ファクタリングとビジネスローンには、資金の調達スピードや上限金額など商品性に違いがあります。資金調達の方法としてどちらが適しているかは事業者の状況や目的によって異なるため、メリット・デメリットを比較して重視するポイントに合う商品を選びましょう。
本記事では、事業性融資商品の開発やビジネスローン商品のサービスリリースに携わった筆者の経験をもとに、ファクタリングとビジネスローンのメリット・デメリットを分かりやすく解説します。それぞれの向いているケースも説明するため、資金調達の方法を選ぶ際の参考にしてください。
目次
※本記事はGMOあおぞらネット銀行株式による寄稿記事です。LISKUL編集部監修のもと公開しています。
ファクタリングとビジネスローンの違い
ファクタリングとビジネスローンには、以下のような違いがあります。
項目 | ファクタリング | ビジネスローン |
資金調達スピード | 最短即日〜1カ月 | 1週間〜2週間 |
上限金額 | 売掛債権の総額 | 最大500万円~3,000万円程度の商品が多い |
手数料・金利 | 手数料: ・2者間ファクタリング:売掛債権総額に対して年率8.0%〜30.0% ・3者間ファクタリング:売掛債権総額に対して年率1.0%〜9.0% | 年率0.9%〜18.0%程度 |
財務への影響 | 資産の減少+資産の増加 | 負債の増加+資産の増加 |
取引先への影響 | ・2者間ファクタリング:なし ・3者間ファクタリング:あり | なし |
銀行やステークホルダーへの影響 | 小さい | 大きい |
なお、資金調達を行う際には、売掛金の受け取りや借入金の管理のために、法人口座を開設しておくことが一般的です。法人口座の選択肢について知りたい場合は、以下の記事も参考にしてください。
参考:【2024年最新版】法人口座を開設できる銀行おすすめ15選を比較!選び方も紹介│LISKUL
資金調達スピード
ファクタリングは資金調達のスピードが速い点が特徴です。最短即日で資金を調達できるため、緊急でお金を工面したい場面での活躍が期待できます。
ビジネスローンは業績や事業規模などがチェックされるため、入金されるまでに時間がかかることが多いです。ファクタリングと比較するとスピードが劣ります。
上限金額
ファクタリングによる資金調達は、売掛債権の総額が上限となります。実際にはファクタリング業者への手数料が発生するため、手元に残るのは売掛債権の総額以下の金額です。
ビジネスローンの上限金額は商品の提供元によって異なります。また貸金業者による貸付とは異なり、ビジネスローンは総量規制の対象になりません。ビジネスローン会社の審査基準をクリアした事業者は、年収の1/3以上の資金調達も可能です。
手数料・金利
2者間ファクタリングではファクタリング業者が売掛金を回収できないリスクを負うため、3者間ファクタリングと比較すると手数料は高い傾向にあります。
ビジネスローンはファクタリングに比べて金利が低い商品が多いです。業績や事業内容により、提示される金利は事業者ごとに異なります。ビジネスローンを提供する会社から見て貸し倒れのリスクが高くなるほど、金利は高くなるでしょう。
財務への影響
ファクタリングの利用は財務上「資産の減少+資産の増加」として扱われ、負債にはあたりません。またファクタリングで得た現金を負債の返済にあてることで、貸借対照表のスリム化が図れます。
一方、ビジネスローンの扱いは「負債の増加+資産の増加」であり、借入金として決算書に記載されます。
取引先への影響
2者間ファクタリングでは、原則として取引先に影響を与えることなく資金調達が可能です。一方、3者間ファクタリングでは取引先の企業を加えた3社が合意したうえで進められるため、相手方にファクタリングを利用していると伝わってしまいます。
一方、ビジネスローンの場合、基本的に資金調達の情報が取引先に伝わる可能性は低いため、影響は少ないでしょう。
銀行やステークホルダーへの影響
ファクタリングは融資とは異なるため、銀行やステークホルダーへの影響は少ないでしょう。
一方、ビジネスローンを利用すると決算書に借入金として記載されるため、今後別の金融機関から融資審査を受ける際に影響を与える可能性があります。また、特定の株主や債権者から請求があった場合、事業者は決算報告書を開示する義務があります。
ファクタリングとは
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング業者に売却することで期日前に資金を調達する方法です。売却した売掛債権の総額から手数料を差し引いた金額が、サービス利用者に振り込まれます。主な形態は「2者間ファクタリング」と「3者間ファクタリング」の2種類です。ここではファクタリングの概要について解説します。
メリット
ファクタリングのメリットは利用しても、負債比率が増加しない点です。財務諸表上の見た目はもちろん、今後金融機関から融資審査を受ける際に負債比率が少ない点をアピールできるでしょう。
また売掛債権の譲渡後に売掛先が倒産した場合でも、原則として利用者は対価を請求されません。そのためファクタリングを利用することで、売掛債権が未回収となるリスクの回避につながります。
デメリット
ファクタリングを利用すると手数料が差し引かれるため、本来の債権額より手元に入るお金が少なくなるデメリットがあります。高額な手数料を支払ってしまうと、かえって資金繰りが悪化する要因となるでしょう。
また売掛債権の総額が上限となるため、まとまった資金の調達には適していません。売掛先の業績によっては利用できないケースもあります。
ビジネスローンとは
ここからはビジネスローンのメリット・デメリットについて解説します。
メリット
ビジネスローンでは事業内容や業績が審査されるため、売掛債権以上の資金を調達できる可能性があります。仮に売掛債権がない場合でも、ビジネスローンへの申し込みは可能です。
さらに、ファクタリングと比較するとビジネスローンは支払う手数料が少なく済みます。コストを抑えてまとまった資金を調達するのに適した方法です。
デメリット
ビジネスローンのデメリットは、負債比率が増える点です。過度な資金調達は、経営を悪化させる可能性があります。自社の負債比率を見極めながら、余裕を持った返済計画を立てることが重要です。
ファクタリングがおすすめのケース
ここではファクタリングがおすすめのケースについて解説します。
財務諸表の見栄えを気にして、負債を増やしたくない場合
ファクタリングは融資でないため、利用しても財務諸表上の負債は増えません。財務諸表の見栄えを整えておきたいケースでは、ファクタリングの利用がおすすめです。
例えば銀行融資の審査では財務諸表をチェックされます。ビジネスローンは財務上の「負債の増加」にあたるため、審査に影響を及ぼす可能性があるでしょう。ファクタリングを利用することで、財務諸表上の負債比率を抑えた資金調達が可能になります。
売掛債権を持っている場合
売掛債権を持っている場合は、ファクタリングを利用することでスピーディーに資金を調達できます。ファクタリングでは一般的に取引先の信用を重視して審査されるため、ほかの金融機関から借り入れできなかった場合でも、資金を調達できる可能性があります。
ビジネスローンがおすすめのケース
ここではビジネスローンがおすすめのケースについて解説します。
売掛債権を持っていない場合
売掛債権を持っていない事業者は、ファクタリングを使った資金調達ができません。売却できる債権がないときは、ビジネスローンの利用を検討しましょう。
売掛債権以上のお金を調達したい場合
ファクタリングで調達できる資金の上限額は、売掛債権の総額です。手持ちの債権より多くの資金調達が必要な場合は、ビジネスローンを活用しましょう。
ビジネスローンでは、ファクタリングと比べて手数料を抑えた資金調達が可能です。緊急で資金を調達したいものの、コストはできるだけ抑えたいと考えている事業者に適しているといえます。
資金の調達方法に悩む場合は手数料の安い「ビジネスローン」を推奨
資金の調達方法に迷う場合は、ビジネスローンを選ぶのがおすすめです。ファクタリングに比べて手数料を抑えられるため、初めて資金を調達する事業者でも取り組みやすいでしょう。
ビジネスローンでは、売掛債権以上のまとまった資金調達も可能です。売掛債権がなくても申し込めるため、直近で必要な資金を工面したいときは、ビジネスローンを提供する企業に相談してみましょう。
併用がおすすめのケース
ここではファクタリングとビジネスローンの併用をおすすめするケースについて解説します。
ビジネスローンの審査落ちが怖い場合
ビジネスローンだけを頼りにすると、審査に落ちた場合に資金調達までタイムラグが生じてしまいます。審査に落ちるリスクを回避して資金調達できる可能性を高めるためには、ファクタリングとの併用がおすすめです。
2つの審査を同時に受けることで、ビジネスローンの審査に落ちた場合の代替案としてファクタリングを利用できる可能性があります。ただし併用するためには、自社で売掛債権を保有している必要がある点に注意しましょう。
より多くの資金を調達したい場合
ファクタリングとビジネスローンは、それぞれから資金の調達が可能です。単独での上限金額以上に資金を調達したい場合は、ファクタリングとビジネスローンの併用が考えられます。
ただし、ファクタリング業者は審査において申込者に一定の信用力があるか確認します。そのため、直近でビジネスローンを利用している場合にはファクタリングの審査に落ちる可能性があるため注意が必要です。
どちらの利用も向いていないケース
ファクタリングやビジネスローンは、銀行融資に比べると高い手数料がかかります。できる限りコストを抑えた資金調達を希望している場合は、ファクタリングやビジネスローンは適していません。
資金調達を急いでいない場合も同様です。ファクタリングやビジネスローンは、あくまでも緊急で資金を工面する方法として活用しましょう。利息の支払いを抑えたい場合や資金調達を急いでいない場合は、銀行融資の活用がおすすめです。
まとめ
ファクタリングとビジネスローンにはそれぞれ異なる特徴があり、適している商品は希望する条件や経営状況によって異なります。お金を借りる目的や達成したいゴールを明確にしたうえで、慎重に商品を選ぶことが重要です。商品の特徴を理解した上でどちらが良いか迷う場合は、手数料が抑えられるビジネスローンを検討しましょう。
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