アーリーアダプターとは?シリコンバレーの成功企業の3事例

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アーリーアダプターってよくマーケティングの本に出てくるし、概念の理解はしているつもりだけど、重要性がいまいち理解できないという方は意外に多いのではないでしょうか。
エンジニア起業家が集まるシリコンバレーでは、
アーリーアダプターの獲得こそスタートアップにおける最重要課題と言われています。しかし日本ではアーリーアダプターの重要性はあまり理解されていません。
本記事では、「75%のスタートアップが失敗する」と言われているシリコンバレーにおいて、アーリーアダプターの獲得に成功した企業の事例を紹介いたします。ぜひ、アーリーアダプターへの理解を深めていただければと思います。
参考:THE WALL STREET JOURNAL


アーリーアダプターのおさらい

アーリーアダプターを簡単に一言で説明すると、新しい商品やサービスにすぐに飛びつくような人たちです。この概念は、アメリカの社会学者であるエベレット・ロジャースによって提唱されたイノベータ―理論の中ではじめて紹介されました。
アーリーアダプターの概念と企業にとっての重要性については、
セス・ゴーディンという有名な著作家(Yahoo!の元副社長)が分かりやすく説明してくれています。

“彼らは「オタク」という存在です。 これはとてもステキな日本の言葉です。 この言葉は熱狂的な欲望を持った人という意味です。 例えば、車で東京を巡って新しいラーメン屋に行くこと。 彼らはこだわりがあるから、こういう行動をするのです。 製品を制作したり、アイディアを売りだしたり、
解決したい問題を考えだしたりするときに、 それがオタクの支持を得ないものであれば、
成功することは まずないでしょう。逆に、あなたが言うことを必死に耳を傾けてくれるような
グループを見つけなければならないのです。“

引用:セス・ゴーディン(2007) スライスしたパン TED talk

シリコンバレーで成功しているような企業はどれも、セス・ゴーディンのいう「オタク」、
つまりアーリーアダプターの獲得に成功して現在の地位を築いています。
次の章では、彼らが一体どのようにして、アーリーアダプターを獲得しているのかをみていきます。


シリコンバレーの成功企業の3つの事例

4年足らずで世界35都市!超急成長中のUberの例

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引用: UBER

最初に取り上げる企業はUberです。Uberは、シリコンバレー(サンフランシスコ)で話題になり、
最近日本でも利用する人が出てきた、スマホでハイヤーやタクシーを呼べるサービスです。

Uberは自らのサービスのアーリーアダプターになり得るユーザーが、シリコンバレーのスタートアップで働く人々だと考えました。理由は2つありました。ひとつは、サンフランシスコがとてもタクシーがつかまりづらい街であったこと、もうひとつは、スタートアップで働くような人たちは
新しいテクノロジーに関して「オタク」であることです。

Uberはターゲットのユーザー層にサービスを使ってもらうため、シリコンバレーで開催されるテック系のイベントやベンチャーキャピタルのイベントのスポンサーとなって、参加者に対して無料でサービスを提供しました。
Uberの予想通り、イベントの参加者たちはサービスに飛びつき、SNSやブログで拡散してくれました。やがてテック系のメディアやSNS上で話題になるようになり、
結果としてUber は、4年足らずで世界35都市以上で展開するサービスにまで成長しました。

【参考】
・GrowthHackers
Uber — What’s Fueling Uber’s Growth Engine?

・TechCrunch
Google Ventures Puts $258M Into Uber, Its Largest Deal Ever

一日にシェアされる写真が3億5000万のSNS!Snapchatの例

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引用:Snapchat

次に取り上げる企業はSnapchatです。Snapchatは、SNS上のコミュニケーションを
より人間的なコミュニケーションにするため、送信したメッセージや写真が、受信者に見られてから
一定時間後(最大10秒)で消えたりするような機能を持っているSNSです。

当初Snapchatの創業者は、スタンフォード大学(創業者が当時在籍中)の学生の間で
サービスを広げようとしましたが、あまりうまくいきませんでした。
そんな時、創業者の母親が、たまたま、高校生のいとこにSnapchatの話をしました。
そのいとこがSnapchatをとても気に入り、地元の高校の友達に勧めたところ、
人気に火が付いたそうです。それから間もなくして、全米の高校生に一気に浸透しました。
高校生たちの口コミのおかげで、いまやSnapchatは、2600万人のユーザー(アメリカ)を抱える
一大SNSに成長しました。

【参考】
・GrowthHackers
Snapchat-How Did Snapchat Reach a Multi-Billlion Dollar Valuation?

・TechCrunch
Snapchat Now Sees 350M Photos Shared Daily, Up From 200M In June

・Forbes
Pew Study Suggests That Snapchat Has 26 Million U.S. Users

世界190ヶ国、1000万人の旅行者から愛されるAirbnbの例

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引用:Airbnb

最後に取り上げる企業はAirbnbです。Airbnbは、空き部屋を短期間で貸したい人、
旅行先で宿泊先がほしい人をマッチングさせる新しいサービスで、最近日本国内でも
話題になっています。
Airbnbは、自分たちのサービスのアーリーアダプターは、標準的なホテルには宿泊せず、
パンフレットに載っているような旅行の楽しみ方なんてしないような人たちだと考えました。
そして、そのようなユーザーは、Craigslist(アメリカで特に有名なクラシファイド型広告サイト)で
宿泊先を探すだろうと考えました。

このユーザー層を獲得するため、Airbnbのホスト(旅行者をホストしたいユーザー)が
Airbnbのアカウントを使って、Craigslistでも宿泊希望者を募集できる仕組みをつくりました。
物議を醸す一方、Craigslistの知名度を巧みに利用したこのやり方により、Airbnbはアーリーアダプターを獲得しました。そして2014年現在、世界190ヶ国、55万か所にホスト先があり、1000万人のユーザーを抱える巨大サービスに成長しています。

【参考】
・TechCrunch
A Brief History Of Airbnb

・GrowthHackers
Airbnb: The Growth Story You Didn’t Know


3社のアーリーアダプターの獲得方法の分析

今まで見てきた3社はシリコンバレーで成功しており、サービスも最新のITテクノロジーを活用したものであるという共通点がみえますが、アーリーアダプターの獲得方法はそれぞれ参入する市場の状況に
よって違うように思えます。

まずUberについてみてみましょう。Uberのサービスは、今まで世の中になかったものであり、
いわばブルーオーシャンでした。さらにユーザーがニーズに気付いていないという状況があったため、Uberは自らユーザーを啓蒙して市場を作り出していかなければいけませんでした。
そのため、アーリーアダプターの獲得方法は「営業力」がなければ達成できないようなものになって
いるかと思います。

次にSnapchatをみてみましょう。Snapchatはテキストや写真が一定時間後で消えるという、
当時としてはかなりユニークな機能を持ったSNSサービスでした。
しかし、SNS市場自体がレッドオーシャンであったことや、
最初にターゲットとした大学生のユーザーの間ではFacebookやTwitterが人気を博していたことを
考慮すると、アーリーアダプターの獲得にはかなりの営業力を要する可能性がありました。
結局、ラッキーな形でアーリーアダプターの獲得に成功できましたが、強運がなければ
実現できなかったことかもしれません。

最後にAirbnbを見てみましょう。Airbnbのサービスのビジネスモデル自体は新しいものでしたが、
新たなニーズをつくりだしたわけではなく、もともと旅行者にあったニーズを新しいビジネスモデルで解決したのです。だからこそ、あまり営業活動をせずとも、「技術力」を駆使し、
Craigslistからユーザーを巧みに奪うことで、アーリーアダプターの獲得が
できたのではないでしょうか。

こうい見ていくと、サービスが解決するニーズが市場に顕在化されている場合といない場合とでは、
アーリーアダプターの獲得の仕方は変わってくるのかもしれません。


まとめ

いかがでしたでしょうか?
ここまで読んで下さった皆さんにとって、企業にとってのアーリーアダプターの獲得の重要性が、
より納得できるものになってくれていれば幸いです。

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