ネットワーク効果(外部性)とは?基礎から活用方法まで詳しく解説

ネットワーク効果

ネットワーク効果(外部性)とは、ユーザーの増加に伴い製品やサービスの価値が向上するという概念のことです。

たとえば、検索エンジンやSNSなどのサービスをイメージすると理解しやすいと思います。

これらは利用者が増えるほど媒体内の情報が増え、利便性が増し、さらにユーザーが増える、といった流れでサービスの価値が増大していきます。

このネットワーク効果をマーケティング戦略のひとつとして活用することで、顧客にとっての価値を高めたり、市場シェアの定着などの効果が期待できます。

しかし、具体的にどのように活用すればよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ネットワーク効果の基礎やロジック、事例、活用する方法、注意点などの情報を一挙にご紹介します。

ネットワーク効果の活用にお悩みの方は、ぜひご一読ください。


ネットワーク効果(外部性)とは?

ネットワーク効果(外部性)とは、特定の製品やサービスを利用することによって他のユーザーに価値を与える経済原理の概念を指します。

ここでいう価値とは、利便性や利用したことで得られるメリットなど、その製品の本来の品質や設定された価格以外のことです。

ネットワーク効果(外部性)はその性質から、ネットワーク外部性とも呼ばれています。

品質ではなく顧客にとって価値を高める概念

ネットワーク効果は、企業が提供する商材そのものの品質や性能が上がることを指すわけではありません。

既存の商品を利用している顧客の環境や心理への巧妙なアプローチによってその価値を高めています。

価値とは価格や値段とは異なり、使う人や保有する人によって千差万別です。

どんなに金銭価値があるものでも、価値観の違う人が見ればその人にとっては大した価値のないものと捉えられます。

ユーザーの理想や希望を叶えるものや満足感で満たされるものを提供し、それが大勢に波及して利用者が増えて製品やサービスの価値を高めることこそがネットワーク効果の考え方です。

ネットワーク効果(外部性)のロジック

ネットワーク効果が起こるのは、特定の製品やサービスを利用することでネットワーク外の消費者に価値を与える現象が発生することが理由です。

ネットワーク効果が働く仕組みは、以下のロジックで起こるとされています。

  1. 大勢の利用者がいる
  2. 大勢が利用することで利便性が向上する
  3. 代替品がほかにないために顧客が利用を継続する
  4. すでに大勢が利用しているので替える機会や理由がない
  5. これまでのコストを既存のユーザーが回収できない(サンクコスト効果)
  6. 結果的に市場でシェアの定着や拡大につながる

ネットワーク効果が効果を発揮しているのは、利用者が多いという消費者心理をつかんでいるからです。

「周りのみんなが使っている・持っている」「便利だから使っている」などの理由により、その製品やサービスに品質や性能以上の価値を消費者にもたらします。

市場のユーザーが多くなることによって提供側の利益が大きくなり、シェア拡大の実現が可能です。市場において、消費者が利用した特定の製品やサービスの評判が口コミなどで拡散されるケースも少なくありません。

このように有用性や利便性がネットワークの外部にいる第3者層にまで広がり、価値を高める現象を起こすことからネットワーク効果(外部性)、またはネットワーク外部性と呼ばれる理由です。

ネットワーク効果(外部性)を成功させるには?

ネットワーク効果を取り入れるには、できるだけ市場規模や競合他社が少ない段階で行うのが良いとされています。

なぜなら、まだシェアが確立されていない規模の小さい市場はマーケティングの基盤が整っていないからです。

早期のマーケティングで顧客を獲得することにより、ユーザーが定着して市場におけるシェアと製品の価値の確立が可能になるでしょう。

顧客が既存の製品やサービスを利用することにより、他社のサービスへの乗り換えが困難となって利用を継続することをロックイン効果と呼びます。

つまり、ネットワーク効果の成功とは、市場における優位性を保つことが不可欠です。


2種類あるネットワーク効果(外部性)

ネットワーク効果には、直接効果と間接効果の2種類があります。

製品やサービスの価値を高める手段やプラットフォームなど、それぞれの効果の違いを見ていきましょう。

ネットワーク効果(外部性)の直接効果

ネットワーク効果の直接効果とは、ユーザーがネットワークを直接利用することで価値を高めるサイド内ネットワーク効果とも呼ばれる概念です。

直接効果の例をあげれば、数人のグループで利用しているコミュニティ内のツールやプラットフォームなどがこれに該当します。

友人や知り合い、組織の同僚間で相互に利用しあい、利便性を共有することでサービスへの満足度や価値を高められるでしょう。

ネットワーク効果の多くは、直接効果によって価値を高めて顧客やシェアの増加を図っているケースが多いです。

ネットワーク効果(外部性)の間接効果

ネットワーク効果の間接効果とは、直接効果で価値を高めた製品やサービスの別途購入が必要な別商品やオプションなどの補完材で、さらにその価値を高めるサイド間ネットワーク効果とも呼ばれる概念です。

わかりやすい例は、BDレコーダーに対するディスクやスマートフォンのスマホケース、あるいはパソコンにおけるオフィスソフトやゲームソフトなど。

特にパソコンやゲーム機なども使用するソフトの需要が高く、なくてはならない必需品として価値を高めています。

このように提供している製品やサービスの付加価値や補完材によって、顧客への相乗効果としてネットワーク効果をより強固なものにすることが可能です。


ネットワーク効果(外部性)の事例5選

経営学の知識がなくても、仕組みさえわかればほとんどの人がイメージできるのではないでしょうか。

ここからは、ネットワーク効果の主な事例を5つご紹介します。

1.電話・スマートフォン

現代社会において必需品とされているツールである電話、特にスマートフォンは直接的なネットワーク効果の最たる例です。

電話は本体だけでは機能せず、相手がいてこそ初めて本領を発揮します。

気軽に相手と連絡を取り合うことができ、電話がないと社会生活に大きな悪影響を及ぼすので、手放すのは困難です。

今となっては世界中で普及した最大級のネットワーク効果といえるでしょう。

また、携帯電話の普及にともない、アプリの開発やアクセサリなどの間接的なネットワーク効果を生み出しています。

2.パソコン・インターネット

パソコンは本来業務用や技術開発などで用いられるマシンとして始まり、現在では家庭用に広く普及しているのは周知の通りです。

使用できるアプリやソフト、後述するゲーム機など多様性があるプラットフォームとして世界的なネットワーク効果が発生しています。

パソコンにはOSによって専用性があり、顧客の定着やシェアの占有が見込める要素も豊富です。

さまざまな業界や分野にも進出し、必要性は電話のほうが高いですが、消費者と企業への影響は計り知れません。

3.ゲーム機・ゲームソフト

大衆娯楽として定着したゲーム機は、普及するにつれて多くの消費者と企業の価値を高めることに貢献してきました。

市場の拡大によってサードパーティーの参入が増え、ユーザーや収益の獲得に成功しています。

需要が増えたことによって競合他社も増え、深刻な価格低下が起こるという脅威はこの分野においてはさほど当てはまりません。

むしろ普及したことで多くの消費者の手に渡りやすくなり、それによってゲーム会社やタイトルの価値を高める効果が得られました。

かつてのVHSやDVD、現在のBDにもいえることで、レンタルサービスやサブスクリプションなどの間接的効果にもおよび、さまざまなネットワーク効果が生まれています。

4.SNS

SNSは、身内や不特定多数が集まり、コンテンツを共有するネットワーク効果のプラットフォームとして現在進行形で大きな影響を与えています。

FacebookやX(旧Twitter)、LINEなどは利用者が増えることによってその価値が高まり、品質や利便性の向上などによってユーザーに還元する仕組みです。

利用者が多いコンテンツほど得られる情報や娯楽性も増すため、新たな出会いの機会を獲得するなどの多様性の高さはネットワーク効果では随一といえるでしょう。

ただし、ユーザーのニーズを満たすためのマーケティング戦略やプロモーションが必要になり、成果が出るまでに時間がかかり失敗するリスクも抱えています。

5.クレジット決済

クレジット決済によるスムーズな支払いは、利用者に利便性という価値を与えることが可能です。

利用者が増えることによって決済できる店舗の需要が増え、市場が活発化してクレジットカードに対応する店舗の増加など企業にとっても収益増加が見込めます。

近年はオンライン決済のサービスが増加しており、直接・間接両面からのネットワーク効果に今後の成長も期待できるジャンルといえるでしょう。

特にオンラインではクレジット決済が必須のサービスやコンテンツが増えつつあるため、クレジットカードがないと格安SIMやモバイルサービスの利用ができないケースも少なくありません。

政府が推進するキャッシュレス決済の方針も後押ししており、将来的な間接的ネットワーク効果にも影響を与える可能性があります。

6.サブスクリプション

近年よく耳にするサブスクリプションは「サブスク」とも呼ばれ、期間を決めてサービスを利用する定額制のビジネスモデルのことです。

新聞購読や会員制サービスもサブスクリプションに該当し、最近ではオンラインサービスによく用いられています。

VODなどの動画配信サービスやソフトウェア、健康食品から薬品などデジタルから非デジタルまで、多様性に富んだビジネスモデルが大きなネットワーク効果を生み出している理由です。

新規参入によるコンテンツの増加によって利便性が向上し、その価値を高めている成長性の高さに注目が集まっています。

最近はオンラインでのサブスクリプションが主流となりつつあるため、クレジット決済との親和性が高く、将来的にさまざまな市場に関わってくる可能性を秘めたジャンルです。


ネットワーク効果をマーケティング戦略に活用する方法5ステップ

次に、ネットワーク効果を活用するための方法を5ステップに分けて説明します。

1.製品・サービスの価値を明確にする

まず初めに製品・サービスの価値を明確にしましょう。

ターゲット市場や、どのようなユーザー層を対象としているか、ユーザーのニーズや問題点は何なのかを考え、そして彼らにどのような製品やサービスを通じてどのようなユニークな価値を提供するかを明確にしましょう。

2.初期ターゲットユーザーを獲得する

ターゲットユーザーと価値を明確にしたら、次に初期ユーザーを獲得しましょう。

この段階では、彼らからのフィードバックを積極的に取り入れ、製品を改善することが最大の目的です。

次いで、口コミや紹介のキャンペーンを行うなどして、初期ユーザーが他の潜在顧客に製品を推薦するよう促します。

他にも、シェア機能を作成するなどして製品やサービスが他のシステムやプラットフォームと連携しやすくしたり、ユーザーが互いに交流するためのコミュニティを作ったりといったことも有効です。

3.ユーザー増加に伴い製品の価値が増大するような機能や仕組みを作る

次に、ネットワーク効果を活用するうえでとても重要な「ユーザー増加に伴い価値が増大する機能や仕組み」を構築します。

この機能や仕組みには、以下のようなものが含まれます。

  • ソーシャルネットワーキング機能
  • ユーザー生成コンテンツ
  • ネットワーク内での取引や交換
  • ユーザー間の協力と競争
  • カスタマイズとパーソナライゼーション

これらに共通するポイントとしては、ユーザー同士の交流機会が増加したり、新たな付加価値が創造されたり、自動的に価値が増える仕組みであることが挙げられます。

4.ユーザーデータに基づき持続的な成長戦略を描く

ユーザーが増えてきたら、彼らの行動データを分析し、改善や戦略的な意思決定に活用します。

彼らの共通する行動、多く利用されている機能、利用されていない機能、彼らの中で流行っていることなどの調査を定量・定性の両面で行いましょう。

そして、彼らの行動パターンや変化に応じて製品やサービスを進化させることで、持続的な成長を期待することができます。

5.長期的に価値を提供するための策を実行する

最後に、1~5で作り上げた価値提供モデルを長期的なものとするための活動を行いましょう。

たとえば、マーケットの変化やその他外部環境に対するリスク管理を強化することで持続可能性を高めたり、ユーザーの製品やサービスに対するロイヤリティを向上することで市場におけるアドバンテージを強化するなどの策が考えられます。


ネットワーク効果を活用する際の3つの注意点

最後に、ネットワーク効果を活用する際の注意点を3つご紹介します。

ネットワーク効果は、仕組みを整えれば半自動的に価値が向上しますが、放っておくとリスクも増大するモデルなので以下の点に注意しましょう。

1.適切なユーザー価値を確保する必要がある

サービスの利用者が増えるにつれ、提供者が本来想定していた以外の方法でサービスが利用されたり、迷惑行為やスパムなどの被害も増加する可能性があります。

これらを放っておくと初期ユーザーにとってはサービスの価値が減少していることになり、離反につながってしまいます。

2.セキュリティリスクに備える必要がある

ネットワーク効果を活用するということは、膨大なユーザーのプライベートな情報を取り扱う可能性があり、漏洩などのリスクも高まるということです。

このセキュリティリスクに対する備えを用意することは、ネットワーク効果を活用するための必須条件と言っても過言ではありません。

3.ユーザーの声に耳を傾け続ける必要がある

ネットワーク効果の引き出すためには、ユーザー間の活発な交流や、口コミなどによる拡散が重要です。

そして、これらはユーザーが価値あるサービスと感じている場合にはメリットとなりますが、逆の場合には加速度的な離反を促すデメリットにもなり得ます。

そこでネットワーク効果を活用する際には、常にユーザーの声に耳を傾け、彼らの感じている課題を取り除くなどの改善を繰り返し行う必要があります。


まとめ

本記事では、ネットワーク効果(外部性)の基礎やロジック、事例、活用する方法、注意点などの情報を紹介しました。

ネットワーク効果とは、特定サービスの利用者数が増えるにしたがってそのサービスの価値が向上するという概念のことです。

代表的な例としてはスマホやSNSなどが挙げられ、これらは多くの人が利用するからこそ価値を発揮します。

ネットワーク効果をビジネスに活用する際には、サービスの価値を明確にし、初期ターゲットユーザーを獲得し、ソーシャルネットワーキング機能などのユーザーと価値の増加が比例する仕組みを設けるなどの必要があります。

そして活用の際には、利用者の増加に伴うノイズへの対策や、セキュリティリスクへの備えを行うことが重要です。

これらのポイントを抑えることで、ネットワーク効果のビジネス活用を検討してみましょう。
そして検討の際には、本記事でご紹介した情報が一助となれば幸いです。