契約書の雛形がすぐに手に入るテンプレートサイト5選と、利用時の注意点

契約書を一から作るのは大変で、テンプレートを利用する方が多いのではないでしょうか。

ただし、テンプレートの内容をしっかりと確認せずに利用すると、必要な項目が抜け落ちていたり、変更しなければならない部分がそのままになっていたりといったミスもあります。

今回は契約書のテンプレートサイトを5つご紹介していきます。そのうえで、テンプレートを使う時の注意点、種類別の契約書のポイントを解説します。

この記事を読むと、安心してテンプレートから契約書を作成できます。


すぐに使える契約書テンプレートサイト5選

使いやすい契約書のテンプレートサイトとして、以下の項目を基準として5つ厳選しました。

  • Word形式など編集が簡単である
  • 契約書テンプレートの種類が幅広い
  • 無料で利用できる

自社に合った契約書のテンプレートを見つけ、ぜひ活用してください。

ビズオーシャン:テンプレートの豊富さが魅力

ビズオーシャンは、ビジネス支援などを行う株式会社ビズオーシャンが運営しているサイトです。27,000点ものテンプレートを用意しているので、契約業務で必要な契約書のほとんどのテンプレートをここで揃えられます。テンプレートサイトとして人気が高く、2021年3月時点で317万人を超える会員数を誇っています。

各テンプレートで登録日と更新日が明記されており、更新日でテンプレートを絞ることもできます。WordはもちろんExcelやPowerPointといったファイル形式で絞ることもでき、使い勝手のいい契約書テンプレートが揃っています。

一部には有料の契約書テンプレートもあり、業務委託契約書や商品売買契約書では有料のテンプレートを選ぶことも可能です。

弁護士法人 クレア法律事務所:ログインなしですぐダウンロードできる

企業法務などを取り扱うクレア法律事務所が公開しているテンプレートサイトです。会員登録不要なのでログインなしですぐ利用できます。秘密保持契約書やシステム開発委託基本契約書など、様々な契約書テンプレートが揃っています。また、定時株主総会議事録といった会社書式のテンプレートが充実している点も魅力です。

形式はWordのみでダウンロードした後すぐに使えるため、今すぐテンプレートが欲しい方にもおすすめです。サイトの右側に商取引関係や労働関係といったカテゴリごとのメニューがあり、目的の契約書を探しやすくなっています。

フル総合法務行政書士事務所:ダウンロード不要でコピー&ペーストで利用できる

書類作成や許可代行申請などを請け負う、フル総合法務行政書士事務所が提供してるテンプレートサイトです。テンプレートはサイトにテキストサンプルが直接記載されているので、必要な契約書のテンプレート文章をコピーして、手元のWordに貼り付けて使うことができます。ログインやダウンロードの手間がなく、欲しい文章だけをコピー&ペーストできる点も魅力です。

左メニューには賃貸系、売買系、人事系などのカテゴリ分けがあり、見やすく工夫されています。契約書ごとに気を付けるべきポイントが書かれており、サイト内には署名や押印、印紙税など契約で知っておくべき情報も紹介されています。豆知識も豊富で、契約に不慣れな方にもおすすめできるテンプレートサイトです。

総務の森:契約書に関する豆知識情報も豊富にある

総務の森は、文房具で有名なコクヨ株式会社が運営しているテンプレートサイトです。テンプレート以外にも総務や労務、経理に関して相談できる場所もあり、困ったら相談できる点がメリットです。

テンプレートの種類は2021年3月時点で81種類あり、労務、経理、法務、総務、マイナンバー、人事、ビジネス書式のカテゴリに分かれています。

契約書テンプレートはすべてWord形式で、ダウンロードにはログインが必要です。労務事例やバックオフィス関連の記事、社労士など専門家のサーチ機能もあり、バックオフィスに関する情報を多数発信しているサイトです。

テンプレートBANK:各テンプレートに更新日があり法改正に対応しているかすぐ分かる

ティービー株式会社が運営するテンプレートサイトで、テンプレートの種類は幅広く、派遣契約書や譲渡契約書、業務委託契約書などビジネスで活用される契約書が揃っています。

Word形式なので編集しやすく、各テンプレートには更新日が記載されているので最新の法改正に対応しているかすぐわかる点が大きなメリットです。テンプレートの種類は幅広く、派遣契約書や譲渡契約書、業務委託契約書などビジネスで活用される契約書が揃っています。

さらにテンプレートBANKは「メーカー用紙から探す」という項目があり、マクセルやエプソン販売、オキナなど9種類のサプライメーカーにも対応しています。業種や職種ごとにカテゴリ分けされているので、自社に合ったテンプレートを素早く見つけられるでしょう。


テンプレートから契約書を作成する時に気を付けたい事

テンプレートを使って契約書を作成するなら、特に以下の点に気を付けましょう。

  • 準拠している法律や元号が最新のものかチェックする
  • 権利や義務の内容が明確に書かれているか
  • 誰にでもわかる言葉で書かれているか
  • テンプレートに記載してある内容はすべて理解する
  • 自社の契約上不都合な項目がないかチェックする
  • 個別に必要な条項があれば追加する

テンプレートを使うと契約書を効率的に作成できますが、自分で全て作成していないからこその落とし穴があります。それぞれ具体的に解説します。

準拠している法律や元号が最新のものかチェックする

インターネット上に公開されている契約書テンプレートは、最新の状態であるかチェックします。特に元号は数年前に改元されたため、平成のままになっているテンプレートも少なくありません。

また契約書内の文章に法律の名称が記載されていたら、その名称が最新であるかもチェックします。法律は数年に一度のペースで改定されており、名称が変わることもあります。特にテンプレートを使うと法律や元号がうっかり古いままというミスはありがちなので、確認が必要です。

権利や義務の内容が明確に書かれているか

テンプレートの契約書をダウンロードしたら、「相手方と自分のどちらの権利・義務を明記したものか」を確認しましょう。そもそも契約書とは、契約を結ぶ者同士の権利や義務について明記したものです。つまり権利や義務について明記されていなければ、契約書としては不完全となります。

具体的には「甲は乙に対して、○○の権利(義務)を持つものとする」など、主語と述語、そして権利や義務について明記されているかをチェックします。主語がなくてどちらの権利を主張しているか不明瞭な場合は、主語を付け足してわかりやすくしましょう。

誰にでもわかる言葉で書かれているか

契約書に書く単語は全て、第三者にも伝わる言葉で書くことを意識します。IT業界をはじめ専門用語を多用すると「ビジネスレベルが高い」と思いがちですが、そのようなことはありません。

そもそも契約書は、万が一契約者間で裁判を起したときに、契約内容に基づいて法的な責任をとってもらうために存在します。裁判官は法律に精通していますが、各業種の業界用語には精通していません。

そのため契約書を見てもらっても、専門用語が多いと裁判官が正しく理解できず契約書の意味をなさないのです。

さらに契約書に記載した専門用語について、契約者同士の解釈が異なることでトラブルになることもあります。紛争時に不要な混乱を招かないためにも、契約書に書かれている文章はわかりやすさにこだわるべきです。

テンプレートに記載してある内容はすべて理解する

テンプレートの契約書に書かれている条項を読み、内容はすべて理解しておきましょう。テンプレートに書かれた条項は一見きちんとした文章で、使う側には安心感があります。しかしテンプレートの契約書は、あくまでも一般的な状況で使える内容です。

よく読んでみると、自社の不利になる条項が書いてあったというケースも少なくありません。

あくまでも一例ですが、テンプレートを使う際は以下のような視点でチェックします。

  • 自分が理解できていない専門用語がないか
  • 当事者を示す「甲・乙」が逆になっていないか
  • 契約書特有の用語はその意味や類似語との違いを理解しているか

双方契約書のサインが終わった後に、「こんな条項が入っているとは思っていなかった」と言っても後の祭りです。最悪の場合、自社にとって不利な条件で契約することになるかもしれません。

自社の契約上不都合な項目がないかチェックする

契約書の内容を把握すると同時に、自社にとって不都合な項目が入っていないかもチェックしましょう。

案件によって内容は大きく違いますが、例えば以下のようなポイントは要チェックです。

  • 支払日や納期
  • 何らかの事情で損害が出た際の補償範囲
  • 著作権がどちらに依存するか

日本は掛け取引が一般的ですから、締め日から代金を支払うまでに期間(支払いサイト)があります。

支払いサイトの長さは企業によってバラバラです。そのため双方が納得できる支払いサイトになっているかは、テンプレートを使う際しっかり確認しなくてはいけません。

契約書はお互いの認識に相違がないことを証明するためのものです。そのためもし事故やトラブルで損害が出た時、どこまでをどちらが補償するかも明記しておく必要があります。制作物がある場合、著作権がどちらに帰属するかも明記しておくべきでしょう。

「テンプレートに記載されていたから」と言っても、すでに契約書にサインをしていれば合意したことになります。テンプレートの契約書は隅々まで目を通し、自社の不都合がないか確認します。

個別に必要な条項があれば追加する

テンプレートの契約書はそのまま使わず、案件ごとに必要な条項は追加して使用しましょう。テンプレートの契約書は、あくまでも一般的な案件を想定した上で作っています。

つまり各案件を把握している契約担当者が、その案件に合わせて手を加える必要があります。テンプレートの内容すべてを理解するだけではなく、その上で該当の案件に足りないと思う項目は積極的に追加することが大事です。

例えば契約上支払い手数料は相手方が負担する、など契約内容の話し合いで具体的な内容を決めたらその項目も契約書に追加します。テンプレートは契約書を効率的に作成できますが、そのまま流用できるものでもありません。あくまでも「土台」として使うように心がけます。


【種類別】契約書ごとの基本構成と押さえておくべきルール

契約書のその種類ごとに盛り込む項目やポイントがあります。企業で特によく使われる以下の4つの契約書について、最低限盛り込む項目やポイントを解説します。

  • 業務委託契約書
  • 売買契約書
  • 秘密保持契約(NDA)
  • ライセンス契約

業務委託契約書

テンプレートから業務委託契約書を作成する場合、以下の項目は必ず盛り込んで作成しましょう。

  • 契約の目的
  • 委託する業務の内容
  • 委託した業務の遂行方法
  • 再委託を認めるか否か
  • 契約期間
  • 報酬の金額及び支払時期
  • 著作権の帰属先
  • 禁止事項
  • 秘密保持
  • 契約違反などがあった際の損害賠償
  • 契約解除の条件
  • 反社会勢力の排除
  • 合意管轄(有事の際にどこの裁判所で裁判を行うか)

業務委託契約書は、外部に何らかの業務を委託する際に使用します。社内清掃やコンサルティング業務などが代表的で、製造業や運送業などあらゆる業種で使われています。

まず業務委託契約書を作成する際は、業務内容や報酬を明記しましょう。当然業務内容や報酬は案件ごとに条件が違うので、テンプレート通りとはいきません。業務委託契約書は依頼する側が作成するケースが一般的ですが、一方的な内容になりがちなので注意が必要です。

請け負う側と事前に契約内容を話し合い、その中で決まった項目を契約書に明記します。つまり契約書に明記したい事は事前にピックアップして、話し合いの場で双方納得できるように進めていくことがポイントです。

業務委託契約書は委任契約と請負契約の2種類があり、請負契約の場合は収入印紙の添付が必要となります。

売買契約書

テンプレートから売買契約書を作成は、以下の項目を必ず盛り込んで作成しましょう。

  • 本契約と個別契約
  • 個別契約の成立
  • 発注の流れ
  • 引き渡しの流れ
  • 検品について
  • 支払方法
  • 所有権の移転
  • 危険負担
  • 品質保証
  • 反社会勢力排除
  • 秘密保持
  • 解除事由
  • 期限の利益損失事由
  • 損害賠償
  • 有効期間(延長方法も含む)
  • 合意管轄(有事の際にどこの裁判所で裁判を行うか)
  • 協議

売買契約書は、不動産や商品などを売買する際に使用します。売り手と買い手の間で取り決めた内容を契約書に明記して、売買に関するトラブルを防ぐことが目的です。

売買契約の場合、契約自由の原則があるため契約書の書式は自由に決めて構いません。そのため、テンプレートも自社が使いやすいと思ったものを自由に選べます。契約内容も事由に取り決めて構いませんが、一方があまりに優位であったり、公序良俗に反したりしていれば無効とされます。

まずは上記の項目やダウンロードしたテンプレートを参考に、双方が納得できる契約書を作成していきましょう。

収入印紙については、売買契約書の場合単なる商品売買で契約金額の記載がなければ必要ありません。しかし契約書に金額が記載してある、売買取引が継続する場合は課税文書となるため収入印紙が必要です。

秘密保持契約(NDA)

テンプレートから密保持契約書(NDA)を作成する場合は、必ず以下の項目を盛り込んで作成します。

  • 秘密情報の定義
  • 目的外使用の禁止
  • 秘密保持義務についての例外(当事者以外の誰に開示を許容するか)
  • 複製の禁止
  • 秘密情報の破棄および変換
  • 知的財産権の確保
  • 競業禁止

秘密保持契約書の最大の目的は、相手方と共有している営業秘密を目的以外で使用させない事です。契約書では秘密情報を開示する目的を明記して、その目的以外で使用しないことを書面で持って約束してもらいます。

秘密情報の定義については、「自社が有する製品○○の構成情報および開発ノウハウ」と明記したり、「開示した技術説明書および仕様書」などと明記したりする方法があります。テンプレート内も秘密情報の定義を明記している場合、自社の定義とは異なる場合がほとんどです。テンプレートの定義が自社と違う場合は、必ず適した文章に修正します。

自社の営業秘密をはじめ秘密情報は会社の財産です。取引の中で漏れてしまうと甚大な被害を引き起こしかねません。

秘密保持契約書は、業務委託契約書や売買契約書と同時に取り交わすケースもあります。業務委託や売買契約で自社の秘密情報を共有する場合は、秘密保持契約書も準備するようにしましょう。

ライセンス契約

テンプレートからライセンス契約書を作成は、必ず以下の項目を盛り込んで作成しましょう。

  • 定義(最初に契約書で使う用語などを定義します)
  • 許諾するライセンス使用の範囲
  • ライセンス料および支払方法
  • 契約一時金の有無
  • ライセンス料の計算方法
  • ライセンスを使用した売り上げや利益の計算方法
  • 権利維持
  • 定期報告する項目
  • 帳簿の保管と監査
  • ライセンスの表示義務
  • 契約期間
  • 解除や解約の条件
  • 譲渡の禁止
  • 合意管轄

ライセンス契約書は、自社の知的財産を取引先に使用させることを許可する際に使う契約書です。具体的には自社のオリジナルキャラクターや独自技術、自社製品やブランドなどがあります。

ライセンス契約書では、ライセンス料の計算がポイントです。ライセンス料を適切に支払ってもらうためには、売上や利益の過少申告に対するリスク対策が必要となります。ライセンス料の計算方法は会社ごと・案件ごとにバラバラです。テンプレートに記載してあるライセンス料はあくまでも一例ですから、その案件で取り決めた計算方法に書き直します。

そこで定期報告や帳簿の保管、監査についても契約書で定義しておき、後々トラブルに発展することを防ぎます。

万が一過少申告のリスクを感じて対策をしたいなら、過少申告が発覚した際の違約金についても取り決めておきましょう。もちろん取り決めた違約金も契約書に盛り込み、双方で合意していることを明記します。テンプレートに記載がない場合は、自分で文章を付け足しておきましょう。


まとめ

契約書のテンプレートは効率化できるツールですが、以下の注意が必要です。

  • テンプレートはそのまま流用せず、加筆修正を前提として活用する
  • 内容を全て読んで理解し、該当の契約内容に不適切な内容がないかチェックする
  • 契約書は種類ごとに記載する項目が違うので、それぞれに合わせて作成すること

企業では契約書を取り交わすケースが多く、その都度一から契約書を作ることは効率的ではありません。テンプレートをそのまま流用するのではなく、全体を把握して案件に合わせて手を加えることで、より確実な契約書が作成できるようになります。

今回ご紹介したテンプレートサイトを活用して、ぜひ契約業務を効率化してください。

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