自社が所有する膨大な企業データは顧客管理や営業効率化など、さまざまな用途に利用できますが、これらのデータを活用するためには「名寄せ」と呼ばれる作業が必要です。
しかし、この記事を読んでいる方の多くは、名寄せがどういう作業で、なぜ必要なのかまで正しく理解できていないのではないでしょうか。
名寄せとはデータベースの中にある「重複したデータ」を一つに統合する作業です。名寄せを行わないと同じ企業やユーザーに何度も同様のアプローチをしてしまったり、コミュニケーションがちぐはぐになって営業活動・顧客管理の効率が下がってしまう恐れがあります。
今回の記事では「名寄せ」とはどういう作業か、わかりやすくご説明していきます。そのうえで、自社で名寄せをするために利用したいおすすめツールを7つに厳選してご紹介していきます。
今回の記事を読めば、イマイチ分からなかった名寄せについてしっかり理解できるようになります。また、自社でも名寄せを行うために動き出せるようになるので、データの管理にお悩みの方はぜひ読んでみてください。
目次
名寄せとはデータベースのデータを同一の情報で統合する作業のこと
名寄せとは、複数のデータベースの中から個人名や住所といった条件を指定し、同一人物や同一企業をまとめる作業のことをいいます。
整備されていないデータベースの場合、個人名や企業名の登録が煩雑で、表記ゆれや情報の重複が多く見受けられます。
抽出したデータでダブりを起こしていると、同じ顧客になんども連絡してしまうことになり、データ管理の欠如から会社の評価を下げてしまう事態を招きかねません。
そういった細かいミスを防ぐためには名寄せが必要です。
名寄せによるデータの統合が完了した後でも、データを随時追加していくことができるので、一度名寄せをしてしまえばデータベースを引き続き整理しやすくなります。
データ量が少ない場合はエクセルなどを使って手作業で名寄せをすることができます。しかし膨大な企業データを名寄せするのであれば、専用ツールを使うのが一般的です。
名寄せをしないと営業効率・顧客満足度の低下につながる
データを名寄せせずにそのままにしておくと、正確に顧客の管理ができなくなります。
通常ビジネスにおいて、顧客のニーズや検討度合いなどをもとに、営業活動を行ったり、既存顧客に提案・サポートを実施していきます。しかし、データベースが正しく整備されていないと、顧客に対して適切なアプローチが選べなくなります。
これによって、無駄な営業コストが発生したり、顧客からの信頼を下げる可能性が否定できません。
名寄せをしないことで起こりがちなミスの一例として、以下のようなものが挙げられます。
- 同じ顧客に全く同じ内容のDMを何通も送ってしまった
- 既に断られた案件なのに、他の担当者が同じ取引先にまた案件の紹介をしてしまった
- 解約した顧客のメールアドレスが消えておらず、顧客向けメールを送り続けてしまっている
営業コストの面で考えれば、上記のようなミスにより、DMやメールの送料、人件費、資料作成にかかった費用などが無駄になってしまいます。
顧客満足度という観点で考えると、何度も同じような案内が来ることで不快な印象を与えますし、「管理が徹底されていない」ということで、自社への信頼度を落とすきっかけにもなります。
顧客の状況に合わせて適切な営業活動・施策を打ち出すためには、名寄せによるデータ整備が不可欠です。
参考:名寄せ無しにはマーケティング活動や営業活動ができない理由とは?
名寄せはなぜ重要なのか? 顧客管理でキモとなるポイント
顧客管理ができていない会社のあるある5選
名寄せを実施する4つのプロセス
名寄せには、データの調査、データの抽出、データのクレンジング、ID付与によるマッチングの4つのプロセスがあります。
1.データの調査
名寄せ予定の複数のデータベースから、データの属性状況・入力状況を確認します。
入力の状況に合わせて、最終的にどのような形でまとめるのか、名寄せの方向性・ゴールを明確にします。
2.データベースからデータを抽出する
名寄せを行うデータベースから必要なデータを抽出していきます。
調査のプロセスで大まかに決めたデータベースの方向性をもとに、各データソースから必要なデータを抽出していきましょう。
複数のデータベースからデータを抽出する場合は、項目ごとにデータを洗い出す必要があるため、どんなデータ項目で名寄せをしたいのかを事前に決めておきましょう。
機械または目視によって照合と確認をしつつ、必要なデータのみをデータベースから抽出していくことになります。
3.データのクレンジングをおこなう
データの抽出が完了したら、次はデータクレンジングに移ります。
名寄せは同一氏名や同一住所などで、データをまとめていくため、データの表記は同じである必要があります。そのため、データクレンジングのプロセスでは、データベースの表記ゆれなどを探し、修正または削除していきます。
データのクレンジングをするときは、データベースの表記ルールを決め、それに従って表記を修正します。株式会社と(株)、半角と全角、カタカナとひらがななど、決めたルールに従って表記を統一させていきましょう
表記を統一したり、無駄なデータを削除したりすることで、データベースの質を向上させることができます。
4.IDを付与しマッチングをおこなう
最後のプロセスでは、クレンジングしたデータにIDをつけてデータの統合をしていきます。
データクレンジングにより、同じ要素を持っていると判断された情報に同一のIDを与えることで、これらを同じ要素として特定できるようになります。
そのため、データベースでまとめたい項目に同一のIDを与えマッチングを行い、データが重複していないかを確認していきましょう。
名寄せツールをおすすめする3つの理由
データベースの名寄せをするときは、自動的に作業をしてくれる、情報漏洩のリスクを抑えられる、サポートが充実しているなどの理由から、名寄せツールを使うのがおすすめです。
手作業で名寄せをすることも可能ですが、データベースのデータ量が多い場合は、ツールを使う方がメリットが多いです。
自動的に名寄せをおこなってくれる
名寄せツールの多くは辞書などを搭載しているため、条件を設定すれば、自動で名寄せを行ってくれます。
名寄せはデータの表記ゆれや重複を1つ1つ確認していき、同一の情報をまとめる作業のため、量が膨大なデータベースを名寄せしようとすると、手作業ではかなりの時間を要してしまいます。
条件を入力するだけで自動的に名寄せを行ってくれるツールは、名寄せの実現を現実的なものにするために必要です。
情報漏洩のリスクを低減できる
ツールを使えば、膨大なデータ量があるデータベースでも名寄せが自社でできるようになるため、情報が漏洩する心配がないというのも、名寄せツールがおすすめな理由です。
データ量が多いと手作業では大変なので、ツールを使わないのなら、名寄せ専門の業者に定期的に依頼することも可能です。
しかし、名寄せ専門の業者とは言えども、そこから大事な顧客データが漏洩してしまう可能性もあります。
名寄せツールを使って自分で名寄せをすれば、自社の顧客情報を社外に持ち出す必要がないため、情報漏洩の心配をしなくて済みます。
参考:名寄せ無しにはマーケティング活動や営業活動ができない理由とは?
サポートが充実している
名寄せツールの多くは、顧客情報のメンテナンスやユーザー向けのセミナーなどのサポートが充実しています。
Excelなどを使って自分で名寄せをするには、作業手順などを自分で学ぶ必要がありますが、ツールを使えば作業方法を教えてもらえるケースが多いです。
特に名寄せの作業を初めて行う方は、どうやって名寄せを進めるのか、名寄せをしたデータベースをどうやって活用していくのか、などの疑問や不安があると思います。
そんなときに、カスタマーサービスや学習リソースのサポートが充実しているツールを使っていれば、不安や疑問を解消することができるでしょう。
参考:Marketo Engage
顧客情報メンテナンスサービス
名寄せに活用したいおすすめツール7選
「専門的なプログラミングが不要で初心者でも使いやすい」 「名寄せのプロセスをスムーズにする機能を搭載している」 という選定基準で選んだ、主要名寄せツール7つご紹介します。
それぞれのツールの特徴をまとめましたので、比較しながら、気になる名寄せツールを探してみてください。
1.FORCAS
FORCASは、顧客管理システムから名刺データ、営業ターゲットリストなどの面から、データベースを名寄せすることができる名寄せエンジンです。
顧客情報をIDごとにまとめるだけでなく、ユーザーの求めるマーケティングの方向性に合わせて、成約確度の高い顧客をまとめたターゲットリストを作成することも可能です。
顧客データに基づいたターゲットリストを作成できるため、データを活用してマーケティングを行うABMの実践を行いたい企業におすすめです。
特徴
- 名前や業種、従業員数などで顧客データを名寄せできる
- データから制約確率が高い顧客のターゲットリストを作成できる
- 条件保存か可能なマイリスト機能を完備
- ターゲットリストはExcelでダウンロード可能なので、チーム内での共有がしやすい
- 顧客データや名刺データなど、複数のデータベースを統合するのに便利
費用
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2.Syncsort TRILLIUM
Syncsort TRILLIUMは全世界で約1,500ユーザー、日本国内では約200ユーザーの実績がある、データクレンジング・名寄せツールです。
データ表記のゆれや不統一を修正するデータクレンジングを重視しているため、データベース全体の質を高めることが可能です。
名寄せのIDを自由に設定できるため、細かい条件で顧客データをまとめたい企業に特におすすめです。
特徴
- 搭載している住所や姓名、法人などの各種辞書により、表記がバラバラのデータをクレンジングできる
- 名寄せの条件を自由に設定することができるため、データベースの方向性にあった名寄せができる
- 新住所取得のオプションを設定すれば、顧客の住所のアップデートもできる
- 無駄な情報の削除だけでなく、指定したキーワードの変換もできる
- ヒアリングをした上で、業務背景を考慮した名寄せを行ってくれる
費用
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3.ユーソナー(uSonar)
ユーソナー(uSonar)
ユーソナーは、データベースの情報をもとにアプローチするターゲットを決めるABMを行う上で非常に便利になる、名寄せ機能を持つ顧客データ統合(CDP)ツールです。
名寄せの質を左右する辞書のようなマスターが優れているため、顧客の企業名や氏名はもちろん、住所や郵便番号などの情報までデータクレンジングを自動で行ってくれます。してくれます。
顧客のプロフィール情報やリード情報など、必要な情報を全て統合して名寄せができるCDPツールのため、顧客データの管理を1つのツールで行いたい企業におすすめです。
特徴
- 日本最大の企業データである「LBC」を使って、高精度の名寄せが可能
- 一度構築したデータベースは、その後自動でデータのメンテナンスをしてもらえる
- 顧客のプロフィール情報だけでなく、名刺データや顧客のWeb来訪データなど、マーケティングに必要な情報を全て1つにまとめることができる
費用
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4.DataStage®
DataStage®は、データ抽出、変換、書き込み機能を搭載した、システム間のデータ連携を行うことができるETLツールです。
異なる形式のシステムにあるデータを、1つの統合データベースにまとめることができるため、他企業と合併したときにデータベースをまとめたいときや、形式の異なる複数のデータベースをまとめたいときにおすすめです。
特徴
- 違う形式のデータをまとめて1つにできる
- アイコンやボタンなどの視覚的に把握しやすく直感的に操作できるGUI操作なので簡単に作業ができる
- 文字コードの違いも吸収してまとめられるので、複数のデータベースから抽出したデータを名寄せしやすい
- 依頼してデータベースのパッケージ化をしてもらった後は、自動で編集履歴を更新してくれる
費用
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5.OpenRefine
OpenRefineは、Googleが開発しリリースした、名寄せとデータクレンジングができるソフトウェアです。
データを名寄せによりまとめるだけでなく、プログラム言語を使えば、データの変換なども行うことができます。
全て無料で使えるソフトウェアのため、まずは無料で名寄せのプロセスを体験してみたい方や、顧客管理にはあまり費用をかけられないという企業におすすめです。
特徴
- データの収集からマッチングまで、名寄せの全てのプロセスを無料でできる
- APIサービスを経由すれば、郵便番号などの情報から顧客の住所を取得できる
- 全てのデータをプライベートで扱えるため、情報漏洩の心配がない
- データを名寄せするだけでなく、統合後に順位やばらつき具合などの算出もできる
- データ整理と変換ができる
費用
無料
6.SanSan
SanSanは、名刺をスキャンすることでデータベースに入力し、名寄せを行うことができるツールです。
データ化した名刺情報をまとめるだけでなく、その人物とのやり取りや人物情報、画像データも合わせて加えることができるため、顧客の情報を管理しやすくなります。
また、名刺情報をデータ化して残しておけるので、担当者が退職しても名刺をもらった人物の顧客情報を失わなくて済むというメリットもあるのです。。
プロジェクトチームの社員全員で顧客の情報を共有して営業を行いたい企業や、担当取引先の引き継ぎが頻繁にある企業などにおすすめです。
特徴
- レンタルした専用スキャナーを使って、名刺をデータ化できる
- データ化した名刺の情報に、議事録や人物情報を加えることも可能なため、取引先の人物の情報を管理しやすい
- 専用アプリを利用すれば社外ですぐに顧客データを確認できる
費用
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Sansanスキャナー:10,000円/月
7.Marketo
Marketoは、全世界で5,000社以上が利用している、名寄せに使えるMA(マーケティングオートメーション)ツールです。
搭載している機能の1つに名寄せ機能があり、メールアドレスや顧客情報などを自動的にクレンジングし、名寄せを効果的に行います。
重複したメールアドレスや氏名があれば、それを修正または削除してくれるため、同じ顧客にDMやメールなどを送ってしまうというミスを防ぐことができます。
Marketoを有効的に利用することができるよう、ユーザー向けにトレーニングやセミナーを開いているため、初めてMAツールを導入してみたいと考えている企業におすすめです。
特徴
- 自動的に氏名・メールアドレスなどの情報を名寄せしてくれる
- 名寄せのプロセスだけでなく、名寄せした質の高いデータベースを使ってマーケティングをサポートしてくれる
- 別の顧客管理システムのリストからデータを取り込むことも可能
費用
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まとめ
名寄せは社内で抱えている企業データなどから、企業名の表記ゆれや重複している情報を統一する作業を指します。
名寄せを行わずに重複したデータなどに気づけず、同じ企業に何度も同じアプローチをかけたり、解約した企業に同様の提案したりと、無駄な工数が発生する可能性があります。また、顧客視点から見ても印象が悪いため、顧客満足度の低下にもつながります。
名寄せは手作業でもすることができますが、対象のデータ量が膨大な場合は、ツールを使って名寄せを実施するのが現実的です。
今回紹介した7つのツールであれば、余分なリソースを割かずに名寄せができるので、名寄せの実施にお困りの企業はぜひ検討してみてください。