ディスプレイ広告のCPCが上がってきている中で、メールアドレスなどの顧客データを活用したアドレサブル広告が、効果の高さで注目されています。
実はYDN(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)でもメールアドレスを活用した広告配信ができることをご存知ですか?
YDNでアドレサブル広告を実施するためには、Yahoo! DMPの利用が必須になります。Yahoo! DMPの無料枠で実施可能です。広告出稿までの手間は少しかかりますが、自社の顧客データを活用することでROIを改善した実績も多く出ており、ディスプレイ広告の費用対効果を向上できます。
本記事では、メールアドレスを活用したYDNの広告配信や活用方法、効果、費用、ネックとなる事までわかりやすく解説します。
はじめての方でも「メールアドレスを活用したYDNの広告配信」の手法を理解して、すぐに実施することができます。
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目次
YDNでのメールアドレスを活用したアドレサブル広告配信について
アドレサブル広告配信の効果と活用方法
メールアドレスを活用したYDNは費用対効果が高い広告です。なぜなら、自社顧客データを活用することで、より見込み度が高い既に接点があるターゲットや、自社顧客に類似したユーザーへアプローチを行うことが可能だからです。
自社顧客データを活用することで、以下のようなアプローチが可能になります。
- 過去購入の休眠顧客や成約前の見込み顧客など、新たなセグメントの発掘。
- 自社顧客の類似ユーザーへの拡張配信や除外配信に活用することで、新規顧客獲得の精度を向上させる。
また、競合企業が保持していない自社の顧客データを広告に活用できることから、「競合企業との差別化」を図るときにも効果を発揮します。
効果的に実施するコツは、「既存顧客向けの広告配信」と「類似ユーザー向けの広告配信」を組み合わせて自社にあった施策を実施することです。すでにYDNを実施されている企業であれば、例えば自社のメルマガ会員データを活用してすぐに既存顧客向けの広告を実施可能です。(参考:リスティング運用自動化ツールの一覧 ≫)
メールアドレス活用(アドレサブル広告)の仕組み
メールアドレスなどの顧客データを活用した広告配信の仕組みですが、企業が保有している自社顧客のメールアドレスとヤフーが持つメールアドレスをマッチングさせ、ターゲットリストを作成し、広告を配信します。
上記の通り、ヤフーが持つ保有メールアドレスとマッチしたユーザーが配信対象となります。マッチ率は広告主様の業種によって異なりますが平均33%(※)という実績が出ています。
※2018年5月シナジーマーケティング調べ
マッチングにはYahoo! DMPの利用が必要
YDNでは、直接メールアドレスをアップロードするのではなく「Yahoo! DMP」にハッシュ化(※)したデータを投入し、自社顧客のメールアドレスとヤフーが持つメールアドレスをマッチングします。
※ハッシュ化とは:元の数値や文字列からハッシュ関数によって固定長の擬似乱数を生成すること。
Yahoo! DMPについて
Yahoo! DMPはヤフー株式会社が提供するDMPで、利用するためには基本プランへの申込が必要となります。実施したいマーケティング施策の内容や利用したいデータに応じて、オプションやサポートプランも用意されています。
メールアドレスを活用したYDNでの広告配信を行うには、無料の基本プランのみで実施可能です。あくまで自社の顧客データ(メールアドレス)をヤフーのデータにかけ合わせてセグメントを作成するだけなので、有料のカスタムオーディエンスオプションなどは不要です。
※Yahoo! プレミアムDSP、Yahoo! プレミアム広告(一部商品のみ対象)、YDNへの広告配信のためのデータ活用は無料です。
なお、広告代理店でYDN(でのアドレサブル広告)運用を行う場合、まずは広告主からYahoo! DMPへ申込をいただき、運用権限を代理店に付与してもらう流れになります。
メールアドレスを活用したYDNの事例
事例1.既存顧客向けの広告配信:休眠顧客の掘り起し&シーズナル商材の売り上げ拡大
業種
食品(カニの通販)
課題
取り扱う商品の特性から繁忙期は冬のシーズン(特にお正月)であり、この時期に年商の9割以上が集中していました。そのため、この時期にどれだけ集客できるかということが最大の課題です。競争の激化により、年末シーズン商品である「カニ」の広告の費用対効果は悪化しており、 ニーズが顕在化した限定層にしかアプローチできていないことが1番の課題でした。
実施施策
購買が特定時期に年1回のような場合、既存顧客層にも「潜在層」は存在します。それは、過去に購入したことはあるが今シーズンは購入していない「休眠顧客層」であり、ここの掘り起しを目的にYDNでアプローチしました。
結果
顧客の平均獲得率3.4%、その獲得単価1,394円と、目標としていた獲得単価1,500円をクリアすることができ、休眠顧客層の掘り起こしに成功しました。特に、昨年の購入者よりも一昨年の購入者のリピート率がとても高いという結果になりました。
ギフト商品や季節にちなんだ商品を製造・販売している企業にとって、イベントシーズンは1年の中で最も商品が売れる商戦期です。同じ立場の企業も多く、リスティング広告の入札価格は高騰しがち。その状況で成果をだすため、ぜひアドレサブル広告を活用ください。
事例2.類似ユーザーへの広告配信(新規獲得):本商品購入への引き上げ率が200%向上!CPOは半減
業種
化粧品メーカー(美容液の販売)
課題
ある化粧品メーカーは、まず少量のサンプル(1,000円)を購入してもらい、その後本商品(10,000円)購入の引き上げを狙うビジネスモデルを展開していました。
サンプル購入のCPAはあっていましたが、本商品への引き上げ率が低く、CPOが高騰していました。
実施施策
そもそも、サンプル請求で獲得している人が間違っているのでは?という仮説の元、継続して利用してくれる「優良顧客」を獲得する方針を立てました。
- 本商品を購入した人を優良顧客とし、優良顧客とWeb上の行動が似ている人を拡張。
- サンプルのみ購入で本商品購入に至らなかった顧客とその拡張リストを除外。
→上記の「優良顧客拡張リスト」にYDNで広告を配信(サンプル購入訴求)。
結果
サンプル購入のCPAは30%悪化したものの、サンプル購入者→本商品購入への引き上げ率が200%以上向上しました。
その結果CPOが劇的に改善され、施策実施前と比べると半分にまで減少しています。
メールアドレスを活用したYDNの費用について
Yahoo! DMPやYTMの利用が必要にはなりますが、すべて無料で利用できるため、通常のYDNに対して追加で費用が発生するものはありません。
YDNはオークション型課金となるため、任意の出稿料金からお試しが可能です。YDNでのアドレサブル広告をこれから開始する場合であれば、顧客データの件数にもよりますが全体予算の20%程度に設定し、既存顧客に対しての広告配信・類似ユーザーへの広告配信をテストしてみるのがおすすめです。
メールアドレスを活用したYDNの設定方法
準備するもの
YDNでメールアドレスを活用した広告配信を行うには、事前にYahoo! DMP、Yahoo! タグマネージャー(以下省略してYTM)、YDNの契約が必要です。なお、Yahoo! DMPのアカウントは編集権限を持つユーザーが必要です。広告主が契約し、運用権限を広告代理店に付与してください。
- Yahoo! DMP(基本プラン、無料)
- YTM
- YDNの契約
- データアップロードAPI
- 顧客セグメント案の設計
- 顧客リストの用意
自社の顧客データを管理しているシステム上でメールアドレスをハッシュ化し、YTMにハッシュ化したデータを連携するシステムです。現状自社で開発されている企業が多いようですが、MAなどのツールを活用して連携させることも可能です。
広告主が持つ顧客データにどのような種類が存在し、どれくらいのボリュームがあるかを把握します。その上で活用用途を明確にして配信プランと合わせて設計します。
セグメント案件の設計に基づき、メールアドレスのファイルを用意します。
データ活用(Yahoo! DMP連携)の手順
YDNで広告配信を行うまでのデータの流れをまとめました。上がデータ(メールアドレス)の流れで、下が実際の配信設定の流れになります。
STEP1:YDNの設定
YDNにターゲットリストを作成します。管理画面の「ツール」タブから「ターゲットリスト管理」を選択し、「カスタムリスト」を作成します。
ターゲット名を入力し、DMP連携データの有効期間は60日間を指定してください。
STEP2:DMP設定
DMPの設定では、Action/Behavior/Segmentを作成します。
管理画面でAction/Behavior/Segmentを作成後、SegmentとActionの紐づけを行います。
STEP3:YTM設定
YTMの設定では、サービスタグとAPIを作成します。
管理画面にサービスタグとAPIを作成後、APIにサービスタグの紐づけを行います。
STEP4:データアプロードAPI設定
セグメントを作成し、メディアにデータ連携を行うための設定を行います。ここについては利用するサービス(ツール)によって設定方法が異なりますので、本記事では詳細は省略します。
データマッチング数の確認方法について
データマッチング数はDMP画面から確認できます。サイドバー「Segment」から該当のSegmentを選択し、Acitionタグを選択するとマッチング数の確認ができます。
Facebookなどに比べると少し設定が複雑なため、なかなか活用が進んでいないという実情もありますが、すでにYDNを実施されている企業であれば、効果改善が期待できます。
メールアドレスを活用したアドレサブル広告のネックは個人情報の取扱い
効果が高く、競合企業との差別化要素として活用しやすいアドレサブル広告ですが、
- 広告代理店側に顧客データの取り扱いを委託できないため、運用が困難。
- 顧客データの抽出作成に、大きな工数がかかる。
といった課題から、導入に踏み切れない企業が多い状況があります。
また、YDNのカスタムリスト(DMP連携データ)の有効期間は最大60日間で、60日を過ぎると広告が配信されなくなります(リストが空になる)。継続して出稿するためには再度データ連携が必要となり、リストをフレキシブルに運用していくことは効果を出すための非常に重要な要素となります。
この課題を解決するためには、広告代理店側で顧客データの取扱いを行わずに、リスト生成ができる環境を構築する必要があります。