1on1は上司と部下が1対1で行うミーティングで、主に部下の生産性向上や上司・部下間での信頼関係の構築、エンゲージメントの向上を目的に実施します。
しかし1on1で部下の言葉や思考を引き出そうにも、部下から「話すことがない」と言われて話題に窮し、思うような1on1を実現できていないという方も多いです。
1on1で部下から「話すことがない」と言われるのは、上司・部下間で信頼関係を構築できていないことが原因です。
実際に1on1で話すべきトークテーマは、プライベートに関することから今後のキャリア形成など豊富にあります。部下との関係性を考慮してトークテーマを決めると良いでしょう。
今回は1on1で「話すことがない」と言われてしまう原因やトークに困らないために覚えておきたい考え方、話すべきトークテーマや事前アジェンダの作り方、話を引き出すテクニックなどについてまとめています。
この記事を読むことで話す内容に困らずに、本当に意味のある1on1を実施できるようになります。
目次
部下から「話すことがない」と言われるのは、信頼関係ができていないから
部下から「話すことがない」と言われる最大の理由は「信頼関係の不足」です。
1on1で自由に気兼ねなく意見を発信するには、相互の信頼関係が前提としてあります
十分な関係性ができていないと、「変なことを言って怒られたくない」「呆れられたりしないかな……」という不安が拭えず、自由な発言が阻害されてしまいます。
1on1を実施する際、部下との関係性を含めてトークテーマを調整することが大切です。
1on1を実施する際の前提の考え方
1on1を実施する際の前提として、以下の2つを意識することで話すことに困りにくくなります。
- 1on1は上司が話す場ではない
- 1on1はプライベートから業務まで深く部下を理解するためのツール
1on1は上司が話す場ではない
1on1は「自分の経験」「アドバイス」などを部下に教える場ではなく、あくまで部下の思考を深堀するための時間です。トークの主体は上司ではなく、部下です。
部下が上司の聞き役になってしまうと、本来引き出さなければならないはずの「悩み」や「改善して欲しい点」などを聞き出せません。
1on1は上司が部下の悩みや考えを聞き出し、自発的に解決できるよう手助けすることが大切です。
1on1はプライベートから業務まで深く部下を理解するためのツール
「自分は部下と十分にコミュニケーションがとれている」と思っていませんか?これは大きな勘違いです。
1on1では話すべき内容はプライベートから直近の業務の課題、会社に対して抱いている課題感、今後のキャリアのイメージなどさまざまです。普段のコミュニケーションだけではわからないことまで深掘りして、部下への理解を進めていきます。
例えば日々の業務連絡やちょっとした雑談だけでは、以下のようなことまではわからないはずです。
- 週末は何をして過ごしているか
- 好きな食べ物
- 今の仕事で辛いことは何か
- 今後どのようにキャリア形成していきたいか
- 今の仕事にやりがいはあるか、あるなら何がやりがいなのか
- 10年後は何をしていたいか
- 会社に対して抱いている課題感、改善してほしいこと
コミュニケーションが十分にとれていると勘違いしていると、1on1を実施するうえで最も大切な「信頼関係の構築」は思うように進まず、会話の内容にも制限が生まれてしまいます。
1on1のトークテーマ
1on1で話す必要があるトークテーマは以下の5つです。
- プライベート
- 心身の健康状態
- キャリア・能力開発
- 現在の業務・会社への課題感
- 戦略・方針の伝達
トークテーマには毎回話すテーマと、状況に応じて話すテーマの2つがあります。
毎回話し合うテーマとしては、上司と部下の関係づくりになる「プライベートに関すること」「心身の健康状態」というテーマです。
部下自身にスポットライトを当て、悩みや不安に寄り添うことで信頼関係を構築できます。
状況に応じて話すテーマは、「キャリア・能力開発」「現在の業務について」「戦略・方針の伝達」というテーマです。
部下の悩みや現状の課題、なりたいキャリアを定期的にヒアリングし、上司が支援できる部分について対話をしていく形です。
参考:1on1ミーティングで話すことは? ネタ・テーマの具体例、上司との面談
プライベート
プライベートに関するトークは相互理解を深めるために有効で、信頼関係を構築するうえでのきっかけとなります。
特に初回の1on1やトークが途切れた時などは、仕事以外の事柄について自由に話してコミュニケーションを促進することが大切です。
ただし、関係が構築できていない状態でプライベートの話をすることに抵抗感を持つ方も相当数いますので、必ずしもトークに組み込まなければならないというわけではありません。
部下が話したくなさそうであれば、無理に部下からプライベートの話を引き出そうとしなくても良いでしょう。
プライベートに関するトーク例
- 休日はどんな風に過ごしてる?
- 最近の趣味、ハマっていること
- 時事ネタ、気になったニュース
- 好きなテレビ、アニメ、食べ物
心身の健康状態
1on1では部下の心身の状況をチェックすることが大切です。トークの中で部下の業務量や睡眠に関する質問を投げかけて、健康状態を確認しましょう。
特にテレワークが増えている昨今では業務時間が不規則になりがちですが、なかなか把握しづらい部分でもあるので、1on1を通して状況を把握しましょう。
心身の健康状態に関するトーク例
- 睡眠時間は確保できているか・よく眠れているか
- 体調面で気になることはないか
- 早朝・深夜などに業務時間が偏っていないか
- 業務量が増えすぎていないか
キャリア・能力開発
1on1では、部下が考えているキャリアや自身の強み・弱みをヒアリングし、自己理解を深めてもらいましょう。
トークの中でチャレンジしたい仕事や部署を聞きだし、今後のキャリアについて考えるきっかけを与えることが大切です。
部下に自己理解を深めてもらうことで、本能的にもっている才能を開花させられます。
上司のできるサポートは、部下が潜在的に抱えている「会社でどうなりたいか」を引き出すことです。
キャリア・能力開発に関するトーク例
- 自分の強み・弱み
- 現在の業務に対するやりがい
- 将来チャレンジしたい仕事・部署
- 理想のキャリア
現在の業務について
現状業務の把握、業務改善をかねて、組織全体の業務状況を確認することも大切です。1on1は一対一で話せるからこそ、普段言いにくい業務の改善点や社内の人間関係、上司への要望を聞き取りやすいです。
1on1で現場の社員たちが内に秘めている会社への不満、問題点などを聞き出し、社内全体の改善に取り組みましょう。
現状業務の改善に関するトーク例
- 現在の対応業務
- 業務の問題点
- 業務の改善点
- 業務に対する個人的な要望
組織全体の改善に関するトーク例
- 人間関係のトラブル
- 無駄だと思う業務の確認
- 組織全体でみた時の課題
- 業務改善に対して上司にして欲しいこと
戦略・方針の伝達
社員に経営陣で決めた戦略・方針を1on1で共有し、理解を促すことも重要です。戦略・方針がどのような経緯・背景で決まったかを部下に伝えましょう。
この時、部下が自分ごととして考えられるよう「経営陣の決定についてどう思う?」と質問することも大切です。自ら考え行動できる部下の育成につながります。
戦略・方針の伝達に関するトーク例
- 経営陣の会議で決まった内容の報告する
- 戦略・方針が決まった経緯を伝える
- 今後の動きについて解説する
1on1実施前に上司・部下それぞれアジェンダを用意する
1on1を実施する前に上司・部下それぞれアジェンダを用意する必要があります。1on1は部下が自分の考えを話さない限り、ただの雑談になってしまう可能性が高いです。
「何か困っていることはない?」と抽象的な質問をしても「実は業務内容について……」と自発的に質問に回答することは少なく、「特にありません」とミーティング自体が終了してしまうことがほとんどです。
1on1で部下の能力を引き出し、成長を促すためにも部下が話しやすい環境を作ることが大切です。
そのために上司・部下にそれぞれのアジェンダを用意しておきましょう。以下では、アジェンダ例をいくつか紹介します。
参考:1on1のアジェンダに含めるべき3つの切り口と制作時の3つのポイント
業務に関するアジェンダ例
上司は部下の仕事をフォローできるよう、業務の進捗について定期的に確認することが必要です。
その際に出てきた課題や悩みを上司が早くキャッチすることで、社内全体の改善につなげることができます。
部下のアジェンダ例
- 前回の1on1での取り決め事項の進捗確認
- 次回の1on1までの業務目標
- 業務に関するフリーディスカッション
上司のアジェンダ例
- 良かった点、今後さらに良くするためのアドバイス
- 業務に関するフリーディスカッション
キャリアに関するアジェンダ事例
部下の今後のキャリアについて、まずはお互いに認識をすり合わせます。
共通の認識をもった上で、どうすれば部下が望むキャリアを進めるのか上司がアドバイスしてあげることで、部下が現状どういう姿勢で仕事をするべきか理解することができます。
部下のアジェンダ例
- 将来なりたい姿
- なりたい姿と現状の確認
- 現状の課題と今後の取り組みについてフリーディスカッション
- 成長するための取り組み
上司のアジェンダ例
- なりたい姿になるためのアドバイス
- 客観的に見た部下の現在の姿についてアドバイス
- 現状の課題と今後の取り組みについてフリーディスカッション
プライベートや社員の人間性に関するアジェンダ事例
プライベートの話をしてただ親睦を深めればいいというわけではなく、できるだけ部下の価値観を知り、モチベーションの上げ方やストレス防止の仕方について上司が理解することが重要です。
部下の人となりがわかるまでディスカッションを重ね、仕事でパフォーマンスを発揮できるようフォローしてあげましょう。
部下のアジェンダ例
- 最近あった面白かったこと、悲しかったこと
- 趣味や、熱心に取り組んでいること
- 大切にしている価値観やこだわりについて
上司のアジェンダ例
- 部下のアジェンダに関するフリーディスカッション
部下から「話すことがない」と言われたときの3つのテクニック
1on1時に部下から「話すことがない」と言われてしまった時に使いたい、会話を生み出す3つのテクニックについて解説しています。
参考:良い1on1・ダメな1on1の違いとミーティングの質を高める12のポイント
オープンクエスチョンを使って話を展開する
1on1の際は5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)で質問をするオープンクエスチョンで話を広げましょう。
「はい」か「いいえ」で終わってしまうクローズクエスチョンでは、そこから話が広がらずに終わってしまいがちです。
そのため、できるだけ部下が自由に考えて回答できるオープンクエスチョンを活用し、コミュニケーションを取ってみましょう。
自分のビジョンや考えを伝える
部下からの言葉を引き出すためには、自分のことを伝えるのが効果的です。
1on1は部下の悩みや課題を引き出すという意識が強くなりがちで、質問攻めしてしまうことがあります。
しかし、上司からビジョンや考えを伝えて意見を言いやすい空気を出すことで、部下からの正直な発言を聞きやすくなります。
まずは自分のことを伝えて、部下の考えを引き出しましょう。
参考:1on1で部下が「話すことがない」と言う場合、上司はどうすればいいのか?|ヒョーカラボ
過去の1on1の内容を振り返る
ほかにアジェンダがなかった場合は、過去の1on1の内容を振り返ることもおすすめです。
過去の1on1で部下が話した悩みや相談に対して、そのあと進捗はあったか、何か変化はないか確認してみます。
過去の1on1を振り返るためにも、1on1実施時には必ずログを残すようにしましょう。
まとめ
1on1で部下から「話すことがない」と言われてしまうのは、まだ上司・部下間の信頼関係が作れていないことが要因です。
定期的に1on1を繰り返し、関係性を作り上げていくことが優先です。
またトークに困らないようにするためには、以下の2点を事前に意識しておきましょう。
- 1on1は上司が話す場ではない
- 1on1はプライベートから業務まで深く部下を理解するためのツール
1on1では以下のようなトークテーマで話をしていきます。
- プライベートに関すること
- 心身の健康状態
- キャリア・能力開発
- 現在の業務・会社への課題感
- 戦略・方針の伝達
1on1を雑談で終わらせないためにも、事前にアジェンダを作っておきましょう。
部下からうまく話を引き出すためには質問の仕方を変えたり、上司側から自己開示したりといった技術が必要です。
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