事業者が知っておきたい働き方改革関連法の8つのポイントをわかりやすく解説

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「働き方改革」の実現に向けて、2018年に「働き方改革関連法」が公布されました。
それぞれの法律が順次施行される中で、わかりやすく内容や事業者が対応すべき点を知りたい方も多いのではないでしょうか。

働き方改革関連法について、事業者が知っておくべきポイントは以下の8つです。

  1. 時間外労働の上限規制
  2. 勤務時間インターバル制度の導入
  3. 年5日以上の有給休暇取得義務
  4. 月60時間以上の時間外労働に割増賃金率の引き上げ
  5. 同一労働・同一賃金の原則
  6. フレックスタイム制の拡大
  7. 高度プロフェッショナル制度の導入
  8. 産業医や産業保健機能、長時間労働者に対する面接指導等時間の強化

本記事では、働き方改革関連本の基本的な知識と、上記8つのポイント、そして事業者に求められる対応についても解説します。

本記事を読めば、働き方改革関連法の内容や対応策がわかります。

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働き方改革関連法とは

働き方改革関連法とは、労働基準法や雇用対策法などの法律を改正するために定められた法律の通称です。

正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。

働き方改革関連法の目的

働き方改革関連法の目的は、働き方改革の推進です。

働き方改革は「働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」を目的としています。

ワーク・ライフ・バランスの重視や、少子高齢化による生産年齢人口の減少問題など、労働を取り巻く環境は変化しつつあります。こういった変化に対応するためにも、事業者は働き方改革関連法に沿った対応を取り、労働者が働きやすい環境を整える必要があるといえるでしょう。

働き方改革は、大きく3つのジャンルに分けられます。

多様な働き方の実現

1つ目は、多様な働き方の実現です。

この改革には、自分で始業・終業時間を決められるフレックスタイム制の拡大や、専門性の高い労働者を対象とした高度プロフェッショナル制度の導入などが含まれます。

健康的に働ける環境作り

2つ目は、健康的に働ける環境づくりです。

たとえば時間外労働の上限の見直し、勤務時間インターバル制度の導入、年5日以上の有給休暇取得義務、産業医の機能強化などがこれにあたります。

賃金体系の見直し

3つ目は、賃金体系の見直しです。

時間外労働の割増賃金率の上昇、同一労働・同一賃金の原則の適用などがこれに含まれます。


事業者が特に知っておきたい法案改正の8つのポイント

冒頭で、働き方改革関連法について事業者が知っておきたいポイントとして以下の8つを挙げました。

ポイント1.時間外労働の上限規制
ポイント2.勤務時間インターバル制度の導入
ポイント3.年5日以上の有給休暇取得義務
ポイント4.月60時間以上の時間外労働に割増賃金率の引き上げ
ポイント5.同一労働・同一賃金の原則
ポイント6.フレックスタイム制の拡大
ポイント7.高度プロフェッショナル制度の導入
ポイント8.産業医や産業保健機能、長時間労働者に対する面接指導等時間の強化

ここからは、それぞれのポイントについて紹介します。

事業者に与える影響、対応の要不要、対応すべき場合にとるべきアクションについても紹介しますので、自社の対応を考える際の参考にしてください。

ポイント1.時間外労働の上限規制

まずは、時間外労働の上限規制です。この規制は大企業は2019年4月から、中小企業では2020年4月からすでに施行されています。

この規制により、時間外労働は原則月45時間・年360時間以内となりました。

臨時的な特別な事情があり、労使が合意した場合はこのかぎりではありませんが、それでも月100時間未満・年720時間以内・複数月の平均80時間以内を超えてはいけません。

この条件に違反した場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあります。

事業者が取るべき対応

まずは従業員の労働時間の把握です。上限を超えた時間外労働が発生しないように勤怠管理を行いましょう。

同時にIT技術やICTを活用して、業務効率化・生産性向上に努め、時間外労働そのものを減らしていく取り組みも求められます

参考:時間外労働の上限規制|厚生労働省

ポイント2.勤務時間インターバル制度の導入

続いて、勤務時間インターバル制度の導入です。

勤務時間インターバル制度とは、1日の勤務が終わってから翌日出社するまでの間に、インターバル(一定時間以上の休息時間)を確保する制度です。

生活時間や睡眠時間を確保し、ワーク・ライフ・バランスを保てることを目的とした制度です。

事業者が取るべき対応

勤務時間インターバル制度の導入は事業者の努力義務であるため、罰則はありません

しかしだからといってインターバルを設定しないでいると、努力義務違反として監督官庁から指導を受ける可能性があります。

従業員の労働環境の改善、健康確保や人材定着の面から考えても、勤務時間インターバル制度を導入する必要があるでしょう。

インターバルの長さについては規定はありません。

参考までに、厚生労働省が支給している「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」では達成を目指す成果目的に「休息時間9時間以上」を設定してます。

参考:勤務時間インターバル|厚生労働省
参考:勤務間インターバル制度 導入・運用マニュアル|厚生労働省

ポイント3.年5日の有給休暇取得義務

3つ目のポイントは、年5日の有給休暇取得義務です。

年次有給休暇が10日以上付与される労働者に対し、使用者は年5日、時季を指定して年次有給休暇を付与しなければいけません

また、対象となる労働者の条件や時季指定の方法などについての決まりを就業規則に明記し、なおかつ労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しておく必要もあります。

事業者が取るべき対応

上記の通り、年5日の有給休暇を付与する必要があります

上記規定に違反すると30万円以下の罰則の対象になります。

なお時季を指定する場合は、まず労働者に取得時季についての意見を聞き、その意見を尊重して指定するよう努めることになっています。

たとえば事業者側から強制的に「この日は閑散期なので有給休暇を取りなさい」と指示することはできませんので、注意してください。

年次有給休暇取得計画を作成し、各労働者の取得状況を管理すると、漏れなく計画的に年次有給休暇を取得させやすくなります。

参考:年次有給休暇の時季指定|厚生労働省

ポイント4.月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ

月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率が、現行の25%以上から50%以上に引き上げられます

50%で計算するのは60時間を超えた分のみです。

たとえば月70時間の時間外労働が発生した場合は、60時間分は割増賃金率25%、60時間を超過した10時間分は割増賃金率50%で計算します。

なお、深夜労働をさせた場合は、深夜労働の割増賃金率25%に時間外労働割増賃金率50%を合計し、75%割り増しして賃金を支払わなければいけません。

事業者が取るべき対応

中小企業の場合、割増賃金率の引き上げは2023年施行です。そのため、現在はまだ対応していない事業者も少なくないでしょう。

しかし、2023年の施行に向けて準備は進めておかなければいけません。

長時間の時間外労働が常態化している事業者は、時間外労働の割増賃金率の引き上げにより、特に人件費について大きな影響を受けることが予想されます。

業務効率化を積極的に行い、時間外労働を削減する取り組みは欠かせないでしょう。

適切な人員配置を行い、IT化やICTを活用した生産性向上に努める必要もあります。

参考:改正労働基準法のあらまし|厚生労働省

ポイント5.同一労働・同一賃金の原則

5つ目のポイントは、同一労働・同一賃金の原則の適用です。

従来、同じ仕事をしている正規労働者・非正規労働者の間で賃金や待遇に格差があることは珍しくありませんでした。

この格差をなくし、正規・不正規労働者間の合理な待遇差や差別的な取り扱いを禁止するのが同一労働・同一賃金の原則です。

また、非正規労働者は、自分の待遇が正規労働者と異なると感じた場合、事業者にその理由の説明を求めることができます。
説明を求められた事業者は、説明しなければいけません。

事業者が取るべき対応

事業者には、以下の対応が求められます。

  • 職務内容や配置の変更の範囲が同じ場合、正規・非正規の待遇を賃金含め同一にする
  • 職務内容や配置の変更の範囲、スキルや経験などの事情が違う場合は、その違いに応じた範囲内で待遇を決定する

正規・非正規両方の従業員を雇用している事業者は、賃金体系を雇用形態ではなく職務内容やスキル・経験に応じたものに改める必要があります。
非正規労働者から待遇格差について説明を求められた場合は、きちんと説明できるように準備しておきましょう。

参考:同一労働同一賃金|厚生労働省

ポイント6.フレックスタイム制の拡大

次のポイントは、フレックスタイム制の拡大です。

フレックスタイム制では、一定期間(清算期間)の労働時間を決め、その範囲内で、労働者自身が毎日の始業・就業、勤務時間を決めます。

従来、清算期間は最長1カ月間でしたが、働き方改革関連法により最長3カ月間に拡大されました。

たとえば、1カ月160時間という労働時間の中でやりくりしていたのが、2カ月320時間、3カ月480時間といったより長いスパンでやりくりできるようになります。

そのため、たとえば「今月は忙しいので180時間働くけれども、来月は140時間だけ働けばいい」というように業務量に合わせて労働時間の調整ができます。

事業者が取るべき対応

フレックスタイム制を導入していて、清算期間を1カ月を超えて設定したい場合、事業者はまず労使協定届を所轄の労働基準監督署⻑に届け出なければいけません。
届け出なかった場合は、30万円以下の罰金が科せられることがあります。

また清算期間が3カ月の場合は、1か月ごとに1週間あたり50時間を超えて労働させてはいけないなどの決まりもあります。

フレックスタイム制の導入・拡大を検討している事業者は、厚生労働省が公開している手引きなどを見て確認すると良いでしょう。

参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省

ポイント7.高度プロフェッショナル制度の導入

続いてのポイントは、高度プロフェッショナル制度の導入です。

高度プロフェッショナル制度とは、一定の条件を満たした労働者を対象に、本人の同意を前提として、労働時間や割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者は、以下の条件を満たす必要があります。

  • 職務の範囲が明確である
  • 従事した時間と得た成果との関連性が通常高くないと認められる業務である
  • 年収1075万円以上である

なお、具体的な業務は「労働基準法第四十一条の二第一項の規定により同項第一号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」にて、金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリスト業務、コンサルタント業務、研究開発業務の5つが定められています。

事業者が取るべき対応

高度プロフェッショナル制度を導入したい場合は、事業者はまず社内で労使委員会を設置します。

そこで、対象の範囲になる業務や対象労働者の範囲などを決め、所轄の労働基準監督署長に届け出なければいけません。

厚生労働省が制度について解説した資料を公開しているので、導入の際は参考になるでしょう。

参考:⾼度プロフェッショナル制度わかりやすい解説|厚生労働省

ポイント8.産業医や産業保健機能、長時間労働者に対する面接指導等時間の強化

8つ目のポイントは、産業医や産業保健機能、長時間労働者に対する面接指導等時間の強化です。

従業員が健康的に安心して働ける職場づくりのために、産業医に労働者の必要な情報を提供することが求められています。

事業者が取るべき対応

具体的には、事業者は産業医に以下の3つの権限を付与しなければいけません。

  • 事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること
  • 労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集すること
  • 労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること

労働者が安心して産業医に相談し、産業医が適切に対応できる体制の構築も必要です。「どんな産業医にどんな内容を相談できるかを社内に掲示する」「プライバシーを保って相談できる場所を確保する」などの対応が求められます。

また、労働者の労働時間も把握しなければいけません。勤怠管理システムなどを使って客観的に計測できる体制を整え、長時間労働をしている労働者に対しては適宜指導を行う必要があります。

時間外労働・休日労働がつき80時間を超えた場合は、該当の労働者にその旨通知を行います。さらに疲れが目立つようであれば、本人の申し出により産業医の面接指導を受けさせる必要があります。

このポイントの目的は、労働者の心身の健康維持にあります。事業者には、健康を維持するために労働時間を把握し、産業医に相談しやすい状況を整え、長時間労働に対して速やかに対応することが求められています。

参考:働き方改革関連法により2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます|厚生労働省


まとめ

働き方改革関連法の要点と、事業者がすべき対応を8つのポイントにまとめました。

ポイント1.時間外労働の上限規制
ポイント2.勤務時間インターバル制度の導入
ポイント3.年5日以上の有給休暇取得義務
ポイント4.月60時間以上の時間外労働に割増賃金率の引き上げ
ポイント5.同一労働・同一賃金の原則
ポイント6.フレックスタイム制の拡大
ポイント7.高度プロフェッショナル制度の導入
ポイント8.産業医や産業保健機能、長時間労働者に対する面接指導等時間の強化

働き方改革関連法の要点は「多様な働き方の実現」「健康的に働ける環境作り」「賃金体系の見直し」の3つです。

この3つを実現するため、事業者には従業員の勤務時間の把握や休暇の取得、賃金体系の見直しなどの対応が必要です。

違反に対しては罰則が科される場合もあるため、速やかな対応が求められます。

少子高齢化、生産年齢人口の減少という時代の変化に応じ、よりよい労働環境を整える必要性をしっかり理解し対応していきましょう。