QR決済は今多くのユーザーから注目を集めているため、導入を検討している事業者も少なくありません。しかし、果たして本当に導入すべきなのかの判断がつかず、二の足を踏んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論から言いますと、QR決済は今すぐ導入すべき決済手法です。普及を進めていくために政府主導で事業者の負担を軽減していたり、各サービスが認知拡大のためキャンペーンを多く行っているので多くのユーザーが積極的に利用しています。導入するなら今がベストです。
今回はQR決済の概要や現状、メリットについてを説明したうえで、実際に導入すべき店舗や導入までの流れまで解説していきます。
目次
- QR決済とはQRコードを使った決済手法
- QR決済とクレジットカードの比較
- QR決済を後押しする動き
- キャッシュレス・消費者還元事業の実施
- QR決済の統一規格「JPQR」 もう1つの政策は、QR決済の統一規格「JPQR」です。2018年7月に設立された「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」において、検討が進められてきました。2019年3月29日に、以下の3つのガイドラインが公表されています。 利用者提示型バーコード 店舗提示型バーコード QR決済のオペレーションガイドライン このうち、利用者の端末でQRコードを表示する「利用者提示型バーコード」については、2019年8月1日に切り替えが行われました。 参考:モバイル決済モデル推進事業」の実証で用いる利用者提示型コード決済における統一バーコード(JPQR)への切替目標日時の決定|総務省 QR決済を利用する加盟店側の4つのメリット QR決済を支払い方法に取り入れることは、利用者だけでなく加盟店にもメリットをもたらします。一例として収入の増加やコスト削減がありますが、これに限りません。ここでは主な4つのメリットを取り上げ、それぞれについて解説します。 1. 外国人観光客へのアプローチが可能
- 2. ポイント・キャンペーンなどで利用したいユーザーが多い
- 3. 現金を扱う機会が減少する
- 4. 無人化などの業務効率化の可能性が広がる
- QR決済、主要3サービスの導入事例
- QR決済を導入すべき企業・店舗とは
- QR決済を導入するまでの流れ
- QR決済に関するよくあるご質問
- まとめ
QR決済とはQRコードを使った決済手法
QR決済は、四角形の2次元コードを使って支払いを済ませる仕組みです。日本では2018年になって、急速に使われるようになりました。
QR決済には以下に示す通り、2つのタイプがあります。
- 店舗が提示したQRコードを利用者が読み取り、決済する
- 利用者がスマートフォン等で表示したQRコードを、店舗が読み取り、決済する
どちらのタイプになるかは、QR決済を運営する事業者、および店舗によって決まります。いずれにせよクレジットカードのように専用のカードを持つ必要がなく、決済アプリへの事前チャージやクレジットカード、銀行口座の登録を完了しておけば、スマートフォンだけで支払いができる仕組みとなっています。
利用者側は会計時の手間が省けるメリットがあり、店舗側は初期費用を抑えることができる、売上のデータ化で作業効率が上がる等のメリットがあります。
QR決済とクレジットカードの比較
キャッシュレス決済の代表的なものに、クレジットカードがあげられます。ここではQR決済との比較を行い、どのようなメリット・デメリットがあるか確認していきます。
項目 | QR決済 | クレジットカード |
審査費用や加盟料 | 0円 | 0~3,000円 |
端末などの導入 | 導入は必須でない 0円から導入可 | 端末の導入は必須 40,000~80,000円 |
導入までの期間 | 翌日~4営業日 | 2週間程度 |
決済手数料 | 売上額の0~3.45% | 売上額の5~7% |
入金までの期間 | 15~30日程度 | 15~30日程度 |
継続課金 | 不可 | 可 |
上記で示す通りQR決済は、総じて以下の特徴があります。
- 安価で導入できる
- 端末機の導入が不要であるため導入コストが低くなる
- 決済手数料が低額であり、クレジットカード販売よりも手取りの入金額が多い
ただしQR決済は、その場での支払いに使うことを想定しています。そのため会員への月額料金請求のように、継続して課金することはできません。
QR決済を後押しする動き
日本におけるQR決済の本格的な普及はこれからです。一方で、QR決済は中国などでは普及が進んでいるため、政府などはインバウンド対策としてQR決済を後押しする政策を取っています。政策によって導入の負担が大幅に緩和されますが、期間が決まっているものもあるので、早い段階からの導入をおすすめします。
キャッシュレス・消費者還元事業の実施
QR決済を後押しする政策の1つに、キャッシュレス・消費者還元事業があげられます。これはキャッシュレスにより中小の店舗で支払いを行った場合、原則として5%を消費者へ還元する制度です。対象期間は、2019年10月1日から2020年6月30日までです。
キャッシュレス決済を行うと、加盟店手数料がかかる分、収益の減少が余儀なくされます。また機器等の導入コストも必要です。これらは中小・小規模事業者にとって導入を躊躇する原因といえます。デメリットを補うため、以下の支援策や補助が行われます。
- 加盟店手数料3.25%以下
- 期間中は、決済事業者に支払う手数料の3分の1を国が補助
- 機器導入費用は国と決済事業者が負担(事業者は実質負担なし)
QR決済の統一規格「JPQR」もう1つの政策は、QR決済の統一規格「JPQR」です。2018年7月に設立された「一般社団法人キャッシュレス推進協議会」において、検討が進められてきました。2019年3月29日に、以下の3つのガイドラインが公表されています。
- 利用者提示型バーコード
- 店舗提示型バーコード
- QR決済のオペレーションガイドライン
このうち、利用者の端末でQRコードを表示する「利用者提示型バーコード」については、2019年8月1日に切り替えが行われました。
参考:モバイル決済モデル推進事業」の実証で用いる利用者提示型コード決済における統一バーコード(JPQR)への切替目標日時の決定|総務省
QR決済を利用する加盟店側の4つのメリット
QR決済を支払い方法に取り入れることは、利用者だけでなく加盟店にもメリットをもたらします。一例として収入の増加やコスト削減がありますが、これに限りません。ここでは主な4つのメリットを取り上げ、それぞれについて解説します。
1. 外国人観光客へのアプローチが可能
QR決済を導入することで、外国人観光客の購入に対するアプローチがしやすくなります。これは、外国人は現金で支払わないことに慣れている人が多いためです。
特に中国の都市部では、ほとんどの人がQR決済を利用しています。人民網が2016年5月25日に報じた内容によると、都市部在住の住民のうち98.3%の人は、3ヶ月以内になんらかのQR決済を利用したとのことです。来日外国人全体の21.6%を占めている中国人に、QR決済をアピールすることで売上の増加が期待できます。
参考:中国都市部はキャッシュレス社会へ|人民網日本語版
平成30年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(速報値)|法務省
2. ポイント・キャンペーンなどで利用したいユーザーが多い
現金決済と比べ、QR決済はポイントが貯まりやすいケースが多くあります。たとえばPayPayでは、支払額の3%相当のポイントが付与されます。このため「お得感」を全面に出すことで、利用者にQR決済を促すことも可能です。
またQR決済事業者各社では、以下のキャンペーンも行っています。
QR決済名 キャンペーン名 キャンペーン内容 LINE Pay Payトクキャンペーン 期間限定で支払額の還元を実施 楽天ペイ [九州3県限定]タクシー初乗り相当(660円相当)ポイントバックキャンペーン 大分・長崎・熊本の各県で1,200円以上のタクシー料金を楽天ペイで支払うと、660円相当の楽天ポイントをプレゼント
(2019年9月末まで。また1人1回限り) PayPay ワクワクペイペイ 月替わりで、最大20%還元等 PayPay PayPayチャンス
(2019年6月~) 20回に1回の確率で、最高1,000円のPayPayボーナスを付与 PayPay PayPayならいつでも戻ってくる 利用特典付与率が従来の6倍である3%にアップ
これらのキャンペーンにより、利用者の増加につなげることが可能です。ただしこのキャンペーンは普及段階にある今だからこそ行われていますが、数年後に同様のキャンペーンが行われているとは限りません。現段階だからこそ受けられる特需と考えるのが自然なので、QR決済を始めていない企業や店舗は、この特需が受けられるようすぐに始めるのが得策です。
参考:Payトクキャンペーン|LINE Pay
[九州3県限定]タクシー初乗り相当(660円相当)ポイントバックキャンペーン|楽天ペイ
ワクワクペイペイ|PayPay
PayPayチャンス|PayPay
PayPayならいつでも戻ってくる|PayPay
3. 現金を扱う機会が減少する
QR決済などキャッシュレス決済全般が普及することで、現金を扱う機会が減少していくことが予想されます。これは事業者にとって以下のようなメリットを生み出します。
- 会計時の人的なミスが減少し、会計の効率や正確性が高まる
- レジに多くの現金を保管しなくなるので、リスクを低減できる
- 現金に触れる必要がないので衛生的(飲食店など衛生面を重視するところは特に影響が大きい)
4. 無人化などの業務効率化の可能性が広がる
QR決済の導入によって、人的リソースを使わずに店舗を運営する未来が見えてきました。
QR決済は紙幣や硬貨の出し入れ、カードの読み取りといった物理的なトラブルが起きにくいことが特徴です。このため無人化と相性がよく、店舗の人件費を削減しやすくなります。
例えばローソンではQR決済を用いたセルフレジの導入や夜間営業の無人化などを実験的に始めています。無人コンビニが当たり前になるのもそう遠い未来ではないでしょう。
参考:コンビニ支払いの無人化が始まる?ローソンセルフレジ全店導入が決定!|Cashless News
ローソン、夜間営業の無人化を実験へーードアの開錠から決済までをスマホで完結|CNET Japan
QR決済、主要3サービスの導入事例
店舗を運営する方にとって、QR決済がどのように導入・利用されているかは気になるところです。ここではPayPay・楽天ペイ・LINE Payといった主要3サービスの導入事例をご紹介していきます。
1.来店客数を1.5倍にしたPayPayの導入事例
東京・丸の内にあるオーダースーツ店「KASHIYAMA The Smart Tailor 丸の内ガイドショップ」では、QR決済の方法としてPayPayを導入しています。
本店舗が入居する施設は特殊で、現金やクレジットカードによる決済ができないという制約があります。このためPayPay導入以前は、ECサイトのオンライン決済を利用せざるを得ず、フィッティングなど来店の機会があっても店舗で決済できないという不便がありました。
この課題のソリューションとしてPayPayを導入したところ、利用者が大きく上がりました。店舗内決済が可能になったのが何よりも大きいのですが、PayPayで行われていた「100億円あげちゃうキャンペーン」期間中は、導入以前の1.5倍まで来店者数がアップしました。
参考:PayPayだからできたオフィスビル内のオーダースーツ店|PayPay
2.客単価を2倍にアップさせた楽天ペイ導入事例
各家庭に訪問して掃除を行う「おそうじ本舗」では楽天ペイを導入しています。
導入前は他社のカード決済サービスを利用していましたが、ICカードに対応していなかったり有効ブランドが少なかったりといった課題を感じていました。このような背景もあり、ICカードに対応していて対応カードの種類が豊富な楽天ペイの導入を決意。実際に導入してからキャッシュレス化の流れが強まったこともあり、楽天ペイ導入後半年で客単価が大きくアップしました。特に変化が大きな店舗だと、客単価2万円から4万円と、2倍の増加がみられます。
利用者の中には「楽天ペイが利用できるから」という理由から選ぶ方もおり、決済額も月ごとに増加傾向にあります。現在ではフランチャイズを含む全国1,300店舗で楽天ペイを導入しています。またおそうじ本舗のWebサイトに楽天ペイのロゴを表示し、利用できることを積極的にアピールしています。
3.決済手数料分の節約に成功したLINE Pay導入事例
東京・広尾で営業する眼鏡セレクトショップ「OQMEL」(オクメル)ではLINE Payを導入しています。
多くのユーザーが利用する「LINE」の決済サービスであり、新たな端末を用意する必要がないという点がLINE Pay導入の決めてだと言います。
同店舗ではLINE Pay導入以前からクレジットの利用者が多かったのですが、クレジットだとどうしても決済手数料が高い点で頭を悩ませていました。LINE Payの導入により決済手数料が0%(※)となり、その分を顧客に還元することが可能となりました。
※LINE Pay の決済手数料0%は2021年7月31日まで
参考:眼鏡セレクトショップの「LINE Pay 店舗用アプリ」導入事例|LINE Pay
QR決済を導入すべき企業・店舗とは
企業・店舗側がQR決済を導入することで、利用者は支払いの選択肢が増えます。またQR決済の加盟店手数料は、クレジットカードや電子マネーよりも安価になる場合も多く、QR決済導入のメリットは大きいといえます。
特に以下の店舗では、QR決済を導入する効果が高くなることが期待できます。
- 観光地の有料施設や、土産物店
- 家電量販店やディスカウントストア、ドラッグストア、免税店
- 宿泊施設
- 繁華街や宿泊施設の近くにある飲食店
- 日本の文化などを体験できる(コト体験のできる)施設
- スポーツ施設やキャンプ場、リゾート施設
- 美術館や博物館などの文化施設
- ECサイト
上記はいずれも中国人など、QR決済に慣れた観光客の利用が多い施設です。ビジネスチャンスを逃さないためにも、今からQR決済の導入を行い、準備をしておくことをおすすめします。
参考:なぜキャッシュレス決済を導入すべきなのか?QRコード決済の普及で変わる小売市場|ECのみかた
インバウンド対策をQRコード決済で狙う!中国で98%を超える普及率!|ピピッとチョイス
QR決済を導入するまでの流れ
QR決済を導入するステップは、大きく以下の3段階に分けられます。
- サービスの選定
- QR決済運営事業者へ加盟申請
- QR決済を行う環境の整備
それぞれのステップについて、順に解説していきます。
1. サービスの選定
日本ではPayPay、楽天ペイ、LINE Payをはじめ、多くの事業者がQR決済に参入しています。このため、事前にサービスの比較が必要です。サービス比較については、QR決済の比較記事をご参照ください。
参考:QRコード決済で国内顧客だけでなくインバウンド対策も!主要サービス5社を徹底比較
2. QR決済の運営事業者へ加盟申請
利用するサービスが決まったら、QR決済事業者へ加盟申請を行います。加盟の手順や必要書類は、事業者ごとに異なります。このため、事前に確認してから申請しましょう。
なおQR決済は直接契約となる場合が多いですが、代理店経由での契約が可能な場合もあります。以下のようなケースでは、代理店経由での契約も検討してください。
- ペットショップや塾、エステサロンなど、審査の通過が難しい業種の場合
- 複数のQR決済を迅速に導入したい場合
3. QR決済を行う環境の整備
加盟が認められたら、QR決済を行うための環境整備を行います。環境整備には、以下のものを準備する必要があります。
- レジで使う端末(アプリを入れたタブレット端末、スマホでも可)
- QRコードの読み取り機器(QRコードをお客様に表示してもらう場合)
- QRコードを表示するスマホやタブレット端末、またはQRコードを印刷した用紙(QRコードを店舗で提示する場合)
- フリーWi-Fi(利用者がインターネット接続を行うために便利)
必要な環境はQR決済事業者により異なる場合があるため、事前に確認してから準備を始めましょう。
QR決済に関するよくあるご質問
QR決済の導入を検討中の方に役立つQ&Aをまとめています。
Q.QR決済の手数料はどれくらいですか?
A.QR決済の手数料は売上額の0~3.45%程度で、クレジットカード決済の手数料よりも低めです。
Q.QR決済を導入する際に必要な設備は何ですか?
A.スマートフォンやタブレット端末、Wi-Fi環境があれば導入できます。追加の読み取り機器も不要な場合が多いです。
Q.QR決済の普及に伴う国の支援策はありますか?
A.政府はQR決済普及のために加盟店手数料の補助や機器導入費用の負担など、様々な支援策を実施しています。
Q.QR決済を導入する際に必要な初期費用はどれくらいですか?
A.QR決済は導入時に専用端末が不要で、多くのサービスで初期費用は0円から可能です。詳しくはサービス提供元にお問い合わせください。
まとめ
ここまで、QR決済とそのメリット、導入事例や導入方法などについて解説してきました。QR決済の導入には利用者にもメリットがあるので、店舗の売上が増加することにつながります。
またQR決済を利用すると手数料がかかる場合がある一方、現金の扱いも減ります。このためレジ締め作業などの手間が減るため、人件費などのコスト節約にもつながります。
したがってQR決済を導入することで、売上の増加と費用の節減が期待できます。この機会にぜひQR決済の導入をご検討ください。
参考にしたサイト
「QRコード決済」とは?知っておきたい特徴とメリット|ferret
【初心者向け】QRコード決済とはどんなもの?仕組みや導入のメリット|ピピッとチョイス
中国モバイル決済競争:ウィーチャットペイが「9年先行」のアリペイに追いついたワケ|ビジネス+IT
世界でもQRコード決済の規格統一の動き、日本はどうなる|ピピッとチョイス
キャッシュレス・消費者還元事業|経済産業省
キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識|野村総合研究所
QRコード決済の普及率は?日本シェア!を比較|BITDAYS
【カード決済導入】加盟店の初期費用や手数料はいくら?|Cashless
店頭販売加盟店の契約|JCB
加盟の流れ|JCB
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決済代行会社とは?メリットや仕組みをご紹介|MAXCONNECT
平成30年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(速報値)|法務省
(2019年9月末まで。また1人1回限り)
(2019年6月~)
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