中国での越境ECの始め方と、成功させるためにおさえたい2つのポイント

経済発展が著しい中国では、インターネット上での消費金額も年々増加しています。越境EC市場の拡大にともない、中国で越境ECを始めようという人も増えています。そこで今回は中国における越境ECの概要や始め方を解説します。

中国における越境ECの始め方を知って、今後の販路拡大に役立ててください。

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越境ECとは

越境ECとはCross border Erectronic commerce、つまりインターネット通販サイトによる国際的な電子商取引のことです。

インターネットの発展にともなって、EC市場はどの地域でも拡大しています。ECサイトの中で海外の商品を購入できるサイトを越境ECサイトといいます。海外旅行をする人が増え、海外の商品の認知度が高まっていることや、個人の所得が増加して多少高くても海外の製品を求める人がいることを背景に越境EC市場も成長しています。

今回はその中でも中国における越境ECについて説明していきます。


中国越境ECの市場規模

中国では1人あたりの国内総生産(GDP)の増加や所得の増加にともなって、EC市場の規模も拡大し続けています。正規品や品質の高い商品を求めるようになってきていることが背景です。

海外から消費者に直接配送する直送形式だと徴税対象の把握が難しいなどの理由により、中国政府は2013年より保税区モデルを開始しています。このモデルは政府の管理する保税倉庫で商品を管理し、注文が入ると倉庫から消費者に発送されます。中国で越境ECをする場合は、直送モデルか保税区モデルのどちらかとなります。

2016年におけるECの市場規模は7500億米ドルで、2020年には1兆7000億米ドルにもなるとゴールドマン・サックス社は予測しています。

参考:EC市場は2020年に約190兆円、EC化率は25%まで拡大する【中国EC市場の予測】 | 中国EC市場がよくわかるアリババ提供の最新情報(Alizilaからの耳より公式情報) | ネットショップ担当者フォーラム


中国で売れやすい日本商品とは

ECサイトで買い物をする消費者は品質の高い商品を求めています。日本の商品の評価は高く、信頼されていると言えます。

中国のECサイトで人気の日本商品は化粧品、健康食品、ベビー用品などがあります。この他にも、魔法瓶や鍋、温水洗浄便座、収納用具、米びつなども人気です。ニュースなどで、来日した中国人旅行客が大量の化粧品を買っている光景を見たことがある人もいるのではないでしょうか。

ベビー用品の中でも紙おむつは特に人気があります。また、羽毛布団など少し高くても質の良いものを求める人も多いです。


中国の越境ECで成功するポイント

市場規模が拡大しているとはいえ、越境ECで成功するためには抑えるべきポイントがあります。ここでは以下の2点について解説します。

  • 中国の法律・規制に沿って越境ECに取り組むこと
  • 税制の違いを知り、自社に合った方法を選ぶこと

法律・規制に沿って越境ECに取り組もう

当たり前のことではありますが、中国で越境ECサイトを運営する時は中国の法律・規制に従わなければなりません。日本とは規制の内容も異なるので日本でECサイトを運営しているという方も中国のルールをしっかりと確認しましょう。

ポジティブリスト

保税区モデルでは全ての商品を取り扱える訳ではなく、国務院が指定したもののみが越境ECで取引できます。保税区モデルで取引できる商品は国務院の作成したポジティブリストに掲載されています。リスト外の商品の輸入は一般輸入扱いになり、関税・増値税・消費税が課税されます。

参考:中国における越境ECの概要 | 貿易・投資相談Q&A – 国・地域別に見る – ジェトロ

取引限度額

ルール変更前は1回あたり1,000元が限度額でした。変更後は2,000元に引き上げられました。また、年間の取引額は、20,000元が限度額となりました。

参考:5分でわかる中国の新越境EC制度。押さえておくべき重要ポイント【最新版】 | 中国市場が丸わかり『中国EC市場調査報告書2016』ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

食品への規制

東日本大震災の後、中国は原発事故によって汚染された食物が輸入されることを防ぐために規制を設けました。規制はいまだに厳しく、日本からの食物は日本政府の発行する放射能物質検査証明書および原産地証明書を用意する必要があります。

参考:中国の輸入規制措置の概要|農林水産省

税制の違いを知って、自社に適切なやり方を選ぼう

法律・規制を理解するのと同様に中国の税の仕組みについても知っておく必要があります。中国の税の種類・内容は以下のようになります。

関税:一般的な関税で輸入品に対し中国政府がかける税
増値税:日本における消費税に相当する税
消費税:特定の嗜好品や贅沢品に対して工場出荷時か輸入時にかかる税
行郵税:個人が海外で買ってきたものや個人輸入品にかかる税

また、日本から商品を直送する場合と中国の保税倉庫を使う場合によって税の仕組みが変わります。

直送する場合

直送方式の場合は行郵税が「15%、30%、60%」の3段階でかかります。税率は取り扱う商品によって決まります。また、行郵税が50元に達しない範囲では免税となります。

保税倉庫を利用する場合

取引限度額以下の場合は関税が0%になります。基本的には11.9%の増値税がかかります。また、商品によっては21%の消費税の対象になります。

参考:5分でわかる中国の新越境EC制度。押さえておくべき重要ポイント【最新版】 | 中国市場が丸わかり『中国EC市場調査報告書2016』ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム


中国における越境ECの始め方

中国で越境ECを始める時には大きく分けて次の3つの方法があります。

  • 海外販売機能を利用する。
  • 代行業者にサポートしてもらう。
  • 自社でWebサイトを構築する。

スモールスタートの場合はコストがあまりかからない海外販売機能を利用する方法がオススメです。

海外販売機能を利用する

海外販売機能とは国内インターネットショッピングモールにおいて海外を対象に出品できる機能を指します。海外販売機能を利用するために必要なことは、基本的にはそれぞれのモールに対して機能の利用申請をするだけです。商標を取得したりなど特別なことは不要です。

楽天市場

楽天市場楽天市場

●特徴
楽天市場の海外版であるRakuten Global Marketに出品できます。自動翻訳サービスなどを利用することができます。

●手数料
国内の楽天市場で出品をしているのであれば海外販売機能への登録料は無料です。ただ、取引成約時に4%の販売手数料が発生します。

Qoo10

Qoo10Qoo10

●特徴
日本から海外までの発送を自社でやる必要がなく、Qoo10の指定する日本の倉庫に発送すれば良いという点が大きな特徴です。

●手数料
Qoo10に出店していれば海外販売機能への登録も無料です。また、追加の手数料などもないです。

Amazon

AmazonAmazon

●特徴
Amazonの倉庫に自社の商品を納品し、販売から出荷までをAmazonのサービスに委託する形式です。

●手数料
月に$39.99の登録料と注文成約時に販売手数料がかかります。

ポンパレモール

ポンパレモールポンパレモール

●特徴
ポンパレモール出店者向けに世界80ヶ国以上、70万人の会員数を誇る「Buyee」への連携出店を可能にするサービスです。

●手数料
ポンパレモールに出店していれば、海外販売機能への登録料および別途手数料は無料です。

代行業者にサポートしてもらう

中国のEC市場においてはTmall(天猫)とJD.com(京東商城)がシェアの8割近くを占めています。通常Tmallに出品するためには中国で商標の登録などが必要ですが、Tmallグローバル(天猫国際)であれば日本法人であっても出品できます。

とはいえ言語をはじめ商習慣や規制の違いなど、乗り越えなければならないハードルもあります。越境EC代行サービスはこのような手間やリスクを軽減してくれます。また、手続きを代行するだけでなく無料診断などの支援もあるサービスもあります。

NHNテコラス

NHNテコラスNHNテコラス

●特徴
主にTmall、Tmall国際への出店の支援をしています。自社製品と中国EC市場の相性などの無料診断サービスなども提供しています。

●料金の目安
個別に問い合わせが必要

エフカフェ

エスカフェエフカフェ

●特徴
Tmall、Tmall国際、JD Worldwideへの自社出店支援の他、マーケティングプランのサービスもあります。

●料金の目安
個別に問い合わせが必要

トランスコスモス

トランスコスモストランスコスモス

●特徴
市場分析からサイト構築、販売までオペレーションをワンストップで提供するサービスの他、Tmall・Tmall国際内の店舗での販売代行サービスもあります。

●料金の目安
個別に問い合わせが必要

自社でWebサイトを構築する

海外販売機能を利用する方法と代行業者を利用する方法の他には自社でECサイトを構築する方法もあります。ただ、この場合、サイトを一から作成する必要があり、上記2つの手法と比べる初期費用は最も高くなります。

また、中国の規制や制度はもちろん商習慣なども理解しておく必要があり、かなりハードルは高いと言えるでしょう。例えば決済システムだけでも、信頼できるものは何か、中国の消費者が慣れているものは何か、日本円立てにするのか外貨立てにするのかなどを考えなければなりません。

一方で、柔軟にサイト構築をすることができるので、これからECをメインに行っていきたい方は下記記事を参考にしながら始めるも良いでしょう。

参考:ECサイトの作り方と成功するための運営方法、事例まで徹底解説


中国で越境ECを行う前に知っておきたい注意点

ここでは越境ECを始める前に知っておくべき注意点について解説します。

中国越境ECの発送は、エラーが発生しやすい

中国国内の発送では、よく遅延や事故が起きます。日本では割れ物注意のシールが貼ってあれば丁重に扱われますが、中国の場合は扱いが雑で、中の商品が発送中に壊れてしまうケースもあります。梱包の仕方を工夫するなどの対策が必要になるでしょう。

特に中国の旧正月(春節)の時期は注文の数が他の時期に比べ何倍にもなります。そのため、発送の遅れも頻発します。事前にサイト上で遅延する可能性があることを知らせておくことをオススメします。

また、発送業者をどこにするかも重要な点です。Tmall(天猫)は、数多くの大手配送業者と提携しており、出品者は自由に業者を選ぶことができます。「注文の85%は翌日までに配送する」をポリシーにしているJD.com(京東)は独自の物流・配送ネットワークを持っています。

あらゆる場面で中国語対応が必要

中国でビジネスをやる以上、中国語を使う場面は多岐に渡ります。規制や法律を読むところから契約をするところまで中国語で書かれていることが多いでしょう。サイトを中国語対応にすることはもちろん、消費者からの問い合わせや発送業者とのやりとりでも中国語は必要になります。

英語を使える場面は多くはなく、基本的には中国語になると考えてください。業者に対して正確な情報が伝わらないとトラブルの原因にもなってしまいます。

もちろん、中国語をマスターしていないと越境ECを始めるべきではない、ということではありません。翻訳や通訳のサービスを利用するといった方法もあります。しかし、サービスを利用するにしても、中国語の話せる社員を確保するにしても、何かしらの方策を用意する必要があります。

中国は北京語(普通語)、広東語、上海語など、さまざまな種類の言語があります。地域が違うと中国人同士であっても会話ができないほど言語が違います。このように中国で越境ECを始める際は地域による言語の違いにも留意する必要があります。


まとめ

中国の消費者の所得が増し、中国におけるEC市場は年々拡大しています。高品質な日本商品の需要も高まっており、越境EC市場も成長が続くでしょう。

中国で越境ECを始める際には、中国の法律・規制・税制を理解する必要があります。また、海外販売機能や代行業者など、始め方にも複数の選択肢があるので自社に合った適切な方法を選ぶことが重要です。発送の際にトラブルが起きやすいことや、中国語での対応が必要になることなども念頭に置いて越境ECを始めるようにしましょう。

【メーカー向け】世界134か国の販路を開拓できる越境ECモール「スーパーデリバリー」

参考

越境ECに挑む5社の事例から学ぶ課題と可能性|ネットショップ担当者フォーラム
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中国における越境ECの概要 | 貿易・投資相談Q&A – 国・地域別に見る – ジェトロ
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中国の輸入規制措置の概要|農林水産省