動画広告の事例8選から学ぶ、成果を挙げるために実施すべき3つのポイント

コロナ禍でYouTubeなどの動画視聴が増加しました。それにより、動画広告の需要が急増しています。TVなどのマスメディアによる広告がインターネット広告にシフトして行くなか、動画広告の市場は今後さらに拡大するでしょう。

しかし、動画広告を始めたいが「何をすれば良いか分からない」「成果を上げるコツは?」「運用が上手くいくか不安」と悩まれている方も多いのではないでしょうか。また、動画広告を検討しているが「失敗するのが怖い」という方もいるでしょう。

実際に成果を上げている動画広告の事例を見ていくと、動画広告における「目的」「ターゲット設定」「制作時での注意点」という3つのポイントがあることが分かりました。

目次


動画広告を成功させた事例8選

動画広告で成果を上げるためには、既存の事例から成功ポイントを学ぶことが一番です。下記にアクセス数の増加や売り上げアップなど、成果を上げた成功事例8つを紹介します。

動画広告を制作するにあたって、各企業がそれぞれ、どんな課題を定義し、それに対してどのような施策を検討して動画広告を制作したか。そして、その結果どのような成果を上げたかを解説しています。

事例1.「スキップボタン」を逆利用して、5秒完結の視聴率100%広告を制作【アウディー社】

YouTubeのインストリーム広告では、再生5秒後に「スキップ」ボタンが表示されます。アウディー社は新型8Rをプロモーションする際に、この「5秒でスキップ」される状況を逆手にとって、5秒完結の動画を制作して視聴率100%の成果を上げました。

課題

YouTubeのインストリーム広告を使ってプロモーションする場合「5秒でスキップされる可能性」がありました。また、高級車の宣伝にもかかわらず低予算なので「費用対効果も考慮しなければならない」という課題がありました。

施策

新型R8は高機能を搭載したスポーツカーです。そのハイパフォーマンスを見せるために、冒頭から、わずか3.5秒で時速100kmに加速する性能を走行映像で表現して、視聴者もそのスピードを体感できるしかけにしました。

そして、残り1.5秒で商品名と社名を表示し、スキップされない5秒以内で新車の魅力を伝えました。その後に「もうスキップ可能です」とユーモラスなテロップを出して視聴者の強い関心を引きました。

成果

「スキップ」の可能性をあらかじめ見込んだ5秒完結の動画で視聴率100%を達成しました。また、車の性能を上手くアピールして認知度も上げました。

YouTubeのインストリーム広告は、30 秒以上視聴して初めて料金が発生する(30秒以下の場合は、最後まで視聴)」という課金方法を上手く利用して、多額の広告費をかけずに費用対効果も上げました。

参考:Audi R8: Gone in 5 seconds Case Study|YouTube
   「5秒しばり」を逆手に取ったYouTube動画広告 〜アウディとオペル 2つの成功事例|DIGIDAY

事例2. 実写ではリアル過ぎる介護の過酷な現状をアニメのストリーに! 問合せ件数が前月比の倍増【株式会社ダスキン】

株式会社ダスキンは「ホームインステッド」(現ダスキンライフケアー)という介護支援サービスを、40~60代の女性ターゲットに合わせて分かりやすいアニメのストーリーに仕上げました。認知症や介護での家族の苦しみを、ソフトに視聴しやすく工夫した結果、多くの反響を得て、問合せ件数が倍増しました。

課題

ケアー施設などへのプロモーションでBtoBでの成果はあるが、直接サービスを利用する一般人への認知度が低いという課題がありました。また、認知症の介護は、その過酷な実情から実写ではリアル過ぎることが懸念されました。

施策

直接サービスを利用する40~60代の女性をターゲットにして、動画広告の配信を決定しました。また、実写での生々しさを無くすためアニメでソフトに演出し、サービス内容を分かりやすく伝えました。

成果

プロモーション開始から反響が高く、問合せ件数が前月比で倍増になりました。また、問合せ内容がサービス利用につながる有益なものばかりでした。

参考:ビジネスアニメ制作実績:株式会社ダスキン⏊YouTube
   認知症の辛さやご家族の苦しみを伝えるのに、「アニメCM」は最適でした。|CMサイト

事例3. 若年層をターゲットにしたコンテンツで若い女性のリーチ数87%を達成 韓国下着メーカー【VIVIEN社】

韓国のスタイリッシュな下着メーカーであるVIVIEN社は、自社のターゲット層である20~30代の女性の関心を引くために、恋愛ドラマ仕立てのFacebook動画を制作し、多くの支持を得て、ブランドイメージを浸透させるのに成功しました。

課題

自社ブランドのイメージを、若年層向けに変えたいという課題がありました。

施策

若いカップルを主人公にして、4本の恋愛ドラマシリーズを配信。商品やブランド名の露出は一切せず、ターゲット層である20~30代の女性を惹きつけるコンテンツ作りに専念しました。

成果

閲覧者数は約350万、その内ターゲット層のリーチ数が87%を達成しました。また、コンバージョン率が1.7倍、コンバージョン1件あたりの費用も50%まで削減することに成功しています。

参考:JO IN-SUNG VIVIEN WEB DRAMA ” SECRET HOUSE MATE 1 ” , Song by Love lsland Records|YouTube
   Marketing with a story|Facebook

事例4. 社会問題に対しメッセージ性のある動画を制作 国中を動かし支持率91%の驚異的ブランディングに成功【Whisper India, P&G社】

社会的にタブーとされてきたインドの古い慣習に対し、女性に対する性差別を無くすべく動画広告を制作。社会問題に対し共感を呼ぶメッセージで圧倒的な女性の支持を得て、それまで低かった支持率アップでブランディングに成功しました。

課題

インドでは女性の生理に対して古くから偏見があり、生理期間中の女性は台所に入れないなどの制限がありました。生理用品を扱うウィスパー・インド(P&G社)は、この悪しき慣習を無くすことを課題にしました。

施策

“ピクルスの壺に生理中の女性が触れるとピクルスが腐る“という迷信に対して「TOUCH THE PICKLE(ピクルスに触ろう)」というキャンペーン動画を配信しました。

成果

290万人もの女性が賛同し、国中で女性蔑視に対する議論のきっかけを作りました。これによりウィスパーの支持率が21%から91%へ上昇し、ブランディングに大成功しています。

世界最大級の広告賞「カンヌ・ライオンズ」のグラス部門(性差別や偏見に対する問題提起で社会に貢献した広告)で、グランプリを獲得し認知度も上げました。

参考:P&G Whisper | Touch The Pickle | M&M 2015 | MediaCom India|YouTube
   カンヌライオンズ2015を「動画」で総括。今もっとも評価される、社会を動かす動画は?|Movie Times

事例5. 設立5年で売上げ約100億円を達成!的確なターゲティングで商品の違いをアピール!【Tuft & Needle】

 
高額なうえに品質の悪いマットレス業界で、“誰にとっても快適なマットレス”というコンセプトのもと、マットレスを購入して欲しい層に的確にターゲッティングして、自社商品と他社との違いを効果的にアピール。売上アップに成功しました。

課題

顧客獲得のため、マットレスという見た目だけでは品質の良し悪しが分からない商品において、いかに自社商品と他社との違いを上手くアピールできるかが課題でした。

施策

プールで空気マットに浮かんでくつろぐ男性とベッドで眠る男性をシンクロさせて、自社製マットレスの快適さを効果的にアピールしました。

また、YouTube広告のターゲティングで、自社サイトにアクセスするユーザーや不動産を探しているユーザー、「最高のマットレス」などのキーワードで検索しているユーザーなど、ターゲット設定を重視しました。

成果

的確なターゲティングを行い、品質の違いを上手くアピールすることに成功しました。約60万円でスタートした会社は、わずか5年で売上約100億円を達成、利用ユーザーは100万人を突破しました。

参考:Tuft & Needle Feels Like …|YouTube
   Tuft & Needle |YouTube Ads

事例6. 潜在顧客に購入後のイメージを視覚的にアピール 問合せ件数が85%アップ【リノベ不動産】

「中古住宅の購入」と「リノベーション工事」をまとめて提供するリノベ不動産は、マイホームを検討する潜在顧客に、自社が実際に手がけたリノベーション住宅を視覚的にアピールして、購入後のイメージを湧かせ、訴求に成功しました。

課題

あまり知られていない「中古リノベーション」を、マイホームを検討している潜在顧客にタイミングよくアプローチしたいという目標を立てました。

施策

自社の強みである「中古住宅購入からリノベーションまで一括対応」「理想の住まいを実現」を宣伝する動画を制作。適切なターゲットに認知させ、過去の実績から潜在顧客に購入後のイメージがわく映像で訴求しました。

成果

問合せ件数が月間平均で85%アップし、また問合せ獲得単価を50%も削減することに成功しています。

参考:リノベ不動産|FACEBOOK for Business

事例7. インフルエンサー起用でコンバージョン率が35%アップ【Moonton】

モバイル向けマルチプレイヤーオンラインゲームを扱うMoontonは、人気インフルエンサーを起用し、彼らのフォロワーをターゲットにして動画を作り、世界中で新規の顧客獲得に成功しました。

課題

世界中の新規プレイヤー獲得のため、インフルエンサー起用の効果を知りたいと考えていました。

施策

ターゲット層を幅広く設定して、起用するインフルエンサーのフォロワーが、このターゲット層と一致することを重視しました。

動画でゲームインフルエンサーにゲームのキャラクターをコミカルに演じてもらい、潜在顧客にゲームの魅力をアピールしました。

成果

コンバージョン率が35%上昇して、アプリインストール数の増加に成功しました。また、インフルエンサーを起用した広告とその他を比較すると、インストール単価を14%抑えることができました。

参考:Moonton|FACEBOOK for Business

事例8. 新規の顧客開拓で購買促進に成功 複数のターゲットごとに動画を制作してUSP(自社独自の強み)認知が17ポイント上昇【日産自動車株式会社】

新型車のプロモーションで、複数のターゲットごとに動画を制作して、各人に合わせた訴求をしました。その結果、新規の顧客獲得と購買促進に成功しました。

課題

新型車をプロモーションして、今まで日産車に興味のなかった新規の顧客獲得を課題にしました。

施策

詳細なターゲット層を設定して、各人に合ったメッセージを伝える施策を検討しました。そのために、新装備の魅力・男女・昼夜・趣味など4パターン別に1700を超える制作物を作り、複数のターゲット層と組み合わせて配信しました。

成果

USP(Unique Selling Proposition 自社独自の強み)認知度が17ポイント上昇し、購入意欲とブランド好意度も上がりました。また、女性層への効果もあり、自社サイト遷移後の回遊率も高められました。

参考:きめ細やかなターゲティングで潜在顧客にアプローチ|Facebook for Business


事例から見る成功ポイント3つ「明確な目的」「的確なターゲット設定」制作時の「冒頭5秒・共感を呼ぶコンテンツ・購入後のイメージ」

ここまで実際に動画広告の事例を見ていくと、成果を上げている動画広告には「明確な目的」「的確なターゲット設定」「制作時での注意点」という3つの成功ポイントがあることが分かりました。次に、それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.動画広告の目的を明確にする

動画広告を配信する目的を明確にしましょう。広告の目的がはっきりしていれば、、視聴者に何を伝えたいのか明確になります。

せっかく動画広告を制作しても、自社のメッセージが伝わらなければ、視聴者に商品・サービスに興味や関心を持ってもらえません。

自社の広告目的が「ブランディング」「新規顧客の獲得」、それとも「購買促進」かなど、はっきりしていれば動画制作においてのブレがなくなります。

例えば、事例4で紹介したウィスパー・インドでは、自社の「ブランディング」のために、自社製品と社会問題を結びつけて支持を得ることで成功しました。

また、「新規の顧客獲得」のために事例7のMoontonはインフルエンサー起用をして話題を作り、事例8の日産では複数の動画を複数のターゲット層の好みに合うよう組み合わせて、成果を上げています。

最初に広告の目的を明確にすることによって、自社が目指す適切な動画制作につながります。そして、自社商品やサービスのアピールに成功するでしょう。

参考:SNS動画広告の成功事例を紹介!事例から学ぶ成功のポイントとは|Marketing MEDIA
   カンヌライオンズ2015を「動画」で総括。今もっとも評価される、社会を動かす動画は?|Movie Times

2.的確なターゲット設定

自社の製品・サービスを提供したい的確なターゲット設定は重要です。自社の製品やサービスに価値を感じてくれるターゲット層に訴求しなければ成果につながらないからです。そのためには、自社の製品やサービスによってニーズや課題を解決し価値を与えることができる、的確なターゲットの属性を設定しなければなりません。

的確なターゲット設定の方法については、下記の記事を参考にしてみてください。

ウェブマーケティングを成功に近づけるターゲット戦略4ステップ

そして、設定したターゲットの属性に合う動画の内容にすれば、訴求や認知拡大、そしてブランディング効果も上がります。

事例2の株式会社ダスキンはターゲット設定を、現状で親や家族の介護サービスを必要とする40~60代の女性とし、リアル過ぎないようアニメで分かりやすく工夫してソフトな仕上がりで認知度を拡大しました。

また、事例3のVIVIENは、自社の設定した20〜30代の女性ターゲット層が関心をもちやすい恋愛ドラマというコンテンツで魅了して、若年層向けのブランディングに成功しています。

事例8の日産自動車株式会社では、それまで自社に興味のなかったターゲット層を詳細に設定して、それぞれに合う動画作品を制作するなど徹底したターゲティングで成果を上げました。

自社がリーチしたい的確なターゲット層を設定することによって、動画でアピールするポイントがはっきりするので、訴求効果だけではなく、そのターゲット層に向けた認知拡大やブランディングの効果も上がります。

3.制作時に「冒頭5秒・共感を呼ぶコンテンツ・購入後のイメージ」を重視する

動画の制作時において「冒頭の5秒」「共感を呼ぶコンテンツ」「購入後のイメージ」を重視しましょう。視聴者に広告として興味や関心を持ってもらうには、この3つのポイントが大切です。

冒頭の5秒が決め手

動画広告の冒頭5秒で視聴者の興味を引くようにしましょう。視聴者の目的はあくまでも動画を見ることです。よって、いかに視聴者の目に留まるかは冒頭の数秒にかかっているからです。

YouTubeのインストリーム広告では、再生5秒後に「スキップボタン」が表示され、興味がなければ直ちにスキップされてしまいます。事例1のアウディー社が5秒完結の動画広告で、自社製品を上手くアピールしたのが良い例です。

いかにユーザーの興味を引き付けるかは、冒頭の5秒がカギとなるでしょう。企画・制作段階で、十分に検討してください。

ストーリー性のあるコンテンツで共感を呼ぶ

ストーリー性のある動画コンテンツで共感を呼ぶことは有益です。理由はストーリーとして商品やサービスのメリット、価値などを伝えることで、感情的な訴求ができるからです。

事例2の株式会社ダスキンでは、介護という苦しい現状をストーリー性のある動画にして、ターゲット層の共感を呼び関心を高めました。また、事例3のVIVIENはラブストーリー仕立てで、若い女性の心を魅了しました。

商品やサービスの内容を一方的にアピールするだけの宣伝広告にせず、ターゲット層が共感できるストーリーにすれば訴求効果は上がります。また、共感を呼んで注目度が上がれば、SNSで拡散されやすくなり認知度の向上にも効果的です。

商品やサービスの使用感がイメージができる

商品やサービスの使用感がイメージできる映像は大切です。視聴者が購入後の状況を想像できる、あるいは疑似体験できる動画であれば、購入価値を見出しやすく、購買促進につながるからです。

特に不動産のような高額な買い物となると、検討に時間を要します。しかし、事例6にあるリノベ不動産のように、過去の実績を動画で示すことで購入後のイメージもわきやすく、また会社への信頼も高まります。

動画広告で、自社の商品・サービスを購入することで価値をもたらすことが想像できれば、視聴者の購入意欲を更に高めるでしょう。

参考:動画広告を作る7ステップと、成果を高めるためのクリエイティブ制作・分析の鉄則


動画広告で失敗する主なポイント2つ「広告の趣旨が分からない」「不快感を与える」

失敗する動画広告には、いくつかの共通点があるようです。その中でも主として「広告の趣旨が分からない」「不快感を与える」という2点があります。

1. 広告の趣旨が分からない (自己満足の制作、目的やターゲット不明)

いくら予算をかけて凝った動画広告を制作しても、広告の趣旨が分からなければ成果は上がりません。それは制作側の視点のみで作られているので、視聴者には理解できない内容になっているからです。

自社商品やサービスの利点ばかりをPRしたり、目的やターゲット設定が曖昧だったりすれば、視聴者の関心や興味を引くことはできないでしょう。

例えば事例1のFacebook広告は、自社PRを作り手の思惑のみで制作したので、視聴者には理解しがたく、その意図が上手く伝わりませんでした。 

自社の思いばかりを盛り込んだ自己満足の動画、目的・ターゲット設定が不明確な広告は失敗する可能性が高いので、よく考慮しましょう。

2. 不快感を与える

意図的ではないにしろ、視聴者に不快感を与える動画広告は失敗します。いくら商品やサービスの質が良くても、広告によって視聴者に悪いイメージを与えてしまうと、購買意欲がなくなるからです。

特に社会的問題を含んだものや性的な描写などは、企業のイメージダウンにもなりかねません。SNSの発展によって、問題のある動画広告は即座に拡散されてしまいます。

事例2のハイネケンは、露骨に黒人への人種差別を表現して、バッシングを浴びました。

企画段階で視聴者に不快感を与える内容になってないか、また、制作時点でも不適切な映像はないか、などに十分に注意してください。


まとめ

成果を上げている動画広告は、自社のブランディングか認知度拡大、あるいは新規顧客の獲得かなど、何を達成したいか「明確な目的」があります。また、自社商品・サービスを訴求する「的確なターゲット設定」をして、それに向けた効果的なアプローチをする動画を制作しています。

そして、企画と制作時においては、視聴者の関心や興味を引くよう「冒頭の5秒」「ストーリー性のある内容で共感を呼ぶ」「購入後のイメージが湧く」などの工夫をしていました。

また、制作側からの視点だけで作るのではなく、視聴者に向けて「広告の趣旨を明確にする」、社会的な問題や企業のイメージダウンになるような「不快感を与えない」ことを失敗事例から学びました。

今後ますます需要が増加する動画広告の市場で、成功ポイントを押さえながら成果の上がる動画広告の配信を検討してみてください。