自社のWebサイトの成果を上げたいけれど、 どこをどうすればいいのかは、多くのマーケ担当者が悩むポイントです。限られた時間と予算の中、どこから手を付けるべきなのか。どうやって上長ら周りの意見と折り合いをつけるか、そもそもまだ伸びしろはあるのかなど、迷いはつきません。
「1年ほど頑張れば、ほとんどのサイトの『もったいない部分』はなくせますよ」と教えてくれたのはAIによるデータの分析と改善ノウハウにもとづいたWebマーケティング改善提案サービス「AIアナリスト 」を提供する株式会社WACULのカスタマーサクセス部・部長の安藤秀悟さん。
今回は、Webサイト運営でよくある悩みの対処法・改善方法を、ECサイトを例に教えてもらいました。
目次
もったいないサイトが生まれる原因は社内力学
<プロフィール>2018年WACUL入社後、コンサルタントを経てカスタマーサクセス部長。中央大学卒業後、リクルートの求人広告代理店にて広告営業に従事。前職では人材系ベンチャー企業にて営業、コンサルタント、代理店渉外、セミナー講師、事業提携担当、マネージャーなどさまざまなポジションを経験。
――顧客の約3万サイト分のデータ分析と改善コンサルティングをされている中で、ありがちな「失敗パターン」を教えてください。
安藤:よくあるもったいないポイントは、
- ECサイトなのに文字が多く画像が少ない
- ブランドサイトとの棲み分けができておらず、ECサイトとの違いが分かりにくい
- ユーザーの動線の設計ができていない
- 購入前段階の商品ページなど、意味のないところにSNSボタンが付いている
- レビュー・口コミが商品情報と違うページにある
- 「送料について」のページへ遷移したあと、元のページへ戻るボタンがない
などですね。
こういうサイトは「ユーザーがサイトを利用するときに、どう操作すればいいのかを考えてしまう。つまり、直感的に使えないんです。
仮に、もったいない点がほぼないサイトが80点だとすれば、世の中のほとんどのサイトが50点くらいでしょうか。ただ、1年ほどがんばって改善していけば、80点までは到達できると思います。
――なぜ、そんな「もったいないサイト」が生まれてしまうのでしょうか?
安藤:一番の理由は、ユーザー目線でサイト設計をすることより、社内の力学が優先されてしまっているからです。
例えば、
- 社長が周囲の数人の仲間から仕入れた情報を鵜呑みにして改修してしまう
- 営業担当が片手間でECサイト作っているため、そもそも設計がぐちゃぐちゃ
- Web担当者の知っているWebサイトの作り方のパターン数が極端に少ない
- 依頼している制作会社の知見不足
などですね。
この中でもよくあるのが、社長や上長から改善を求められ、目的も擦り合わせないまま不要な改善を行ってしまうパターンです。サイトの設計は、思いつきではなく目的を意識し、全体構造から考える必要があることを忘れてはいけません。
――社内の要望で、「おしゃれなサイトにしてほしい」はよく出ると思います。デザイン性の高さとWebマーケティングの成果は両立できるのでしょうか。
安藤:特にUI(ユーザーインターフェース)を考えるときには、デザインとマーケティングのどちらがより重要か、優先度を付けるべき場面が必ず出てきます。なので、洗練されたサイトを目指すのはいいのですが、最終的にはどちらを優先するのか、決めておくことをオススメします。
――ちなみに、「大手ECサイトと似た施策を実施すればいい」という意見に対しては、どう考えればいいのでしょうか?
どれだけ大手のサイトでも、日々試行錯誤を繰り返しています。真似をした元の大手ECサイトも、テストを試している途中の段階かもしれないですよね。
そもそも全体のゴールを定めずに一部分だけを真似すると大抵は失敗します。そのため、「設計を全体最適の観点で、構造から考える」のがとにかく重要だと伝えてください。
――なるほど……。とはいえ、板挟みになりやすく複数の業務を兼務しているマーケ担当者の立場は難しい立場にある場合もあります。
安藤:社内からの信頼を獲得するには、Web担当者自身が成功体験を積み重ねていくことが大切です。
「効果の高いページへの流入を増やせるように、コンテンツの順番を入れ替える」など、サイト改善の手間がなるべく少なく、かつ結果が出やすい施策を見つけて提案し、コツコツと実績を積み重ねれば社内からの信頼を得られます。すると、権限も次第に大きくなっていくでしょう。
自社のECサイトを何から分析するべきか
――そのためにはサイト分析と知見が必要になりますよね。自社サイトの何から見ればいいのでしょうか?
まずは同業種・同業界内サイトと比べて、自社サイトがいい状態にあるのかどうかを考えることです。できればライバル企業だけでなく業界の中でのポジションやサイトタイプをデータに基づいて説明すると、経営層をより説得しやすくなります。ただし、これは難易度が高く、分析には時間もかかります。
目安として、流入してきたユーザーのうち商品購入につながるのは、一般的なECサイトでは約2%、ダンボールや紙コップ商品などの専門商品のECサイトでは5%が上限値だと考えるといいでしょう。
もし、それよりも高い数字が出せているECサイトはリニューアルに意味がなく、多くの場合は改悪につながります。
大きな流れとして、現状のCVRを業界水準まで改善した後に、サイト自体への訪問数を増やすのが基本セオリーです。
――もし具体的にCVRを改善していくにはどうすればいいでしょうか?
安藤:ぜひやってほしいのは「ユーザーによく見られているページや回遊動線に、CVRが高いページのリンクを貼ること」です。
例えば、通常の商品紹介ページのCVRが2%、特集ページのCVRが5%のECサイトがあるとします。その場合、ユーザーに特集ページを見てもらうほうが成果は上がる。そこで、サイトの中でよく見られているページを探し、その中に特集ページのバナーを置くなどの施策を打ってみる。
こういった「伸びしろ」をサイト内でどんどん探しましょう。
正しく効果検証ができているサイトは1割にも満たない
――改善を重ねていく際に、知っておくといいコツはありますか?
安藤:当然ですが、絶対に勝てる必勝の改善方法はありません。ただ、施策を打ったあとに効果検証していないケースがとても多いのはもったいないですね。
むしろちゃんと効果検証を行っているサイトは1割にも満たないほど。逆に言えば、それだけ差をつけやすい部分でもあります。とはいえ、プロのWebコンサルタントにとっても、効果検証の部分がもっとも難しいんです。
――どうして、そんなに効果検証が難しいのでしょうか?
安藤:仮にトップページを改修したあとにサイト全体のCVRが良くなったとします。しかし、そこには季節性の出来事やWeb広告やダイレクトメールなどの施策、SEO順位の変動などさまざまな要因が潜んでいる。だから、トップページの改修がCVRに直接的に影響したのかが分かりにくいんです。
それを明らかにするために、必ず1つずつ施策の効果を検証し、結果と原因の相関性がどこまであるのか考えましょう。
――具体的には、どんな方法がありますか?
安藤:大きく2段階に分けられます。まず施策が狙い通りに働いたのか「施策の有効性」を確認するステップ、そしてその施策がCVRなどの数字にどう影響を与えているかを施策前後で検証するステップです。どのデータを比較するのかは、あらかじめ狙いを定めておきましょう。
例えば、商品A・B・Cの購入率を高めるのが最終目的だとします。そこで、トップページへ流入してきたユーザーの「商品紹介」ページへの誘導を強めればいいのではないかと仮説を立て、トップページのコンテンツの順番を変更する施策を打つと決めました。
この施策を実施し検証する際には、商品A・B・CのCVRの変化だけを見てしまう人が多いと思います。
しかし、まずはコンテンツの順番を入れ替えによって、
- 商品紹介ページへの誘導率の向上
- ニュースのページへの誘導率の低下
が起こっているか、つまり「商品紹介ページへの誘導を上げる」への施策が狙った通りに正しく反映されているかどうかを確認しましょう。これが施策の有効性を確認するプロセスです。
そもそも商品紹介ページへの誘導率が上がっていないのにCVRだけを見ても意味がありません。施策が有効なのを確認したあとで、CVRを確認しましょう。
もし施策自体は有効に働いているのに、CVRが上がっていなければそもそも狙いが間違っていたということです。
――効果検証は、まず施策の有効性を考えるんですね。
はい。そして、ユーザーに見せると効果の高いページは、サイトによって異なります。例えば、すでに多くのファンが付いているECサイトでは新着情報がよく見られ、ユーザーはまだ自分で商品を選べないくらいの場合は、おすすめやランキングがよく見られるんですよ。
また、今回はトップページのトピック入れ替えを例にしましたが、そのほかにも、
1、ABテストをかんたんに行えるツールを用いて比較する
2、UXを改善する「Web接客ツール」を活用する
などの方法もあります。
――リニューアルにはお金もかかります。もし、予算が足りない場合はどうしましょう……?
安藤:とにかく時間をかけるしかありません。ただし、細かく施策を打っていくと成果が出づらいので、全体のスケジュールを立てて時間がかかっても効果検証までやりきることです。
それでも孤軍奮闘せざるを得ないWeb担当者へ
――さまざまなノウハウをお聞きしてきました。最後に、社内で一人、サイトの施策を任されているマーケ担当者に、何かアドバイスはありますか?
安藤:正解が分からずに一人で悩んでいる場合は、各地で開かれているマーケターの勉強会やコミュニティなどへ参加して周囲の情報を聞くのも手です。
さまざまな立場の人と話せば、自分の行っている施策が間違っていないのか、まだまだ改善の余地があるのかなどの意見交換ができ、自分の立ち位置を客観視できますから。
最後は宣伝ですが(笑)、私たちはAIによるアクセス解析をもとに、サイトの改善施策を提案する『AIアナリスト』を提供しています。一部の分析機能と改善提案は無料でご利用いただけるんです。
初期設定はGoogleアナリティクスに連携するだけ、2分ほどで完了します。サイト分析時間を圧縮したい方、早く改善したい方にオススメです。ぜひお試しください!
(執筆:山岸裕一 編集:鬼頭佳代/ノオト 撮影:栃久保誠)
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