イチから始める与信調査、4つの方法とそれぞれのポイントを徹底解説

与信調査

契約数が増えたからといっても、比例するかのように売掛金まで増加してしまっては意味がありません。企業としての成長を実感するためには、契約前の与信調査が重要です。しかし、ノウハウがないという理由から与信調査に踏み切れないというケースも少なくありません。

この記事では、与信調査与に関する知識がないという方でもわかるよう、与信調査の方法ごとに分けてご説明しています。また、売掛金を減らすための外部機関の活用法についても触れています。自社の利益をもっと高めたい、売掛金を減らしたいという方は必見です。


個人でできる与信調査の方法

まずは、個人でできる与信調査にはどのようなものがあるのか確認していきましょう。

与信調査というと調査機関を利用するイメージがあるかもしれませんが、自社で調査を行っている企業も多いです。

企業の情報を調べる4つの方法

与信管理のために個人で各企業の情報を調べる場合、以下の4種類の方法があります。

  • 社内調査
  • 直接調査
  • 外部調査
  • 依頼調査

それぞれの調査方法の特徴について解説します。なお、外部調査には複数のパターンがあるので注意してください。

1. 社内調査:関係部署が保有する情報を調べる

自社で保有する情報を元に調査を行う社内調査は、今回紹介する4つの中では比較的手軽に行えます。

例えば、過去に取引経験があるなら当時の資料を確認し、当該企業の社員とつながりのある社員がいれば面談を行います。ただし、この調査で得られる情報は限定的です。

2.直接調査:代表・担当者に質問する

相手に直接聞き取りを行う直接調査は、調査対象からの情報であることから、貴重な情報源になる可能性があります。
直接訪問することで会社の雰囲気やスタッフの対応を目で見て確認できます。代表の方とコミュニケーションをとることができれば、企業のビジョンや経営への意識などを確認することができます。

ただし、相手に不快感を与える可能性があるので、慎重なコミュニケーションを心がけてください。

3.外部調査:登記簿を確認する

外部調査は、主に登記簿など確認することで情報を収集するので、「既に保有する情報」を裏付ける際に役立つ調査方法です。

実際に存在している会社なのかどうか、事業目的はなんなのかといった点が確認できる商業登記や不動産や担保の有無が確認できる不動産登記などの閲覧を通してその会社についての情報を収集していきます。

ただし、企業によっては登記簿の情報が変わっているケースもあるので、登記簿を確認する際は、過去からの変遷が記載された「履歴事項証明書」を取得するようにしましょう。

4.外部調査:売掛取引依頼表を取得する

売掛取引依頼表は、売上をしっかりと回収するために取引先との間に作る書類です。取引先企業の所在地や銀行口座などの情報を記入してもらうことになるため、自社の手元に相手の情報を持っておくことができるほか、自身で調査した結果と内容が異なっている場合は、嘘をついている証拠にもなります。

また、万が一取引先企業が差し押さえにあったり、裁判になったりした際の証拠資料として活用することもできます。

企業によっては、売掛取引依頼表作成を嫌がるケースもあるので、作成を依頼する時の反応は1つのチェックポイントになります。

外部調査:決算書を入手する

決算書には取引先企業の利益や損益などの財務に関する情報がたくさん掲載されているため、そこから分析を行うことができます。

貸借対照表や損益計算書の提出を求めて、取引先の財務状況を確認することも有効です。これらの決算書からは負債額や売上の増減などが分析できるため、分析の結果相手に支払い能力がないと分かれば被害を受ける前に取引を停止することも可能です。

決算書については、単年分だけでなく過去3年分は入手するようにし、年単位での資金繰り状況を確認し、悪化の兆候を見逃さないようにしましょう。

外部調査:インターネットで検索する

インターネット調査は、比較的簡単に行うことができ、数多くの情報を収集することができます。

調査するのは、企業のホームページのほか、就職情報サイト、口コミサイト、Web上にある決算報告やIR情報などです。

一方で、ホームページを持っていても、更新されていないケースもあるので更新日はチェックするようにしてください。

また、役員交代が頻繁に行われていないか、ホームページとその他の情報源に記載されている情報が乖離していないか、といった点も確認するようにしましょう。

依頼調査:取引先・同業者に尋ねる

銀行や同業他社など、その企業と取引関係にある、もしくはつながりのある会社に対してヒアリングを行う依頼調査は、取引先企業に対するリアルな情報を収集することが

直接調査で得られなかった情報が得られる可能性があるほか、すでに得ている情報が正しいのかどうかの証拠が得られるケースもあります。

ただし調査対象の同業者にヒアリングを行う場合、競合ということで、わざと調査対象企業の悪評を流してくる可能性がある点に注意してください。


与信調査で使用する「定量分析」「定性分析」

与信調査は、調査対象とする企業の業界全体やその企業が持つ技術などについて調べることでも行うことができます。ここではその際の調査手法である定量分析と定性分析について解説します。

個別に調べる場合よりも、より客観的な視点で分析を進めることができます。

定量分析

定量分析とは、数値で表されているデータを分析することです。後述する定性分析に比べると、数値を扱う分、誰が見ても同じ結果となる点に特徴があります。

定量分析の分析対象となる数値データには以下のようなものが挙げられます。

データ詳細
自己資本比率全ての資本のうち、自己資本がどのくらいを占めているかを表す数字
流動比率1年以内に現金にできる資産が1年以内に返さなければいけない負債をどれくらい上回っているかを表す数値
当座比率負債の返済に使える資産がどれくらいあるのかを表す数値
経常収支比率経常収入を経常支出で割った数値

これらはあくまでも一例ですが、貸借対照表や損益計算書など決算書を活用して行います。

定性分析

定性分析とは、数値では表すことができない事柄を対象として行う分析のことです。数値のように固定された結果が出るわけではないため、幅広い分析結果が出てくる可能性がありますが、その分様々な視点を得ることが可能です。

定性分析の分析対象となるのは以下のようなものが挙げられます。

  • 経営者の能力
  • 業界全体の将来の見通し
  • 現在の経営陣の後継者
  • 事業資産
  • 取引先相手

これらの情報は数値では出てこないものですが、会社の状況を判断する際には大いに活用できるものです。

定量分析だけでも定性分析だけでも不十分となるため、両者を行うようにしましょう。


信用調査会社への依頼という選択肢

与信調査を自社で行うことができない場合は、信用調査会社を利用することも1つの選択肢です。また、情報の裏付けを行いたいなどの場合も活用できます。

できること

信用調査会社によっては、各企業の情報をまとめたデータベースを所有しているケースもあります。そういったデータベースにはインターネット調査などでは得られないような情報が手に入る可能性もあります。

また、信用調査会社は各企業やその競合となる企業の情報を扱う情報誌を発刊していることもあるので、それらは情報源として活用することが可能です。

注意点

信用調査会社を利用する場合、調査費用がかかってしまう点に注意が必要です。費用は調査会社によって異なるため一概に断言できませんが、10万円程度のものもあれば100万円以上かかるケースもあります。

また、信用調査会社は個人情報を扱う業務なので、守秘義務を遵守しているかどうかも確認しておきましょう。

そして、海外の企業の情報を調べたい場合は、全ての調査会社が対応しているわけではないので、海外調査可能の業者を見つける必要があります。

また、各企業の情報がどのくらいの頻度で更新されているかも確認しておきましょう。


売掛金削減のためにファクタリング会社を使う選択肢もある

単純に、売掛金を削減するという目的達成のためであれば、与信調査を行うほかに、ファクタリング会社を利用するという方法もあります。

ファクタリング会社とは、企業の持っている売掛金を買い取ることで企業の早期資金化を可能にするサービスです。企業はファクタリング会社に対して手数料を支払うことになるため、売掛金の一部は失ってしまいますが、取引先の支払いを待つことなく資金を得ることができるため、資金繰りに悩む必要がありません。

注意点

ファクタリングを利用する場合、手数料はしっかりと確認しておくようにしましょう。ファクタリング会社に対する手数料は売掛金から支払うことになるため、手数料が高いとその分企業の利益が減ってしまいます。

手数料に関しては基本的に売掛金の数%とされています。

また、中には契約書を作成してくれない、虚偽申告を行うなどの悪徳業者も潜んでいます。
ファクタリング会社を利用する際は以下のような点に注意しましょう。

  • 契約書の不明点は必ず確認する
  • 修正事項があればしっかりと要求する
  • 複数のファクタリング会社に見積もり作成を依頼する

まとめ

今回は、企業の売掛金減らすための方法として自社で行う与信調査の方法と、ファクタリング会社の利用について解説しました。

企業の資金繰りを悪化させないためにも、売掛金を少なくすることは企業にとって重要な課題であると言えます。そういった事態に陥らないようにするためにも、自社でしっかりと与信調査を行うほか、必要に応じてファクタリング会社を利用するなどしましょう。

参考にしたサイト

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