「顧客満足度調査」という言葉を知っていますか?
言葉の意味をなんとなく知っているものの、どういうメリットがあって、自社でも実施すべきか判断できない……という方もいるのではないでしょうか。
顧客満足度調査とは、顧客のニーズに関する情報を深掘りし、満足度を数値化するための調査のことです。
顧客満足度調査を実施することでリピーターの獲得や、既存顧客のLTVの向上、新規顧客の獲得などが見込めます。
「顧客一人当たりのLTVが低い」「継続的な利用がされていない」といった課題を感じている企業は調査を実施すべきです。
そこで、この記事では、顧客満足度調査を行うための方法や流れ、顧客満足度調査を成功につなげるためのコツ、注意点を解説します。
最後まで読むことで、顧客満足度調査の実施すべきか判断できるようになり、そのうえでポイントをおさえた顧客満足度調査の実施に向けて動き出せるようになります。
目次
顧客満足度調査とは、顧客のニーズを確認しサービスの質を向上させるために行う
顧客満足度調査(顧客満足度調査)とは、顧客のニーズに関する情報を深掘りし、サービスの品質を向上させるために行う調査のことです。
引き出す情報としては以下のようなものが挙げられます。
- 自社商品・サービスは顧客からどのくらい評価されているのか
- 競合他社と比べて自社商品・サービスを選んだ理由
- 現状でLTVが高い顧客の特徴
顧客満足度調査で、アンケート調査やインタビュー調査により、顧客の声を数値化することから始めます。
顧客満足度調査を行うことで得られる3つのメリット
顧客満足度調査を行うことで、次の3つのメリットを得られます。
- 顧客のロイヤルティ化を促進しリピーターを増やして売り上げアップ
- リテンション施策の効率化により既存顧客のLTV向上
- 顧客体験を改善することで新規顧客の増加が見込める
顧客のロイヤルティ化を促進しリピーターを増やして売り上げアップ
顧客満足度調査で顧客のロイヤルティ化を促進することで、リピーター増やして売上アップにつなげられます。ロイヤルティ化とは、簡単に言えば顧客に企業のファンになってもらうことです。
顧客のロイヤルティ化を行うことでリピーターや売り上げの増加につながります。ただ、顧客のロイヤルティ化を向上させるためには現状の評価を可視化し、顧客にとってより良いサービスを提供し続ける必要があります。
顧客満足度調査を実施して、定性・定量的に顧客の声を収集することで、サービスやプロダクトの改善に向けて動き出せるようになります。結果として、顧客満足度を高め、リピーター獲得、ひいては売上のアップにつなげていきます。
参考:顧客ロイヤリティとは何か?高めるための具体的な方法や事例も紹介
リテンション施策の効率化により既存顧客のLTV向上
顧客満足度調査により、既存顧客へ購入を促すリテンション施策を効率よく打ち出すことで、既存顧客のLTV向上につなげられるというメリットが見込めます。
顧客満足度調査で、どのような部分が顧客満足度を下げているのか、逆に評価が高い部分とその根拠は何か分かれば、リテンション施策を効率よく打ち出せます。
継続顧客はいるものの、なかなか売り上げに繋がらない、という場合にLTV向上を目的に顧客満足度調査を実施するメリットがより大きくなるでしょう。
顧客体験を改善することで新規顧客の増加が見込める
顧客満足度調査を通じて顧客体験を改善することで、口コミを通じた新規顧客の増加が見込めます。顧客体験の改善でクレーマーを減らせれば、潜在顧客に悪い口コミが広がることを防ぎ、良い口コミが新規顧客を呼びこんでくれるからです。
顧客体験の改善には、何が評価され、どのような点がクレームにつながったのか把握することが重要です。顧客満足度調査で評価点を明らかできれば、優良な口コミを増やすためのアプローチにつなげられます。
また、クレームにつながった部分がすぐに改善されれば、悪い口コミがSNSなどに投稿されるのを防ぐ効果も期待できます。
逆に「こういう点がマイナスポイントだったけど、すぐに改善してもらえた」という良い口コミを増やすことができ、新規顧客を呼び込む優良な口コミを増やしていけるでしょう。
顧客満足度調査を実施して売上・顧客満足度を向上させた3つの事例
実際に顧客満足度調査を行ったことで、売上や顧客満足度を向上させた事例があります。ここでは顧客満足度調査を行ったことで、成果を上げた事例を3つ紹介します。
- 顧客満足度調査の活用で売上の9割がリピート購入となっている通販企業の事例
- 大手を抑え顧客満足度アンケート1位になったローカルコンビニエンスストアの事例
- 顧客からの期待や評判に高水準のサービスを提供することで応え高いリピート率を維持する高級ホテルの事例
顧客満足度調査の活用で売上の9割がリピート購入となっている通販企業の事例
売上の9割をリピート購入が占める化粧品販売の再春館製薬所では、顧客との関係性を高めるアフターケアを実施したことで、1年後の顧客残留率5%向上と、売上2億円増を達成しています。
同社は既存のダイレクトマーケティングだけでは、顧客数が頭打ちになる可能性があることを過大に感じていました。
そこで顧客満足度調査したところ、リピーターとなる顧客は商品を1年以上続けて利用していることがわかりました。それだけでなく、顧客は商品と同時に、電話で発注をもらう際の化粧品に関するアドバイスに価値を感じていることが分かったのです。
そこで、従来のダイレクトマーケティングを継続しつつ、購入から1~2か月が経過した顧客への電話によるアプローチや、LINEの公式アカウントを利用した気軽な相談サービスを実施しました。結果、顧客満足度が向上し、1年後の顧客残留率5%向上、売上2億円増を達成しています。
成果を上げた要因として、リピーターになる可能性のある顧客を明確にしたこと、既存顧客が自社に対し価値を見出す根拠を明確にしたことが挙げられます。
大手を抑えJCSIアンケート5年連続1位になったローカルコンビニエンスストアの事例
北海道を拠点とするセイコーマートでは、第三者機関が評価を実施する、日本版の顧客満足度指標であるJCSIにおいて、大手コンビニエンスストアをおさえ、5年連続で1位を納めました。
コンビニ業界では、そもそも大手グループが全国的なシェアを持っているため、地方独自の店舗ほど苦戦しやすいという傾向があります。
そこでセイコーマートは、顧客満足度を高めるべく、拠点とする北海道において過疎地でも出店を続け、高コスパのプライベートブランドや地元産オリジナル商品の充実、店頭で誕生日のケーキや花束が注文できるなど、地域に根差した運営を行いました。
結果、JCSIアンケートにおいて、コンビニ業種における過去10回の調査のうち、9回もの1位を獲得しています。拠点とする地域の需要に徹底的に応え、独自サービスを広く展開できたことが、要因と考えられます。
顧客満足度調査をもとに運営の立て直しに成功したプロ野球チームの事例
プロ野球チームであるヤクルトスワローズでは、顧客満足度調査をもとにした施策により、2年間でファンクラブ会員数2.5倍に増加、チケット売上の向上を達成しています。
これまでもヤクルトスワローズでは、顧客満足度調査を実施していました。しかし結果を具体的な施策に生かせておらず、成果を上げられないという課題がありました。
そこで顧客満足度調査に、調査した時点以外の満足度を評価する指標であるNPSを取り入れました。その結果、ファンクラブ会員のうち、球場へアクセスしづらい地方ファンほど会員であることにメリットを感じておらず、一方でグッズ特典に対する評価は高いことが分かりました。
この結果から、次の施策に取り組みました。
- 地方ファン向けのイベントを多く開催
- ファンクラブ会員限定グッズの増強
- プラチナ会員を設定しユニフォームの限定特典を設定
施策を実施したところ多くのファンを満足度を高めることに成功し、会員数増加やチケット売上の向上を達成しています。既存のアンケート調査の内容を改めて見直し、より顧客の意見を吸い上げられる内容にしたことで、成果に繋げた事例といえます。
顧客満足度調査を行うべき企業の特徴
顧客満足度調査を実施すべき企業の特徴として、次の2点が挙げられます。
- 顧客一人当たりのLTVが低い企業
- 継続利用・リピーターの獲得につなげられていない企業
顧客一人当たりのLTVが低い企業
顧客一人当たりのLTVが低い企業は、顧客満足度調査を行うべき企業といえます。
顧客満足度調査では、既存顧客の満足度や、現時点でLTVが高い顧客が重視している要素は何か、1人あたりのLTVが低い理由やLTVの向上に関する要素を深く掘り出せるからです。
また顧客満足度を数値によって示すことができるため、目標も定めやすくなります。
定期的に顧客満足度調査を実施することで、改善したい内容が実際に効果があったのかを評価していくことも可能です。
継続利用・リピーターの獲得につなげられていない企業
「継続利用・リピーターが定着しづらい」という課題を感じている企業は顧客満足度調査の実施をおすすめします。継続利用・リピーターの獲得が進まない理由として、顧客から見てサービスや商品に不満があり、顧客満足度が低い可能性があるからです。
顧客満足度調査は改善点を見つけるだけでなく、それ自体が顧客との接点になります。自分たちの抱く不満を企業が理解し、スピーディーに改善を行うことができれば「自分たちの意見が企業に届いた」として、企業の認知度やイメージアップにもつながります。
新規顧客や1回だけお試し購入をする顧客は増やせても、継続利用・リピーターにつなげられない企業にとって、顧客満足度調査はその理由を探る糸口になるでしょう。
顧客満足度調査の方法は自社で行う場合と調査会社に依頼する場合の2つ
顧客満足度調査は自社リソースを活用して社内で行う方法と、社外の調査会社に依頼する方法の2通りがあります。
社内で商品やサービスについてアンケートを取る方法
自社の商品やサービスを「すでに知っている方に調査を行いたい」もしくは、「既存顧客をターゲットに調査を行いたい場合」におすすめの方法です。
メリット
- 自社の顧客リストを活用するため商品を知るユーザーから意見を求めやすい
- 自社にノウハウが蓄積されるため継続的に顧客満足度調査を実施しやすい
- 自社で取り組むため調査会社に依頼するよりも低コスト
たとえば顧客リストを活用してアンケートを実施したり、イベントを開催して直接ユーザーとコミュニケーションをとったりする調査方法が挙げられます。
アンケート内容も、社内で制作することで、商品やサービスにより詳しい設問を設定しやすいでしょう。
デメリット
デメリットとして、自社の顧客リストを使用するために、他社製品やサービスを利用するユーザーへのアンケートは難しくなります。
顧客リストの中に競合他社の商品、サービスを利用している場合は調査できる可能性もあります。
しかし、自社顧客に対して競合他社のサービスと比較してどうか、といった設問を設けるのは不自然なため、基本的にはできません。
調査会社に依頼する方法
潜在的な顧客や他社の顧客が、自社製品をどのような点で比較し、評価しているのかを客観的に調べたい場合には、調査会社に依頼するのがおすすめです。
メリット
- ユーザーと直接接点がない業種・業界でも顧客満足度調査を行える
- 競合他社と自社の比較(ベンチマーク)調査を行いやすい
- 専門家に調査内容に基づいた分析を依頼できる
特に競合他社と比較できる点は魅力です。また、費用はかかるものの、専門家が設計した顧客満足度調査を実施してもらえるため、自社内で同規模の調査を行うよりもコストが抑えられる、という見方も可能です。
デメリット
- 調査会社にサービスや製品を理解してもらいにくい場合がある
- 調査内容に応じた費用が発生する
まず、調査会社は外部の会社のため、サービスや製品に深くかかわる質問を作ってもらうには、多くのコミュニケーションが必要になり、時間がかかります。
また、調査会社によって基本料金やオプション料金が異なるため一概にはいえませんが、5万円から30万円以上まで、費用はさまざまです。高額になりやすいケースとしては、20問近く質問を行いたい、分析を依頼したい、といったケースが挙げられます。
事前に社内で調査目的やターゲット層を明確にし、複数の依頼先を比較したうえで決定するようにしましょう。
顧客満足度調査を行うフロー
顧客満足度調査を行うフローを以下にまとめました。
- 調査を行う目的の明確化
- ターゲット(調査対象者)の選定
- アンケートの手法を具体的に検討
- 調査のスケジュール策定
- 仮説を立ててアンケートを作成
- アンケート実施・回収
- 集計
- 分析
それぞれのフローを、詳しく解説します。
顧客満足度調査を実施する前の準備段階
顧客満足度調査の準備段階では、以下の5つに取り組みます。
- 調査を行う目的の明確化
- ターゲット(調査対象者)の選定
- アンケートの手法を具体的に検討
- 調査のスケジュール策定
- 仮説を立ててアンケートを作成
何のために顧客満足度調査を行うのか目的を明確にすることは、顧客満足度調査を成功させるためにもっとも重要です。
目的が明確でなければ、不要な質問をターゲットへ投げかけてしまったり、必要だったはずの質問を聞けていなかったり、成果の出ない調査になってしまうでしょう。
目的に合わせてアンケート手法・設計を決める
アンケートの手法も、目的に合わせて選びます。主な手法は、以下の6つです。
種類 | 目的 |
インターネット調査 | 地域を問わず多くのユーザーに、できるだけコストをかけずにアンケートを行い、回答の母数を増やしたい |
郵送調査 | 既存顧客にアンケート用紙を直接手元に届け、自由記述を含めた回答が欲しい |
電話調査 | 地域を問わず多くの顧客から出来るだけ早く、具体的な意見や生の声を集めたい |
来場調査 | イベント会場などに来場した顧客から、商品・サービスの印象や購入意欲を直接聞き取りたい |
インタビュー調査 | 顧客や消費者の行動背景や心理的側面を聞き取り、商品への評価を詳細に把握したい |
モニター調査(覆面調査) | 実際に商品・サービスを利用した顧客からの評価や、サービスを提供する担当者・店舗への詳細な意見が知りたい |
スケジュールや予算、人員によっても、手法の選び方は異なります。顧客満足度調査の目的に合わせて、適切な手法を選びましょう。併せて、回答形式を具体的にすることも必要です。
種類 | 目的 |
単一回答 | 選択肢の中からどれか1つ選ぶならどれを選択するか知りたい |
複数回答 | 購入理由や来店理由など、複数の理由が考えられる質問を問いかけたい |
順位 | 顧客が優先したいと考える条件を選択肢の中で順位付けすることで把握したい |
度合い評価 | 満足度などを段階的に評価して回答してほしい |
自由記述 | 設問に対する回答を自由に述べてほしい |
こちらも、手法と同じように目的に合わせる必要があります。また、ターゲットの年齢層などを考慮して、より答えてもらいやすい回答形式を決めることも重要です。
まずは目的をしっかりと定め、その答えを得るにはどのようなターゲット層に絞ればよいか、十分な準備を行いましょう。
顧客満足度調査の実施段階
計画に従い顧客満足度調査を実施後、アンケートの回収と集計を行います。集計を行うことで、得られた結果とアンケートの目的を照らし合わせ、どのような事実が分かったのか、分かりやすく示せるようになります。
集計する際は、有効な回答として認める内容を定義し、カウントすることが重要です。集計した数値自体が間違っていると、参考にならない分析になる恐れがあります。基本的な集計方法は次の2つです。
クロス集計
クロス集計とは、回答者を性別や年齢など属性で分けたうえで、それぞれを母数として集計する方法です。
たとえば「性別」と「年齢層」に分けることで、2つの要素を組み合わせた分析が可能となります。
たとえば、属性別に特定商品の保有数の調査をしたり、サービスに高評価または低評価をつけた顧客の属性を調べたり、データをより深掘りした分析が可能です。
適したグラフの種類やアンケートの目的を、以下の表にまとめました。
特徴 | 互換性の高いグラフ |
単一回答 | 帯グラフ |
複数選択 | 折れ線グラフと棒グラフの組み合わせ |
単純集計
得られた結果において、各項目の選択肢別に割合を求める集計方法です。
シンプルなため「あるサービスや商品が好きな顧客の数」や「発売予定の商品を購入したいと感じた顧客の数」を調べる目的において、結果の概要を大まかに知りたい場合に向いています。適したグラフの種類やアンケートの目的を、以下の表にまとめました。
種類 | 互換性の合うグラフ |
適切なグラフの種類(単一回答の場合) | 円グラフ、帯グラフ |
適切なグラフの種類(複数選択の場合) | 折れ線グラフ、棒グラフ |
集計を行った後、分析を行う際に活用される代表的な3つの指標があります。
- 顧客ロイヤルティを数値に表すNPS
- サービス産業の競争力を強めるJCSI
- 顧客満足度指数を示すCSI
3つの指標がそれぞれ何を意味するのか、詳しく解説します。
顧客ロイヤルティを数値に表すNPS
顧客満足度を計測する上で、もっとも重要とされる指標がNPS(Net Promoter Score)です。NPSを計測することで、顧客自身の満足度ではなく、サービスや商品を「どのくらい他人におすすめしたいのか」という、顧客体験も含めた顧客ロイヤルティが明らかになります。
顧客ロイヤルティが重要視されるのは、ロイヤルティの高いユーザーほど、サービスや商品にかける年間の利用額が高額になるためです。実際、ロイヤルティの高いユーザーは、そうでないユーザーに比べると、年間の平均購入額が3.1倍になる、というケースも報告されています。
調査を行う際は、まずアンケートで「この商品やサービスを、家族・友人・同僚へ進める可能性はどのくらいありますか?」という質問を設定し、0点~10点までの11段階で進める可能性をターゲットに回答してもらいます。そのうえで、点数によって次の3つに分類します。
- 0点~6点のユーザーはサービスに不満を抱く「批判者」
- 7~8点のユーザーはサービスに特に不満も満足もない「中立者」
- 9~10点のユーザーはサービスに満足している「推奨者」
この集計を基に、回答者全体に占める推奨者の割合から、批判者の割合を引いた値がNPSのスコアです。たとえば回答者が400人、推奨者が100人、批判者が150人いたとします。推奨者は25%、批判者は37.5%です。NPSのスコアは「25%-37.5%=-12.5」となります。
ただし、「プラスになれば問題ない」というわけではありません。
NPSの特徴として、業種や業界によって平均値が異なることが挙げられます。業界の平均値よりも低い場合に「顧客ロイヤルティが低い」と判断されるため、事前に業界の傾向を調べておきましょう。
参考:アパレルECサイト NPSベンチマーク調査 2020 : NPSランキング&アワード – NPSソリューション | NTTコム オンライン (nttcoms.com)
サービス産業の競争力を強めるJCSI
JCSIは、日本国内向けにカスタマイズされた顧客満足度指数の指標で「サービス産業の競争力を強める」という目的で使用されます。
次の6つの指標にもとづき、1つの指標に対し3~4つの質問を設定し、100点満点で指数化します。
- 企業やブランドへの期待(顧客期待)
- 全体的な品質評価(知覚品質)
- 利用した商品やサービスに対する、顧客自身の納得感やコスパ(知覚価値)
- 顧客満足
- 利用した商品やサービスを周囲の人へ積極的に進めたいか(推奨意向)
- 将来再び利用する意向(ロイヤリティ)
回答方法は、質問に対し1~10点または1~7点の点数をつけてもらう方法で行われます。
指標がそれぞれ計算されたら「実際に顧客が感じた満足度(P)」から「事前期待値(E)」を引くことで、顧客が得られた満足度が分かります。Pの方が大きければ、顧客満足度は高いと分かります。
顧客満足度指数を示すCSI
CSIは、世界30か国以上で実施されている、世界基準の顧客満足度の指標です。特に、グローバルに事業を展開する企業にとっては、競合他社との比較に活用できます。
測定を行う際には、相関関係のある次の5項目にかかわる質問を行います。
- 顧客期待値
- 知覚品質
- 知覚値
- 顧客不満足度
- 顧客忠実度
実際の回答では、それぞれの質問において、1から5までの5段階で顧客に点数をつけてもらいます。回答の平均値を計算することで、簡単に顧客満足度が分かる点が特徴です。
ただ、CSIは世界基準のため日本国内のみが対象となる企業の顧客満足度を調査するには不向きです。その場合は、JCSIが指標として適しています。
顧客満足度調査を成功させる6つのコツ
顧客満足度調査を成功につなげるには、6つのコツがあります。
- 誰に向けて顧客満足度調査をするのかあらかじめ決めておく
- 最低でも50サンプル以上確保する
- 顧客満足度調査のアンケート内容はできるだけ具体的な内容にする
- 顧客満足度調査に関わるアンケートの回答率を上げるため施策を行う
- 顧客満足度調査の結果をもとに自社での対応順位を決める
- 自社の顧客満足度調査だけでなく競合比較を行う
それぞれ見ていきましょう。
誰に向けて顧客満足度調査をするのかあらかじめ決めておく
顧客満足度調査を行うターゲットは、目的に対する答えを持っているかどうかを軸に、あらかじめ決めておきます。
例えば、商品やサービスを継続して利用する理由を知りたい場合、新規の顧客に調査を行っても、までリピーターではないので正確な回答は返ってきません。
この場合、これまで商品やサービスを利用した顧客の中から、「2回以上購入した顧客」をターゲットにする必要があるのです。そのため、誰に向けて顧客満足度調査を行うべきなのかはあらかじめ決めておくべきです。
最低でも50サンプル以上確保する
最低でも50サンプル以上は必要です。回答数が少なすぎると、結果として実際の顧客満足度との誤差が大きくなり、正確な回答が得られない可能性があります。
ですので、顧客満足度調査を行う前に「50サンプル以上は確保できそうか」を事前に計測しておきましょう。例えば、現状50人未満の顧客しかいない場合はサンプル数を50以上確保することは難しいはずです。
顧客アンケートを実施して回答率が100%というのはまずあり得ないので、回答率が10%と考えて、最低でも500人以上のアンケート配信を行えるかをチェックしておきましょう。
50サンプルを確保できない場合は、集計時点でエラーが発生し、不確実なデータになり得ます。無理に顧客満足度調査をしても結果に繋がらなければ意味がないので、この点には注意してください。
顧客満足度調査のアンケート内容はできるだけ具体的な内容にする
アンケート内容を決める際は、顧客満足度を評価するための「評価項目」と、理由を明らかにするための「実態項目」の2つを盛り込むようにしましょう。
たとえば、飲食店の満足度調査において、電話で予約する際のスタッフの対応に不満を抱く人が多かったとします。
しかし対応に不満を抱く人が多い、という結果からは「敬語ではないから不満」や「早口過ぎて聞き取りづらいのが不満」といった、顧客が不満を抱いた理由までは分かりません。
そこで、理由を調べるために、満足度と関連した質問を用意します。たとえば「スタッフの電話対応に感じたことを、以下からお選びください」といった質問です。
不満を感じると思われる電話対応を複数挙げ、顧客に選んでもらうことで、スタッフに対し指導すべき具体例を突き止められます。
このように、「評価項目」と「実態項目」を掛け合わせた設問をアンケートに組み込みましょう。
顧客満足度調査に関わるアンケートの回答率を上げるため施策を行う
回答率が低いと有効な回答の数も少なくなり、調査結果と実際の顧客満足度に、大きな差が出る恐れがあるため、回答率を上げるための施策を行うことが重要です。
回答率とは「アンケートを依頼した顧客の中で、実際に回答を行ってくれた顧客数」を割合で示したものです。顧客満足度の回答数の目安は、2%~40%とされます。
回答率を上げる施策には、具体的に以下の方法が挙げられます。
- 冒頭にアンケートの目的と所要時間、回答期限を掲載する
- 目的と関係のない質問を盛り込まない
- シンプルで答えやすい質問文にし、分かりづらいときは回答例を入れる
- 回答にかかる時間を冒頭や設問ごとに記載する
- 過去から現在、未来と時系列に沿った順番で設問を設定する
- 設問数は多くても30問以内にする
- 回答に必要な時間は全体を通し長くても10分以下にする
- 見やすいデザイン・レイアウトにする
- 個人情報が必要な場合はプライバシーポリシーを入れて適切に扱う
- 自由記載を行う設問は厳選して2~3問に絞る
- 回答のインセンティブとしてクーポンなど特典を用意する
Webアンケートの場合は、クリックを促すためのCTA(コールトゥアクション)ボタンのデザインも重要となります。アンケートのことを知らせやすい設置位置や、視覚的な影響が大きいボタンの色とテキスト内容も、検討しておくとよいでしょう。
顧客満足度調査の結果をもとに自社での対応順位を決める
顧客満足度調査の結果をもとに、自社で何を優先して取り組むのかを決める必要があります。
たとえば「サービスの価格が不満」という声がもっとも高く、僅差で「サービスの質が不満」という結果が分かったとします。
この場合、価格改定だけでは顧客満足度が上がらない恐れがあります。サービスの質を不満に感じている顧客からすれば、改善が行われていない状態だからです。
もっとも不満が多かった点だけを改善するのではなく、得られた課題の対応順位見つけ、改善につなげていくことが大切です。
自社の顧客満足度調査だけでなく競合比較を行う
自社に対する満足度だけでなく、競合比較を行うことも重要です。競合他社の持つ魅力や自社に対する不満が分かれば、差別化に繋がるヒントを見出すこともできます。
たとえば、アンケートの中に「これらの企業の中でもっともサービスに魅力を感じるのは、どの企業ですか?」という項目を盛り込むことで、競合調査も可能となります。
ただし、顧客満足度調査の目的によっては、競合調査がちぐはぐな印象を与えることもあるため、十分に検討を行ったうえで盛り込むと良いでしょう。
顧客満足度調査を実施する際の注意点
顧客満足度調査を行うにあたり、注意したいポイントが2つあります。
- 対象をエンドユーザーだけに絞ると正確な課題が見つからない
- アンケートの項目が多いと回答率が下がる
それぞれ見ていきましょう。
対象をエンドユーザーだけに絞ると正確な課題が見つからない
顧客満足度調査を通じて商品やサービスに関する課題を発見したい場合、エンドユーザー(顧客)以外の意見も取り入れる必要があります。対象者となるのは、顧客に働きかける従業員や、商品を販売する小売業者などです。
実施対象を小売業者や従業員まで広げることで、たとえば「このサービス、あと100円安ければもっと売れるのに」や「ここが改善されれば、きっとお客さんはもっと手に取ってくれる」といった有益な意見を得ることにもつながります。
確かにエンドユーザーである顧客の満足度を調査することは重要ですが、課題を発見するには商品やサービスの販売にかかわる人や、離脱してしまった利用者にアンケートを取ることも検討しましょう。
アンケートの項目が多いと回答率が下がる
回答率を上げる施策に挙げたように、アンケートの設問数はどれほど多くても30問、全体を通した所要時間は10分以内になるように設定しましょう。設問数や項目が多すぎると、結果として「答えづらい」「面倒」と感じ、回答率が下がります。
回答率が下がってしまうと、調査結果と実際の顧客満足度に大きな差が出る恐れがあります。できるだけ正確な調査を行えるように、アンケートの項目はしっかりと吟味する必要があります。
まとめ
顧客満足度調査は、顧客がもつ不満や満足を数値化し、より多くの従業員や経営陣へ情報を共有することで、実際の商品やサービスに反映することができるメリットある調査です。
調査を成功に導くためには、実施目的を明確にし、誰に向けてアンケートを行えば答えが得られるのか、アンケート制作では何を基準に決定していくのか、準備段階が重要となります。ターゲットを決める際には、目的によってはエンドユーザー以外に調査を行うことも必要です。
顧客満足度調査をしても成果を結果につなげられない場合は、実施目的やターゲット選択、アンケート内容が回答率を高めるものになっているか、準備段階から見直すことをおすすめします。顧客満足度調査を実施して、LTVの向上につなげていきましょう。