ダブルチェックの方法7つとミスが起きる原因、対策方法を解説

ダブルチェックとは、ミスを発見して損害を未然に防ぐために、確認作業を複数回行う方法のことを指します。

しかし「ダブルチェックをしているのに、ミスが発生してしまう」「正確にミスを発見、防止できるようにしたい」とお悩みの方は少なくないでしょう。

ダブルチェックといっても複数の方法がありますが、ダブルチェックを行っても確実にミスが発見できるというわけではありません。

ミス発生の原因と解決方法を知ることでできるだけミスの発見率を高めることができます。

本記事では、主流のチェック方法とされる「ダブルチェック」の意味や必要性、注意点を徹底解説します。

この解説を最後までお読みいただければ、ミスを正確かつ効率よく発見・削減するための方法を身につけられます。


ダブルチェックの方法7つ

ミスを未然に防ぐために、二重の確認を行うことをダブルチェックと言います。

ダブルチェックには2人で行う場合と1人で行う場合があり、確認方法は多岐に分かれています。

3人で行うトリプルチェックも含め、7つの方法についてみていきましょう。

参考:効果的にダブルチェックを行う方法|ダブルチェックの問題点を解決する方法とは? | MAMORIO株式会社

タイプ名チェック方法
2人連続型2人で連続して1回ずつチェック
2人連続双方向型1人目がチェックした後、2人目は逆方向からチェック
1人連続型1人で2回連続してチェック
1人時間差型1人で2回チェック。1度目と2度目の間にインターバルを設ける
1人双方向型1人でチェック、2回目は逆方向からチェック
トリプルチェック3人で1回ずつチェック
クロスチェック2人でチェック。2回目は1回目と異なる方法を用いる

2人連続型

2人連続型とは、2人で連続し、1人1度ずつチェックする方法のことを指します。

ダブルチェックとしては最も一般的な方法です。

2人連続双方向型

2人連続双方向型とは、2人で連続してチェックする方法のことをいいますが、2人連続型と異なり、1人目と2人目で目を通す方法を変更する点がポイントです。

例えば、1人目が通常通り上から文章を読んでチェックした場合、2人目は一番下の項目からさかのぼりながら文章を確認します。

目の通し方を変えるため、2人連続型と比べ精度の高いチェック方法で、ミス発生時のリスクが高い場合に適しています。

ダブルチェック時には、可能であれば2人連続双方型を採用しましょう。

1人連続型

1人連続型とは、1人で連続して2度チェックすることを指します。

2人体制と比較すると正確性には欠けますが、低コストで行うことが可能です。

人員や時間が不足している場合に取られることが少なくありません。

さほどミスの発生率が高くない、単純なチェックの場合に多く用いられます。

とはいえ、同じチェックを2回連続で行った場合、流れ作業のように行ってはミスの発見は困難です。

高い精度を求める場合はできるだけこの方法は避けましょう。

1人時間差型

1人時間差型とは、1人でチェックを行う方法のことを指しますが、1人連続型と異なるのは、1回目と2回目のチェックの間に小時間のインターバルを設ける点です。

時間を空けて一度リフレッシュすると、1回目に見落としたミスを2回目に発見できる確率が高まります。

やむを得ず2人体制でチェックできない場合に有効的な方法です。

1人双方向型

1人双方向型とは、1人で2度チェックを行う方法のことを指しますが、他の1人型とは異なり1度目と2度目で異なる方向から目を通す方法です。

例えば、一度目に通常通り上からチェックした場合、次は一番下の項目からさかのぼりながら確認します。

1人時間差型と同程度の効果が期待できます。

トリプルチェック

ダブルチェックにさらに1人加え、3人で1回ずつチェックする方法のことを指します。

単純にチェックする人が増えるため、ダブルチェック以上にミスの削減が可能だと考える人も多いでしょう。

ただし、人が共同作業を行う際は、1人当たりの責任が軽くなると無意識のうちに思い込んでしまう現象、通称リンゲルマン効果が生じやすいため注意が必要です。

トリプルチェックの場合もリンゲルマン効果が発生し、「自分以外に2人も見ているから大丈夫」と無意識のうちに考え、緊張感が損なわれる場合も少なくありません。

トリプルチェックを行っているのにミスが減らない場合は、リンゲルマル効果の発生を疑いましょう。

参考:「ダブルチェック」の意味と方法とは?「クロスチェック」も解説 | TRANS.Biz

クロスチェック

1度目の確認方法とは異なる方法や視点でチェックする方法です。

視点を変えて確認するため、1つの方法や視点では見落としがちなミスの発見が期待できます。

ただし、チェックに高度なスキルが必要となる場合が少なくありません。

例えば病院で処方された薬を薬局で受け取る場合、医師が書いた処方箋を、薬剤師はもう一度確認します。

医師とは異なる“薬剤師”目線で、薬についてもう一度チェックすることで、最初に気づかなかったミスを発見できる可能性が高いです。

ほかのチェック方法よりもミス発見の精度が高くなりますが、工数や時間の増加、コストが増大しがちです。

コストとミス発生時のリスク度を天秤にかけた上で、導入を検討しましょう。


ダブルチェックをしてもミスが発生する理由

1度目に発見できなかったミスを確認するために行うダブルチェックですが、二重に確認をしたにもかかわらずミスが発生するのには理由があります。

ダブルチェック後のミスを減らすには、ミス発生の理由を理解し対策を講じることが大切です。

ここでは、ダブルチェックを行ったにも関わらず、ミスが発生する5つの理由を解説します。

  • 互いの作業に対する過信
  • チェックのための時間が不十分
  • チェック担当者の経験・能力不足
  • 集中力の低下
  • 変わらない環境の中で慣れが生じている

参考:企業が対策すべきヒューマンエラーとは?起きる原因や防止方法を紹介

互いの作業に対する過信

互いの作業に対する過信により、ミスが発見できなくなることがあります。

集団で共同作業を行う場合、人数の増加に伴い一人当たりの生産性が低下する場合があり、「フリーライダー現象」や「社会的怠惰」などと呼ばれています。

複数でしっかり確認しなければならないのに「前の人が確認しているから問題ないはず」と一人当たりの責任感が低下し互いの作業を過信した場合、チェック機能は働きません。

ダブルチェックを行う場合は、お互いに相手を過信せず、責任感を持って取り組むことが大切です。

チェックのための時間が不十分

チェックのための時間が不十分な場合、ミスが発見できない場合があるため注意が必要です。

しっかりしたチェックを行うには、十分な時間の確保が欠かせません。

他の業務で忙しくチェックに必要な時間を割けない状況下では、確認不足となりミスの発生につながります。

担当者は、確認のための十分な時間の確保が必要です。

チェック担当者の経験・能力不足

担当者に経験や能力が不足しているため、チェック機能がうまく働かないことがあります。

定期的に人事ローテーションを行う大企業などで、このような経験・能力不足によって発生するミスが多く見られます。

例えば、人事異動で編入された上司が、その部署の業務を把握していないまま部下の仕事をチェックしているケースなどが当てはまります。

大前提として必要な経験や能力がなければ、そもそもミスをしているのかどうかさえ判断できません。

できるだけ、経験や能力を満たした人がチェックを行うように社内で調整を行いましょう。 

集中力の低下

長時間作業を継続すると、集中力の低下によりミスが生じやすくなります。

特に、PC画面を見ながら頭の中だけでチェックを行っている場合などは集中力低下によりミスの発生が高まるため注意が必要です。

このような場合は、画面を印刷し筆記用具を用いて手を動かしながらチェックすると良いでしょう。

変わらない環境の中で慣れが生じている

いつもの環境でチェックを行っている場合、慣れによる甘さが生じる場合があります。

また、基本的にミスの発生率が低い業務のチェックを継続していると、担当者は無意識のうちに「どうせ今回もミスはないだろう」と思い込む傾向になるため注意が必要です。

長期間同じ業務に従事している人ほどチェックが甘くなることがあります。

定期的に担当者を変える、チェック方法を見直すなどの工夫が必要です。


ダブルチェックをする際にやりがちな失敗例2つ

ミスの見逃しを防ぐためにダブルチェックを採用している場合が多いですが、やり方を間違えると十分な効果が発揮できません。

ここでは、採用しがちな2つの失敗例をみていきます。

参考:ダブルチェックの有効性を再考する – 厚生労働省

ダブルチェックの回数を増やす

ダブルチェックの回数を増やし「4回チェック」などを試みてもあまり意味はありません。

また、人数が増えたことにより流れ作業化し、チェックが甘くなることも少なくありません。

人数や工程を増やすことにより、チェックの回数増加により作業量が増加して負担がかかります

結果的に、時間の確保ができず集中力低下を引き起こしチェック精度が低くなるというエラーサイクルが完成します。

ダブルチェックの目的はエラーの発見であり、エラーそのものを減らすことはできません。

そのため、ダブルチェックの回数を増加しても「なぜ単純なエラーが発生するのか」という根本原因の解決には至らない点は把握しておきましょう。

単純な確認作業でダブルチェックを行う

単純な確認作業でダブルチェックを行うと失敗することが少なくありません。

ダブルチェックは、判断できる自信がない場合や頭を使う作業の確認に適しています。

単純な確認作業では、2度目のチェックが甘くなり十分な効果が期待できません。

名前や値の確認などのよく見れば分かるようなチェック作業においては、1人で行う指差し確認や声を出しながら行う確認喚呼の方が、ミスの見逃しを減らせる場合もあります。

作業内容に適したチェック方法を導入しましょう。


チェック漏れを徹底して防ぐための方法4つ

ダブルチェックをしてもミスが発生するのを防ぐためにはいくつか方法があります。

ここでは、チェック漏れを防止するための4つの方法を見ていきましょう。

  • RPAを導入する
  • チェックに集中する時間を確保する
  • 担当者のチェックに関する経験・能力を把握する
  • 指差し確認のような身体の動きを取り入れる
  • チェックするとき専用の環境をつくる

RPAを導入する

RPA(Robotic Process Automation)ツールを導入することでダブルチェック業務を減らすことが可能です。

参考:【2022年最新】RPAツール比較17選!プロが教える絶対に失敗しない選び方

例えば、取引先への請求データと入金データを照合する業務はRPAを活用することで、チェックをロボットに任せて、アラートがあった場合のみ人間が対応するよう自動化することができます。

そもそも、データの転記やコピペなどの定型業務であればRPAで自動化することで、ダブルチェックの必要がなくなります。

チェックに集中する時間を確保する

他業務によりチェック時間が圧倒的に足りないことがチェック漏れの原因となる場合があるため、チェック作業にのみ集中できる時間や環境を強制的に設けましょう。

他の作業と並行してチェック業務を行うと、チェック作業に集中できずに結局ミスを見落とすことになります。

そのため確認作業のみに集中できる時間をもうけ、他の業務には手をつけないように工夫しましょう。

担当者のチェックに関する経験・能力を把握する

とくに人事ローテーションが頻繁に起こる企業においては、意図せず経験のない新人にチェックを任せてしまっている可能性もあるため、状況を把握するため定期的に内部監査による確認を行いましょう。

やむをえず新入りの従業員にチェックを任せなければならない場合、チェック作業のマニュアルを作成して参考にしてもらいます。

最初のうちは、現役社員の監督のもとで確認作業を行うといった工夫を取り入れましょう。

指差し確認のような身体の動きを取り入れる

指さし確認をはじめとした、身体の動きを取り入れるとミス防止につながります。

チェック方法には、視覚のみを用いるものだけでなく、指差し確認や確認喚呼などがあります。

指さし確認など五感を活用すると、脳の認知機能が活性化します。

手などを動かし発声することで、意識が覚醒し集中力が高まる効果も期待できるため、積極的に取り入れましょう。

チェックするとき専用の環境をつくる

チェック時に専用の環境をつくると、ミスの漏れ防止に効果があります。

チェック時の環境が他の作業と同じ環境では、気持ちを切り替えられない・集中力が続かないなどの理由でミスが減らない場合が少なくありません。

このような場合は、チェック専用の部屋を用意し、確認作業時のみ環境を変えられるような工夫が必要です。


まとめ

ダブルチェックは、1人目が見逃したミスを見つけるために効果的な確認方法です。

1人ずつが他人任せにせず、時間やコストを十分にかけてチェックを行うことでミスの発生率低下につながります。

ダブルチェックの方法は全部で7つですが、正しい方法を知らずに取り組むと期待していたほどのミス防止効果が発揮できません。

ダブルチェックでできるだけミスの防止に取り組むためには、次の方法が効果的です。

  • 2人連続双方向型
  • 1人時間差型
  • クロスチェック

ダブルチェックを取り入れてもミスの発生が続く場合は、互いの作業に過信しすぎていないか、チェックのための時間が確保できているか見直してみましょう。

とにかくチェック漏れを防ぎたい場合は、以下のような方法を取り入れてみましょう。

  • RPAを導入する
  • チェックに集中する時間を確保する
  • 担当者のチェックに関する経験・能力を把握する
  • 指差し確認のような身体の動きを取り入れる
  • チェックするとき専用の環境をつくる

ダブルチェックを適切な方法で実施し、ミスの発生率の低減につなげましょう。