玉突き人事とは?メリット・デメリットや失敗しないのためのポイント

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玉突き人事は、空いたポストに別の社員を異動させ、そこで空いた穴をさらに別の社員で埋めることを繰り返す人事異動の方法です。

人材配置のミスマッチを防ぐ3つのアクション

即座に人事不足を補える一方で、想定外の異動によりミスマッチが起き、離職につながる可能性もあるため、ポイントを押さえて運用する必要があります。

本記事では、玉突き人事によって起こる問題をふまえて、玉突き人事による異動を失敗しないためのポイントを解説します。

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玉突き人事とは人事異動の手法の一つ

玉突き人事とは、人事異動のときに出た欠員を補充するために、他部署の社員を異動させる人事異動の手法の一つです。

例えば、何らかの理由によって社員Aさんを異動させた際、欠員を埋めるために別の部署のBさん、Bさんのポストを埋めるためにCさんを……というように、玉突き人事によって連鎖的な異動が発生します。

次々と異動が起こることがビリヤードで玉が次々とぶつかる様子にたとえられ、「玉突き人事」と呼ばれるようになりました。

そんな玉突き人事には、下の役職から順番に昇任する「縦パターン」と、同じ役職の社員が人事異動する「横パターン」の2つがあります。

営業部長が人事異動したとしましょう。同部署の次長が部長に、そして課長だった社員が次長になるのが縦パターン。営業部長の枠に人事部長が配属され、空いた人事部長の枠を広報部長が埋めるのが横パターンです。

基本的にはどちらかのパターンで玉突き人事が行われますが、企業によっては両パターンを組み合わせる場合もあります。

ジョブローテーションとの違い

種類目的頻度
玉突き人事欠員補充のため突発的
ジョブローテーション人事育成のため計画的

欠員補充が目的であり基本的に計画的でない人事異動が「玉突き人事」、人材育成を目的に意図的に行う人事異動が「ジョブローテーション」です。

ジョブローテーションとは、一定期間ごとに部署や職務を変えながら異動させる人事異動の手法の一つです。

どちらも多くの社員を異動させる点においては、あまり変わりません。そのため、玉突き人事と混同しがちですが、二つの人事異動は、目的と頻度に大きな違いがあります。

玉突き人事を行う理由は、様々な要因が考えられます。その中でも、欠員補充を目的に玉突き人事を行うことが多いです。一方で、ジョブローテーションは社員に経験を積ませて育成させるために行います。

また、人材育成を目的としているジョブローテーションは計画的・意図的で、一定期間ごとに社員を異動させます。しかし、玉突き人事は欠員補充を目的としていることが多いため、多くの企業では突発的に行っています。


玉突き人事のメリット

多くの企業で玉突き人事が行われているのは、様々なメリットがあるためです。玉突き人事のメリットは、主に以下の3つが挙げられます。

  • 人員不足を補える
  • 問題がある部署の再生を図れる
  • 癒着や不正を防止できる

人員不足を補える

玉突き人事を行う1つ目のメリットは人員不足を補えることです。

一般的な人事異動では、社員の能力や経験・育成計画などをふまえ、長期的な視点で考えて行われます。そのため、病気や事故などの急な人員不足に対応しにくい特徴があります。

しかし、玉突き人事の場合はそのような急に空いたポストを埋められます。会社全体を見渡して、部署の人員バランスをとることも可能です。

一時的な問題解決となる可能性こそありますが、柔軟に人事異動を行えるのは、玉突き人事だからこそできるメリットといえるでしょう。

問題がある部署の再生を図れる

玉突き人事を行う2つ目のメリットは問題がある部署の再生を図れることです。

部署内の人間関係が不良でコミュニケーションが上手くとれていない、職務と社員の適合性が悪いなど、様々な原因で業務に支障をきたすことがあります。そのとき、その部署の業務はもちろん、最悪の場合、企業全体に悪影響を及ぼしてしまいます。

そんな状況下を打破するために、意図的に玉突き人事を行い、問題を抱えた部署の再生を図ろうとするケースもあります。

このように、玉突き人事を行うことで、部署内の人間関係がうまくいっていないケースをはじめ、生産性が落ちている場合など問題を抱えている部署に対して組織活性化を促すメリットがあるのです。

癒着や不正を防止できる

玉突き人事を行う3つ目のメリットは癒着や不正を防止できることです。

長年、人事異動がない部署は一見すると意思疎通ができて円滑に業務を遂行できているように見えます。しかし、その分、社員同士の緊張感がなくなりやすくなります。

緊張感がなくなることで、社員同士の馴れ合いが起こりやすくなり、業務の生産性が停滞する恐れがあります。また、部署内や取引先で癒着・不正が発生する危険性も考えられます。

そこで、玉突き人事です。玉突き人事を意図的に行い、メンバーを入れ替えることによって社員に緊張感を与えて、癒着や不正の防止に期待できます。

このようなケースにおいて、玉突き人事による人事異動は有効でしょう。


玉突き人事によって起こる問題

玉突き人事を行うことで得られるのは、メリットだけではありません。
玉突き人事によって以下の問題が起こる可能性があります。

  • ミスマッチが発生する
  • 社員のキャリアパスが中断される
  • 受け入れ先の部署に負荷がかかる
  • 離職につながる

ミスマッチが発生する

一般的な人事異動だと、社員の能力や性格などを考慮して慎重に人員を配置します。しかし、玉突き人事は異動する社員の適性や人間関係などを考慮せずに、何人もの社員を異動させるケースが多いです。

そのため、玉突き人事によって異動先で社員のミスマッチが発生するリスクが高まります。

ミスマッチが発生することで、社員同士の連携が上手くいかず、業務に支障が出たりモチベーションが下がったりと、様々な弊害が生じてしまいます。

ミスマッチの発生を防ぐには、異動社員のヒアリングなどが不可欠です。社員の性格やキャリアプラン、モチベーションなどを確認したうえで、社員がポテンシャルを発揮できそうな部署に異動させるようにしましょう。

社員のキャリアパスが中断される

人員の補充を目的とした玉突き人事を行った際、社員が描いているキャリアパスを考慮されない形で異動するケースがあります。

例えば、営業部で活躍していきたい社員が玉突き人事で人事部に異動となれば、その社員のキャリアパスは中断されます。企業によっては、キャリアパスを再設計しなおす必要もあるでしょう。

キャリアパスが中断されて専門性の異なる部署に配属された社員は、将来の不安や会社への不満が高まり、モチベーションが低下します。

ヒアリングやアンケートで社員が描いているキャリアパスを確認し、できるだけ希望に沿った部署に配属するなどして対策しましょう。

受け入れ先の部署に負荷がかかる

玉突き人事で他部署の社員を受け入れることになれば、その社員の育成担当者を決めたり業務のサポートをしたりと、様々な準備をしなければなりません。

そのため、異動した社員を受け入れた部署は今までと比べて業務量が増えやすく、部署全体に負荷がかかってしまいます。

配属される前に資料などを読ませて自己学習させたり、研修をしたりなど、受け入れ先の部署の負荷をなるべく軽減できるように対策しましょう。

離職につながる

玉突き人事で異動を命じられた社員の中には、希望外の部署への異動に不満を感じたり、計画性のない異動に将来的な不安を抱いたりします。また、異動先の人間関係に問題が発生するケースも少なくありません。

その結果、企業に対する信頼が失われ、社員の離職につながります。社員が離職すれば、人材不足に陥るだけでなく、企業の離職率が上昇して今後の採用活動にも影響を及ぼしてしまいます。

エン・ジャパン株式会社が行った調査でも、退職を考えるきっかけについて「やりがい・達成感がなくなった」「企業の将来性に疑問を感じた」「人間関係が悪かった」といった理由が上位にランクインしています。
参考:1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査―『エン転職』ユーザーアンケート―|エン・ジャパン株式会社

このデータから、玉突き人事が原因で離職を決意する社員は決して少なくないといえます。

社員の離職を防ぐためにも、社員にヒアリングを行って本人の性格や仕事へのやりがいなどを把握し、社員の意向をできるだけ汲みましょう。


玉突き人事による異動を行うポイント

玉突き人事による異動を行う際には、ポイントを押さえて運用する必要があります。

玉突き人事は突発的な人事異動であるためできれば避けたいものです。
そのためには計画的・戦略的に人事計画を設計する必要がありますが、とはいえ急な離退職で実施せざるをえないときもあるでしょう。

このように玉突き人事をせざるを得ないときには、4つのポイントを押さえて実施しましょう。

ポイント1.人事異動に関する規則を明記する

玉突き人事による異動を行う1つ目のポイントは人事異動に関する規則を明記することです。

人事異動を行う際、異動を命じられた社員が納得するかどうかが重要になってきます。しかし、いくら丁寧に説明し、説得したところで、全社員が素直に納得するとは限りません。

そこで、人事異動に関する規則の策定が重要です。あらかじめ人事異動の範囲や基準を規則として決めておき、社員側が納得したうえで同意してもらうことで、異動時のトラブルを未然に回避できます。

当たり前のことですが、作成した人事異動に関する規則を企業が破らないようにしましょう。自社の信頼を大きく損なう原因になりかねません。

ポイント2.社員のキャリアプランを把握する

玉突き人事による異動を行う2つ目のポイントは社員のキャリアプランを把握することです。

社員Aさんは「このまま営業部で活躍していきたい」、社員Bさんは「ゆくゆくは人事部で採用に関わっていきたい」など、社員によって描いているキャリアパスは違います。

社員それぞれのキャリアパスを把握し、阻害させないように異動先に反映させれば、双方にとって気持ちの良い人事異動が実現するでしょう。

また、社員のキャリアパスを事前に把握しておくことで、玉突き人事による急な異動でも社員の意思を配慮した人選が可能です。

まずは、社員のキャリアパスをヒアリングやアンケートなどで確認して、社員の情報を集めて、社員のキャリアプランを把握しましょう。

ポイント3.異動の目的を明確にする

玉突き人事による異動を行う3つ目のポイントは異動の目的を明確にすることです。

玉突き人事をする目的の多くは人員不足の解消ではあるものの、部署の再生や癒着・不正の防止など、別の目的で行うケースもあるでしょう。

しかし、その目的が社員に伝わらなければ、どれだけ戦略的に行われていたとしても、快く異動に応じてくれません。仮に応じたとしても、企業に対する不満を蓄積する原因となります。

そのため、人事異動を行う際は、社員に異動を命じた目的を明確に伝え、共有することが大切なのです。

人員不足の補充を目的に玉突き人事を行った場合でも「なぜその社員を選び、どのような視点からその部署に異動させるのか」などを伝えられるはずです。

社員に納得して異動してもらうためにも、異動する目的を明確に話し、理解してもらいましょう。

ポイント4.長期的な視点を持つ

玉突き人事による異動を行う4つ目のポイントは「長期的な視点を持つこと」です。

人員の補充を目的に玉突き人事を行う際、どうしても社員の意向を汲まずに人員の確保を優先してしまうなど、目先のことにとらわれがちです。しかし、短期的な視点だけでは、社員や異動先の部署の負担が増え、不満が溜まったりその後の業務に支障が出たりする可能性があります。

社員個人のスキルアップや企業全体のパフォーマンス向上を狙いたいのであれば、地道にPDCAサイクルを回して長期的な視点・方針を持って人事異動させることが大切です。

たとえ急な人材補充が必要になった場合でも、長期的な視点を持って玉突き人事を行うようにしましょう。


まとめ

今回は、玉突き人事のメリットや問題点、玉突き人事を行う際のポイントなどについて紹介しました。

玉突き人事は、人事異動のときに出た欠員の補充を目的に、他部署の社員を異動させる人事異動の手法の一つ。ジョブローテーションと違い、突発的に行われることが多いです。

そんな玉突き人事のメリットとデメリットは、以下の通りです。

メリットデメリット
  • 人員不足を補える
  • 問題がある部署の再生を図れる
  • 癒着や不正を防止できる
  • ミスマッチが発生する
  • 社員のキャリアパスが中断される
  • 受け入れ先の部署に負荷がかかる
  • 離職につながる

人員不足を補えたり部署の再生を図れたりなど、様々なメリットこそありますが、ミスマッチが発生する、離職につながるといったデメリットもあります。

このようなデメリットを減らすためにも、以下のポイントを意識して玉突き人事を行うことが大切です。

  • 人事異動に関する規則を明記する
  • 社員のキャリアプランを把握する
  • 異動の目的を明確にする
  • 長期的な視点を持つ

本記事で玉突き人事で異動する社員の対処方法をおさえ、モチベーションを維持した状態で適材適所な人員配置を行いましょう。

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