リカレント教育とは?キャリアアップに必要な知識をお得にアップデート

リカレント教育とは

リカレント教育とは、義務教育や基礎教育を終えた後も、継続的に学び、専門知識やスキルを更新・向上させるための教育のことを指します。

これにより、個人はキャリアの発展や自己実現を行うことができます。

さらに、技術の急速な進歩やキャリアの多様化、転職の増加、高齢化社会への対応といった現代社会の変化に対応するためにも、リカレント教育が重要視されています。

しかし、リカレント教育はプログラムも多岐にわたり、助成金なども豊富で、情報を収集するのも選ぶのも一苦労だと思います。

そこで本記事では、リカレント教育で知っておくべき基礎知識や、リスキリングなどの類似要ごとの違い、メリットや学べること、助成金や支援の一覧、選び方などをご紹介します。

社会人の学びなおしに興味がある方はぜひご一読ください。

目次


リカレント教育とは

リカレント教育とは、義務教育や基礎教育を修了し、社会で働き始めた後も、各自のタイミングで教育機関や社会人講座などを利用し、継続的に学ぶことを指します。

リカレント教育は、スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンが提唱した概念です。

リカレント教育を通じて専門知識やスキルを更新・向上させることで、キャリアの発展やライフロングラーニングの実現に近づくことができます。

リカレント教育の基礎にあるライフロングラーニング(生涯学習)の概念

ライフロングラーニングとは、ユネスコ(UNESCO)のポール・ラングランが提唱した、生涯にわたり学び続けることです。

この学びには、学校教育や職業訓練だけでなく、趣味の学習なども含まれます。ライフロングラーニングでは、知識やスキルの向上だけでなく、自己実現も目的としています。

リカレント教育はこのライフロングラーニングの概念を通じて豊かな生活を実現するために行われます。


なぜリカレント教育が必要なのか

なぜ現代においてリカレント教育が重要視されているのでしょうか。それには以下のような背景が大きく影響しています。

技術の急速な進歩

科学技術の発展により、日々新しい知識や技術が生まれています。

特に情報技術や人工知能の分野での変化は目まぐるしく、この変化に対応するためには、最新の知識や技術を常に学び続けることが求められています。

キャリアの多様化

近年では、キャリアのパターンが多様化しています。

一つの職種や企業に生涯を費やすのではなく、自らの適性や興味を重視した仕事選びが主流となっています。

これにより、ライフステージや環境の変化に柔軟に対応するためのキャリアデザインが求められています。

転職の増加

キャリアの多様化に伴い、転職という選択肢も一般化しつつあります。

転職を有利に進めるためには、新しい職場で求められる知識やスキルを身に付けることが重要であり、リカレント教育は、転職を成功させるための手助けにもなります。

高齢化社会に対応する必要性

日本の高齢化が進む中で、労働者はより長く働くことが求められるようになっています。

経験豊富な高齢者であっても、変化の激しい社会で活躍し続けるためには、新しい知識や技術を学び続ける必要があります。

個人の自己実現

個々人の自己実現をサポートすることもリカレント教育の役割のひとつです。

自身の興味や夢を追求したり、充実した人生を送るためにも学び続けることは大切です。


リカレント教育、リスキリング、アンラーニングの違い

次にリカレント教育と類似している概念のリスキリングやアンラーニングとの違いについて説明します。主な違いは以下の表のとおりです。

項目リカレント教育リスキリングアンラーニング
主体主に就労者主に企業企業や従業員
目的ライフロングラーニング実現のために就労と学びを繰り返す時代に適応するため従業員に新たなスキルを習得する新たなスキル習得の障壁となる考え方、スキル、ルーティンなどを捨てる
学び方職場を離れて学びなおす就労と並行して学ぶ就労と並行して学ぶ

リカレント教育とリスキリングの違い

リスキリングとは、リカレント教育と同じく既存のスキルや知識を新しいものにアップデートする学びなおしを意味する言葉です。

しかし、リスキリングは企業側が主体となり従業員のスキルアップを促すことを指すことが多いです。

一方リカレント教育の主体は、組織が主体となって促すこともありますが、自主的なスキルアップのニュアンスが一般的です。

また他にも、リスキリングは就労と並行して行われることが多い反面、リカレント教育は職を離れて教育機関などで学びなおすことを前提としている点も大きな違いの一つです。

リカレント教育とアンラーニングの違い

アンラーニング(学習棄却)とは、新しい知識や技能を効率的に学ぶにあたっての障壁となる既存の知識や技術を捨てることを意味します。

新しい知識や技能を学ぶことを前提としている点においては、リカレント教育やリスキリングと同じですが、あくまでもその前段階としての「捨てる」部分にフォーカスしているのがアンラーニングの特徴です。


リカレント教育のメリット

リカレント教育のメリットは、個人と企業で異なります。

本記事では、リカレント教育のメリットを個人と企業に分けてご紹介します。

リカレント教育を行う個人のメリット

まずは個人がリカレント教育を行う際のメリットからご紹介します。

キャリアの選択肢が広がる

新しいスキルや知見を取得することで、これまでよりも多くのキャリアの道が開かれます。

その結果、自身の興味や適性に適した職業を見つけることが容易になるでしょう。

専門性の高い職種への移行

リカレント教育を利用することで、現在の職種から専門的な職種へと移行することも可能です。

一般的に専門性が高くなるにつれ専門家の数は減り、相対的に報酬が上がるなどのメリットが期待できます。

年収の増加

新しい知識やスキルを身に付けることで、自身の市場価値を向上させることができます。

リカレント教育では、就労と学びを繰り返すため、時間経過とともに市場価値が向上していくことが期待できます。

助成金の活用でコストを抑えて学習可能

リカレント教育を受ける際には、国や自治体、企業からの助成金を利用することができるケースがあります。

助成金の種類については後述の助成金の一覧をご覧ください。

企業として支援する際のメリット

次に企業が従業員のリカレント教育を推進する際のメリットについてご紹介します。

従業員の生産性向上

リカレント教育を通じて従業員のスキルや知識を向上させることで、全体的な生産性の向上が期待できます。

離職防止(人手不足の解消)

従業員のスキルアップやキャリアアップを支援することで、従業員の満足度が向上し、離職の予防が期待できます。

これにより、人手不足の問題も軽減することができるでしょう。


リカレント教育で学べること

リカレント教育のプログラムは様々で、民間企業、教育機関、国や自治体、その他の団体などによって実施されています。

多彩なコースや講座、プログラムが提供されているので、目的や関心に応じて選ぶことができます。

民間企業のプログラムで専門技術を身に着ける

民間企業が開催するリカレント教育では、各業界の新しい情報や実用的スキルを学ぶことができます。

たとえばプログラミングやデザイン、マーケティングなど、分野も多岐にわたります。

さらに、特定の業界にフォーカスしたコースで、業界に特化した専門知識やスキルを集中的に身につけることもできます。

教育機関で専門知識を学ぶ

大学、専門学校、その他の教育機関が提供するリカレント教育では、専門的な学問や技術を身に着けることができます。

経済学や工学などの学問の最新の学びを得たり、国家資格などの取得を目指す方向けの講座も充実しています。

その他団体で役立つ知識を学ぶ

その他、自治体、NPOなどが提供するリカレント教育では、一般的なビジネススキルや日常生活に役立つ知識をなどを学ぶこともできます。

コミュニケーションスキル、健康管理の方法、趣味に関連する講座などもあります。キャリアサポートのセミナーやワークショップも充実しています。


国が行うリカレント教育関連の支援や助成金の一覧

リカレント教育は厚生労働省も推進しており、学習を行いたい人の経済的支援や、その他サポートを行っています。以下にその一例を紹介します。

※支援の対象や内容は変更・更新される可能性もあるため、詳しくは厚生労働省や文部科学省のページから最新の情報をご覧ください。

労働者の主体的な学びへの支援

教育訓練給付金

教育訓練給付制度は、働く人々が自発的にスキルやキャリアを向上させることをバックアップし、雇用の安定化や再就職の促進を目的とした制度です。

厚生労働大臣が指定した教育訓練プログラムを修了すると、その受講料の一部が給付される仕組みとなっています

教育訓練の種類は3つに分類されています。(以下厚生労働省のHPより抜粋)

専門実践教育訓練
・特に労働者の中長期的キャリア形成に資する教育訓練が対象となります。
・受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給されます。
・資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加で支給されます。
・なお、失業状態にある方が初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する場合、受講開始時に45歳未満であるなど一定の要件を満たせば、別途、教育訓練支援給付金が支給されます。
引用:教育訓練給付制度/厚生労働省

特定一般教育訓練
・特に労働者の速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象となります。
・受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。
引用:教育訓練給付制度/厚生労働省

一般教育訓練
その他の雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象となります。
受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給されます。
引用:教育訓練給付制度/厚生労働省

詳細や申請手続きなどについても下記のページをご覧ください。

参考:教育訓練給付制度/厚生労働省

高等職業訓練促進給付金

高等職業訓練促進給付金は、シングルペアレントが資格を取得するために学んでいる間の生活費を支えるための支援制度です。(以下厚生労働省HPより抜粋)

対象者
 訓練開始日以降、次のどちらにも該当するひとり親の方
 1 児童扶養手当の支給を受けているか、同等の所得水準(※1)にある方
  ※1 例:お子さんが1人の場合、1年間の収入が365万円未満
 2 養成機関において6月以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得等が見込まれる方

支給内容
 1 訓練期間中、月額10万円(住民税課税世帯は月額70,500円)
  ※訓練を受けている期間の最後の1年間は支給額を4万円増額
 2 訓練修了後、5万円を支給(住民税課税世帯は25,000円)

引用:高等職業訓練促進給付金のご案内/厚生労働省

キャリアコンサルティング

厚生労働省委託事業のキャリア形成・学び直し支援センター(キャリガク)は、「個人(現職者)」「企業・団体」「学校関係者」といった様々な方々を対象に、ジョブ・カードを用いて無料でキャリア形成の支援や学び直しのサポートを提供しています。

参考:キャリア形成・学び直し支援センター/厚生労働省委託事業

学び・学び直し促進のための特定支出控除における特例措置

「学び・学び直しのための特定支出控除特例措置」とは、厚生労働大臣指定の教育訓練講座受講時に、給与支払い側の証明の代わりにキャリアコンサルタントの証明で特定支出控除が適用できるという特例措置です。
職務に関連する特定支出の証明を給与支払い側から得る必要がなくなり、利用しやすくなっています。

参考:特定支出控除制度におけるキャリアコンサルタントによる証明制度について/厚生労働省

労働者が受講できる公的職業訓練

厚生労働省は他にも労働者のスキルアップや、希望する仕事に就くための公的職業訓練「ハロートレーニング」も提供しています。

ハロートレーニングの詳細については以下のページをご覧ください
参考:ハロートレーニング/厚生労働省

事業主による人材育成への支援

厚生労働省は人材育成を行う事業主側の支援も行っています。以下に一例を紹介します。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、事業主が従業員に職務関連の専門知識や技能の習得のため職業訓練を提供する際、その経費や訓練期間中の賃金の一部を補助する制度です。
詳細については以下のページをご覧ください。

参考:人材開発支援助成金/厚生労働省

生産性向上支援訓練

生産性向上支援訓練では、企業の生産効率を高めるために必要な知識を、産業別の効果的なカリキュラムを通して習得することができます。

全国の生産性向上人材育成支援センター(生産性センター)がカスタマイズされた訓練コースを提供し、民間機関と連携して実施します。

参考:生産性向上支援訓練/独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構


自分に合ったリカレント教育の選び方

最後に自分に合ったリカレント教育の選び方についてご紹介します。選ぶ際のヒントにしてみてください。

自分の興味のある分野から探す

自分が興味を持っている分野に関連することを探すことは、継続的に学習するうえで大切な要素です。

興味があることで学びもより楽しくなり、学習効果も高まります。

成長している分野から探す

市場が拡大している、将来性がある分野の教育プログラムを選ぶことも大切です。

成長している分野でスキルを身に付けることで、キャリアアップに繋がる可能性が高まります。

マナパスを利用する

マナパスとは、文部科学省の委託事業で、社会人の大学等での学びを応援するサイトです。

分野だけでなく、給付金の有無や土日・夜間開講などの条件で講座内容を検索することができます。

参考:マナパス/文部科学省委託事業

キャリアコンサルタントへ相談する

自分のキャリアに悩んだ時には、キャリアコンサルタントに相談することも一手です。

自分のキャリアについて客観的なアドバイスをもらうことで自分に合ったリカレント教育を選ぶことができるでしょう。


まとめ

リカレント教育は、個人のキャリア発展や自己実現をサポートし、現代社会の変化に対応するための重要な役割を果たしています。

リカレント教育を受けることで、キャリアの選択肢が広がり、専門性の高い職種への移行や年収の増加が期待できます。

また、企業にとっても、リカレント教育は従業員の生産性向上や離職防止に寄与します。

リカレント教育のプログラムは様々で、民間企業や教育機関、国や自治体などが実施しており、助成金を活用することで、学習コストを抑えることも可能です。

自分に合ったリカレント教育の選び方としては、自分の興味のある分野や成長している分野から探す、マナパスのようなポータルサイトを利用する、キャリアコンサルタントへ相談するなどがあります。

これらを利用して、自分に合ったリカレント教育を選び、より充実した人生を送りましょう。