日本で会社に就職するとなると、面接を受けて内定を獲得するのが一般的です。一方で、アメリカでは採用方法の3割がリファラル採用です。日本においてはリファラル採用を取り入れている企業は多くありません。しかしリファラル採用は、コストをおさえつつ社員の定着率も高いため、注目度が増している採用方法です。
この記事では、リファラル採用の概要やメリットについて解説しています。リファラル採用が効果的なケースや時期、導入時のポイントも紹介しますので、ぜひ役立ててください。
目次
リファラル採用とは?
リファラル採用とは、自社の社員に知り合いなどを紹介してもらい、採用につなげる方法のことです。社員自ら自社にマッチすると思う人材を紹介することで、ミスマッチが起こりにくく定着率も高いといった特徴があります。
また、人材紹介会社などを利用するより採用コストをおさえられるのも大きな特徴です。
「縁故採用」と「リファラル採用」の違い
社員による人材紹介というと、縁故採用をイメージする人もいるでしょう。ただ、縁故採用とリファラル採用は全くの別物です。
縁故採用は、社員の血縁関係や特別な人間関係などを持っている人材を採用することを意味します。この際、スキルなどは考慮されないことが一般的です。
一方のリファラル採用は、採用にあたって一定の基準を満たしているかどうか、自社の社風に合う人材であるかどうかなどを踏まえたうえで採用を行います。友人、知人を紹介するといっても、採用にあたっては明確な基準を設けているのがリファラル採用です。
リファラル採用が注目される背景
リファラル採用が注目されている理由としては、主に以下の点が挙げられます。
- 人手不足、採用競争の激化
- 採用しても人材が定着しない
2019年現在の採用は売り手市場となっているため、企業は募集をかけても十分な応募者を獲得することが難しくなっています。また、少ない応募者の中で適切なスキルを持った人材を採用することは容易ではありません。
仮に採用できたとしても、社風とのミスマッチなどによって離職するなど、定着率の低さも課題となっています。
このような採用競争の激化、社員を定着させることの難しさから、リファラル採用が注目されているのです。
リファラル採用の3つのメリット
リファラル採用を導入するメリットはさまざまですが、特に以下の3つが主なメリットとして挙げられます。
1.企業に合う人材に接触でき、採用後も定着しやすい
リファラル採用は、候補者の性格や強みなどについて詳しく知っている人が紹介者となるため、企業の求める人材にピンポイントで接触できるという特徴があります。
『Source of Hire 2016 (Infographic)』によると、リファラル採用による採用率は22.2%と他の採用手段に比べて比較的高い割合であることが明らかになっています。
また、企業と候補者との間に社員が入り、企業理念や社風、仕事内容などを事前に詳しく説明できるため、入社後のミスマッチを防ぐことができます。そうすることで、既存社員の定着率を高めることにもつながります。
リファラル採用は、企業、求職者の両者にとってメリットがある採用手法です。
参考:Source of Hire 2016 (Infographic)│SocialTalent
2.採用コストをおさえられる
日本の企業が人材を募集する場合、求人サイトや人材紹介会社を利用するケースが少なくありません。これらのサービスを利用するには、当然費用がかかります。
一方のリファラル採用の場合、人材を紹介してくれた社員に対して報酬を支払うことはありますが、外部サービスを利用することに比べればはるかに費用をおさえることができます。また、面接の回数を減らすなど採用プロセスをカットできるため、結果的に人件費をおさえることも可能です。
このように、リファラル採用を活用することで、採用にかかる時間、費用ともに節約できます。
3.転職活動をしていない人材にもアプローチできる
求人サイトや人材紹介会社に登録するのは、転職活動や求職している人であるため、企業は転職を考えていない潜在的な層にアプローチできません。
しかし、リファラル採用であれば、転職を考えていない優れた人材にもアプローチできるため、費用をおさえて優秀な人材を採用することも可能です。
リファラル採用を推進している企業の事例
年間採用人数の約半数をリファラルで採用するSalesforceの事例
顧客関係管理サービスを提供するSalesforceでは、年間で採用する人員の約半数がリファラル採用によるものです。コアバリューに沿った人材が入社するプラスの連鎖が組織の成長を支えています。
- コアバリューに沿った形のインタビュー項目(コンピテンシー)による面接
- 入社前から継続するサポートとエンゲージメント強化
- 事業部との連携を強化し、採用目標達成を目指す
熱量が伝わればリファラル採用へ積極的に協力してくれると考え、採用前から入社後活躍するまでのオンボーディングプロセスに沿った形で、社員に対する1on1といったアプローチを行っています。このように事業部と緊密に連携することで高いエンゲージメントを維持し、急成長による大量採用ニーズにも対応しています。
参考:約半数をリファラルで採用するSalesforceの成果を支える「コアバリュー採用」とは|共感採用はなぜ必要か vol.02【Event Report】
リアルタイムの紹介状況把握とプロセス簡易化で採用を活性化したfreee株式会社の事例
クラウド会計ソフトを展開するfreeeは、「自分たちのメンバーは自分たちで集めたい」という考えのもと、創業当初からリファラル採用を進めており、マッチ率が高い採用活動を実施できています。
具体的な取り組みは下記のとおりです。
- リファラル採用支援サービスを導入し、紹介プロセスを可視化・簡易化
- リアルタイムで紹介状況を把握し、効果的な施策を実施
- 1on1の実施など、社員が友人を招待しやすい環境づくり
リファラル採用支援サービス「Refcome」の導入によって、数値の可視化とオペレーションの効率化が実現し、社員が友人を自然に招待しやすい環境を整えました。社員への紹介依頼をはじめとしたオペレーションを統一できたことで効率的かつ丁寧な採用活動が可能になり、リファラル採用の決定率が向上しました。
参考:リファラル採用の紹介プロセスを可視化し、簡易化することによって中途採用での成果を最大化
リファラル採用が効果的なケース
リファラル採用は、企業にとってもメリットの多い採用方法ですが、以下のような場面では特に効果的です。
- 採用後のミスマッチと離職率を減らしたい
- 採用のコストをおさえたい
リファラル採用の場合、入社後のギャップが少ないという特徴があり、離職の可能性が低くなるため、離職率を減らしたい企業に向いている方法です。また、発生する費用は紹介した社員に対する報酬のみなので、採用コストを大幅におさえることができます。
リファラル採用が効果的な時期
リファラル採用は、活用する時期によってもその効果が大きく変わってきます。
新卒採用なら、就職活動が本格的に始まる前の段階がおすすめです。また、内定者に対して、後輩に自社への応募を促してもらうことも可能です。
中途採用の場合は、友人や知人と顔を合わせる機会が多くなるタイミングが最適です。例えば、年末は忘年会や地元への帰省などで旧友に会うことも多くなると考えられるため、声をかけやすいタイミングだといえます。また、転職市場が活発になる6月、12月(ボーナスの後)もリファラル採用に向いているタイミングです。
リファラル採用導入までの3つのチェックポイント
実際にリファラル採用を行う際の流れをご説明します。最低限、以下の3つのチェックポイントをおさえておきましょう。
1.リファラル採用メンバーを厳選
まず「リファラル採用」というプロジェクトメンバーを集めましょう。最初は全社員を対象にするのではなく、一部のメンバーのみを対象に行っていくのが安全です。人数は10人以内におさえておくと良いでしょう。
プロジェクトメンバーは無作為に集めるのではなく、例えば「求める人材に近い年齢層」など基準を設けるようにしてください。
2.制度設計
プロジェクトを発足したら、リファラル採用の制度設計です。設計が曖昧なままだと、本来求めている人材とは異なる人材が紹介される恐れがあります。
設計にあたっておさえておきたいのは以下の点です。
- 募集条件
- どういった人を採用したいのか
- 紹介してくれた社員に対する報酬
- 制度の窓口の設定
これらの点を中心に、制度の細かい部分まで内容を詰め、明文化していきましょう。
3.従業員への告知・インナーブランディングも行う
プロジェクト内でリファラル採用が浸透してきたら、少しずつプロジェクトを拡大し、最終的に全社員を対象にしていきましょう。
リファラル採用は、社員の存在が鍵となるため、実施の際は制度について社員に告知を行うことが大切です。採用によってどのくらいの報酬があるのか、どういった基準で採用するのか、細かい部分まで告知してください。
また、紹介を行う社員の帰属意識が低いと、十分な協力を得られない可能性があります。そのため、インナーブランディング(従業員に企業の価値や目標を理解させるブランド構築活動)を行うことも大切です。
リファラル採用は、社員が自社に誇りを持ち、自分の友人、知人にも働いてほしいと思えることが重要なため、会社として社員一人ひとりを大切にすることが欠かせません。
リファラル採用を始める前におさえておきたい3つの注意点
リファラル採用は効果が高い採用法ですが、決して万能ではありません。あらかじめ注意点を把握しておきましょう。特に以下の3つは導入後にありがちなので要注意です。
1.人間関係に影響を与える可能性がある
紹介してもらった人材を結果的に不採用とした場合、紹介してくれた社員と候補者の関係が悪化することで社員の心証が悪くなることがあります。また、入社に至ったとしても紹介者と候補者の仲が悪くなると、最悪の場合どちらかの離職につながる可能性もあります。
こういった事態を防ぐために、紹介してくれる社員には不採用になる可能性があることをあらかじめ伝えておくようにしましょう。また、不採用であったことを伝える際には、候補者だけでなく紹介してくれた社員にも最大限の配慮をし、伝え方にも気を付けなければいけません。
2.似たような人材が集まりすぎないよう配慮する
友人や知人関係をベースにした紹介が多いため、スキルや特徴が似たような人材が集まる可能性があります。リファラル採用は、自社の雰囲気を踏まえて、社員の友人、知人に声をかけてもらうため、こういった事態が起こるのは仕方のない部分もあります。しかし、注意しておかないと似たような人が多くなり、思考が硬直するなど、生産性が落ちることも予想されます。
そうならないためにも、定期的にリファラル採用の振り返りを行い、同じような人材によって派閥ができていないかなど、入社後の影響を意識するようにしましょう。
3.他の採用方法と併用して行う
リファラル採用はミスマッチの減少、コスト削減など企業にとってメリットの多い採用方法です。一方で、制度を導入しても、社内での認知度向上や実際の採用といった成果を上げるまでには時間がかかります。一定数の人材を一気に採用したいときなども不向きです。
そのため、リファラル採用のみに頼るのではなく、採用枠のうち一部をリファラル採用するなどし、複数の採用方法を活用するようにしましょう。
リファラル採用に関するよくあるご質問
リファラル採用を検討中の方に役立つQ&Aをまとめています。
Q. リファラル採用を実施する際に注意すべき点は何ですか?
A.社内の多様性が失われないように注意し、特定の人脈に偏らないよう広範なネットワークを活用することが求められます。
Q. リファラル採用のインセンティブはどのように設定すべきですか?
A.成果報酬型が一般的であり、インセンティブの内容やタイミングを工夫することが推奨されます。
Q. リファラル採用の活性化にはどのような方法がありますか?
A.社内コミュニケーションの促進やイベントの開催、成功事例の共有などが効果的です。専用ツールの導入も検討できます。
Q. リファラル採用が向いている企業の特徴は何ですか?
A.企業文化が明確で、従業員が価値観を共有している企業や、従業員同士のコミュニケーションが活発な企業に向いていることが多いです。
まとめ
今回はリファラル採用の概要からメリットや導入時のポイントなどについて紹介しました。人材の確保が簡単ではない売り手市場の近年において、社員の定着率向上、コスト削減が期待できるリファラル採用は企業の選択肢の一つです。
実施にあたっては、制度設計をしっかり行うことと社員への周知徹底のほか、社員が自分の友人、知人に紹介したいと思えるような会社づくりを心がけることが大切です。
参考にしたサイト
リファラル採用の意味とは?メリットや組織に根付かせるポイントを解説│BizHint(ビズヒント)- 事業の課題にヒントを届けるビジネスメディア
リファラル採用とは?メリットや費用、社内で定着させるポイント│duda(デューダ)中途採用
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