SIEMとは?特徴や機能をわかりやすく解説!製品比較のポイントも紹介

SIEMとはのアイキャッチ

サイバー攻撃が日々巧妙化し、企業にとって重大な脅威となる現代において、包括的かつ効果的なセキュリティ対策が不可欠となっています。その中核となるのがSIEM、つまりセキュリティ情報およびイベント管理システムです。

SIEMは、企業のセキュリティ関連データを一元的に収集・分析し、リアルタイムでの監視と迅速な対応を可能にする重要なツールです。これにより、セキュリティインシデントの早期発見と迅速な対処が可能となります。

本記事では、SIEMの概要、主要な機能、導入の利点と課題、製品を選ぶときのポイントについて解説します。


SIEM(シーム)とは?

SIEM(Security Information and Event Management)は、セキュリティ業界で利用される重要な製品・サービスです。SIEMとは、セキュリティ情報の分析・収集やイベント管理を一括で行うためのツールのことを指します。

セキュリティ情報の分析・収集は、組織内の異なるソースから生成されるセキュリティログやアラートなどの情報を収集し、継続的に分析します。これにより、異常なアクティビティや攻撃の兆候を早期に検知することができます。また、セキュリティインシデントに関連する情報を統合的に管理することで、効果的な対策を講じることができます。

SIEM(シーム)市場の動向

SIEM(Security Information and Event Management)市場は、近年急速な成長を遂げており、全世界での市場規模は2022年に52億米ドルまで達しているとされています。

また、市場調査企業のIMARCグループによると、2023年から2028年の間にSIEM市場は11.5%の成長率を示し、2028年には85億米ドルにまで拡大すると予測されています。

SIEM市場の成長の背景には、いくつかの要因が関与しています。まず、リモートワークやBYOD(Bring Your Own Device)の普及により、組織のセキュリティ課題が増加しています。これに伴い、セキュリティ情報の分析・収集やイベント管理を一括で行うSIEM製品への需要が高まっています。さらに、GDPR(一般データ保護規則)などの法整備により、企業はセキュリティ対策の重要性に対してより高い意識を持つようになりました。


SIEM・EDR・Syslog・SOC・SOARは何が違うのか?

SIEM(Security Information and Event Management)、EDR(Endpoint Detection and Response)、Syslog、SOC(Security Operations Center)、SOAR(Security Orchestration, Automation, and Response)は、セキュリティ業界で頻繁に使用される用語ですが、それぞれ異なる役割と機能を持っています。次に以下の見出しでそれぞれの違いについてわかりやすく解説します。

SIEM(シーム)とEDRの違い

SIEMは、長期的なデータ分析やコンプライアンス対応、レポーティング、監査対応などに役立つソリューションです。セキュリティ情報の収集・分析に重点を置き、組織全体のセキュリティの監視や脅威の検知に活用されます。

一方、EDRは、エンドポイント端末(PCやサーバーなど)のリアルタイムな監視と脅威検知に特化したソリューションです。エンドポイント上での異常な振る舞いや攻撃を即座に検知し、迅速な対応を可能にします。

SIEMとEDRはそれぞれ異なる機能と特徴を持っており、組織のセキュリティ戦略において両方の活用が重要となります。SIEMはセキュリティ情報の収集・分析と統合的な監視に焦点を当てていますが、EDRはエンドポイント端末のリアルタイムな脅威検知と対応に特化しています。

SIEM(シーム)とSyslogの違い

SIEM(Security Information and Event Management)とSyslogは、どちらもログに関連する製品・技術ですが、それぞれ異なる目的を持っています。

Syslogはネットワーク上でログメッセージを転送するための標準規格です。主な目的はログの収集と転送であり、さまざまなネットワーク機器やシステムから生成されるログを集約的に管理することが可能です。Syslogはログの転送プロトコルとして広く利用されており、ログデータをリモートのSyslogサーバーに送信することができます。

SIEMはそれに加えてログの分析やセキュリティ向上に関連する機能を提供しています。Syslogはログデータの集約と送信に利用される一方、SIEMはセキュリティインシデントの検知や対応を支援する総合的なセキュリティソリューションとして活用されます。

SIEM(シーム)とSOCの違い

SIEMはセキュリティデータの収集と分析に特化していますが、SOCはそのデータを受け取り、総合的なセキュリティ対策や対応策を実施する役割を果たします。

SOCは「Security Operation Center」の略で、24時間365日体制でネットワークやデバイスを監視するセキュリティ組織を指します。SOCはセキュリティイベントの収集、分析、対応を行い、セキュリティインシデントへの早期対応や脅威の検出、リスク管理を担当します。SOCはセキュリティエキスパートや専門のアナリストが運営し、外部業者に委託することも一般的です。

SIEM(シーム)とSOARの違い

SIEMとSOARの決定的な違いは、自動化とオーケストレーションのレベルです。SIEMはセキュリティデータの収集と分析に焦点を当てており、セキュリティインシデントの検知や可視化を支援します。一方、SOARはセキュリティ運用プロセスの自動化とオーケストレーションに重点を置き、セキュリティインシデントへの対応までのプロセスを自動化します。

SOARにより、セキュリティチームは繰り返しのタスクや手作業を減らし、より迅速かつ効率的な対応を実現できます。また、SOARは異なるセキュリティツールやシステムとの連携も可能であり、より包括的なセキュリティ運用を実現することができます。


SIEM(シーム)の主な機能や特徴

SIEMは、セキュリティに関連する情報を集め、管理し、分析するという一連のプロセスを自動化することで、企業がセキュリティイベントを迅速かつ効果的に管理することを可能にするものです。

このシステムがどのように働き、どのような特性を持っているのかを理解することは、企業が自身のセキュリティ対策を最適化し、SIEMの可能性を最大限に引き出す上で不可欠です。ここでは、その主な機能と特性について詳しく解説していきます。

ログの管理・収集

ログの管理・収集はSIEM(Security Information and Event Management)の重要な機能です。SIEMはセキュリティデータの収集と分析に特化しており、ログデータの管理もその中核的な役割の一つです。

ログはシステムやネットワーク上で生成される情報の記録であり、セキュリティインシデントの検知や解析に不可欠なデータ源です。SIEMは、複数のソースからログデータを一元的に収集し、セキュリティ関連のイベントやアクティビティを記録します。

ログの相関分析

SIEMでは、事前に設定されたルールやポリシーを適用してログの相関分析を実行します。ルールに基づいてログエントリやイベントを解析し、特定の条件に合致する異常なパターンや振る舞いを検出します。これにより、異常なイベントに対してアラートや通知を生成し、セキュリティチームに迅速な対応を促すことができます。

ログの相関分析によって、セキュリティインシデントへの迅速な対応だけでなく、異常なパターンや攻撃の関連性を特定し、セキュリティに対するリアルタイムのデータを収集できます。

ユーザー監視・分析(UBA/UEBA)

UBA(User Behavior Analytics)またはUEBA(User and Entity Behavior Analytics)は、ユーザーの行動やエンティティ(デバイス、アプリケーションなど)の振る舞いを分析し、異常なパターンやセキュリティインシデントを検出するための技術や手法の一つです。

ログインの試行やアクティビティの履歴、アクセスパターンなどを監視し、通常のパターンとの乖離を検知します。異常なアクセスや操作、特権の不正使用などの不審な行動を特定することができます。

インシデントの管理

SIEMは、さまざまなソースからのセキュリティインシデントを収集します。これには、ログエントリ、アラート、ネットワークトラフィックの監視結果などが含まれます。収集されたセキュリティインシデントは、SIEMによって分析されます。異常なパターンや攻撃シグネチャの検出、行動分析、リアルタイムのアラート生成などが行われます。

これにより、セキュリティチームはインシデントの状況や影響範囲を迅速に把握することができます。


SIEM(シーム)を導入するメリット

SIEMは、企業の複雑化したIT環境におけるセキュリティ問題を効率的に取り扱うことができる機能を提供します。

もちろん、全ての企業に一概にSIEMが必要というわけではありません。しかしSIEMを適切に利用すれば、企業は自身のセキュリティ体制を大きく強化することができます。では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、SIEMを導入する際の主要なメリットについて詳しく説明します。

サイバー攻撃による被害を最小限に抑えられる

サイバー攻撃は現代のビジネスにとって深刻な脅威ですが、SIEM(Security Information and Event Management)の導入により、その被害を最小限に抑えることができます。

SIEMは異常な行動やふるまいを即座に検知することができます。攻撃者の不正アクセスや異常なデータの送信、機密情報へのアクセスなど、異常なパターンや振る舞いを検知することで、迅速に対応策を検討することができます。これにより、攻撃が発生してからの時間を短縮し、被害を最小限に抑えることができます。

ログ管理・分析の効率化

SIEM(セキュリティ情報およびイベント管理)の導入により、ログ管理と分析が効率化するという明確なメリットがあります。具体的には、複数の機器から生成される大量のログデータを一元化し、自動的に管理することが可能となります。これにより、企業はログデータの収集と分析に要する人的リソースを大幅に削減できます。

従来は各デバイスやシステムからログデータを個別に収集し、手動で分析する必要がありました。これは時間と労力の両方を著しく消費します。しかし、SIEMの導入により、これらのプロセスが自動化されます。つまり、複数のシステムからのログデータを一箇所に集約し、自動的に分析することで、不審な行動や潜在的な脅威を即座に識別することが可能となります。


SIEM(シーム)を導入するデメリット

前述の通りSIEMはその多機能性から多くのメリットを提供しますが、それは同時に高度な運用スキルや導入・運用コスト、ネットワークへの負荷増大といったデメリットも孕んでいます。特に初めてSIEMを導入する企業にとっては、これらの課題は導入の大きなハードルとなり得ます。

ここでは、SIEMの導入を考えている皆さんに向けて、SIEM導入の主要なデメリットについて解説します。

ネットワークへの負荷が増える

ネットワークトラフィックが増大するため、それにともなって負荷も増える。ある程度のネットワークの冗長性を担保しておく必要がある

ログ検知の精度が粗い

複数機器のログを収集するメリットがあるものの、ログ同士の相関関係を見つけたり、セキュリティと関連性のあるアラートを出したりする精度は粗め。都度、アラートの内容を判断する必要がある

PCやサーバーなどのエンドポイント端末を監視し、不正なふるまいや脅威を即座に検知できるEDRを併用すると、よりセキュリティ強度を高められるだろう


SIEM(シーム)製品の選び方

セキュリティ情報およびイベント管理(SIEM)は、企業のITインフラを取り巻く脅威から保護するための重要な手段であり、その選択は重要な決定です。これは企業が情報資源を保護し、ビジネスを安全に運営するために求められるものです。しかし、SIEM製品は多種多様であり、どれを選ぶべきかを決めるのは一筋縄ではいきません。

ここではSIEMの製品を選ぶにあたって外せないポイントを4つ紹介します。ぜひこの選び方を参考に自社に最適なSIEM製品を検討してみてください。

導入・運用コスト

SIEM製品の選択において、導入と運用のコストは避けて通れない重要な要素です。一般的にSIEMソリューションの費用形態は、「従量課金制」と「ライセンス課金制」の2つに大別されます。自社が扱うログデータ量によって適切な課金制度を選択することが求められます。

「従量課金制」では、ログデータの量や処理量に応じて課金が行われます。ログデータの量が多い企業や、変動が大きい場合はこの形態が適しています。一方で、「ライセンス課金制」は一定のライセンス費用を支払うことで、一定範囲のサービスを利用することができます。一定量のログデータを扱う企業にとってはこの形態がコスト効率的です。

保管期間

SIEM製品の選択を考える際、その製品が大量のログをどのくらいの期間保管できるか、という保管期間は非常に重要な要素となります。セキュリティインシデントが発生した際に、過去のログデータを参照することでその原因を追求したり、攻撃パターンを解析したりすることができます。そのため、ログの保管期間は長ければ長いほど、より詳細な分析やフォレンジック調査が可能になります。

しかしながら、無尽蔵にログデータを保管し続けることは、ストレージの容量やコストという面から見ると現実的ではありません。そのため、選択するSIEM製品は、自社のビジネス要件やリスク管理戦略に基づいた適切なログデータ保管期間を提供できるものであるべきです。

対応可能なログ範囲

SIEM製品を選択する際の重要な考慮点の一つが、対応可能なログの範囲です。ある製品が特定の種類のログに対応していても、別の製品がそれと同じログを扱うことができるとは限りません。システムの種類、ネットワーク機器、アプリケーション、それらが生成するログデータ形式は多種多様であり、これら全てをカバーできるSIEM製品を選ぶことが理想的です。

企業内のネットワークは、様々なハードウェアとソフトウェアから成り立っています。サーバーやネットワーク機器、エンドポイントなど、それぞれが異なるログ形式を生成します。そのため、自社がどのログ形式を必要としているのかを明確に把握し、それらを適切に処理できるSIEM製品を選ぶことが重要です。

保管形式

SIEM製品を選ぶ際、ログデータの保管形式も重要な要素となります。これは、ログデータがどのようなメディアに保管されるかという問題を指します。クラウド、物理的ストレージ、テープ媒体など、様々な選択肢がありますが、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

例えば、クラウドストレージは、容量を必要に応じて柔軟にスケーリングできるため、大量のログデータを取り扱う必要がある場合に適しています。さらに、物理的な場所を必要としないため、設備の維持管理費用を抑えることができます。しかし、一方で、通信費用やデータ保護のためのセキュリティコストが発生することも考慮すべきです。

物理的ストレージやテープ媒体は、通常、一定の初期費用が必要ですが、長期的に見れば安価な選択肢となることがあります。ただし、物理的なメディアは故障のリスクがあり、データを安全に保管するための管理体制が必要となります。


まとめ

SIEM(Security Information and Event Management)は、企業が日々増加する脅威に対抗し、セキュリティ対策を強化するための重要なツールであることを見てきました。複数のセキュリティデバイスからのログデータを一元的に管理し、セキュリティインシデントの早期発見と対応を可能にします。その効率化の力により、大量のログデータを人的リソースを投入せずに分析し、セキュリティ状況を理解することが可能になります。

一方で、SIEMの導入には、ネットワーク負荷の増大や、検知精度の粗さといったデメリットも存在します。製品選択の際は、自社の要件や予算に照らして、導入・運用コスト、保管期間、対応可能なログ範囲、保管形式などを検討することが重要です。

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