あなたは売掛金の回収をきっちりできていますか?
「いつも支払いが遅れがちな取引先がある」、「売掛金を回収できていない取引先の一つが、最近経営状態が良くないと聞いた」など、売掛金の回収をどうすれば良いか、不安を抱えている経営者や個人事業主の方も多いのではないでしょうか?
この記事では、売掛金を効率的に回収する方法と、回収時に気をつけるべきことについて詳しく解説します。
売掛金が回収できなくなる、回収金額が減るなどを避けるためにも、この記事の情報を参考にしてください。
売掛金を回収する5つの方法
商品を売買する場合、先に代金を払ってから商品を受け取るのが基本です。しかし、企業間の取引などは金額が大きくなることが多く、一定期間後に支払いを行う掛取引が行われます。
掛取引において後日代金を請求できる権利を売掛金といいますが、通常の商取引と比べて、支払遅延や支払延滞などトラブルが起きやすいのです。
ではどうすれば、支払トラブルのリスクを最小限に抑えて、売上金をきちんと回収することができるのでしょうか?
売掛金を回収する5つの方法を以下で紹介しています。また、それぞれの手順について簡単な流れも解説していきます。
1. 内容証明郵便を送る
売掛金を回収する有効な手段は、相手に日本郵便事業会社が提供する内容証明郵便を送ることです。内容証明郵便とは、どんな内容の書類を、いつ、誰が誰に出したかを証明するものです。
内容証明郵便に法的な拘束力はありませんが、売掛金の支払内容、支払期日、支払わなかった場合の措置等を明記した催告を通知することで心理的圧力を与え、相手の行動を促すために有効な手段です。内容証明郵便は、弁護士から相手に送ってもらうとより効果的です。
内容証明郵便には書き方のルールがあり、1枚の用紙に書ける文字数が決まっています。
- 縦書き : 1行20字以内、1枚26行以内
- 横書き : 1行13字以内、1枚40行以内・1行26字以内、1枚20行以内
内容証明郵便が2枚以上になる場合や内容の訂正をする場合は捺印も必要です。
また内容証明郵便は、相手に送る分、自分が保管する分、そして郵便局が保管する分の3部作る必要があります。1枚につき約1300円程度の送料がかかり、普通郵便に比べて割高になるのが特徴です。
2. 商品を引き揚げる
代金をまだもらってない商品を引き揚げることで、相手がたとえ売掛金の支払いができない状態だったとしても、あなたの損害を最小限に抑えることができます。
ただし商品を引き揚げる場合は、必ず相手の同意を得る必要があります。無断で商品を引き揚げてしまった場合、あなたが窃盗罪に問われたり、損害賠償をしなければならない可能性があります。
また、その商品が相手の要望を取り入れた完全オーダーメイド商品の場合や、すでに相手が第三者に商品を転売してしまっている場合は、この方法は使えないので気をつけましょう。
3. 売掛金と買掛金を相殺する
もしあなたが相手に対して買掛金、つまり未払いのお金がある場合は、それを売掛金と相殺することで、双方の債務を消したり、減額することが可能です。返品や買付などで、まだ相手に支払っていないお金はないかを確認することが大切です。
しかし、この売掛金と買掛金の相殺も、相手に断りなく勝手にすることはできません。事前に売掛金と買掛金を相殺する旨を、できる限り早く相手に通知する必要があります。
その際に効果的なのが、先に解説した内容証明郵便です。日付と、売掛金と買掛金を相殺する旨を記載した内容証明郵便を相手に送ることで、たとえ相手が破産や支払不能の状態に陥ったとしても、あなたの損害を小さく抑えることができます。
4. 債権を譲渡してもらう
もし相手が第三者に対して売掛金を持っている場合は、その売掛金を譲渡してもらうことで売掛金を回収することができます。ただしこの債権譲渡も、あらかじめ相手から合意を得ておく必要があります。また売掛金を譲渡してもらう予定の第三者の信用状態も事前に把握し、本当に債権を譲渡してもらい、売掛金を回収できるかどうか、慎重に判断することが重要です。
5. 法的手段に出る
売掛金を回収するための最終手段が法的措置を取ることです。ただし弁護士への依頼は、費用と時間もかかるため、売掛金の回収がどうしても難しい場合の最終手段としましょう。
法的手段をとる場合は、以下の流れで進んでいきます。
- 仮差押え
- 訴訟または支払督促
- 強制執行
仮差押え
売掛金の回収は、最終的には強制執行となります。買主に対して訴訟を起こし、裁判所から支払いを命ずる判決が出るまでには、時間もかかります。強制執行までに相手が財産を処分・隠ぺいしたり、第三者に譲渡できないよう、まずは仮差押えの手続きをとる必要があります。
法的手段をとる場合はできるだけ早いタイミングで裁判所に申し立てを行い、相手の財産の仮差押えの手続きをしましょう。
仮差押えの対象となる財産は、銀行預金をはじめ、第三者に対する売掛金、不動産、自動車、生命保険、預金以外の現金、換金可能な物品・商品など多岐に及びます。
訴訟または支払督促
相手の財産を仮差押えした後は、支払いを命じる判決を裁判所に出してもらうための訴訟を起こしますが、弁護士への支払いや裁判費用も必要となります。
訴訟には数カ月かかる場合もあります。費用や時間がかかっても、裁判所の判決には法的拘束力があるため、売掛金を回収できる可能性は高まります。
訴訟以外に、支払督促による回収も可能です。支払督促は裁判所から文書で支払いの督促をしてもらうことです。
裏付けとなる証拠の提出が必要なく、訴訟より手続きが簡単なため、期間も約1~2カ月と短いことが特徴です。裁判所から「仮執行の宣言が付された支払督促」が出れば、判決と同じように法的拘束力を持ちます。また必ずしも裁判所に出廷する必要がなく、費用を抑えることができます。
しかし支払督促は、相手から異議があった場合に、普通の訴訟に移行するという点では注意が必要です。相手に支払う意思があるのかどうかを見極めた上で、訴訟と支払督促のどちらが適切か判断するのがよいでしょう。
強制執行
訴訟の判決後または支払督促後も相手が支払わない場合は、裁判所から許可を得て強制的に財産を差し押さえることになります。
相手に拒否権はなく、銀行預金、第三者に対する売掛金、不動産、自動車、生命保険、保有する現金、換金可能な物品・商品、税金還付金に至るまで、ほぼすべての財産を差押え、売掛金を回収することができます。
ただし、相手の財産に価値がなければすべてが水の泡になります。強制執行はあくまでも最終手段であることを忘れないでください。
売掛金をスムーズに回収するためのコツ
売掛金をスムーズに回収するためには、日頃から取引相手の資産状況をしっかりと把握しておく必要があります。資産状況が著しく悪化している相手とは、取引を控えるということも頭にいれておかなければなりません。
また売掛金の回収が遅延することも見越して、「支払が遅延した場合はどうするか」や「代金が支払われるまで商品の所有権は売り手にある」等の内容を明記した契約書を交わしておくことも、売掛金を円滑に回収するために重要です。
売掛金の入金がない場合の原因・対策
取引相手から売掛金の入金がない場合、支払が遅れている場合は次のような原因が考えられるので、状況に合わせて、適切に対策をとる必要があります。
単純なミスの場合:対策は「期限を決めて、入金を促す」
相手が単純に「売掛金を振り込むのを忘れていた」、「支払済と思い込んでいた」場合は、相手に電話をかけて、入金をお願いすれば済む話です。ただしその際には念のため期限を設定することが重要です。期限を設定しておくと、その期限が過ぎて入金がなかった場合、再度催促をすることができるからです。
支払う余力がない場合:対策は「相手が確実に入金できる日時を決める」
相手に余力がなくて支払いが滞っている場合は、相手と話し合いの場を設けましょう。支払いの目処があるのか、いつ支払えるのかを相談して、相手が確実に入金できる日付を決めることが重要です。
支払う意思がない場合:対策は「内容証明郵便を送る」
相手に支払う意思がない場合は、待っていても売掛金の回収は見込めないので、まずは相手に内容証明郵便を送りましょう。それでも相手が支払いに応じない場合は、最終的には法的手段をとることも視野に入れ、前半で挙げた、「商品の引き揚げ」「売掛金と買掛金の相殺」「債権を譲渡してもらう」などの方法を試してみましょう。
売掛金を回収する際の注意点
ここでは、相手から売掛金を回収する際の注意点について解説します。
売掛金には時効がある
売掛金を回収する際に注意すべきこととして、売掛金には時効があります。売掛金の内容によって、1年、2年、3年、5年など、時効期間は異なります。まずはあなたが現在抱えている売掛金の時効を確認しましょう。
そして時効が迫っているものがある場合は、相手に内容証明郵便を送るなど、適切な対策をとることが必要です。そしてこれから新しく取引する相手とも、売掛金の時効が5年など長い場合でも安心せず、回収は1年以内にすることを心掛けておくことが重要です。
参考:時効一覧表-債権回収事項一覧表 | 弁護士法人 法律事務所ホームワン
時効は中断することができる
売掛金の時効は中断することができます。時効を中断させるためには、相手への請求を止めないことが重要となります。内容証明郵便の送付、訴訟を起こすことで、時効の中断が可能です。
ただし内容証明郵便を送った場合も時効の停止は半年間のため、半年ごとに内容証明郵便を送る必要があります。
それでも相手が支払いに応じない場合は法的手段をとって、売掛金が時効で消滅しないように適切な対策をしましょう。
売掛金回収に関するよくあるご質問
売掛金回収について役立つQ&Aをまとめています。
Q.売掛金の支払いが遅れる理由にはどんなものがありますか?
A.支払い遅延の理由には、単純なミスや資金繰りの悪化、支払い意思の欠如などが考えられます。状況に応じて適切な対策をとることが重要です。
Q.売掛金の時効はどれくらいですか?
A.売掛金の時効は一般的に1~5年で、契約内容や取引によって異なります。取引の際には時効に注意し、適時回収を行うことが必要です。
Q.売掛金の時効を中断する方法はありますか?
A.時効を中断するには、内容証明郵便を送付したり、訴訟を起こすなどの手続きを行う必要があります。時効中断の手続きは慎重に進めましょう。
Q.売掛金と買掛金を相殺することは可能ですか?
A.売掛金と買掛金を相殺することは可能ですが、相手の同意が必要です。事前に相殺の旨を通知し、双方の合意を得ることが重要です。
Q.売掛金回収について、ファクタリングとは何ですか?
A.ファクタリングとは、企業が保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、早期に資金化する仕組みです。未回収リスクを減らし、迅速な資金調達が可能です。
売掛金の未回収が濃厚だと思ったら”ファクタリング”を検討しよう
ファクタリングとは、企業が保有している売掛金をファクタリング会社が買い取る仕組みです。
経済産業省中小企業庁では、売掛債権の利用促進をうながしています。その一環で注目を集めており、素早く資金調達できる手段として話題になっています。
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ファクタリングについて詳しく知りたい方は、下記記事を参考にしてみてください。
ファクタリングとは?図解でわかりやすい解説・手数料・違法会社を避ける7つのポイント
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まとめ
売掛金を回収するためには、日頃から取引相手の資産状況や支払い遅延の有無に気を付けておくことがとても重要です。支払いが滞った後で、内容証明郵便を送ったり、訴訟を起こすこともできますが、時間と労力がかかり、そうなった時点で同じ取引相手と今後ビジネスをすることはとても難しくなります。
不必要なリスクを避け、安心してビジネスをするためには、取引をする前に相手の状況を把握し、適切な契約書を結んでおくなど、未然に支払いトラブルの回避策を考えておくことがとても大切です。