コンプライアンス対策の実施は、企業規模や業種にかかわらず全企業の課題です。
しかし「コンプライアンス対策しないと、どんなリスクがあるの?」「どんなことがコンプライアンス違反するのかわからない」という悩みから、うまく動き出せていないという企業もあるのではないでしょうか。
コンプライアンス違反により倒産に至った国内企業は、8年連続で200件を超えています。コンプライアンス違反は安定した経営を阻むリスクがあります。
コンプライアンス違反の原因は、大きく分けて9種類です。どんなことがコンプライアンス違反につながるのかをおさえておきましょう。
この記事では、コンプライアンス違反によって起こる経営リスクについて触れたうえで、コンプライアンス違反を引き起こす9つの原因を解説していきます。そのうえで、コンプライアンス対策をどのようにすすめていくべきかについてもまとめました。
目次
年間200件超えの企業がコンプライアンス違反で倒産に
コンプライアンス違反で倒産に陥った企業の数は、2019年までの8年間連続で200件を超えました。それだけの企業がコンプライアンス対策を重要視しきれていなかったということです。
2019年度は倒産した企業が225件あり、そのうち「粉飾(決算)」が78件と最多でした。粉飾に次ぎ、事業外の不祥事などのその他で48件、業法違反が31件、資金使途不正は29件といった違反の件数が多くなっています。
倒産に至らずともコンプライアンス違反が発覚することで、企業の信頼は失われ、取引先や顧客が離れる原因となります。
コンプライアンスの軽視が、企業規模の縮小や倒産といった事態を招く結果となってしまえば、失った信頼を取り戻には多大な時間がかかります。
参考:コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2019年度)/帝国データバンク
コンプライアンス違反につながる9つの例
どういうことがコンプライアンス違反につながるかというと、下記の9つのようなものが挙げられます。
- 売上げの架空計上や費用の先送り
- 対消費者への虚偽や不正行為
- 雇用・労務に関する厳しい風土
- ハラスメント
- 情報マネジメントの不行届き
- 知的財産権の侵害
- 社会的な期待やモラルへの配慮不足
- 業務命令・社内手続きの軽視
- 環境への配慮不足
不正会計や消費者への虚偽、雇用・労務違反といった組織的なリスクのほか、知的財産権や情報管理に関する従業員の不注意・不行き届きなども存在します。社会の発展とともに、ハラスメントや環境への配慮といった企業態度に対する目も厳しくなっているので注意が必要です。
1.売上げの架空計上や費用の先送り
売上げを多く見せたり、費用を少なく計上することは不正会計につながります。これは、取引きを有利に進めるために、経営状況を良く見せようとして起こります。
株主や借入先からのイメージを良くするために会計情報を改ざんしたり、一部の不利な情報を隠ぺいしたりします。業績が赤字の場合や借入返済が難しくなったとき、動機が働きやすくなります。
会計操作の手法はおもに、下記5つの項目に分かれます。いずれも、「売上げを増やす」か「費用を減らす」かし、利益を多く見せるやり方です。
- 売上の前倒し・架空計上
- 経費の過少計上
- 費用の先送り・不計上
- 資産の評価替え・架空計上
- 負債の評価替え・不計上
不正会計を企業トップが敢行または指示した場合、「特別背任罪(会社法960条)」に問われ、10年以下の懲役や1,000万円以下の罰金が科せられる場合があります。上場企業であれば、内部管理体制の改善を要する特段注意市場銘柄への移管や上場廃止にまで発展します。
2.対消費者への虚偽や不正行為
自社の利益を追い求めるあまり、消費者へ嘘をついてしまうことがあります。対消費者への虚偽や不正行為は、組織上のどの階層でも起こりうることです。
食品を扱う企業では、原産地や消費期限の偽装がたびたび問題となっています。食品偽装はときに人命に関わるため、発覚後の信頼回復は極めて困難となります。
2019年には大手不動産企業による「違法建築問題」が大きな話題となりました。
防火や遮音に欠かせない界壁を設置していないことや、建築基準法をはじめとする関係法令との不適合などが発覚しました。建築基準法違反の疑いが見つかったアパートは1,300棟にを超えます。
同社では株価急落により業績が悪化し、外部の支援を受けて債務超過を解消しつつも、経営は厳しい状況を抜けていません。
いずれの場合も、事業拡大や売り上げを最優先したことが、法令適合性や監査の軽視につながりました。
3.雇用・労務に関する厳しい風土
長時間残業や有給休暇を取りづらい風土がある企業は、雇用・労務に関するコンプライアンス違反を引き起こし安い状態といえます。長時間労働や残業代の未払い、賃金の未払い、不当解雇も該当します。
ある宅配業者は従業員の労働時間を適正に管理しなかったために、その本社と支店の幹部が書類送検されたという事例があります。
厚生労働省は、2016年4月から2017年3月の間に、1,349社に対して賃金不払い残業の是正指導を行ったことを発表しました。そのとき支払われた割増賃金の合計額は127億2,327万円に上ります。
長時間労働・残業を強いれば、社員の健康問題に発展します。最悪の場合は、過労死や過労自殺に至ることもあり、企業のイメージ急落は避けられず、損害賠償を求められる可能性もあります。
長時間労働・不休を良しとせず、生産性を向上する取り組みによって業績アップを図りましょう。業務上で使用するデバイスと勤怠打刻を紐付けるなどし、勤怠管理の徹底も求められます。
4.ハラスメント
近年、急増しているのがハラスメントです。ハラスメントとは、相手の心情や立場に反する言動で不快な感情を抱かせてしまうことをいい、さまざまな種類があります。
- パワー・ハラスメント:職権や立場を利用した高圧的な発言やいじめ
- セクシュアル・ハラスメント:性的な言動による嫌がらせ
- モラル・ハラスメント:倫理や道徳に反する言動や嫌がらせ
- アルコール・ハラスメント:飲酒を強要する態度や言動
- ジェンダー・ハラスメント:性区分に関する固定観念や差別による嫌がらせ
ハラスメントの種類によっては、「男女雇用機会均等法」や「育児・介護休業法」などの法令違反に問われます。ハラスメントを受けた人が心の健康を害してしまう可能性についても考えなけれなばりません。
ハラスメントが常態化している企業では、企業イメージの低下による売上減少や採用難などの悪影響が懸念されます。ハラスメントがコンプライアンス違反に発展すれば、損害賠償などの経済的な負担も発生する可能性があります。
引用:データで見るハラスメント/ハラスメント裁判事例、他社の取組などハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」
5.情報マネジメントの不行届き
個人情報をはじめ企業秘密の漏えい、SNSでの不適切な情報発信、社外にデータを持ち出すなど、不適切な情報マネジメントがコンプライアンス違反につながるケースがあります。
不正アクセスなど悪意を持った第三者の行為が原因だとしても、とくに個人情報の漏えいは消費者を不安にさせ、顧客離れにつながります。情報を適切かつ二重三重に管理・監視する仕組みを構築しなければいけません。
2019年1月には、とあるファイル転送サービスが不正アクセスを受け、個人情報を含めた顧客情報を流出させてしまう事件がありました。同サービスは結果的に、2020年3月末にサービス終了に至っています。
またSNS運用は、企業アカウントに従業員がログインすることで投稿などを行いします。悪意はなくとも不適切な情報発信すると、拡散されて収拾つかなくなる恐れがあります。
とあるホテルで従業員が有名人の宿泊情報を投稿した事例や、企業の技術責任者が発表前の情報を投稿した事例がありました。当該企業は、事実を認め公式謝罪しています。
日ごろから全社員のコンプライアンス意識を高める機会をもつことが重要です。情報を守るためのセキュリティ強化対策やSNSの適切な運用方法などの情報マネジメント体制を構築しましょう。
6.知的財産権の侵害
知的財産権とは、「知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財産として保護するための制度(特許庁)」です。特許権、商標権、意匠権、著作権などによって保護されます。
知的財産権の認められるコンテンツや商品・サービスなどを無断でコピーや転載した場合は、知的財産権を侵害したことになります。
たとえば、新聞記事をコピーして営業や宣伝に利用した場合、著作権の侵害に該当する場合があります。自分で考えたデザインやサービス名などが、すでに世の中にあるデザインやサービス名と酷似する場合、意匠権や商標権の侵害に当たる場合もあります。
知的財産権の侵害を防ぐためには、知らず知らずのうちに侵害してしまう事例を学ぶことが大切です。著作権をはじめとする業務上関わりの深い知的財産権について、チェックする機能・体制も必要でしょう。
7.社会的な期待やモラルへの配慮不足
近年の企業活動において、法令を順守するだけでなく、社会的な要請やモラルにも配慮・対応する姿勢が求められるようになりました。
人間尊重のあり方や地域社会への貢献、協力会社との適正な取り引き、プライバシー保護といった言葉があります。「世間の一般的な感覚」にあわせる形で、企業もこれらを意識するようになりました。
大きな事件や事故を機に、求められることが変わりまることもあります。とくに「安心」「安全」「健康」「誠実」「公正」に対する社会的な期待は高まっています。
社会の動向を見ながら、社員1人ひとりが行動やモラルに注意する必要があります。
8.業務命令・社内手続きの軽視
会社の業務命令や社内手続きの軽視はコンプライアンス違反につながる可能性があります。法令を守り、倫理観をもって業務を行うことが、近年、企業に求められているためです。
たとえば、個人成績を上げるために無理にお客様を訪問したり、社内の審査を飛ばしてお客様と契約を結んだりすることが挙げられます。
良かれと思ってとる行動でも、結果的にコンプライアンス違反となり、企業に損害を与える可能性があります。
マニュアルよりも状況に応じた個別判断のほうが、業務的に良いことはありえます。その時は必ず、上長に提案して承諾を得てから行うべきです。定期的に現場レベルの監査を行い、報連相や業務プロセスの重要性を全社で再認識する機会を持ちましょう。
9.環境への配慮不足
環境への意識が社会的に高まるなか、環境法令の遵守や環境保全に対する企業の配慮・取り組みも重要視されています。
たとえば、工場を持つ製造業や環境に直接影響する1次産業などには、さまざまな要求事項が適用されます。順守すべき法令も多岐にわたり、以下はその一例です。
- 大気汚染防止法
- 下水道法土壌汚染対策法
- 廃棄物処理法
- 水質汚濁防止法
- 騒音規制法
- 悪臭防止法
- 振動規制法
- ダイオキシン類特別措置法
企業は、有害物質の使用状況や化学物質の取扱量を把握し、社外(工場外)への排出状況や環境への影響を把握しなければなりません。国や地方自治体が定める規制基準や自主目標にもとづき、よりエコな企業運営へと改善し続けることが求められます。
細かなところでは、有資格者の選定・配置を怠って、有害な薬品を無資格者に取り扱わせていた場合はコンプライアンス違反となります。
環境に関する法令に違反すれば、企業の評判を落とすだけでなく、社員や近隣住民の健康に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。行政措置や賠償金が課せられることにもなりかねません。
自社の事業に関連する法令を調べ上げ、内部監査を定期的に行いましょう。
不祥事の事例から学ぶコンプライアンス・リスク
主なコンプライアンス・リスクは以下の4つが挙げられます。
- 社会的な信用の失墜
- 行政からの処分や罰則
- 損害賠償、株主代表訴訟
- 企業風土の荒廃
不祥事を起こしてしまうと企業のイメージ・信用を大きく損ねてしまいます。
重大なコンプライアンス違反に関しては、行政からの処分や罰則が課されることも多くあります。企業の取締役や監査役などが法的責任を問われたり、損害賠償に発展した事例も少なくありません。
コンプライアンス対策をせずに経営に大きなダメージを与えた3件の国内事例を紹介します。
食品偽装:賞味期限切れの原料使用で消費者の信頼を失い、営業停止と巨額赤字に発展
大手洋菓子メーカーでは、シュークリームの原料に消費期限切れの牛乳をを使用していたとして大きな問題となりました。
その件の調査において、、問題のシュークリーム以外の商品にも消費期限切れの食品を7回にわたり使用していたことが報告されています。
原因
消費期限切れ牛乳を使用した原因として、当該企業では次の3つを挙げています。
- 衛生・品質管理を勘や経験に依存
- コーポレートガバナンスの欠如
- コストダウンへの過剰な意識
牛乳に表示されるのが消費期限ではなく賞味期限であることと、加工段階で加熱することをふまえ、「経験則上の確信」により品質上問題なしとの判断がされていました。
また、コーポレートガバナンスの欠如が要因とされています。事業部の独立性と職人の勘による生産体制により、環境や状況に応じた適切な対応ができなかったということです。食品製造業に詳しくないコンサルティング企業へ業務委託するという誤ちも指摘されました。
会社が掲げていたコストダウンの方針と環境問題への配慮から、廃棄に抵抗があったという事情もあります。牛乳を使ったもう別の商品にトラブルがあり、牛乳の余剰が生じていたことも直接のきっかけとされています。
結果
本食品偽装は大々的に報道され、「消費期限切れ」、「隠蔽」といった言葉とともに事件が広く知れ渡りました。メディアに大きく取り上げられたことで、社会的な信用が失墜してしまい、信頼回復に多大な時間を要する結果となりました。
不祥事発覚後、問題のあった5工場の操業を停止し、小売店およびレストラン計890件は休業となります。これにより2007年3月期の連結決算では、当期損失が67億円に達しました。返品商品の在庫廃棄ややフランチャイズ先への休業補償により、特別損失は約140億円に上ります。
赤字補てんのために本社ビルを売却した同社では、つぎに安全な生産ができる体制を整えるべく大手食品メーカーの資本業務提携をし、連結子会社となりました。業務を再スタートさせたあとも、フードセーフティの指導と監査を継続しています。
参考:信頼回復対策会議最終報告書
参考:不二家、3月期連結決算で最終赤字67億円に
参考:不二家、23日から洋菓子販売再開
過労自殺:月100時間を超える残業で新入社員が自死、約1億6,800万円の和解金支払い
2015年12月、大手広告代理店の新入社員が違法な残業によって自死しました。当時24歳だった当社員は、入社して約半年後の使用期間明けの10月から急激に業務量が増え、12月にかけて長時間労働を強いられていました。本件は「労働基準法違反」として略式起訴を受けています。
本件のほか2000年にも、社員が長時間労働によって精神障害を患い、入社後約1年5ヶ月後に自死しています。遺族の損害賠償請求により、最終的に本件は約1億6,800万円の違約金で和解となりました。
原因
当該社員は、月100時間を超える残業を強いられていました。あわせて、責任感や職場の人間関係などが強い精神的ストレスになったことが自死の原因だとされています。
「休日返上で作った資料をボロくそに言われた。もう体も心もズタズタだ」、「もう4時だ。体が震えるよ…しぬ。もう無理そう。つかれた」などの心境が本人のSNS上で投稿されていたことが確認されています。
当該企業では、たびたび是正勧告を受けるほど長時間残業が常態化していました。これは、社員の多くが労働時間を過少申告していたためです。申告時間が社内規定の枠を超えないよう、上司からプレッシャーがあったことが確認されています。
結果
事件の発覚を受け当該企業は、労働基準法違反の罪で略式起訴され、経済産業省との新規契約も1ヶ月間停止されました。この1ヶ月間、イベントや市場調査の入札へ参加ができませんでした。
先に挙げた2,000年、2015年の事件のほかにも、当該企業では社員が自死する事件が起きています。
度重なる勧告を無視し、残業を看過する社内の風土や体制を見直さなかったことが、大きな問題に発展してしまいました。さまざまなメディアで取りざたされ、ブラック企業のイメージが付く結果を招いています。
参考:残業「大半の社員が過少申告」電通を書類送検へ/日本経済新聞
汚水排出:水質汚濁防止法の基準を超える汚水を流出で実質的な営業停止へ
ある廃棄物処理会社は、名古屋市にある工場から水質汚濁防止法の基準を超えた汚水を名古屋港へ排出していました。元社長と同社は同法違反罪で名古屋地検に起訴され、産業廃棄物の収集運搬許可を取り消される処分を受けました。
なぜ汚水排出に至ったのか原因、結果を解説します。
原因
直接の原因は、産廃物を堆肥化するプロセス上で出た汚水を処理していなかったことです。
結果として、2017年11月から2019年2月にかけて12回にわたり、基準を超えるCOD(科学酸素要求量)を名古屋港へ排出してしまいました。
間接的な原因は、売上高とほぼ同額の負債を保持していたことだと考えられます。2018年3月の売上約19億円に対して、負債総額は約20億円あったとのこと。
経営状況が苦しいときに、コンプライアンス違反が起きやすくなります。一次的にルールを無視・軽視することで、順守するためにかけていたコストが浮くためです。
少しくらいの違反なら問題ないと考えたり、適切な相談先を得られない状況を作らないことが重要です。
結果
会社の前代表ら関係者は愛知県警に逮捕され、裁判を経て事業の取り消し処分を受けています。その後、取引先からの損害賠償請求を受けたことをきっかけに、破産申請し、倒産に至りました。
コンプライアンス違反・不祥事が起こる仕組み
人が不正をする仕組みは、「不正トライアングル」にもとづくとされています。
具体的には、「機会」「動機」「正当化」の3つの要素が揃ったとき、不正に至る確率が高いとされる理論です。どの段階でも早めに不正の芽を摘まなくてはいけません。
1.コンプライアンス違反につながる環境・機会がある
社員の意識低下や法令に関する知識不足は、コンプライアンス違反につながります。
自分の行動が企業にどのような影響を及ぼすのかといった社員の意識がなければ、私利私欲で不正に走りやすくなります。
不正を防ぐには、社員の意識を高めること、法令について一から勉強する機会を設けることが必要です。
2.トリガーとなる状況や出来事が起こる
現金が目の前にあって盗みやすい状況であったり、社員同士のコミュニケーション不足で誰からも業務を監視されていないなど、直接的なきっかけにより不正が起きます。
トリガーとなる状況や出来事を防ぐには、不正しやすい状況を作らないことが肝心です。日頃からコミュニケーションを取り他者に関心の目を向けやすい状況も作る必要があります。
3.仕組み不全により違反を未然に防げない
内部統制が徹底されていないと、社内の問題を早期に発見し、不正を未然に防ぐことが難しくなります。
社内ルールを規定している企業は多いですが、全社員が社内ルールを理解しているでしょうか。社内ルールや業務プロセスを順守するための仕組みも構築されているでしょうか。
不正を未然に防ぐには、徹底した内部統制と、社員教育などによる全社の意識改革が必要です。
企業がすべきコンプライアンス対策の方法とフロー
コンプライアンス対策として、企業はどのようなフローで進めるべきかまとめています。
1.リスクを洗い出し内部統制の仕組みを見直す
まずは自社内にひそむ「コンプライアンス違反につながるリスク」を洗い出し、内部統制の仕組みを見直すことから始めます。
あらゆるリスクを洗い出すには、法律に沿ったチェック項目を作成し、社員にアンケートを取りましょう。たとえば残業時間や残業代に関する質問を投げかけ、労働面の課題を見つけることにつなげます。
また、業務プロセスの仕組みやルールが定まっていても、その通りに運用していなければ意味がありません。管理上の不徹底があれば、管理者の意識とともに正す必要があります。
コンプライアンス意識の高い社員に集まってもらい、ワークショップを開くのも有効です。潜在リスクを洗い出すためワークショップ形式でリスクマネジメント研修を実施・提供している企業もあります。
参考:世界で通用するコンプライアンス活動 を「自分事」にするための「コンプライアンス・ワークショップ」
2.コンプライアンス・マニュアルを作成する
社員が遵守すべきルールをコンプライアンス・マニュアルとして作成します。おもに盛り込むべき視点は以下の3点です。
- 企業理念の再掲
- 行動規範
- 行動基準
企業が経営において大切にしている理念を改めて社内に浸透させる必要があります。お客様や社会に向けて、自社はどのように貢献すべきかを再確認しましょう。企業理念は、コンプライアンスを含めた社員の言動の大もとになります。
続いて、ある状況下における指針を行動規範のなかで明確にしましょう。たとえば大手総合商社の丸紅では、コンプライアンス・マニュアルのなかで、以下の規範を掲げています。
『自分で考えて、判断し、行動する、そして結果に対して責任を取る』
『正義と利益のどちらかを取らねばならない状況に遭遇したら、迷わず正義を貫け』
指針を明確にすることで、社員1人ひとりが自分の言動を顧みやすくなっています。
作成した行動規範をもとに、具体的な行動基準を作成します。現場レベルに落とし込めるよう、順守すべき法令や禁止事項を行動基準に明文化していきます。
ここまでマニュアルに定めることで、全社員が企業理念にもとづいた適切な行動・判断をしやすくなります。
3.コンプライアンス研修を実施する
マニュアル作成後は、社内に浸透させるために、定期的な研修や勉強会を行いましょう。
研修や勉強会の際には、ケーススタディでコンプライアンスの違反例や業務プロセス上のリスクを取り扱うと習得が早くなります。講義のなかにグループワークの時間を作るなどして、コンプライアンス対策に社員も積極的に取り組める形を取りましょう。
ワークフローの見直し
ITやクラウドのツールを導入することで、ワークフローの透明性を確保しましょう。業務の流れや担当者がリアルタイムで共有でき、作業や申請の抜け・漏れを防ぎます。
また押印や契約書も電子化していけると良いでしょう。電子契約サービスなどを活用すると、契約書の原本データがバックアップされるので契約書保全の確実性が高まります。
たとえば、「クラウドサイン」を利用すれば契約書の電子化によってWeb上で管理でき、改ざんや紛失を防止します。
今回は特別にクラウドサインのサービス概要資料を用意しました。システムの導入で防げるリスクなので、この機会にぜひダウンロードしてみてください。
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コンプライアンスに関する社内の相談窓口を設置する
社内の問題点をを早期に拾い上げるため、社内に相談窓口を設置しましょう。
2019年の消費者庁による調査では、不正の発見経緯として第一位が「通報」で59.8%に上っています。違法行為の抑止や自浄作用の向上を挙げる事業者も、49.4%と高い数字に落ち着きました。
労働者が不利益を被らずに内部通報できる環境設定も必要です。「公益通報者保護法」にもとづき、解雇や減給、降格、自宅待機命令、雑事への専従などの対応から内部通報者を守る仕組みを構築しましょう。
コンプライアンス対策を成功させる3つのコツ
コンプライアンス対策を成功させるためには何が重要なのか、3つのコツを解説します。
企業のトップが強い意思を示す
階層別にコンプライアンス研修を行う
事業と法令の両方に詳しい専門家を巻き込む
1.企業のトップが強い意思を示す
コンプライアンス違反が起こりにくい企業体制を築くためには、経営トップが強い意思をもつことが重要です。
コンプライアンス違反をしない、起こさないというトップの強い意思が、コンプライアンス違反の抑止力となります。 経営理念や行動規範を、トップから社内に定期発信するのも効果的です。
形だけ対策を取るのは意味がありません。法令を守り、コンプライアンス違反のない企業にするという強い意思を社員に示すことで、おのずと社員も意識が高まっていきます。
2.階層別にコンプライアンス研修を行う
職位によって業務に関連する法令や責任範囲が異なります。階層別に合った研修を行うとよりコンプライアンス対策が効果を発揮しやすくなります。
全社的な勉強会以外に、階層別にコンプライアンス研修を行う企業や研修会社もあります。管理職および一般社員、アルバイト別の研修ポイントを解説します。
管理職:監督不行届きのリスクを防ぐ
コンプライアンス意識に基づいてどのような対応をするべきか、浸透させる上での注意点などを学びましょう。
管理職はコンプライアンス・マニュアルの理解を深め、周知、浸透させていく立場です。監督不行届きのリスクを防がなければいけません。
自身もコンプライアンス・マニュアルを再確認する機会でもあります。
一般社員:法令の知識不足やうっかりミスを防ぐ
一般社員は、コンプライアンスの重要性を理解することが最重要です。そのうえで日々の業務においてリスクに気付けるようにしなくてはいけません。
コンプライアンス意識を高めることだけではなく、職務と関連する法令の知識も必要です。どのような言動がコンプライアンス違反にあたるのかを理解しましょう。
誰しもがミスを犯すことはありますが、そのミスが自身にも企業にも命取りになる可能性があります。うっかりミスを防げるよう日頃から社会人としての意識を持ちましょう。
アルバイト:現金・情報の取り扱いやモラルハザードを防ぐ
アルバイト向けにはより具体的に、現金・情報の取り扱い方を学んでもらい、モラルハザードを防ぐための意識を持ってもらうことが必要です。
たびたいb問題となるのが、主にアルバイトが職場の備品などを使って悪ふざけをした写真や動画をSNSに投稿するいわゆる「バイトテロ」です。
SNSに投稿すれば瞬く間に拡散され、勤務先に多大な影響が及ぼされます。企業としてのイメージも悪くなり、店舗への客足、売上が減少する可能性もあります。
具体例を使った研修や、従業員に対してSNSのリスク教育が効果的です。
3.事業と法令の両方に詳しい専門家を巻き込む
事業に詳しい社員を内部監査室に配置しコンプライアンスの専任者を育てたり、法令に詳しい専門家や弁護士に頼ったりしましょう。
経営者への権限集中しや行き過ぎた利益主義は、重大な問題につながります。第三者の知見を借りることで、社風を外から変えていきやすくなります。
管理職や適任と考えられる社員には、コンプライアンス・オフィサーの資格を受験させることも検討してみましょう。この資格は、コンプライアンスの専門家に相応しい深い知識と判断力を認めるものです。
一般社団法人コンプライアンス推進機構で認定試験を行っています。
まとめ
コンプライアンス違反につながるきっかけは大きく9種類あり、不正や不祥事を回避するためにも要点を押さえて対策をする必要があります。
社内に潜むリスクに気づかずに放置してしまうと、大きな不祥事につながります。損害賠償の支払いや法令違反の罪を受けて、社会的信用を失った企業も多くあります。最悪の場合は倒産に陥ることもあるため、潜在的なリスクにいかに早く気付けるかが重要です。
「コンプライアンス違反につながりやすい環境」「機会」「トリガーとなる状況」が揃うことで不正が起きやすくなります。
社員研修や専門家の協力を得ながら対策を取っていきましょう。
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