顧客も少なくありませんでした。現在では売り上げを上げつつ退会者を減らすためには、顧客一人一人にあったメールを配信することが重要だと考えています。

参考:[CD 2014]「メーカーEC成功の鍵は、目的を明確にすること」—リンナイの福本氏|日経BP社


実践できる4つの具体的な手法

1.レコメンデーション

これはAmazonなどで知っている人は多いと思います。特徴的な「あなたにおすすめ」機能では、買ったことのある商品に関連した商品をおすすめされます。その商品を買った別の人たちがチェックや購入をした商品を、あなたに似ている嗜好を持つ人だと捉えて、興味を持ちそうな商品としておすすめしてくれます。

ルールベース
予め決められたルールに従って商品をおすすめする。
例商品Aを買った人には商品Bを推奨すると予め決めておく施策

コンテンツベース
類似性をもとに関連性の高いコンテンツを含む商品をおすすめする。
健康食品Aの購入者に対して類似の効用を謳うサプリメントBを推奨するなど

協調フィルタリング
行動・購買履歴をもとにしたユーザーやアイテム間の特徴を元に、対象者と類似したユーザーが購買しているアイテムをおすすめする。
「この商品を買った人はこんな商品も買っています」

ベイジアンネットワーク
アイテムの属性やユーザーの属性、行動・購買履歴等の様々な情報をもとに、複雑に絡みあった因果関係の確率を計算し、対象者の購買確率の高いアイテムをおすすめする。

こんな方におすすめ

ECサイトやニュースサイトなどの情報料の多いサイト。ユーザーの嗜好に合う情報を自動化して提供することで、購買率も高くなります。

参考:One to Oneマーケティングの分かりやすい事例と導入しやすい実践法

2.マーケティングオートメーション

興味・関心や行動が異なる個別な顧客との個別なコミュニケーションを行うデジタルマーケティングにおいて、その煩雑な業務を自動化するために開発されたツールや仕組みです。

参考:マーケティングオートメーション15種比較!利用のメリットと失敗しない選び方とは?

簡単な例で解説してみましょう。

マーケティングオートメーション事例

ある企業がECサイトを持っています。ここを訪れた複数の潜在顧客は商品Aをカートに入れたが購入しませんでした。 この人は購買意欲がある人ですね。しかし、迷っています。時間がなかっただけかもしれません。他の商品と比べたいと思ったかもしれません。なので、カートを離脱した翌日にリマインドメールを送付してみます。その結果、何人かはこのリマインドメールを見て購買に至りました。中には、メールを開封したけれども購買に至らなかった人もいます。なんらかの理由があるのでしょう。
 
私たちはその理由を特定できませんが、メールを開封したという事実はカートに入れたが購買にいたらなかった理由と同様であると考えることができます。そこでメールを開封したが購買しなかった人だけに、一日後にそれらの人のクッキーIDを追いかけディスプレイ広告を出稿、いわゆるリマーケティングをします。
 
この繰り返しで、それをクリックしたが、購買しなかった人には、その2日後に特別オファーをメールで送付します。その結果、反応がなければ、プログラムは終了とします。ただし、もちろんプログラムの途中で購買が発生した場合は、プログラムをその時点で終了します。マーケティングオートメーションはこの一連の流れを自動化して行うことができます。

MAツールの公式資料も無料提供中です

下記ページにてマーケティングオートメーションツールの情報をまとめています。各ツールの公式サービス資料も無料でダウンロードできますので、ツールの比較検討にご活用ください。

ツール資料のダウンロードへ

こんな方におすすめ

購買までにユーザーが検討したり、段階を踏んだりじっくり時間をかけるような商品を展開している企業はマーケティングオートメーションを取り入れると複雑な業務を簡単に自動化できます。

参考:第三回:マーケティングオートメーションを拡大したキャンペーンマネージメントへ|salesforce
参考:マーケティングオートメーションとは|BtoB企業が具体的な活用イメージを持つためのヒント2

3.リターゲティング広告

上記のプログラムでも出てきましたが、リターゲティング広告について詳しく説明します。広告主のwebサイトを訪問したことあるユーザーをターゲティングして、再来訪を促す手法です。前述のCookieを使用したマーケティングです。
 
リターゲティング広告のメリットは、ユーザーのモチベーションに合わせた広告を出すことができる点です。例えば広告主のwebサイトを訪れたユーザーでも、ただTopページを見ただけのユーザーと、商品のページまで見たユーザーではその商品に対するモチベーションが違うと考えられます。なので、商品ページまで見ていたユーザーにはより商品の購買を訴求する内容の広告を出しアプローチすることが可能です。特にwebサイトを訪れてから3日以内の購買率が高く、効果的にアプローチできます。

こんな方におすすめ

通販、金融機関、旅行代理店、不動産、中間材メーカーなどのBtoB業種まで、様々な業種でリターゲティング広告が活用され、一定の成果が上がっています。リスティング広告をはじめたばかりの人、はじめようと思っている人もぜひリターゲティング広告を取り入れてみてください。

参考:リターゲティング広告活用で効果改善!ネット広告代理店だけが知っている成功事例5選

4.LPO(ランディングページ最適化)

サイト訪問者が最初に訪れるwebページを工夫し、訪問者の会員登録や購買率を高める方法。最近ではサイトを訪問するユーザー個々に合わせたページの設定も可能です。

例えばユーザーが訪れる時期や時間ごとにサイトに表示するメッセージを変えたり、ユーザーのプロフィールに合わせた個別のランディングページを設定するツールがあります。またサイトが検索されている地域に合わせたページの設定もできますよ。多数の地域に店舗などがある場合は、ユーザーがいる場所に合わせて表示されるので来店率が上がります。

こんな方におすすめ

不動産検索、ECサイト資料請求が目的のサイト、問い合わせが目的のサイト

参考:ランディングページ最適化(LPO)で学ぶ問い合わせ10倍の方法


まとめ:顧客分析、行動履歴などのデータをOne to Oneマーケティングに活かす

One to Oneマーケティングを活用することで、顧客も必要のない情報を何度も受け取ることはなくなり、自分が欲しい情報を受け取ることができます。企業にとっても顧客にとっても、情報がOne to Oneに向かっていくのはいいことですね。

成功例や具体的な手法を紹介してきましたが、One to Oneマーケティングでは情報を集めて分析することも欠かせません。ユーザーのことを知らなければ、一人一人にあったマーケティングをすることはできませんよね。ユーザーと企業を繋ぐことができるのが、情報なのです。今まで活用していなかった基幹事業に使用していたデータや、顧客情報、行動履歴など分析をすることで、顧客一人一人に合ったアプローチが可能です。それは登録数や購買率のアップに繋がります。

ぜひ自社のデータを活用してOne to Oneマーケティングに活かしてみてください。