8つの海外事例から学ぶ物流DXの最新トレンド

物流業界では、オンラインショッピングによる需要増加などの影響から、デジタルトランスフォーメーション(DX)による革新的な取り組みが世界中で進められています。

しかし、具体的にはどのようなDXが行われているのか気になっている方も多いと思います。

そこで本記事では、世界各国の物流DXの最前線に立つ8つの事例を取り上げ、それぞれの企業がどのようにテクノロジーを駆使して業務効率を高めているのかをご紹介します。

物流業界で行われているDXをキャッチアップしたい方はぜひご覧ください。


1.ドライバー需要の増加と環境の問題に対して自動運転での解決を目指す/Amazon

Amazonは、パンデミックの影響で多くの人々が利用するようになり、倉庫と配送ドライバーの需要が増加したことから、配送の改善に目を向けました。

その結果Amazonは、電動車両を扱うRivianから10年間で10万台の電動デリバリー車両を発注したり、Plusという自動運転技術のスタートアップ企業と提携し、1,000台以上の自動運転トラック向けのシステムを購入し、配送の自動化を目指しています。

またこの自動運転技術は、配送にかかる人的コスト削減や安全性の向上だけでなく、炭素排出量と燃料費の削減への貢献も期待されています。

参考:Amazon Goes All-In On Truck Safety With Autonomous Driving Company Plus


2.プラットフォームで配送のコミュニケーションを最適化/Bringg

Bringgは、2013年にイスラエルで設立され、デリバリーとフルフィルメントクラウドプラットフォームを通じて、企業がロジスティクスオペレーションを最適化するのを支援している企業です。

Bringgのサービスは、顧客にプラットフォームをインストールすることで、会社のデリバリーマネージャーとドライバーや顧客とのコミュニケーションを可能にします。

これにより配送の効率が向上し、結果として短時間でより多くの商品を顧客に届けることができます。

ラストワンマイルまで影響を与える、小売業者、サプライチェーン、および顧客の間のコネクターであり、今後もより広範囲での活躍が期待されています。

参考:How Bringg Solves The Last Mile In Supply Chain Delivery


3.ドローンを活用した物流DXの事例/ドミノ・ピザ

米国のピザチェーン大手、ドミノ・ピザは、2013年にイギリスでドローン(無人機)を使用した配送の試験を行い、2016年にはニュージーランドの店舗から行った世界初のドローンによるピザ配達を行い、再びオセアニアの島国などのいくつかの地域で商用ドローン配達の実現可能性を探求しています。

ドミノ・ピザは他にも様々な形での配送を検討しており、2021年4月にドミノ・ピザは、自動運転車を使用したピザの宅配サービスをテキサス州ヒューストン市で導入しました。

このサービスでは、ニューロという会社が開発した完全自立型の車両がピザの配達を行います。

ニューロの自動運転車は、昨年、運輸省の規制当局から無人の道路走行を承認され、初の完全自立型車両として認定されました。

同地区の顧客は、自動運転車による配達オプションを選ぶことができ、テキストメッセージで車両の位置情報などを受け取ることができます。

また、商品を受け取るための数字コードも提供されます。利用者は、車両が到着した際にタッチスクリーンに数字を入力し、食べ物を取り出すことができます。

参考:米ドミノ・ピザ、自動運転車による配達を開始
   Domino’s is reviving its pizza drone delivery plans
   


4.未使用の倉庫を企業間で貸し出し/Flexe

Flexeは、2013年に米国で設立された企業で、シェアリングエコノミーによるオンデマンドの倉庫貸出サービスを提供しています。

未使用の工業用倉庫を特定し、企業間で共有することで、倉庫の所有者は生産性の低い資産のコストを削減し、他の需要とのニーズを調整できます。

サービス購入者は、自社の変動するストレージニーズに対応するために高額な倉庫を自前で用意する必要なく、未使用の倉庫を利用することができます。

参考:Digital Transformation Is Changing Supply Chain Relationships


5.リアルタイムの貨物追跡と最適化/Flexport

Flexportは、国際的な輸送や物流の分野におけるプラットフォームを提供する企業です。

輸送や貨物の移動に関するプロセスの効率化や、シームレスな国際取引体験の提供を目指しています。

顧客はFlexportのプラットフォームを使用することで、貨物のリアルタイムのトラッキングと在庫管理を行うことができます。

これにより、貨物の位置とステータスを把握しやすくなります。

また、関連団体であるflexport.orgでは、温室効果ガスの排出量を簡単に計算するツールを提供したり、海洋、鉄道、航空、トラック輸送の最適な組み合わせを見つけることにより、温室効果ガスの排出量の削減に貢献するなど、物流による気候変動の問題解決にも取り組んでいます。

参考:Where Logistics Tackles Climate Change


6.需要の急増に反復作業の自動化などで対応/DHLエクスプレス

DHLエクスプレスは、3,200以上の施設で年間約5億個の貨物を輸送する大規模なロジスティクスプロバイダーです。

新型コロナウイルスの影響により、越境ECの需要が急増し、デジタルトランスフォーメーションの取り組みと投資が不可欠となりました。

そこでDHLは、人工知能を活用したシステムでリアルタイム監視により、出荷の動きを迅速に把握し問題に対処したり、伝統的な手作業と反復作業を自動化するなどのデジタル化に取り組みました。

他にも、無人搬送車の活用やチャットボットによるカスタマーサービスの強化など、生産性向上を図り、結果として顧客と従業員の体験を向上させ、オペレーショナルエクセレンスを高めています。

参考:デジタル化がいかにDHLエクスプレスのオペレーションに変化をもたらしたのか


7.ビッグデータの活用とラストワンマイルの最適化/UPS

UPSはビッグデータと予測分析を活用して、業務全般の効率を向上させています。

具体的には、配送車両、仕分けセンター、顧客とのやり取りなど、さまざまな情報源からデータを収集し、データ駆動の意思決定を行っています。

他にもラストワンマイルの最適化に焦点を当て、ダイナミックなルート最適化アルゴリズムは、交通、天候、パッケージ数量などのリアルタイムデータを使用して最適な配達ルートを決定したり、ロッカーや指定の受け取り場所などの代替配達オプションにも投資し、顧客により大きな柔軟性と便益を提供しています。

UPSは、電子商取引の急激な需要増加に対して、これらのDX戦略を用いて勝ち抜くための体制を整えています。

参考: Digital Transformation Revolutionizing the Logistics Industry: DHL vs. UPS


8.グローバル航空ネットワークの最適化と配達業務の改善で大幅なコスト削減/FedEx

FedExも、デジタル技術の活用を通じて、サービス提供の向上に取り組んでいます。

FedExのデジタルトランスフォーメーション戦略は、物流業界全体にデジタル技術の影響が及ぶ中で、迅速なサプライチェーン移動の需要に対応しています。

FedEx Expressでは、グローバル航空ネットワークの最適化が行われ、約4億ドルの節約が期待されています。

また、ピックアップと配達業務を改善することでも年間約3億ドルのコスト削減を予定しています。

参考:FedEx steps up digital transformation to improve service delivery


まとめ

本記事で紹介した8つの海外物流DX事例は、テクノロジーによる業界の変革を如実に示しています。
それぞれが独自の方法でデジタルトランスフォーメーションを進め、物流の効率化、コスト削減、サステナビリティの実現に貢献しています。

自動運転車、ドローン、ビッグデータの活用、プラットフォームの最適化、未使用の倉庫の共有、リアルタイム追跡システムなど、様々な技術が物流の現場に導入され、顧客体験の向上と運営コストの削減が実現されています。

これらの事例は、デジタルトランスフォーメーションの重要性を強調し、未来のビジネスモデルにおける新しい可能性を示唆しています。

物流業界は、今後もデジタル化と共に、さらなる進化を遂げていくことでしょう。