GX(グリーントランスフォーメーションの略、ジーエックス)とは、地球環境に優しい持続可能な社会を目指して、経済活動全体を環境に配慮した形へと変革させる取り組みです。
この取り組みは、気候変動への対策、資源の持続可能な利用、生物多様性の保全といった幅広い分野に及び、GXを推進することで、環境保全と経済成長の両立、企業の競争力強化、社会の意識変革など、多くのポジティブな効果が期待できます。
しかし、具体的にはどのようなことをしているのかや、カーボンニュートラルとの違いなどの細かな点までは把握していないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、GXの基礎や、GXの役割、カーボンニュートラルとの違い、GXを促進するための政府の活動などの情報を一挙に紹介します。
GXについておさらいしたい方や、現状を把握したい方は、ぜひご一読ください。
目次
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、環境に優しい社会を実現するための取り組みのこと
GX(ジーエックス)とは、グリーントランスフォーメーションの略で、経済活動全体を環境に優しいものへと変革させる取り組みのことです。
GXは、持続可能な社会を実現するために不可欠であり、環境負荷の低減や、再生可能エネルギーの利用拡大、資源の効率的な使用などを目指しています。
GXの主な目的は、環境保全と経済成長を両立すること
GXの主な目的は、地球温暖化の抑制、生物多様性の保護、そして社会全体の持続可能性の向上にあります。
具体的には、炭素排出量の削減、エネルギー消費の効率化、環境に配慮した製品やサービスの開発を通じて、環境保全と経済成長の両立を目指します。
GXが求められる3つの背景
GXが求められる背景には、以下のようなものが挙げられます。
1.気候変動への対応の必要性
地球温暖化の影響は日々深刻化しており、対策の遅れが人類の存続に危機をもたらす可能性が高まっています。
2.資源の枯渇問題
化石燃料をはじめとする自然資源の枯渇は、現代社会の持続可能性に大きな影響を与えます。再生可能な資源への転換が急務とされています。
3.社会的な要求の高まり
消費者を含むステークホルダーからの環境保護への要求が高まっており、企業には環境に配慮したビジネスモデルへの転換が求められています。
GXの5つの役割
GXの主な役割には、持続可能な社会構築への貢献、経済システムの革新、企業の競争力強化など、多方面にわたる影響があります。
ここでは、GXの主な役割を5つご紹介します。
1.持続可能な社会構築への貢献
GXの根本的な役割のひとつは、気候変動の緩和と自然資源の保護を通じて、将来世代のために持続可能な環境を構築することです。
具体的には、温室効果ガスの排出量削減、再生可能エネルギーの普及促進、資源の循環利用などの対策が挙げられます。
2.技術の革新
GXを推進する過程で、クリーンエネルギー技術や持続可能な資源管理方法など、革新的な技術の開発と普及が促進されます。
これにより、社会全体の技術基盤が向上し、新たなビジネスの創出も期待されています。
3.経済システムの革新
経済システムの革新もGXの役割のひとつです。
たとえばGXは、従来の化石燃料に依存した経済から、よりクリーンで再生可能なエネルギー資源を中心とした経済への転換を促します。
この過程で、新たな産業の創出や、雇用機会の拡大、経済システム全体の革新を促進することも期待されています。
4.企業の競争力強化
環境に配慮した製品やサービスは、消費者からの高い評価を受ける傾向にあります。
企業はGXを積極的に取り入れることで、市場での差別化や、ブランドイメージの向上が期待できます。
さらに、エネルギー効率の改善や資源の有効活用は、コスト削減にも繋がり、長期的な競争力の強化も期待できます。
5.環境や持続性に対する意識向上
GXへの取り組みは、企業や政府だけでなく、一般消費者や市民の環境意識の高まりを促します。
一般消費者の持続可能な消費行動やライフスタイルの普及は、GXの目標達成には欠かせません。
持続可能な未来を実現するためには、全ての関係者が協力して推進する必要があります。
GXとカーボンニュートラルの違い
次に、会話の中で混同されがちなGXとカーボンニュートラルの違いについて説明します。
簡単に言うと、GXは社会全体の持続可能な変革を目指す包括的なアプローチであり、カーボンニュートラルは気候変動を緩和するための具体的な目標に焦点を当てた戦略です。
具体的には、GXは環境、経済、社会の三つの柱を総合的に改善しようとするものであり、カーボンニュートラルは気候変動対策の一環として、CO2排出量を削減または相殺することにフォーカスしています。
GX(グリーントランスフォーメーション) | カーボンニュートラル | |
---|---|---|
概要 | 経済や社会全体を持続可能な形へ変革する広範なアプローチ。 | CO2排出量と吸収量を均等にすることを目指す。 |
焦点 | 環境、経済、社会の三つの柱の総合的改善。 | 気候変動対策としてのCO2排出量の削減または相殺。 |
主な目標 | 持続可能な発展の促進。 | 地球温暖化の主要な原因である温室効果ガスの排出削減。 |
具体策の一例 | エネルギー使用方法の変更、資源の効率的利用、環境技術の普及、社会的公正の促進。 | 植林や再生可能エネルギーへの投資などによるCO2排出量の相殺。 |
GXは、持続可能な発展のための経済活動全般にわたる変革を目指しており、エネルギーの使用方法の変更、資源の効率的な利用、環境に優しい技術の開発と普及、社会的公正の促進などを行います。
そして前述のとおりGXの目標は、地球環境を守るだけでなく、経済成長を持続可能なものにすることにあります。
一方、カーボンニュートラルは、特定の時間枠内でのCO2排出量とそれを相殺する活動(植林や再生可能エネルギーへの投資など)を均衡させることを目指しています。
地球温暖化の主要な原因である温室効果ガスの排出を減らすことに集中しており、気候変動対策の重要な戦略となっています。
GXとDXの違い
もうひとつ、GXと合わせて語られることの多いDXとの違いについてもおさらいしておきましょう。
GXは環境に配慮した持続可能な社会への変革を目指し、DXは技術を活用してビジネスプロセス、文化、市場の変革を推進することを目的としています。
GXは地球環境と社会の持続可能性にフォーカスしており、DXはデジタル技術を駆使して組織の効率性、生産性、イノベーションの促進を目指してます。
GX(グリーントランスフォーメーション) | DX(デジタルトランスフォーメーション) | |
---|---|---|
概要 | 持続可能な社会への変革を目指す。 | デジタル技術を用いたビジネス・文化の変革。 |
焦点 | 環境と社会の持続可能性。 | 効率性、生産性、イノベーションの促進。 |
主な目標 | 気候変動の緩和、資源の持続可能な利用。 | ビジネスモデルの再構築、市場競争力の強化。 |
具体策の一例 | 環境負荷の低減、再生可能エネルギーの普及。 | AI、ビッグデータ、IoT、クラウドサービスなどを用いたプロセスの自動化、データ活用、顧客体験の向上。 |
GXの主な目標は、気候変動の緩和、資源の持続可能な利用、環境負荷の低減など、環境に対する責任ある行動を通じて社会全体の持続可能性を高めることです。
一方、DXはデジタル技術を核として、データの活用、プロセスの自動化、顧客体験の向上などを通じて、組織の変革を目指します。
つまり、GXは「環境と社会の持続可能性」を、DXは「デジタル技術を用いたビジネスと文化の変革」を重視しています。
両者は異なる焦点を持ちながらも、共に現代社会における重要な変革の推進力であり、時には相互に補完し合うことでより大きな影響を生むことが期待されています。
参考:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?基本から取り組み方までわかる保存版│LISKUL
DXの推進事例21選から見えた、成功のための4つのポイント│LISKUL
GX実現に向けた政府の方針や取り組み
政府は、GX実現に向けて、再生可能エネルギーの推進、カーボンニュートラルの目標設定、環境に優しい技術と産業の育成を中心にした方針を打ち出しています。
これらの方針は、国内外の環境問題に対応し、持続可能な社会と経済の発展を目指すためのものです。
そして具体的には、GXリーグなどの産官学が連携した取り組みを行い、GXを推進しています。
産官学が連携してGXを推進する「GXリーグ」
GXリーグとは、2022年に経済産業省が設立した、産官学が連携してCO₂の排出量削減と産業競争力の向上を実現するための取り組みです。
具体的には、以下のような4つの場を設けることでGXを推進しています。
1.自主的な排出量取引に関する実践の場
参画企業が自らの目標を掲げて実践する場です。
2.市場創造のためのルール形成を形成する共創の場
官民で新市場創造に向けてのルール形成する場です。
3.ビジネス機会の創発を促す対話の場
参画企業の計画や活動を共有し業種を超えた対話を行う場です。
4.GXスタジオという自由な対話の場
連携、創発、共創を推進するためのディスカッションや共有を行う自由な交流の場です。
参考:GXリーグ取組概要 ~What is GX League~
参画している企業については、以下のページをご覧ください。
GXに取り組む企業の事例
クルマの環境マイナス要因を減らすトヨタ自動車の取り組み
グローバル領域で自動車産業を担うトヨタ自動車は、持続可能な社会の実現に貢献するため、2050年までにクルマの持つマイナス要因を限りなくゼロに近づける「トヨタ環境チャレンジ2050」に取り組んでいます。
具体的な取り組み内容は以下のとおりです。
グローバル新車や工場のCO2排出量を削減
燃料多様化に対応することで、ハイブリッド車(HEV)や燃料電池車(FCEV)などの開発と普及、グローバル工場の新たな生産技術導入を通し、CO2排出量を削減しています。
各国地域事情に応じた水使用量の最小化と排水の管理
生産工程内での水の再利用を推進し、厳しい基準で排水の水質管理を徹底しています。
自然と共生する未来社会を構築
森林再生プロジェクトや生物多様性の保全、環境教育プログラムの実施などの自然保全活動を行っています。
未来の循環社会に注力するパナソニックグループの取り組み
総合エレクトロニクスメーカーのパナソニックグループは、サーキュラーエコノミー(循環社会)を実現するために「Panasonic GREEN IMPACT」に取り組んでいます。
具体的な取り組みとしては以下が挙げられます。
再生可能エネルギー推進によるCO2削減
ビルや商業施設、1,000戸以下のスマートタウンなど、さまざまなユースケースで、化石燃料に依存しないエネルギー供給への移行を行っています。
社内炭素価格を見込んだ投資判断
CO2削減量の見なし利益を考慮するICP(社内炭素価格)制度を投資判断に導入することで、長期視点の競争力につながる開発投資などの脱炭素活動を活発化しています。
参考:脱炭素社会実現に挑む パナソニックグループの未来を見据えたGX戦略とは
脱炭素実現に貢献するダイキンの取り組み
主事業に空調機械を取り扱うダイキンは、安心で健康な空気空間の提供に向け、2050年までに達成する脱炭素5カ年中期経営計画で「Fusion25」に取り組んでいます。
具体的な取り組み内容は以下のとおりです。
脱炭素製品を普及するルール整備
世界各国の安全規格の作成を牽引し、再生可能エネルギーの普及させることで脱炭素製品を普及できるように協力しています。
カーボンフットプリントの推進
グリーン金属や再生材料の取り組みを「見える化」し、評価できる仕組みを推進しています。
参考:ダイキン工業のGX推進例
まとめ
本記事では、GX(グリーントランスフォーメーション)の基礎や、カーボンニュートラルとの違い、政府の活動などの情報を一挙に紹介しました。
GXとは、環境保護と経済活動を含む社会全体の持続可能な発展を目指す取り組みです。
GXが求められる背景には、気候変動への対応、資源の持続可能な利用、そして社会的な要求の高まりなどが挙げられます。
GXは、持続可能な社会構築への貢献、経済システムの革新、企業の競争力強化などの役割を担っています。
現在では、GXリーグやGX実行会議などの取り組みを通じて、産官学が連携し、GXを推進しており、新たな技術や社会の変革が期待されています。
また、よりよい社会を実現するためには、私たち全員がGXを共通目標であると認識することや、行動を起こす必要があります。
そしてその一歩を踏み出す際には、この記事で紹介した情報が一助となれば幸いです。