近年DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を使った変革・イノベーション)に取り組む企業が増加し、その成果が形となるケースも増えてきました。
IT時代を生き抜くためには、現代に即したシステムやビジネスモデルを展開し、価値を新たに生み出すと同時、競争上の優位性を得ることが重要です。
しかしDX推進を始めたいとは思っても、具体的に何をどうすればいいか分からず、動き出せずにいる方も多いのではないでしょうか。
実際に成功した企業の事例を見ていくと、「責任者の意識」「既存システムの分析」「スムーズな情報共有」「正確な現状把握」など、成功のポイントまで見えてきました。
ここではDX推進で成功した事例18選を紹介し、そこから分かった成功のための「4つのポイント」を解説します。
目次
- DXとはデータとデジタルを活用したビジネス変革のこと
- DX推進を成功させた18の企業事例
- 1.lotを活用したリモートサービスを行う三菱電機(2003年)
- 2.実店舗とWebサービスを充実させたBest Buy(2012年)
- 3.新しいビジネスモデルを確立したメルカリ(2013年)
- 4.クラウドネットワークサービスに移行したMicrosoft(2014年)
- 5.ユーザーファーストを徹底したAmazon.com(2014年)
- 6.カルテのデータベース化に成功した大塚デジタルヘルス(2016年)
- 7.着るだけで生体情報がわかるサービスを展開するグンゼ(2016年)
- 8.気象情報を独自に提供するウェザーニューズ社(2016年)
- 9.1億人の有料プラン利用者がいるSoptify(2016年)
- 10.タブレット学習を導入したベネッセコーポレーション(2018年)
- 11.75%の業務時間を短縮した株式会社学研ロジスティクス(2018年)
- 12.お客様の声を見える化した三井住友銀行(2019年)
- 13.キャッシュレス決済サービスを導入した鹿児島銀行(2019年)
- 14.単身高齢者向けの見守りサービスを提供した日立グローバルソリューションズ(2019年)
- 15.ソフトウェア部門を設立したフォルクスワーゲン(2019年)
- 16.全自動化に成功したブリヂストンファイナンス株式会社(2019年)
- 17.月200時間を削減できたソフトバンク株式会社(2019年)
- 18.6時間の業務効率化を実現した株式会社杉養蜂園(2020年)
- DXの推進を成功させるための4つのポイント
- まとめ:DX推進のタイミングを見極めよう
DXとはデータとデジタルを活用したビジネス変革のこと
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル化が進む環境に対応するため、企業が行う組織全体のビジネス変革のことです。
参考:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?基本から取り組み方までわかる保存版
経済活動だけでなく、文化や制度、社風など、企業全体に関わるポイントで変革を進め、企業そのものの変化を目指します。
世界規模でDXが推進され、さらに経済産業省でも「DX 推進指標」が発表されるなど、近年ますます重要視されているDXですが、国内と世界では取り組みを始めている状況が大きく異なります。
進展状況について国内と世界を比較すると、次の通りです。
国内の企業 | 世界の企業 | |
DX推進状況 | 36.5% | 80% |
参考資料:日経BP総研、国内900社の「デジタル化実態調査」を発表|日経BP
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)における日本企業と海外企業の取り組み方とは
このようにDX推進が世界で広く注目され、日本でもその機運が高まりつつあるのには、3つの理由があります。
1.既存のレガシーシステムの限界
まず1つ目は、既存のレガシーシステムに限界が訪れつつあるということです。クラウドストレージやloT、SMSの代行など、様々なデジタル技術を用いて、システム構築がより安価に行えるようになっています。
既存のシステムには利用しやすさというメリットがありますが、メンテナンス費や機能拡張の難しさが、次なる戦略の足かせになってしまうデメリットもあります。デメリットをメリットに変える手法をより行いやすくするために、DXが注目されているのです。
2.消費活動の変化
そして2つ目の理由は、消費活動の変化です。多くの消費者は「消費」そのものではなく「感覚の共有」を目的に消費を行うことが増えています。
カーシェアやフリマなど、何かを人と共有して利用するシェアリングエコノミーのサービスを例にとると、消費者は「実利」のために利用する一方で「共有者とのコミュニケーション」を得ることも重視しています。
こうした消費活動の変化に即したビジネスモデルに対応することも、DX推進の大きな目的です。
3.多種多様な分野で広がるデジタル化の変革
3つ目は多種多様な分野で広がるデジタル化による変革に対し、自社が競争力を維持するためにはDX推進が有効な対抗手段であるということです。既存のビジネスモデルやサービスが、新しい技術の流入で破壊・再構築されることを「デジタルディスラプション」と呼びます。
古典的な事例として、カメラ市場で圧倒的なシェアを誇っていたコダック社の倒産が挙げられます。デジタルカメラの需要や顧客の嗜好の変化、SNS上のデータシェアなどニーズの変化に対応しきれず、2012年に倒産してしまいました。
これまでにないビジネスモデルやサービスを持つ新規参入者により、対応が遅れれば自社の価値そのものが下がってしまう段階に来ているのです。
DX推進を成功させた18の企業事例
DXを進めるにあたり、企業によって用意できるコストも期間も全く異なります。
また「AIを使って何かする」といった経営陣の曖昧さから、システムの刷新や新たな経営戦略に結び付かない企業は少なくありません。
そこでここでは実際にDX化を開始し、収益や顧客数の増加、または事務効率の改善や勤務時間の短縮を実現させた21の企業を紹介します。
1.lotを活用したリモートサービスを行う三菱電機(2003年)
三菱電機が考案したリモートサービス「iQ Care Remote4U」は、放電加工機やレーザ加工機にloTを活用したものです。
着手前の課題
それまでは顧客の稼働工場で何かトラブルやエラーが発生した場合でも、現場の状況が分かるまでタイムラグがあり、顧客への対応が遅くなるという課題がありました。
DX推進による成果
顧客の稼働工場、データセンター、三菱電機サービスセンターがそれぞれloTでつながりあうサービスを実施しました。
サービスセンター側ですぐにどこで何が原因でトラブルが起きたか把握し、加工機の状態を遠隔診断、アラーム内容も現場に行かずリモートですぐ把握できます。
結果
顧客側で起きたトラブルやエラーの内容がすぐに把握でき、より迅速な解決へ繋げられるようになりました。
またシステムを利用している顧客側でも、解決速度が高まることで修理費用の削減や加工単価の見直し、生産性向上による売り上げ増など、収益の改善が見込めるようになりました。
参考資料:デジタルトランスフォーメーションの背景、成功事例と課題をわかりやすく解説
2.実店舗とWebサービスを充実させたBest Buy(2012年)
大手家電量販店であるBest Buyは、実店舗とWebサービスを組み合わせたことで収益増加を達成しました。
着手前の課題
Amazonなど通販サイトが広く利用されるようになったことで、2012年には純利益が90%も減少するという深刻な状況に陥っていました。
DX推進による成果
Webサービスと実店舗をリンクさせるため、ネットで注文した商品を店頭で受け取れるサービスや、顧客がネットでより安い商品を見つけた場合同じ価格で購入できるサービスなどを展開しました。
またWebサイト自体も店舗在庫の即時反映や、購入時のクリック数の減少など改善を行いました。
結果
2012年には18ドル前後だった株価が、2019年3月には70ドル前後まで回復しました。また合計で20憶ドルのコスト削減にも成功しています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性とその方法 | Senses
3.新しいビジネスモデルを確立したメルカリ(2013年)
個人間での中古販売という新しいビジネスモデルを作り上げたメルカリは、ユーザーの利便性を中心に考え、それまでPC上がメインだったインターネットオークションをスマホアプリとして成功させました。
着手前の課題
インターネットオークションはそれまでPC上がメインであり、出品者も購入者も実名で行うことが前提のサービスがほとんどでした。個人間で取引をするのにも、ハードルが高いと感じる人が多かったのです。
DX推進による成果
メルカリはデジタル技術を通し、スマホアプリ上で誰でも気軽に出品でき、匿名で配送できるサービスを作り上げました。インターネット上だけでの取引で完了できるため、いつでもどこでもできるという顧客に寄り添った利便性があります。
結果
個人間での商品の売買を簡単にし、新たなビジネスモデルとして広く定着させました。2019年からは売り上げポイントを「メルペイ」という形でスマホ決済に利用できるサービスも開始し、既存のサービス以外にもその枠を広げています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?事例とともに実現のポイントを紹介 | Work × IT
4.クラウドネットワークサービスに移行したMicrosoft(2014年)
OSの中でも利用者数が最も多いWindowsやOfficeシリーズで知られるMicrosoftは、主力サービスをクラウドネットワークサービスに移行するという戦略の変更を行いました。
着手前の課題
PC以外にもタブレットを選択する人、Officeと同様に使えるサービスの登場など、競合他社との競争が激化していました。
DX推進による成果
それまで売り切りで販売していたOffice365をクラウドサービスとして提供することで、利便性を飛躍的に向上させました。
また月額で販売することで、買い切りだと購入しづらかった層にもアピールできるようになったのです。
結果
ユーザー数の増加に成功し、収益も1,220億ドルまで伸ばしました。2019年にはMicrosoft全体で時価総額1兆ドルを獲得しています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?事例とともに実現のポイントを紹介 | Work × IT
5.ユーザーファーストを徹底したAmazon.com(2014年)
Amazon.comが創業した当時はWindows95の発売前で、まだ「インターネットを経由して本を販売する」ということ自体がビジネスモデルとして成立しておらず、新たなビジネスモデルを確立させました。
着手前の課題
世界規模で広く利用されているAmazon.comは、創業当初は書籍を中心に扱うインターネット書店でした。
しかし創業当時は、インターネットを通じて書籍を買うこと自体が人々に定着していませんでした。
そのためどうすれば顧客から「すでにあるリアルの本屋」以上に選んでもらえるかなど、ビジネスモデル自体が不透明であるという課題がありました。
DX推進による成果
ユーザーファーストを徹底させ、カスタマーレビュー機能やレコメンデーション機能、使いやすいWebサイト設計などを次々と行いました。1-Click™ですぐに購入できるボタンを作り、面倒な情報入力の手間を省いています。
また注文履歴を顧客単位で機械学習による分析を行い、配達先に近い倉庫へあらかじめおくことで、短期間での納品を可能としました。
結果
Amazon.comは「最高の顧客体験」をテーマに多くのサービスを実践し、爆発的にシェアを拡大していきました。この成功は、世界で最もDXの実現に近いと言われています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?事例とともに実現のポイントを紹介
6.カルテのデータベース化に成功した大塚デジタルヘルス(2016年)
大塚デジタルヘルスは精神科医療に対する電子カルテデータ分析をサービスとして成立させた、大塚製薬と日本アイ・ビー・エムが設立した合弁会社です。
着手前の課題
精神科医療では個々の病状や病歴を数値として表すことが難しく、そのため医療従事者による「自由記述」としてデータが蓄積されてきました。
しかし自由記述であるがゆえに、たとえば「この薬を利用している似たような症例を見つけたい」と考えてもデータベースとして利用しにくく、カルテ管理に対し大きな課題がありました。
DX推進による成果
アイ・ビー・エムが開発した人工知能の「Watoson」とクラウドサービスを組み合わせることで、患者情報を一覧で閲覧しやすくするほか、断片的だった処方履歴の変化を一覧で表示できるようになりました。
結果
病院内では、患者や家族へ類似症例や統計データを元にした説明が行えるほか、データ分析や症例レポートの作成をサポートが可能になりました。
またクラウドの共有により、400万人弱とも言われる症例を利用した治療への反映が期待されています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?事例とともに実現のポイントを紹介 | Work × IT
7.着るだけで生体情報がわかるサービスを展開するグンゼ(2016年)
1896年の設立以降、肌着メーカーとしてインナーウェアやハウスカジュアルウェアだけでなく、プラスチックフィルム材や医療機器なども手掛けるメーカーです。
着手前の課題
様々な製品を手掛けるグンゼですが、生活の中でできる健康への取り組みやQOLの向上に、グンゼとしてどのように取り組めるかを課題としていました。
DX推進による成果
NECの薄型デバイスを活用し、着るだけで生体情報が取得できる「導電性ニット」を開発しました。
姿勢や消費カロリー心拍などの生体情報を計測でき、日常的に着やすい通気性や着心地の良さが特徴です。
結果
20店舗あるグンゼのスポーツクラブで、インストラクターや利用者によりシステムの実証実験を開始しました。
顧客のQOLの向上に一役買っており、今後は現場で働く従業員の体調管理や、高齢者への見守りにも活用するサービスの展開を目指しています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーションの背景、成功事例と課題をわかりやすく解説
8.気象情報を独自に提供するウェザーニューズ社(2016年)
ウェザーニュース社は世界最大の民間気象情報会社であり、気象庁が独占していた気象情報を独自に提供する仕組みを開発しました。
着手前の課題
デジタル化が進む前はニュースや新聞など、天気予報の情報入手源が限られており、リアルタイムの天気情報を入手するのは難しいとされてきました。
DX推進による成果
独自に船舶運航企業に気象情報の提供を開始するシステムを運用し、気象庁が独占していた情報を企業として提供できるようにしました。
結果
航路の安全性を確保できるとし、それまで「買う人はいない」と言われていた天気予報をビジネスとして成立させました。今では、170億円の売り上げがある上場企業に成長しています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か?企業の課題解決事例をご紹介
9.1億人の有料プラン利用者がいるSoptify(2016年)
Soptifyは約5,000万曲がスマホやタブレット、ゲーム機、PC、loTなど様々なデバイスで聞ける世界最大級の定額音楽サービスです。
着手前の課題
CDの購入やレンタルが主流であり、インターネット経由で音楽を聴くこと自体がサービスとして定着しないという課題がありました。
DX推進による成果
制限付きではあるものの無料で聞き放題なほか、今ではメジャーな月額定額制を導入したことで、顧客は多くの楽曲を視聴できるだけでなく、レコメンデーション機能やプレイリストの共有による新たな音楽に出会うきっかけが広く作られました。
Soptify Connectというアプリを使えば、音楽をストリームしている間でも電話やSNSの閲覧が可能です。
また同じアカウントであればどのデバイスから聞いても同じ再生履歴が同期されるなど、ユーザーから見た利便性も備えています。
結果
現在では300億ドル近い価値を誇るアプリになり、2億人を超す月間アクティブユーザーを獲得しました。さらにその2億人のうち約1億人は有料プランを利用しています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)への企業の取り組みや成功事例から見るそのメリットとは
10.タブレット学習を導入したベネッセコーポレーション(2018年)
こどもちゃれんじや進研ゼミといった、通信教育システムで有名な企業がベネッセコーポレーションです。
着手前の課題
それまで赤ペン先生を代表に、紙媒体での通信教育システムを提供していたベネッセコーポレーションですが、市場ニーズやトレンドに合わせづらいという側面を持っていました。
DX推進による成果
タブレットを活用した「チャレンジ タッチ」を導入し、市場ニーズやトレンドに合わせた通信教育を可能にしました。
結果
2018年4月の時点で、小学講座の会員120万人のうち4割が「チャレンジタッチ」を利用しています。ベネッセコーポレーションとしても、随一の巨大システムとなりました。
子供視点では勉強した分だけご褒美がもらえるため、ゲーム感覚で学習を進められるのが特徴です。また親のスマホで学習状況の確認ができるため、親子のコミュニケーションにも役立てられています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?事例とともに実現のポイントを紹介 | Work × IT
11.75%の業務時間を短縮した株式会社学研ロジスティクス(2018年)
物流事業を広く手掛ける株式会社学研ロジスティクスは、ダイレクトマーケティングの支援などシステム提供を通し、一連の業務を一括で行えるという強みを持つ企業です。
着手前の課題
申し込み書や引き落とし用紙が紙媒体であったことから、繁忙期にはおよそ30万枚もの入力書類が発生し、時には入力専門の人材を20名ほど雇用しなくてはならないという課題がありました。
DX推進による成果
手書きの文字を高い精度で読み取ってくれるサービス「DX Suite」とRPAを連携し、申込書や引き落とし用紙を自動的に読み取るシステムを作り上げました。スキャンしたデータを読み込んだ後、確認修正にも利用できるため、業務時間の短縮につながっています。
結果
申し込み書に関しては、1人当たり8時間かかっていた業務を1~2時間までに短縮することに成功しました。
参考資料:株式会社学研ロジスティクス | DX Suite | 最高のAI-OCRを。
12.お客様の声を見える化した三井住友銀行(2019年)
三大メガバンクの一角を占める三井住友銀行では、顧客の声を「見える化」するDXに取り組んでいます。
着手前の課題
お客様の声を分析する際、まとめ上げるだけでも時間と人件費がかかります。三井住友銀行では年間35,000件と、非常に多くのお客様の声が寄せられ、課題となっていました。
DX推進による成果
意見や要望をNECのテキスト含意認識技術を利用し、書かれている内容別にグループ分けを行えるシステムが開発されました。
結果
人の目以上に高度化された分析で、業務効率化だけでなく、人の目ではそれまで抽出できなかった新たな意見を得ることにもつながっています。
参考資料:デジタルトランスフォーメーションの背景、成功事例と課題をわかりやすく解説
13.キャッシュレス決済サービスを導入した鹿児島銀行(2019年)
鹿児島県鹿児島市に本店を置く鹿児島銀行は、完全キャッシュレス商業施設「よかど鹿児島」の開業に合わせ、キャッシュレス決済サービスの開始を行いました。
着手前の課題
商業施設のオープンに間に合わせるべく、一切の遅延が許されない状況下でアプリをリリースするにはどうすればよいか、今後の運用はどのように進めるべきか、という課題がありました。
DX推進による成果
スマホ決済アプリの開発プロジェクトを行内で行える体制を構築したい、という意向もあり、デジタルトランスフォーメーションをサポートするサービスと、役割分担を行いながら開発を行いました。
アプリ開発ではAndroidとiOSの差異を考慮した設計や技術選定など、工夫が行われました。
結果
一切の遅延が許されなかった状況下にもかかわらず、期日通りにアプリを開発・リリースし、多くの利用者にアプリを利用してもらえたほか、鹿児島銀行主体で追加機能の開発が可能になりました。
参考資料:事例紹介 – 鹿児島銀行 | 株式会社モンスター・ラボ
14.単身高齢者向けの見守りサービスを提供した日立グローバルソリューションズ(2019年)
日立グローバルソリューションズでは、顧客のニーズに沿った見守りサービスを短期間で実現に移すことに成功しました。
着手前の課題
経験や体験に顧客が価値を置く中で「コト売り」へ対応していくために、日立グローバルソリューションズでは「顧客と中長期的な関係性を築くサービス提供」が課題となっていました。
そこで顧客のニーズを分析した結果、単身高齢者に対する「見守り」のニーズがあることが分かりました。
DX推進による成果
単身高齢者への見守りのニーズをどのように満たしていくべきか、そこでプロジェクトチームとサポートサービスを提供する企業との間で連携を強化することで、初期開発期間を3ヶ月でスムーズに終えることが出来ました。
プロダクトイメージが短期間で固まったことで、開発からリリースまでの時間の短縮に成功したのです。
結果
部屋の壁などに設置した活動センサーを利用し、離れて暮らす単身高齢者の体調や活動量をスマホでいつでも確認できるサービス「ドシテル」を2019年6月より開始しました。
サポートサービスを利用した企業からは、リリース後にもアプリ運営全般にわたるサポートを受けることで、より安定したアプリ運営に繋げています。
参考資料:事例紹介 – 日立グローバルライフソリューションズ株式会社 | 株式会社モンスター・ラボ
15.ソフトウェア部門を設立したフォルクスワーゲン(2019年)
ドイツの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンは、自社内でのソフトウェア部門の設立を通し、自社で車両関連のソフトウェアを開発する環境を整えています。
着手前の課題
フォルクスワーゲンでは、車そのもののシステムに関与するソフトウェアを、70ものコントロールユニットを統合して利用しています。同じソフトウェアプラットフォームを利用していないため、システムの煩雑さがネックでした。
DX推進による成果
将来的には、車に利用されているソフトウェアをすべて同じOS、同じクラウドシステムで利用できるようになることを目的としています。今後は2025年を目標に車両関係サービス用ソフトウェアの60%を、自社製にする予定です。
結果
社内でソフトウェア開発の下地を進めたことで、新車購入や中高車取引をインターネットで行うプラットフォームの開発にも着手が可能になりました。
またその他にカーシェアリングや駐車場サービスを合わせて展開することで、2025年までに約11億ドルの売り上げを見込んでいます。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性とその方法 | Senses
16.全自動化に成功したブリヂストンファイナンス株式会社(2019年)
ブリヂストンファイナンス株式会社は、タイヤ市場で世界シェアトップを誇るブリヂストンの金融子会社として創業しました。
着手前の課題
ブリヂストンファイナンス株式会社はグループ内の間接業務を集約することで、それぞれが本業専念できる環境づくりを行っています。
しかし月間150件ほどある伝票起票業務において人的リソースに依存していたため、今後の間接業務の集約を踏まえると、業務効率化が大きな課題となっていました。
DX推進による成果
伝票起票業務に対し、管理番号や金額を読み取ってデータ化してくれるAI-OCRと、従来は人が行っていた管理会計情報との突合せをRPAで効率化できる可能性を見出し、社内プロジェクトの発足が行われ、最終的に4社から1社を絞ってAI-OCRを導入しました。
結果
伝票起票業務を全自動化することに成功し、繁忙期と通常時の差が解消されました。またロボットが処理している間に自分たちの業務を効率よく進められるため、全体的な業務効率化にも成功しています。
また社内プロジェクトとして選定・導入などを行ったことで、他の業務の効率化を目指す下地が作られ、DX推進に向けた取り組みがしやすくなりました。
参考資料:ブリヂストンファイナンス株式会社 | DX Suite | 最高のAI-OCRを。
17.月200時間を削減できたソフトバンク株式会社(2019年)
携帯電話大手キャリアの1つであるソフトバンク株式会社では、コールセンターの業務効率化を実現しています。
着手前の課題
警察署から毎月6,000件近く届く携帯電話の落とし物通知依頼書の「転記業務の効率化」が課題でした。
多い時にはオペレーター10名で行っても入力が終わらず、その結果、メインであるコールセンター業務への支障が発生するという状況がありました。
DX推進による成果
ソフトバンク株式会社は個人情報を扱うため、そもそも決められたネットワーク環境でしか業務が行えないという背景があります。
そこですでに導入しているWinAxorとの連携が可能なAI-OCRサービスであるDX Suiteを導入し、データ化したCSVを自社開発システムに入れた後、さらにRPAで専用システムに入れることでセキュリティを守りつつ、自動化を実現させました。
結果
オペレーター10人で行っていた作業ですが、導入後には1人で完結させることができるようになり、月200時間もの入力業務の削減に成功しました。
またオペレーターはコールセンター業務に注力できるため、顧客への対応速度向上にもつながっています。
参考資料:ソフトバンク株式会社 | DX Suite | 最高のAI-OCRを。
18.6時間の業務効率化を実現した株式会社杉養蜂園(2020年)
株式会社杉養蜂園は、ローヤルゼリーやハチミツ、プロポリスなど、蜂から生まれる製品や化粧品の製造・販売を手掛けている企業です。
着手前の課題
株式会社杉養蜂園では正確性を担保するべく、スキャンしたデータをさらに2人が別々に入力し、その差分をチェックしたうえでシステム登録をしていました。
しかし店舗数増大により業務が増えたことで、DX推進に踏み切りました。
DX推進による成果
読み取り精度が高く、コストに優れたOCRを複数社比較し、顧客へ迷惑をかけることのないように慎重に検討を開始しました。
この過程で自動学習を行い精度が高まるAI-OCRが適しているとして、2人で行っていた業務のうち1人分をAI-OCRに置き換えを実施し、効率化をさらに進めることができました。
結果
AI-OCR導入後は1人あたり6時間の業務効率化が実現し、入力業務に当たる人員の数を減らしたにも関わらず、業務時間外での入力作業も減少しました。
さらにデータ分析や専門部署を作ることにもつながり、新たなマーケティングに繋がる環境構築が進められています。
参考資料:株式会社 杉養蜂園 | DX Suite | 最高のAI-OCRを。
DXの推進を成功させるための4つのポイント
DXを実際に企業内で進めていくには、成功した他社の真似をそのままするだけでは「自社の状況にそぐわない」可能性があります。
自社に合うDXの推進には「推進事例を精査し、成功させた企業の共通点を探す」ことと「成功のために企業内でどのような課題を乗り越えるべきか正確に把握する」ことが重要です。
1.現場責任者の意識改革
DX化を目指しても「上司への配慮との板挟みになる」「現場の責任者から理解が得られない」といった課題から、思うように進まない場合もあります。
その企業における働き方やそれまでの価値観そのものが、DX推進を妨げてしまうのです。
まずは「DXを通じ、何ができるのか」を具体的に示し、社内全体を巻き込んでいくことが大切です。
たとえば社内でノウハウと知識を持つミドル層へDX教育を実行し、合わせてDXに理解を持つ人材を現場責任者の近くに配置することで、社内全体にDX化への理解を促す方法もあります。
システム開発を内製化することで自社プロセスにし、外注コストを削減しつつ開発スピードを高め、将来的な人材育成や初期投資の重要性を経営陣や現場責任者に広くアピールするのも方法の1つと言えるでしょう。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性とその方法 | Senses
2.既存のシステムをどうするかが課題
すでにある現行の社内システムの複雑さそのものが、DX導入を押しとどめてしまう場合があります。
たとえばソフトバンク株式会社の事例で紹介したように、個人情報保護の観点から社内システムに対し新たなシステムを導入するのが難しい企業もあります。
また新たな技術導入やシステムアップデートが部署別に行われていた場合、システム全体を把握している人がおらず、全容をまとめるところからスタートしなくてはならないかもしれません。
こうした「既存システムの課題」は社内全体での連携が非常に大きな鍵となります。
まずは「DX化で実現したい要望」を精査し、開発担当や運用担当と共にその要望を叶えるには既存システムでは何が足りないのか「分析」を進めることが重要です。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?事例とともに実現のポイントを紹介 | Work × IT
3.スムーズな情報共有が重要
システム面を実行・調節する現場と、戦略を練る経営陣との情報連携は非常に重要なポイントです。
これまでの既存システムでは、データ管理も含め部署や部門別に取り組まれることが多く、DX化するにあたり各IT担当者や現場社員の「不安」や「疑問」が吹き上がる可能性があります。
また経営陣の理想が実行・調節を行う現場の状況と、必ずしも一致するとは限りません。
DX化の必要性を現場が持っていても、経営陣の理想によっては必要性が過小評価される場合もあるためです。
経営陣と現場に意識の差があればあるほど、現場に混乱を招きます。部署や部門同士の横の連携だけでなく、経営陣と現場の意識をすり合わせる上下の連携も重要です。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性とその方法 | Senses
4.DX評価指標で現状を把握する
現状が分からない、まだ何から始めればよいか分からない場合は、経済産業省のサイトで客観的に6段階に分けて企業のDX度を診断してみましょう。
また自己診断結果を入力することで、中立組織であるIPA(独立行政法人情報処理推進機構)から全体データとの比較を可能にするベンチマークなど、分析結果を提示してもらえます。
この分析結果を踏まえて、次の段階に進むにはどうすればよいか、アクションプランを作成します。
最初から大きな変革に踏み切るのではなく、部分的に最適化を行う、業務効率化をするといったスタート地点をクリアすることが大切です。
参考資料:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?企業の導入事例とメリット、課題を解説|ferret
まとめ:DX推進のタイミングを見極めよう
DXは内部の業務効率化など小さなものから、企業全体に関わるシステム改修や新たなビジネスモデルの創生という大きなものまで様々です。
しかしシステム改修や導入など、ある程度コストがかかる以上、時間や予算を得られるタイミングを見極め、できる範囲から進めなくてはなりません。
まずは経済産業省の「DX推進指標」を用いて、経営幹部や事業部門、IT部門がそれぞれで回答を進め、現状を把握してからDXを進めていくことから始めてみましょう。