越境ECでありがちな「9つの物流課題」とそれぞれの対応策

越境ECを始めるにあたり、まず直面する壁は「物流」です。(越境ECとは

越境ECを始めようと考えている、あるいはすでに始めている方の中には「通関業務や書類の準備が大変」「配送中に商品がダメになるケースが多い」など課題を感じている方もおられるのではないでしょうか。

越境ECの経費において、物流コストが占める割合が高いです。そのため越境ECでは物流面での課題を解決し、コストを削減することが売上・利益の向上に直結します。

本記事では実際に越境ECに取り組む企業が感じた「物流の課題」とそれらの対応策についてまとめています。また、越境ECの物流方法や配送会社について詳しく解説します。

この記事を読むことで越境ECの物流の課題が整理されて、事前に準備を進められるので、急なトラブルにも余裕を持って対応できるようになります。


越境ECにおける物流の課題

国際物流には国別の禁制品や海外発送のための書類作成、国際物流に対応している配送会社を選定するなど解決しなければならない物流課題がたくさんあります。

越境ECでよくある物流面の課題と対応策を表でまとめています。

課題対応策
通関手続きが複雑で手間がかかる・手続き方法を事前に把握する
発送できるもの・発送できないものがある・自社の取り扱い商品が発送できるか事前に確認する
国によって配送日数が異なる・配送会社の「国別の配送日数表」を確認する
返品対応が難しい・越境EC向けの商品を「返品不可」に統一する
・「返品商品の回収・再販代行サービス」を利用する
配送コストが高い・配送にかかる料金を確認し、利益が出るように値段を設定する
・送料を顧客負担に設定する
在庫管理のコストが高い・在庫管理を外部に依頼する
・在庫管理分の費用を配送料や商品代に上乗せする
配送状況の把握が難しい・配送状況を拠点ごとに荷物の位置情報を確認できる配送会社を選ぶ
納品の遅延が起きやすい・ECサイト上で発送期間を長めに設定する
商品の品質維持が困難 ・通常より厳重な梱包作業を行う
・配送保険に加入する

参考:2022年越境ECの課題として、半数以上が「サポート対応が難しい」と回答 一方、91.0%の企業が、2023年も引き続き「越境ECに注力」|PR TIMES

通関手続きが複雑で手間がかかる

商品を海外に発送する際には「通関手続き」が発生します。通関手続きとは「貨物の輸出入」をする際に、税関長の許可を得ることです。

通関手続きでは、必要書類の準備や税関での輸出申告など手間がかかります。通関手続きをスムーズに行うためには、事前に必要書類の準備方法や作成方法を理解しておかなければなりません。

通関手続きの手順

通関手続きの手順は以下の通りです。

  1. 商品を保税地域に搬入
  2. 他法令の手続き
  3. 輸出申告
  4. 審査
  5. 検査
  6. 輸出許可
  7. 船積・搭載

保税地域とは、税関当局の管轄下になります。ここで海外に発送する商品の検査が行われます。海外に商品を発送する場合は保税地域に商品を運び込んだ後に、書類の提出が求められます。

通関手続きに必要な書類

通関手続きに必要な書類は以下の通りです。

  1. 仕入書(インボイス、商業送り状)
  2. 梱包明細書(パッキングリスト)
  3. 船積依頼書(シッピング・インストラクション)
  4. 他法令の許可・承認が不要である証明書
  5. 各官公庁発行の許可書・承認書・証明書等
  6. 委任状

1〜3までの書類については、輸出者自身で準備するのが一般的です。これらの書類は発送先の言語で作成する必要があります。農林水産省が提供している資料から記入例を確認し、ご自身で作成できるよう準備しておきましょう。

参考:輸出に必要となる主要な書類3種類(インボイス、パッキングリスト、シッピングインストラクション)|農林水産省

4と5については、後ほど説明する「輸出規制のある商品」を発送する場合に必要な書類です。6は通関手続きを外部に委託する場合に必要になる書類です。

通関手続きには手間がかかるため、商品管理から通関手続き業務まで代行してくれる海外輸出代行業者を利用するか、フォワーダーや運送会社のサポートを受けるのが一般的です。
 
参考:5001 輸出通関手続の概要(カスタムスアンサー)|税関 Japan Customs 財務省
   輸出通関 | 西日本鉄道株式会社|国際物流事業本部
   越境ECで商品を配送する方法とは?配送会社選びのポイントや注意点も解説|BeeCruise 株式会社
   通関業者に輸出通関を依頼する際の必要書類:日本 | 貿易・投資相談Q&A – 国・地域別に見る|日本貿易振興機構JETRO
 

発送できるもの・発送できないものがある

越境ECの物流で気をつけたいのが、発送できる品、できない品があるということです。

国際郵便では、法律や条約により輸出入が禁止されているものがあります。

これを理解した上で商品を発送しなければ、相手先の国の通関検査をクリアすることができず、商品が顧客に届かないなどのトラブルに発展する可能性があります。

自社で取り扱っている商品の輸出入の可否をすぐに確認したい場合は税関相談官に電話で相談することも可能です。問い合わせ先については「税関相談官の問合せ先一覧(カスタムスアンサー)|税関 財務省」を参考にしてください。

日本国内で海外発送が禁止されている品

関税法で定められている輸出禁止品目は以下の通りです。

  1. 麻薬、向精神薬、大麻、あへん、けしがら、覚醒剤
  2. 児童ポルノ
  3. 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、著作隣接権、育成者権を侵害する物品
  4. 不正競争防止法第2条第1項第1号から第3号まで又は第10号から第12号までに掲げる行為を組成する物品

引用元:輸出入禁止・規制品目|税関 Japan Customs財務省

3の具体例としては、他社の技術を盗用した模範商品が挙げられます。

4の具体例としてブランド商品に似せたコピー商品や偽装表示商品などが挙げられます。

日本国内で海外発送が規制されている品

関税法以外の法令で、輸出時に法令に従って認可や承認が必要な品もあります。

以下の表は法令名と認可や承認が必要な品になります。

法令規制対象商品例認可に必要な書類
輸出貿易管理令特定物質鉄鋼、アルミニウム、軍需品輸出許可申請書
文化財保護法文化財古美術品、歴史資料、美術工芸品古美術品輸出鑑査証明
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律鳥獣インコ、オウム、クマ、シカ鳥獣適法捕獲証明書
家畜伝染病予防法家畜牛、豚、鶏輸出検疫証明書
植物防疫法植物果物、野菜、花 植物検査合格証
道路運送車両法自動車自動車輸出抹消仮登録証明書・輸出予定届出証明書
麻薬及び向精神薬取締法麻薬、向精神薬大麻、ヘロイン、覚せい剤麻薬輸出許可書
麻取締法大麻大麻大麻輸出許可書
あへん法麻薬アヘン、モルヒネあへん輸出委託証明書
覚せい剤取締法覚せい剤覚せい剤覚せい剤原料輸出許可書

参考:5501 税関で確認する輸出関係他法令の概要(カスタムスアンサー)|税関 Japan Customs財務省

上記の表の「主な品目」に当てはまる商品を発送する場合は、「主管省庁課」に審査を依頼し、輸出の認可・承認を証明する証明書を発行してもらう必要があります。

詳しくは表に記載されているリンク先から審査基準や申請方法を確認してください。

参考:輸出入禁止・規制品目|税関 Japan Customs財務省

世界全体で海外発送が禁止されている品

世界全体で発送できない品目もあります。麻薬やわいせつな物品、危険性のある物質や生きた動物などは「万国郵便条約及びその他の規則に基づく禁制品等」に該当し、発送ができません。

参考:万国郵便条約に基づく禁制品|日本郵便

また、発送時に爆発や引火、事故を引き起こす可能性のある以下のような品についても発送できないため注意してください。

上記の品以外にも国ごとで輸入が禁止されており、日本から発送ができても相手先の国で受け取ることができない品があります。

例えば、アメリカでは牛肉製品の輸入が禁止されており、誤って発送してしまった場合は税関で没収・破棄されてしまいます。

各国の禁制品については日本貿易振興機構(ジェトロ)のサイトでまとめられていますので、参考にしてください。

参考:国・地域別に見る |日本貿易振興機構JETRO

国によって配送日数が異なる

国際物流では発送先の物流状況や時勢、税関手続きの対応スピードによって配送日数が異なります。

各国の物流状況によっては商品の到着日程が遅れる可能性があります。顧客に対して正しい配送日数を伝えるためにも、どれくらいの配送日数がかかるかを理解しておきましょう。

配送日数は利用するサービスや発送元の地域、天候などによって変わります。

以下は、日本郵便の「EMS」を使用して東京から主要国に発送する場合の想定配送日数をまとめた表です。一つの目安になるかと思いますので、ぜひご確認ください。

EMSは比較的発送スピードが速いサービスなので、他のサービスを利用する場合は1~2日ほど余裕を持たせてスケジューリングすると良いでしょう。

国名配送日数
米国2〜4日
中国2〜4日
韓国2〜4日
英国2〜4日
ドイツ2〜4日
イタリア4〜6日
フランス2〜4日
カナダ3〜5日

参考:お届け日数表(EMS:東京)|日本郵便

返品対応が難しい

海外に発送した商品の返品は、国内と比べると対応が難しくなります。

返品対応は発送先の言語でコミュニケーションを取る必要があるからです。また、返品商品を海外から日本に発送する際も同様に仕入書や梱包明細書、船積依頼書等を商品の購入者に発行してもらう必要があり、非常に手間がかかります。

再度税関を通して国内に向けて返品商品を配送してもらう必要があるため、関税がかかるだけでなく、商品が不良在庫として残るため売り上げになりません。

越境ECにおける返品対応については「返品、返金ポリシーを作成しておく」「海外返品サービスを利用する」の2つの方法があります。

返品対応内容
返品・返金ポリシーを作成する・返品、返金の受付期間を設定しておく(アメリカは30日間)
・返品、返金ができる商品の状態を明記しておく(未開封・未使用が一般的)
・返送料の負担は購入者か販売者かを明記しておく(購入者支払いは一般的)
返品商品の回収・保管・再販を受け付けてくれるサービスを利用するipXなどの返品サービスを利用すれば、購入者からの返品商品を受け取り、日本に発送してくれる

返品・返金ポリシーを作成して条件を決めておかなければ、販売者に過失のない破損や誤出荷でも返品・返金を行わなければなりません。商品が売れるほどリスクが高まるため、返品・返金ポリシーは必ず作成しておきましょう。

また、海外から日本に向けて商品を返送する場合は発送手続きの負担がかかるため、返品商品の受け取り・返送を代行してくれる返品サービスも利用しましょう。

例えば、ZipXというサービスでは、アメリカ・イギリス・中国・香港・インドネシアの国で独自の倉庫を持っており、対象国での取引で発生した返品業務を代行してくれます。

参考:越境EC(海外通販サイト)運営で「サービス利用規約」「プライバシーポリシー」「返品・返金ポリシー」の作成方法を紹介!|ECサイトの教科書―儲かるECサイトのつくりかたを公開―
   越境 EC/ 海外販売の基礎知識|日本商工会議所

配送コストが高い

日本国内での配送コストは500gまでの配送で210円〜300円ですが、海外に商品を発送する場合は、7〜10倍以上の配送コストがかかります。

以下の表はEMSで500gの商品発送を想定した料金表になります。

地域500gまでの配送料金
中国・韓国・台湾1,450円
アジア(中国・韓国・台湾を除く)1,900円
オセアニア・カナダ・メキシコ・中近東・ヨーロッパ3,150円
米国(グアム等海外領土含む)3,900円
中南米(メキシコを除く)・アフリカ3,600円

参考:料金表(EMS:取り扱い国すべて)|日本郵便

越境ECで利益を出すためには、商品代に送料分を上乗せして販売しなければなりません。

在庫管理のコストが高い

越境ECにおいては、国内発送業務と比較して、業務の手間や時間が増えるため、在庫管理のコストが高くなります。

在庫管理の在庫を確認・梱包・発送を行う専門スタッフの補充が必要になるだけでなく、海外に拠点倉庫を配置する場合は倉庫レンタル代や人を雇うなどの在庫管理のコストが高くなります。

在庫管理コストを下げる方法としては、「フルフィルメント会社を利用する」「モール型のサービスを利用して在庫管理を代行してもらう」の2つの方法があります。

対応メリットデメリット
輸出代行サービスを利用する ・商品の保管や梱包・発送に対応しており、在庫管理コストを削減できる
・安定した物流を実現できる
・商品の保管・発送に費用がかかる
モール型ECを利用して在庫管理を代行してもらう ・モール型のサイトが管理する倉庫に商品を送ることで、海外発送における業務を代行してくれる
・モール自体に顧客がついており、自社店舗を登録することで販路拡大につながる
・サービス利用にコストがかかる
・売上に対する手数料がかかるモールもあり、利益が少なくなる可能性がある

顧客や販路が少ない場合は「モール型のサービスを利用して在庫管理を代行してもらう」方法を選びましょう。

モール型のサービスを利用すれば、在庫管理や発送など越境ECの物流業務を代行してもらえます。また、モールについた既存顧客に自社商品をアピールできるので、販路拡大にもつなげられます。

顧客や販路を確保できている場合は海外輸出代行サービスを選びましょう。海外輸出代行サービスは在庫管理から商品の発送まで幅広く対応しているサービスです。国内に複数の倉庫を持っており、商品を指定の場所に納品しておけば、受注から発送までを一貫してサポートしてもらえます。

参考:越境ECモールとは?基礎知識と自社サイトとの違いやおすすめのモールを徹底解説|ECのミカタ
   海外へ輸出入できる海外発送代行9社を紹介!選ぶ際のポイントとは? -|BeeCruise株式会社

納品の遅延が起きやすい

商品が国境を超える際に税関による荷物検査が入るため、予定していた配送期日から遅れる可能性があります。

商品到着の遅延に関しては書類の不備や荷物に関係なく時間がかかるため、送り主自身がコントロールできない部分になります。

そのため、ECサイト上で到着時間を遅めに設定するしかありません。税関検査は国内・海外の両方で行われるため、長く見積もって当初の商品到着日時から2〜3日ずらした到着日時を設定しておきましょう。

商品の品質維持が困難

越境ECでは、ガラス製品や電子機器といった破損しやすい商品や温度管理が必要な生鮮食品、医薬品の商品維持が難しいです。

理由としては「単純に輸送にかかる期間が長いこと」「海外の配送業者は日本国内の配送業者と比べて商品を乱雑に扱うことが多いこと」などが挙げられます。

対応策としては「配送保険の利用」と「厳重な梱包」の2つです。

配送保険の利用

国際物流を行う配送会社によって配送保険が準備されています。国際物流を行う際には配送保険をつけておくのが一般的です。

例えば、日本郵便のEMSでは、2万円までの補償が無料で付帯されています。その後は2万円ごとに50円の追加料金を払うことで補償額を上げることも可能です。

厳重な梱包

発送の際に「厳重な梱包」を行うことも大切です。

厳重な梱包を行う際は以下のポイントを意識してください。

  • 頑丈なダンボール(ダブルカートン等の厚手タイプ)を用意する
  • 緩衝材、新聞紙で商品を包んだ後に水漏れや汚れを防ぐためにビニール袋やラップで包む
  • ダンボールの隙間を無くすためにガムテープを貼る

海外発送時の梱包については以下の記事が参考になります。

参考:海外へのお荷物の送り方 初心者ガイド | 日本郵便株式会社


越境ECにおける物流形態

越境ECによる注文数やフェーズによっては、選ぶべき物流方法は変わります。以下では、それぞれの物流方法について解説します。

越境ECにおける物流形態は大まかに分けて3つの種類があります。それぞれのメリットやデメリットを表にまとめました。

物流形態メリットデメリット
自社から直接発送する ・不良在庫リスクが少ない
・少ない資金で小さく始められる
・準備さえできればすぐに発送できる
・1回ごとの発送料金が高く利益率が低くなる
・毎回複雑な手続きを行う必要がある
現地に拠点倉庫を構えて発送する ・現地発送のため配達スピードが早い
・現地発送により配達費用を抑えられる
・サービス利用にコストがかかる
・売上に対する手数料がかかるモールもあり、利益が少なくなる可能性がある
物流業務全般を外部委託する ・配送にかかるリソースを削減できる
・人的ミスを削減できる
・知識不要で海外進出が可能
・委託手数料がかかる
・イレギュラーに弱い

参考:越境ECにおける物流の重要性と課題海外配送の方法や業者の選び方|株式会社 三協
   越境ECで商品を配送する方法とは?配送会社選びのポイントや注意点も解説 |BeeCruise株式会社

1. 自社から商品を直接発送する

1つ目の手段は自社から直接商品を発送する方法です。国内から購入者に向けて日本郵便や民間の配送会社(佐川急便の飛脚国際宅配便など)をつかって配送する方法です。

書類の作成や発送の手続き、送り状を作成する必要がありますが、自由なタイミングで発送できる柔軟性の高い発送方法です。

手間はかかりますが、その分費用がかからないので、「初期費用を押さえてスモールスタートしたい」という企業向きです。

自社から商品を直接発送するメリット

  • 注文の都度発送するため、不良在庫を抱えるリスクが少ない
  • 1個単位の商品を数千円前後で発送できるため、ミニマムスタートできる
  • 梱包・書類の準備ができれば業者に依頼するだけで発送できる

自社から商品を直接発送するデメリット

  • 1回の発送料が国内よりも割高なため、利益率が低くなる
  • 送り状の他にや税関告知書やインボイスの書類を作成する必要があり、毎回の配送手続きに手間がかかる

2. 現地に拠点倉庫を構えて商品を発送する

2つ目の手段は海外に自社商品を保管する拠点倉庫をレンタルし、海外での物流システムを構築する方法です。取引を行う国に自社倉庫を設置することで、注文は越境ECで受付、発送は現地で行うことができます。

商品をあらかじめ現地に送っておくことで、複数商品の通関を一挙に行えるため、注文ごとに国内から海外へ発送する方法よりも通関手続きの手間を減らすことができます。

また、商品到着後は現地から商品を発送できるため、配送日数の短縮につながります。

  • 決まった国や周辺国との取引が多い(中国・台湾・韓国との取引が多いなど)企業

中国・韓国・台湾など、すでにある程度取引の多い国が決まっている場合や、定期的に大量の注文が来るという企業に検討してほしい発送方法です

現地に拠点倉庫を構えて商品を発送するメリット

  • 海外の拠点倉庫から商品を運ぶため、配達スピードが速い
  • 複数商品の通関を一挙に行えるため、注文ごとに国内から海外へ発送する方法よりも通関手続きの手間を減らすことができる
  • 国内から拠点倉庫へ大量の商品を輸送することで配送費用を抑えられる

現地に拠点倉庫を構えて商品を発送するデメリット

  • 倉庫のレンタルや在庫を管理する人材が必要なため、コストがかかる
  • 海外拠点で不良在庫が発生した場合、不良在庫を買取・処分をしてくれる業者を探す必要があり消化が難しい

3. 物流業務を外部委託する

3つ目の手段は物流業務を外部委託する方法です。

物流代行専門の業者に物流業務をアウトソーシングすることで、海外発送におけるルールや物流に関する知識がなくても海外顧客との取引が可能です。

物流業務のアウトソーシングは、海外に物流システムを構築しているECモールやフルフィルメントサービスに登録するか、業者と提携する2つの方法がありますが、どちらも「注文が入ったら代行業者に商品を送る」ことで海外発送を手助けしてくれます。

以下のような課題を感じている企業は外部委託を検討してみてください。

  • 海外発送の商品の返品や顧客のアフターフォローに乏しく、満足度低下により新規顧客・リピーターの確保に苦しんでいる企業
  • 海外での更なる販路拡大を考えているが、現地の人脈がないために取引先を確保できていない企業
  • 顧客を増やしたいが海外でのマーケティングに乏しい企業

実際に以下の記事では、越境ECを行う企業の半分以上が物流を委託できるサービスを利用しているという調査結果が出ています。

参考:越境EC、半数以上が他社への「物流委託サービス」を利用 物流委託先のポイントとして、72.4%が「料金やサービスのカスタマイズ性」を重視|PR TIMES

物流業務を外部委託するメリット

  • 商品を送るだけで、海外発送業務を代行してくれる
  • 海外発送のプロに業務を委託できるため、人的ミスを削減できる
  • 越境ECの物流業務を委託できるため、知識不要で海外進出ができる

物流業務を外部委託するデメリット

  • 送料とは別に業務を代行してもらう手数料がかかる
  • 外注先の繁忙期によってはイレギュラー対応が難しい

配送会社の種類

海外発送に対応している配送会社によって、配送する商品のサイズや重さ、配送先の国によって料金や配送日数が異なります。

また、配送会社によって発送できる国も異なります。

日本国内から海外発送ができる配送会社は以下の通りです。

配送会社サイズ・重さ配送日数料金(最低料金)
日本郵便 EMS:30kg・最大長辺3m以内 2〜4日1,450円〜
国際eパケット・パケットライト:2kg・最大長辺90cm以内 3〜6日690円〜
航空便:20kg・合計3m以内 3〜6日5,000円〜
エコノミー航空(SAL)便:30kg・最大長辺3m以内 6〜13日6,000円〜
船便:30kg・合計2m以内 1〜3ヶ月3,000円〜
UGX(法人専用):30kg・長さ1.5m・胴回り3m以内 10日〜要問い合わせ
佐川急便(飛脚国際宅配便) 50kg・最大長辺260cm以内 2〜7日3,800円〜
ヤマト運輸(国際宅急便) 25kg・縦横高さ合計160cm以内3〜7日950円〜

配送業者の選び方

配送業者によっては配送日数や配送できる商品のサイズ・重さが異なるため、選び方に迷うはずです。また、配送業者によって商品にトラブルがあった際の補償や制度が違うため、用途に合わせて適切な業者を選ばなければなりません。

配送会社を選ぶポイントは以下の通りです。

  • 重量やサイズが大きい商品を配送する場合は最大容量の大きい配送会社を選ぶ
  • 緊急性の高い注文を受けた場合は配送日数が速い配送会社を選ぶ
  • 高額商品を発送する場合は、補償金額の上限が高い配送会社を選ぶ

以下では、越境ECを行う際の配送業者の選び方と用途に合わせたおすすめの業者を紹介します。

参考:越境ECで商品を配送する方法とは?配送会社選びのポイントや注意点も解説 |BeeCruise株式会社
   越境ECにおける物流の重要性と課題海外配送の方法や業者の選び方|株式会社 三協

配送できる重量・サイズ

重量がある・サイズが大きい商品の配送をする場合、「配送できる重量・サイズ」を軸に業者選定をしましょう。

業者ごとに配送できるものの最大重量・サイズが定められています。

組み立て式の家具などのサイズが大きく、重量のある商品を取り扱う場合、業者によっては配送できない場合があります。

そのため、重さやサイズのある商品を発送する場合は「最大重量・サイズ」を重視して配送会社を選びましょう。

配送にかかる期間

配送期間は業者によって変わります。配送スピードが今後の取引に大きく影響するため、配送期間が早い配送会社を利用しましょう。

例えば以下のケースです。

  • 配送スピードで競合他社に差をつけたい
  • 取引先の企業から業務に関わるパーツや部品の注文を受けた
  • 医療品や医療機器、重要書類や証明書類など緊急性の高い荷物の発送を受けた

ただし、配送にかかる期間と料金はトレードオフの関係にあり、期間が早いほど、配送料金が上がる点だけ注意が必要です。

配送時の補償範囲

越境ECでは配送時に破損や紛失があった場合の補償がなければ全て自己負担になります。

特に海外発送は国内発送に比べて商品の紛失や盗難などのリスクが高くなるため、補償金額の高い配送会社を選びましょう。

配送会社による補償内容は配送中に荷物が破損・紛失した場合の実損額を返金してもらえる保険です。

上記で紹介した配送会社の全てには配送保険がありますが、補償金額の上限や保険加入にかかる費用が異なります。

数万円を超える高額商品を発送する場合は必ず補償金額の上限額が高い配送会社を選んでください。数千円の商品を発送する場合は無料で保険付帯のあるサービスがあるため、そちらを利用しましょう。


まとめ

本記事では越境ECの物流について解説しました。

越境ECを行うことで海外顧客獲得に向けた販路拡大につなげられますが、商品発送の物流をスムーズに行えなければ、海外市場に向けたEC事業を展開・持続させることはできません。

越境ECの国際物流は各国で禁止・制限されている禁制品の確認や海外発送を行うための書類作成など、顧客の元に商品を届けるだけでもいくつかの物流課題があるため、これらの対応策を講じる必要があります。

越境ECにおける物流形態には以下の方法があります。

  • 自社から商品を直接発送する方法
  • 現地に拠点倉庫を構えて商品を発送する方法
  • 物流業務を外部委託する方法

これから越境ECを始める方は「自社から商品を直接発送する方法」を活用することで、初期費用を抑えてスモールスタートで始めれるのでおすすめです。

すでに大量の注文がある場合は、「現地に拠点倉庫を構えて商品を発送する方法」を活用することで、配送日数の短縮や配送費用の削減につながります。

越境ECで本格的な海外進出を検討されている企業は「物流業務を外部委託する方法」を選びましょう。

配送会社の種類や選び方についても考慮する必要があります。配送できる重量・サイズ、配送にかかる期間、配送時の補償範囲などを確認した上で自社のニーズにあった配送会社を選ぶことも大切です。