「Salesforce」は世界トップシェアのクラウド型ビジネスアプリケーションです。全世界で15万社以上に選ばれています。
Salesforceを導入するには相応の知見が必要で、導入支援を行う会社や外部コンサルに依頼するケースも少なくありません。しかし、予算の都合などから「自社内で導入を進めたい」という方もいらっしゃると思います。
そこで今回は、Salesforceの導入のステップから、導入までにかかる期間・費用相場、導入するためにおさえておくべきポイント、注意点をご紹介します。
初めてでもスムーズに導入するためのポイントを解説していますので、導入に向けて動き始めたばかりの方はぜひ読んでみてください。
目次
Salesforceの導入を成功させる4つのポイント
Salesforce導入のポイントは「スモールスタートで始めること」「運用前の社内トレーニングに時間をかけること」「課題ベースで導入すべきか判断すること」の3つが挙げられます。
以下で詳しく解説していきます。
ポイント1.スモールスタートで、徐々に規模を拡大していく
Salesforceを導入する際はまず、最小限のシステムを構築したうえで後から必要なモジュールを追加していくのが鉄則です。
Salesforceでは、顧客のチャネル流入や購買情報管理、ニーズ解析、マーケティング分析、セキュリティ保護など、ビジネスの効率化に必須の機能をそろえていますが、導入初期の段階ですべての機能が必要になるケースは稀です。
むしろ、必要性の低い機能ばかりを一括してダウンロードしてしまうと、システム全体が重くなってしまい、サーバーにかかる負荷が大きくなることによってダウンのリスクが高まってしまいます。
「ひとつひとつの機能をパッケージ化して提供すること」がSalesforceの大きなメリットですので、導入初期は最小限のパッケージでシステムを構築し、運用過程で必要な機能が出てきたらその都度追加する、というのが効率化の面では最適だと言われています。
参考:移行に手間取るほど「何のために導入したんだ?」と疑問視される。新システム定着は時間との戦い──Salesforce 導入 〜 定着 の道のり Vol.8 株式会社サンブリッジ様(前編)
ポイント2.運用前トレーニングを欠かさない
Salesforceはいきなり本格運用に踏み切るのではなく、導入前に社内で模擬トレーニングを繰り返すのがベストです。
どんなに多機能で優れたシステムであっても、それを導入する側が充分に使いこなせなければ意味がありません。
Salesforceも規模が大きくなるほどシステムが複雑になってしまいますので、本格的な運用に入る前に必ず社員のトレーニング期間を設けましょう。
運用前のシミュレーションは一度きりでは終わらせず、半年ごと、1年ごとと定期的にトレーニングを行い、フィードバックを行うことで運用保守の精度をより高めることができます。
参考:なぜ私が担当に?」状態から導入してわかった、注意すべき 3 つのポイント──Salesforce 導入〜定着の道のり Vol 3. アクシスコンサルティング株式会社様
ポイント3.Salesforceでやりたいこと、解決したい課題を明確にしておく
Salesforceを導入する際は、Salesforceを通してどんな課題を解決したいのか明確にしましょう。理由は「目的によってはSalesforce以外の選択肢も検討すべき」だからです。
例えば、「顧客のチャネル流入から成約率の上昇に結びつかない」、「社員全員で顧客データを共有できていない」などの解決を目的とするなら、Salesforceの利用が良いでしょう。
逆に、「単純に自社コンテンツの認知度を高めたい」、「販売チャネルそのものを増やしたい」という目的であれば、Salesforceにこだわる必要はありません。
Salesforceはあくまでソリューションの1つの案であることをおさえておきましょう。
参考:Salesforce導入を成功させるには?(Salesforceってどうやって使ったらいいの?)
ポイント4.Salseforce導入経験者に事前ヒアリングし、注意点やアドバイスをもらう
Salseforceの導入は期待される効果や費用的にも全社的に大きな意思決定のはずです。自然と導入プロジェクト成功のプレッシャーもあることでしょう。
成功の確度を上げるため、導入する立場だった経験者に、成功要因や失敗してしまったこれだけは避けるべき注意点など、できる限りヒアリングしましょう。
導入コンサルを利用するのも有効な手法ですが、導入者側の視点で思わぬ落とし穴を避けることができます。
Salesforce導入にかかる期間は2~6カ月前後
項目 | 期間 |
自社文化の視覚化 | 2週間〜1ヶ月 |
導入可否の判断 | 2週間〜1ヶ月 |
要件定義書の作成 | 1週間〜2週間 |
模擬トレーニング | 1週間〜2週間 |
システム構築 | 2週間〜1ヶ月 |
フィードバック~マニュアル再定義 | 1ヶ月〜2ヶ月 |
Salesforceの運用開始までには、導入の検討からシステム構築、保守段階まで平均で2カ月から6カ月かかります。
Salesforceの導入シミュレーションから運用保守までに必要となる基本プロセスについて順を追って見ていきましょう。
参考:要件定義~システム設計ができる人材になれる記事
【Salesforce開発初心者向け】Trailheadの始め方
2017-12-05 ユーザ事例ウェブセミナー:真の定着化に向けて〜優勝から1年経過しての課題や施策のご紹介〜
自社文化の視覚化/2週間〜1ヶ月
Salesforce導入検討後2週間から1ヶ月は、自社文化の視覚化にあてられます。
ここでいう自社文化とは、大まかにいうと、「どのようなルートによって収益化を目指しているか」ということであり、それに応じてSalesforce導入後の運用形態を柔軟に変化させていく必要があります。
自社文化には、販売チャネル、顧客属性、提供価値、エンドチャネルなどがあり、ひとつひとつの要素とそれぞれの関連性を密にすることでSalesforce導入後の収益率が変動します。
自社文化を多面的に精査したうえで、Salesforceと企業風土がどうしてもなじまないと判断された場合には、思いきって導入そのものを見送ることも視野に入れておきましょう。
導入理由の洗い出し/2週間〜1ヶ月
2週間から1ヶ月程度かけて自社文化とSalesforceの相性についてリサーチし、導入が妥当だと判断されたら、次は導入の根拠について精査します。
ただ「時代のトレンドだから」、「ほとんどの企業が導入しているから」という理由で安易にSalesforceを導入したところで、導入の根拠がしっかりと見えていなければSalesforceのポテンシャルを充分に引き出すことはできません。
大切なのは、Salesforceを導入することではなく、Salesforceを導入することでどのように活用するか、ということです。導入前に理由について解析し、メンバー全員で共通認識をもっておくことで導入後も目的を見失うことがありません。
導入理由を具体的に洗い出すことができればコンセプトも自然に確立されますので、業務における無駄や非効率ポイントも省くことができます。
このフェースではSalesforce運用に携わるすべての部門による知見を集約し、2週間から1カ月程度かけて導入の根拠について検討していきます。
要件定義の作成/1週間~2週間
規模にもよりますが、要件定義書の作成には1週間から2週間程度必要になると言われています。
Salesforceを何のために導入するか、その要旨・コンセプトを要件定義書の形にしてまとめていきます。
要件定義書には、Salesforceの導入理由、導入期間、実装機能などひとつひとつの要素について具体的に記述し、社員全員で時系列に沿ってフィードバックが行えるように情報をわかりやすく整理しておきます。
要件定義書は定期的に見直す必要があり、その時々の時代のニーズに合わせてコンセプトをフレキシブルに変更しておくことがポイントとされています。
プロジェクトチームの結成/1週間〜2週間
Salesforce導入の礎となるコンセプトを策定し、要件定義書の形で記述したら、いよいよ1週間から2週間をかけ、プロジェクトチームを編成します。
システムの規模にもよりますが、プロジェクトチームの人数はおよそ5人~10人程度が望ましいとされており、キャリアの異なる人員をバランスよく配置することで運用からフィードバックまでをスムーズに行うことができます。
参考:できるプロジェクトチームの作り方!役割分担を明確にしよう
Salesforce導入に向けてのトレーニングを開始/1週間〜2週間
Salesforceを導入後スムーズに運用を始められるようにトレーニングが必要です。標準機能を使いこなせるようになるのは1週間から2週間程度かかります。
Salesforceは導入がゴールと勘違いされがちですが、大事なのはSalesforceを活用して自社の業務を改善することです。そのためにはトレーニングが必須となります。
実はSalesforceの公式サイトには、スムーズな運用を目指すトレーニングプログラム「Trailhead」が用意されています。知識から実践的な内容まで学べるプログラムで無料で学べるので、まずは運用方法や使い方を学びましょう。
プロジェクトチームが編成されたら、導入後の運用保守にむけた模擬トレーニングを実施します。トレーニングではそれぞれのプロセスについて詳細なフィードバックを行い、改善点をデータとして残すことによって導入後のトラブルやミスマッチを防ぐことができます。
Salesforce導入時の動作確認とマニュアル作成/2週間〜1ヶ月
Salesforceの運用前トレーニングを積んだら、社員共有用のマニュアルを作成しましょう。Salesforceを社員に利用してもらわなければ業務の効率化には繋がりません。
Salesforce導入後の基本パフォーマンスや改善点をまとめることができたら、わかりやすいマニュアルの作成を行いましょう。図解等で説明すると視覚的に見やすいのでオススメです。
マニュアルについてもフィードバックが重要で、一度では終わらせず、動作確認とセットにして、2週間から1ヶ月程度行うことによってより導入後の精度をあげましょう。
Salesforce利用定着化/1ヶ月〜2ヶ月
Salesforceを導入したら早急に企業全体、利用者の定着化を図りましょう。特に利用の定着化は難しく、前述したわかりやすいマニュアルが必要です。
Salesforceは上手に使いこなせば非常にすぐれたビジネスツールですが、せっかくコストをかけて導入したところで、社員全員が使い方とメリットを理解していなければ意味がありません。
また、導入してマニュアルを作成しても社員が既存のシステム(スプレッドシートなど)を使い続け、Salesforceを一切利用していない実例があります。それを防ぐためにも、一人一人の社員に定期的なフィードバックを利用しましょう。
その際にSalesforceの利用状況を表にまとめ、5段階で判断できるようなアンケートシートを作成すると効率的に利用状況を把握できます。
Salesforce導入にかかる費用
Salesforceの導入には一定の月額費用がかかり、本格的なシステムを導入するほどコストも引き上げられていきます。
Salesforceの導入および構築にかかる基本コストについてプラン別に見ていきましょう。
Salesforce導入の構築費用
Salesforce導入後のシステム構築費用については、どのような機能を実装するかで変動します。
例えば、クラウド上でのみ完結する「Sales Cloud」の場合は、最低3,000円から始められます。一方短期間で成果をあげることを目的とした「Pardot」の場合は最低価格が月額150,000円と高額です。
この他、マーケティングに特化した「marketing cloud Einstein Analytics」のプランなど目的や用途に合わせて選ぶことができる製品が充実しています。
とはいえ、営業管理ツールを導入し、業務の効率化を図るのであれば「Sales Cloud」で十分です。商談スケジュールや顧客管理、営業成績からの売上予測まで業務を効率化できるツールが備わっています。
Salesforceの月額費用
前述した通り、Salesforceの月額費用は契約するプランによって異なりますが、営業管理ツールの導入が目的であるならば「Sales Cloud」の契約を検討しましょう。以下は月額費用をまとめたものです。
プラン | 月額費用 | ターゲット |
Essentials | 3,000円 | ユーザー数10名までの中堅・中小企業向けお試しプラン |
Professional | 9,000円 | あらゆる規模のチームに対応できる標準のプラン |
Enterprise | 18,000円 | 自社の用途によって自由にカスタマイズできるプラン |
Unlimited | 36,000円 | 全プランの機能を備えサポート無制限で受けられるプラン |
これらの4つのプランでは、利用できる範囲が大きく異なります。例えば、標準搭載として全てのエディションに「営業のタスク管理」や商談管理は備わっています。
しかし、製品の価格設定や見積の作成、請求処理といった業務の効率化を図ることができる仕様は「Professional」以上のプランのみです。
試験的に利用する場合は「Essentials」をオススメしますが、業務の効率化を目指すなら「Professional」以上を契約しましょう。
Salesforceは1ライセンス・1ユーザーあたりに月額費用が発生する仕組みで、5ユーザーが使用する場合5×9,000円(Professional)=35,000円かかります。企業の営業部とその管理者だけにライセンスを付与するのであればそれほど料金はかかりません。
ただ、利用するユーザーの数と月額料金が比例するということを理解しておきましょう。Salesforceの他のプロダクトを検討したいという方は公式サイトを確認してください。
参考:各種エディションと料金
Salesforceを導入する6つの手順
Salesforceをスムーズに導入するための6つの手順をご紹介します。導入時に特に大切なことは「運用前トレーニング」と「利用の定着化」です。
自社のビジネスモデルを視覚化
Salesforce導入後も効率の良い運用を続けるためにはまず、自社のビジネスモデルを視覚化し、モデルに適したプランやマニュアルを検討する必要があります。視覚化したビジネスモデルは必ずデータ化し、メンバー全員で共有できるようにしておきましょう。
要件定義を作成
Salesforce導入方針が固まったら、その情報を要件定義書の形でまとめ、メンバー同士で共有できるように保管しておきます。要件定義書はフィードバックが重要で、きちんとコンセンサスが確立されるまで定義書の作成を繰り返すことになります。
Salesforceのトレーニングを開始
要件定義書がきちんと可視化されたら、いよいよ導入に向けた模擬トレーニングを開始します。トレーニングにおいてもやはりフィードバックが重要となり、責任者がしっかりと改善点を把握できるかがポイントとなります。
参考:Salesforce開発初心者向け】Trailheadの始め方
Salesforceの標準機能を取り入れる
模擬トレーニングを通してSalesforce導入後のイメージをつかむことができたら、標準機能を取り入れたうえでコストパフォーマンスを比較検討します。幅広い標準機能を使いこなすことができるか否かでSalesforce導入後の収益率が大きく変わってきますので、導入機能についても入念にシミュレーションをしておきましょう。
参考:Salesforce(セールスフォース)の基本設計を構築しよう!
動作確認や利用テストを行う
Salesforceのシステムが固まったら、社内で一定期間運用し、定期的な動作確認を行います。動作確認の段階でトラブルが発見されることは決してめずらしくはなく、むしろ、フィードバックによって問題をどのように改善していくかがシステム導入後の大きな分かれ目と言えます。
参考:Salesforce(セールスフォース)の基本設計を構築しよう!
運用開始・社内共有
要件定義から動作確認を一定期間繰り返し、トラブルシューティングが完了したら、いよいよ本格的に運用を開始します。
どのようなシステムでも社内による共有が重要で、責任者だけでなく、エンドユーザーまできちんと社員が運用できるようになるまでフィードバックを行いましょう。
参考:Salesforce(セールスフォース)の基本設計を構築しよう!
【Salesforce導入の注意点】全社で利用しないと効果を実感しづらい
Salesforceを導入する際に気をつけてほしいことは、営業部やマーケティング部といった部署ごとで異なるツールを使用しないことです。Salesforceを導入するのであれば、どの部署でもSalesforceを利用しましょう。
例えば営業部ではSalesforceを利用していて、マーケティング部ではスプレッドシート等のツールを利用しているとなると、確認作業が2重3重にもなり手間がかかってしまいます。
また、一方のシステムでは最新の情報が更新されているにも関わらず、もう一方では古い情報のままで更新作業が滞ってしまう可能性があり、情報伝達のスピードに遅れが生じます。
費用をかけてSalesforceを導入したにも関わらず、部門ごとに異なるツールを使用していると業務を効率化することはできません。企業にSalesforceを導入するのであれば、全部門に対応させることが大切です。
まとめ
この記事では「Salesforceを導入したい」という方に向けて、導入の流れから成功のポイントなどを解説してきました。
Salesforceの導入を成功させるコツとしては、以下の3つです。
- 少しずつ機能を拡充すること
- また運用前にトレーニングの期間を設けること
- Salesforce導入でどんな課題をクリアしたいか明確にすること
導入から本格的な運用開始までには2~6カ月程度の期間が必要です。
導入手順は大きく6つのステップに分けることができますが、特に「トレーニング」と「利用の定着化」に時間をかけると良いでしょう。
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