昨今のリモートワークの普及に伴い、社内のセキュリティシステムツールの見直しやリサーチを進められているセキュリティ担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?そんな中、近年注目を集めるSASEについて知りたいけど、、、
「SASEについては聞いたことがあるけど詳しいことはよく分からない。」
「SASEを導入するにあたってのポイントや注意点について知りたい。」
以上のようにお考えのシステム担当者の方もいらっしゃるかと思います。そこで本記事ではSASEの基本的な仕組みやSASEを導入するメリットなど詳しく解説していきます。
当記事をご覧になっていただければSASEを導入する意義と、SASEを導入する際のポイントや注意点について理解ができるようになるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。
SASEとは?
SASE(サシー)は、Secure Access Service Edge(セキュア・アクセス・サービス・エッジ)の略で、ネットワークとセキュリティを一体化したクラウドサービスです。
「ガートナー」というIT関連の市場調査やコンサルティングを行うグローバル企業が、SASEに関するレポートやマジック・クアドラント(四分割マトリックス)などの評価を発表したことにより、近年急速に注目を集めるようになりました。
このアーキテクチャは、企業のエッジ(ユーザー、アプリケーション、データ、サービスなどが集中する場所)に最適化されており、従来のアプローチよりも優れたセキュリティとネットワークパフォーマンスを提供することが期待されています。
SASEが注目される背景に「リモートワーク」がある
従来の企業のネットワークアーキテクチャでは、オンプレミスのネットワークとデータセンターに置かれたセキュリティ装置が必要なケースがほとんどです。
しかし、近年における情報処理化の進歩に伴うシステム数の増大や、リモートワーク推奨の流れを汲むネットワーク負荷の増加によって、従来のデータ管理システムでは管理コストが嵩むという問題が企業を悩ませるようになりました。
その問題を解決するために登場したのが、クラウドサービスを利用した企業データの管理です。そこで、膨大な企業データを従来のオンプレミスからクラウドに移行するにあたり、クラウドサービスに対するセキュリティの強化が必要とされるようになりました。
SASEであれば、セキュリティをネットワーク上で実現が可能であり、クラウドサービスへのアクセスに対する安全性が確保されているため、大多数の企業が注目し導入を検討しています。
具体的なSASEのソリューション例
SASEはクラウドネットワークアーキテクチャであるため、ネットワークとセキュリティの機能を統合し、クラウドやモバイルなどの分散環境でのセキュリティを提供することができます。
以下にSASEの具体的なソリューション例をいくつか紹介します。
クラウドセキュリティ
クラウドセキュリティは、クラウド環境におけるセキュリティ対策を指します。クラウド環境は、オンプレミス環境とは異なるリスクが存在するため、適切なセキュリティ対策が必要です。
具体的には、アクセス制御やデータの暗号化、マルウェア対策、ログ管理、セキュリティ評価などが挙げられます。クラウドプロバイダーが提供するセキュリティ対策だけでなく、ユーザー自身もクラウド環境のセキュリティ評価を行い、脆弱性を特定し対策を講じることが必要です。
企業は適切なクラウドセキュリティによって、外部リスクを低減し、ビジネスの拡大と成長を実現することができます。
ゼロトラストアクセス
ゼロトラストアクセスは、ネットワーク上のすべてのアクセスリクエストを信頼せずに検証するセキュリティアプローチです。
従来のセキュリティアプローチは、企業のネットワーク内にあるアクティビティに対して信頼を置いていました。しかしゼロトラストアクセスでは、すべてのアクセスリクエストに対して認証と認可を求めます。これにより、不正アクセスやデータ漏洩の防止を強化します。
ゼロトラストアクセスは、従業員、パートナー、およびサプライヤーなど、ネットワークに接続するすべての人に対してネットワーク内のリソースにアクセスする前に、その人物が認証、およびアクセスが承認されることを要求します。クラウドやモバイルデバイスなど、多様な環境に対応しています。
クラウドアクセスセキュリティブローカー
クラウドアクセスセキュリティブローカー(CASB)は、企業がクラウドアプリケーションを利用する際に、データの保護やセキュリティ対策を提供するセキュリティソリューションです。
CASBは、クラウドアプリケーションへのアクセス制御、データの暗号化、マルウェア検出、データ漏洩の監視などの機能を持っており、クラウドプロバイダーが提供するセキュリティ対策だけでなく、企業が自身のセキュリティポリシーに沿ってアプリケーションにアクセスすることを可能にします。
また、CASBは、クラウドアプリケーションの使用状況の監視や分析を行うことで、不正アクセスの早期発見やリスクの把握を支援します。CASBは、企業がクラウドアプリケーションを利用する際に、セキュリティとコンプライアンスを強化するための重要なツールとなっています。
SASEのメリット
SASEには以下のようなメリットがあり、企業がセキュリティに対するリスクを最小限に抑えるために重要なテクノロジーとなっています。
セキュリティの向上
SASEは、ゼロトラストアーキテクチャ、複数のセキュリティ機能の統合、ネットワークの可視性と監視、セキュリティの一元化などによってセキュリティの向上に大きく寄与します。
認証や承認を行うことでアクセス制御を厳格化し、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを低減することができます。
また、複数のセキュリティ機能を統合することで、より高度なセキュリティを実現し、ネットワーク上のトラフィックを監視することで、脅威の早期発見や迅速な対応を可能としています。
働き方改革に対応したネットワーク環境の構築
SASEは、SD-WANの利用やグローバルなアプリケーションデリバリの提供、ネットワークの可視性と監視などによって、ネットワークの最適化に大きなメリットがあります。
複数の場所からのネットワークアクセスを効率的に管理することができ、帯域幅の効率的な利用や、アプリケーションの優先度設定が可能になります。
また、グローバルなアプリケーションデリバリを提供することで、高速で安定したネットワーク接続が可能で、ネットワーク上のトラフィックを監視することで、ネットワークの最適化や適切な帯域幅の割り当てが可能になります。
これにより、企業はより高速で安定したネットワーク接続を提供し、ビジネスの俊敏性を向上させることができます。
運用一元化による管理コストの削減
SASEは、クラウド上で提供されるため、オンプレミスのハードウェアやソフトウェアを購入する必要がなくなります。
また、セキュリティやネットワークの機能を統合した単一のプラットフォームで提供されるため、複数のベンダーから製品を購入する必要がありません。
さらに、必要な機能だけを利用することができるため、企業はコスト削減を実現できます。
SASEのデメリット
SASEのデメリットはネット接続に依存する問題に紐づくものが挙げられています。以下の通り解説します。
一つのサービスへの依存度の増加
SASEを導入することにより、企業はクラウドプロバイダーに依存することになります。
言い換えれば、インターネット接続に問題が発生した場合はSASEにアクセスできなくなるリスクがあると言えます。
また、SASEを導入するには、既存のネットワークアーキテクチャをクラウドに移行する必要があるため、既存のオンプレミス環境との整合性について慎重に検討する必要があります。
高額な初期費用
SASEを導入するためには、既存のネットワークアーキテクチャをクラウドに移行する必要があるため、一時的な費用が必要になる可能性があります。
また、SASEを導入するにはクラウドプロバイダーに対して料金を支払う必要がありますが、これは、従来のオンプレミス環境と比較して初期費用が高いということを意味します。
ただし、SASEの導入により、運用コストやセキュリティコストなどが削減される可能性があるため、長期的にはコスト削減につながることが期待されています。
SASEの導入方法|導入だけで終わらない実用的な導入方法を解説!
SASEの導入方法は、クラウドプロバイダーからSASEを提供するサービスを購入する方法が一般的です。詳しい導入方法について順を追って解説していきます。
Step1.現状の評価
SASEを導入する前には現状の評価が必要です。企業は、既存のネットワークアーキテクチャ、セキュリティ要件、ユーザーの利用状況などを評価し、SASEの導入によって得られるメリットとデメリットを分析する必要があります。
また、SASEの導入には、クラウドプロバイダーとの契約やサービスレベル契約(SLA)の確認、ネットワークアーキテクチャの再設計、セキュリティポリシーの再評価などが必要です。
Step2.SASEプロバイダーの選定
プロバイダーの選定にあたっては、必要な機能やサービス、帯域幅、セキュリティ要件、コストなどを考慮する必要があります。また、プロバイダーの評判や顧客満足度、SLA(サービスレベル契約)なども重要な要素となります。
SASEプロバイダーは多数存在するため、十分な比較検討を行い、複数のプロバイダーから見積もりを取得し適切なプロバイダーを選定することが重要です。選定したプロバイダーとの契約内容やサービス提供方法についても十分に検討し、スムーズな導入を行うことが必要となります。
Step3.SASEアーキテクチャの設計
アーキテクチャの設計にあたっては、企業のネットワークアーキテクチャとクラウドプロバイダーのアーキテクチャを統合する必要があります。
また、ネットワークトラフィックのパターンやセキュリティ要件に基づいて、SASEアーキテクチャを最適化する必要があります。SASEアーキテクチャの設計には、アプリケーションのアクセスポリシーの定義、セキュリティポリシーの設計、データフローの可視化などが含まれます。
SASEアーキテクチャの設計により、クラウドとオンプレミスの環境をシームレスに統合し、セキュリティとネットワークの最適化を実現することができます。
Step4.SASEの導入と展開
SASEの展開には、クラウドプロバイダーが提供するSASEサービスを導入することが一般的です。企業は、必要な機能や帯域幅、セキュリティ要件に基づいて、適切なプロバイダーを選択し、サービスを契約することができます。
展開にあたっては、ネットワークトラフィックのパターンやセキュリティ要件に基づいて、アプリケーションのアクセスポリシーを定義する必要があります。
SASEの導入と展開には、クラウド上でのネットワークアーキテクチャの再設計やセキュリティポリシーの再評価が必要であるため、慎重な計画と実施が必要です。
Step5.モニタリングと管理
SASEを導入した後は、モニタリングと管理が必要です。モニタリングは、ネットワークトラフィックやアプリケーションの使用状況、セキュリティの脅威などを監視し、問題を早期に検出するために行われます。
また、管理は、アクセスポリシーの変更や新しいアプリケーションの追加など、SASE環境の変更を管理するために行われます。SASEのモニタリングと管理には、専用のツールやプラットフォームが必要となります。
これらのツールには、可視性を向上させるためのダッシュボードやレポート、自動化されたアラート、ポリシー管理ツールなどが含まれます。
モニタリングと管理により、SASE環境を適切に監視し、管理することができ、セキュリティとネットワークの最適化を維持することができます。
【FAQ】SASEに関するよくある質問
SASEに関するよくある質問についていくつか紹介します。
SASEとゼロトラストの違いは?
SASEはネットワークとセキュリティの機能を統合し、単一のクラウドネットワークアーキテクチャで提供されます。
ゼロトラストはアクセス制御に重点を置き、認証と承認によって、アクセスされるアプリケーションやデータを制御します。
また、SASEはクラウドやオンプレミスの環境でのセキュリティを提供し、ゼロトラストは主に企業の内部ネットワークでのセキュリティに焦点を当てています。
SASEは比較的新しいセキュリティアーキテクチャであり、ゼロトラストは長年のセキュリティアプローチとして確立されています。
SASEとcasbの違いは何?
SASEとCASBは、クラウド環境におけるセキュリティを提供するための異なるソリューションです。
SASEは、ネットワークアクセス制御、SD-WAN、ファイアウォール、脅威検知などの機能を統合した包括的なクラウドセキュリティソリューションであり、一方、CASBはクラウドアプリケーションに特化したセキュリティソリューションです。
具体的には、SASEは、ネットワークとセキュリティの機能を統合することで、分散環境でのセキュリティを強化することができます。一方、CASBは、クラウドアプリケーションに対して、データの可視化、アクセス制御、セキュリティポリシーの適用、脅威検知、データ暗号化などの機能を提供します。
したがって、SASEはより包括的なクラウドセキュリティソリューションであり、CASBはクラウドアプリケーションに特化したセキュリティソリューションであると言えます。
まとめ
SASEは、セキュリティの強化、ネットワークの最適化、コスト削減などのメリットがあり、リモートワークやクラウドサービスの利用拡大、AI/ML技術の活用、IoTデバイスの普及など、将来的なニーズにも対応できる柔軟性があります。
ただし、依存性の増加や初期費用の高さなどのデメリットもあり、企業はこれらを考慮して導入を検討する必要があるでしょう。
コメント