DXは、世界中で急速に進展しています。国内外で、各国の政府もデジタルイノベーションを推進するための政策や資金提供を行うなどの後押しも見受けられるようになりました。
ビジネスモデルをデジタル化するDXは、効率化、収益性の向上、競争力強化などの多くのメリットをもたらすものであり、DXに挑戦する企業も多いと思います。
しかし、具体的にはどのように進めればよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、海外企業のDX事例を業界別に10個ご紹介いたします。
海外企業の事例から、アイディアを得たい方はぜひご一読ください。
目次
- 1.DVDレンタル業から映像ストリーミング配信事業者へ転身/Netflix
- 2.配送業者の燃費改善を実現したDX事例/ミシュラン
- 3.B2B卸売市場に参入したDX事例/Amazon
- 4.複数の醸造所のデータを統合して需要を予測したDX事例/AB InBev
- 5.デジタル製品の開発に成功した成功事例/LEGO
- 6.機械データを収集し予測保守を実現/Ansaldo Energia
- 7.SaaSモデルへの移行/Adobe
- 8.AI技術で業務をデジタル化/Bank of America
- 9.顧客データを分析して体験を改善/スターバックス
- 10.製造サイクルを短縮しトレンドを迅速に提供/ZARA
- 海外と日本のDXの違い
- まとめ
1.DVDレンタル業から映像ストリーミング配信事業者へ転身/Netflix
Netflixは1997年に創立からDVDレンタルサービスの提供を始め、その後グローバルなストリーミング配信を行う企業へと変化しました。
レンタルや販売という従来型のビデオ店に代わり、オンデマンドの映像ストリーミング配信という新しい形態を行うことで、現在では約316億ドル(2022年)の評価額を持つ企業に成長しました。
成功の裏には他にも、「オリジナルコンテンツ制作への投資」や、「データ駆動型のパーソナライズされた情報をレコメンド」などの差別化戦略も大きく影響していると考えられます。
参考:8 SUCCESSFUL DIGITAL TRANSFORMATION CASE STUDIES: TOP EXAMPLES IN 2023
2.配送業者の燃費改善を実現したDX事例/ミシュラン
タイヤメーカーとして世界的に知られるミシュランは、2013年にトラックの燃料消費を削減するためのEFFIFUELというサービスの提供を開始しました。
EFFIFUELとは、タイヤリースのサービスで、燃費が改善された場合に走行距離に応じた料金が発生し、目標を達成できない場合には払い戻しを行うというビジネスモデルです。
具体的には、トラックに専用の装置を取り付けることで、ドライバーの運転習慣や、燃料消費状況に関するデータを収集し、それを元に調整や教育を行い燃費の改善を実現しました。
ミシュランによると、全ヨーロッパのトラック会社がEFFIFUELを使用した場合、CO2排出量を9トン削減できるとの予想から注目を集めました。
参考: 30+ Digital Transformation Case Studies & Success Stories [2024]
3.B2B卸売市場に参入したDX事例/Amazon
大手ECモールのAmazonは、清掃用品から工業機器まで、2億5000万以上の製品を提供することでB2Bベンダー向けの包括的なマーケットプレイスを作り出しました。
具体的には、マーケットプレイス上で製造業者とバイヤーをつなぎ、製品についての質問に直接答えることを可能にしたり、よりパーソナライズされた製品を提供することで、顧客体験を向上しました。
その結果Amazonは、米国だけで7.2兆ドルから8.2兆ドルと評価されるB2B卸売市場への参入成功を収めました。
参考:8 Examples of Innovative Digital Transformation Case Studies (2024)
4.複数の醸造所のデータを統合して需要を予測したDX事例/AB InBev
バドワイザーやヒューガルデンなどの世界的なビールを販売するAB InBevは、独立した醸造所のネットワークを統合しつつクラウド化を行いました。
そして、マーケットプレイス「BEES」も立ち上げ、需要予測のために世界中のデータを収集しました。
その結果AB InBevは、中小企業が夜遅くに商品を購入することを発見し、午後6時以降に関連商品のプッシュ通知を行うことで売上の増加と顧客満足度の向上に成功しました。
2021年6月末時点で、BEESは月間180万人以上のアクティブユーザーを獲得し、75億ドル以上の総商品量を捕捉しています。
参考:Digital Transformation Examples: 3 Company Case Studies
5.デジタル製品の開発に成功した成功事例/LEGO
子供から大人まで幅広い層に支持されている世界的な玩具メーカーのLEGOは、近年デジタル製品の展開に成功しています。
LEGOは映画の放映を機に、映画の内容にリンクしたモバイルゲームを開発したり、デジタル製品への投資を行うなど、エンターテインメントとテクノロジーの融合に挑戦しました。
その結果、顧客体験の向上によりブランド力が向上し、一時期の低迷から一転反発し、市場での地位を再確立することに成功しました。
参考:8 Examples of Innovative Digital Transformation Case Studies (2023)
6.機械データを収集し予測保守を実現/Ansaldo Energia
イタリアのエネルギー生成システム企業、Ansaldo Energiaは、「Lighthouse Plant」プロジェクトを通じて、ジェノバにある2つの製造拠点のデジタル変革を行いました。
プロジェクトの主な目的は、製造プロセスの完全なデジタル化と、機械データの収集に基づく予測保守の導入です。
機械の相互接続に重要な役割を果たし、生産のリアルタイムモニタリング、製品納期の短縮、効率と製品品質の向上を目指しました。
7.SaaSモデルへの移行/Adobe
Adobeのデジタルトランスフォーメーションは、約10年にわたる期間を経て、クラウドへの移行を実現しました。
この変革の重要な要素として、ウェブアナリティクス会社Omnitureの買収が挙げられます。
この買収により、Adobeは元々のボックス販売型ソフトウェア事業から、サブスクリプションベースのクリエイティブクラウドモデルへとビジネスを転換しました。
この戦略は、Adobeがクラウド企業としての地位を確立し、クリエイティブツール(Photoshop, Illustratorなど)のソフトウェア・アズ・ア・サービスモデルへの移行を実現しました。
参考:Adobe’s decade of digital transformation to the cloud
8.AI技術で業務をデジタル化/Bank of America
Bank of Americaはフィンテックと戦略的ICT投資を通じてデジタルトランスフォーメーションを実施しています。
具体的には、AI技術を用いて業務をデジタル化し、AI駆動のデジタルアシスタントの提供など多岐にわたります。
また、株式取引の決済時間を短縮したり、カナダでの商業クライアント向けグローバルデジタル送金サービスを開始するなど、複数のB2C支払いとC2B回収を効率化する取り組みを展開しています。
9.顧客データを分析して体験を改善/スターバックス
スターバックスは、大規模なデータの収集と分析を積極的に行い、それをマーケティングとセールスに活用しています。
スターバックスのモバイルアプリとリワードプログラムは、顧客のニーズに焦点を当て、便利で行列を避けることを提供したり、強化学習技術を活用してパーソナライズされた体験を提供し、IoT対応の機器を使用してコーヒーの品質を監視しています。
さらに、スターバックスはコーヒーの供給チェーンをブロックチェーンで透明にし、顧客にコーヒーの起源に関する情報を提供しています。
この成功からは、データ活用、モバイルテクノロジー、パーソナライズされた顧客サービスの重要性、パートナーシップの価値、ソーシャルメディアの効果的な活用など、多くのビジネス戦略を学ぶことができます。
参考: Starbucks’ Digital Transformation – A case study – Scaling Positive Concepts
10.製造サイクルを短縮しトレンドを迅速に提供/ZARA
アパレルブランドのZARAは、伝統的なファッション小売業者が季節ごとに運営する中、デジタル化とデータ分析を駆使し、製造サイクルを3週間未満に短縮し、トレンドを迅速に提供することに成功しました。
これにより、他の小売業者が競争しようと模倣し、ザラは生産サイクルをさらに最適化しました。デジタル技術を活用し、在庫を最小限に抑え、消費者の需要に合わせて商品を供給しています。
参考: Digitalization of Zara and Fast Fashion
海外と日本のDXの違い
海外と日本のDXでは注力するポイントが異なります。
海外のDX事例では顧客体験の改善・顧客満足度の向上を重視しています。
今回紹介した事例ですと、オンデマンドの映像配信を開始したNetflixや、B2B市場において製造業者とバイヤーを直接つないだAmazon、顧客にパーソナライズされた提案やIoTを用いてコーヒーの品質を高めることに成功したスターバックスなどが該当します。
一方日本の企業ではDXの目的が業務効率化に留まっています。
業務改善をメインに進めているため、新たなサービス開発や顧客体験の改善への施策へとつながらず、ビジネスの改革へと至っていません。
日本のDXの推進を成功させるには、業務改善を目的としたDXから脱却し、顧客体験の改善・顧客満足度の向上させるためのDXへの切り替えが求められています。
まとめ
本記事では、海外企業のDX事例を業界別にご紹介しました。
海外でもDXは、様々な業界で進められており、事例からは以下のようなポイントが散見されました。
- 大量のデータを扱っている
- ビジネスモデルの効率化や変革を行っている
- AI等を用いた予測を行っている
このようにDXには、企業のビジネスの発展につながる多くのメリットがあり、今回紹介した企業以外にも、多くの企業がDXに挑戦しています。
貴社がDXに挑戦する際に、本記事で紹介した情報が一助となれば幸いです。