ドローンでとった画像をAIで解析するとなんだかいろいろ楽になりそう。・・・だけど、AIもドローンもなんだか難しそうで自分たちで導入できるかわからない、と思っていませんか?しかしすでに身近なところでAIとドローンの組み合わせによる様々な取り組みが始まっています。
ドローンを飛ばして空撮し、その撮影した画像をAI技術で解析する。本記事ではなぜこの組み合わせが注目を集めているのか。ドローンの具体的なビジネス利用について、事例を挙げながら解説していきます。
さらにその事例がどのような技術によって実現されているものなのかを知ることで、自分の身の回りの仕事のどこにAIが導入できそうか、イメージを持つことができます。
本記事を読めば、AIもドローンも導入のハードルが低くなってきていることやその技術を業務に取り入れることのメリットがわかり、自分の身の回りの仕事のどこにドローンとAIが導入できそうかイメージを持つことができます。ぜひ参考にしてみてください。
目次
ドローンの空撮画像を解析によって産業活用している事例
「ドローンで空撮をする」これはもはや当たり前の技術となってきました。今回はさらに進んで、ドローンで撮影した画像をAIで画像解析し、産業活用している事例を紹介します。
そもそも画像解析ってなに?という方はこちらの記事をご覧ください。
参考:AIの画像解析でできること|農業からデスクワークまで楽になる仕事5選
事例1.ドローン×AIによる交通量調査サービス『ドローントラフィックモニター』
ドローントラフィックモニターは、ドローンの空撮画像をAIで解析することにより、道路の交通量を計測するサービスです。もともと自動運転などに必要なドライブレコーダーの解析なども行っており、その技術を交通量調査に転用した事例です。
車の周囲にある物体が車なのかひとなのか。車ならば乗用車なのか、2トン車なのか。人であれば徒歩なのか自転車なのか。ドライブレコーダーには映る物体の種類を見分ける技術があります。ドローンとAIによる交通量調査は、この技術を応用し、車や人を見分けて件数をカウントしていきます。
参考:ドローン×AIによる交通量調査サービス『ドローントラフィックモニター』提供開始
事例2.AIとドローンで車種を特定し、マーケティング利用が可能
AIとドローンでマーケティングと聞いてもあまりピンとこないかもしれませんが、AIの空撮画像をAIで解析して「車種」が特定できるとなればどうでしょうか。年収と相関がある「車種」を特定できれば、マーケティングデータとして有効活用できます。
例えば、幹線道路への出店時に「どれくらいの年収の世帯が多く利用しているか」などを調査したいときは車種の特定が有効で、ドローンとAIの出番となります。
またこの車種特定技術は犯罪捜査・犯罪抑止といった利用方法もあるようです。
AI×ドローンが農家を助ける2つの事例
広い田んぼの管理は大変です。稲を襲う害虫被害や病気を防ぐためにこれまでは一斉に農薬をまくのが普通でした。
しかしドローンを田んぼに飛ばして空から撮影を行い、AIにその画像を解析させることで、病気の部分だけに農薬をピンポイントで撒くことが可能となります。また肥料の量なども、同じ仕組みで生育状況を見極めることで、きめ細かい調整が可能となります。
事例3.AIとドローンで育てた「スマート米」
「スマート米」とは、AIやドローンを使い、「ピンポイント農薬散布テクノロジー」を用いて栽培されたお米のことです。ドローンとAIを利用して「減農薬」を達成させることを掲げて、高付加価値の農作物を生産、流通、販売するとしています。
株式会社オプティムは2017年12月に「楽しく、かっこよく、稼げる農業」を実現するため「スマート農業アライアンス」を設立しています。「スマート米」はその取り組みの中の一つです。
参考:「スマート米栽培」を初めて実施した農家に聞くAI×ドローンのメリット
同じお米つながりで、こちらは、日本酒造りにAIとドローンが活用されている事例です。
参考:KDDI、会津若松市で5G、ドローンを活用した「日本酒造り」の実証事業を開始
事例4.広い田んぼだけではなく高さ8メートルまで伸びる作物の管理にも
田んぼだけではなく、高くつるを伸ばす作物の管理にもドローンとAIが役に立ちます。
実際に取り組みが始まっているのは、ビール独特の苦みや華やかな香りを左右する大切な農作物の一つ、ホップの畑です。ホップは背丈を8メートル近くまでのばし、一斉に収穫適期を迎えるわけでもないため、収穫に適した時期を見極めるのが大変でした。
そこで、高所の視点をおぎなうものとして登場するのがドローンです。こちらも生育状況を見極めるために、ドローンで撮影した画像をAIで画像解析する技術が使われています。
【慶大×田村市】ビール主原料、ホップの畑をInspire2などがフライト! 「たむらモデル」の次の一手
事例5.空撮を活かして海の密猟者監視まで
これまで、道路の交通量調査や農業でのドローンとAIの利用を紹介してきましたが、陸地以外に海での利用も始まっています。
後を絶たない密漁被害に対して、これまでは漁場関係者が巡回目視して監視をしてきましたが、労力や費用負担が大きいです。また密猟者から攻撃されるケースもあるということで危険の多い作業でした。
ドローン撮影画像をAIで解析し、関係機関への通報までを自動化するこの取り組みは、まさに海と人の安全を守るものといえるでしょう。
参考:「ドローン+画像認識AI」で密漁を監視 ミツイワとNTTコムウェアが共同実証へ
撮影対象を何にするかで活用は無限大
ドローンにカメラを載せて動画を撮る。そしてその動画をAI(人工知能)で解析する。この組み合わせにより、以下のような事例もあります。
- 山間にドローンを飛ばして撮影。画像を解析して害獣対策に使用する
- 峠の鉄橋や山間部の橋に飛ばして故障箇所の点検に使用する
- 太陽光発電設備の上にドローンを飛ばして撮影。故障箇所を検知する
- 山での遭難にドローンを飛ばし、倒れている人を捜索する
さてこれらの事例では、共通して「ある問題」を解決しているのですが、この「ある問題」とはなにか、お分かりになるでしょうか。
ドローン×AIは「人」の問題を解決する
「ある問題」それは、「人手不足」です。
交通量の調査や、車種特定によるマーケティングと行おうとしたときに、まず「人」の確保が大変です。ドローンであれば操作する人は交代要員を含めて二人。思い立ったときに交通量の調査ができます。
米やホップの事例にみた農業においては、人口減少や少子高齢化、作業手の引退などによる「後継者不足」と「農業における知見の損失」などが課題です。作物の生育や病害虫が出たときの作物の状況などをAIに学習させ、ドローン撮影画像をAIで解析することで、人手不足解消の一助となり、また大事な知見の損失を防ぐことができます。
海の密猟者監視では、密猟者の多いと言われる夜間に船を出し、人が常時監視するのは危険が伴います。
また同じように、害獣対策、峠の鉄橋や山間部の橋、太陽光発電システムも、「人」が高所にのぼっての点検となるため、危険が伴います。高所の撮影はドローンの最も得意とするところであり、AIによる画像解析で故障個所の検知も可能です。
人の危険でいえば、山での遭難も深刻です。二次災害の危険性などが伴います。ドローンを飛ばしAIで山間の状況を解析できれば、二次災害のリスクが激減します。
いわずもがな、少子高齢化が急速度で進み、人手不足が叫ばれる現代。人手不足を補う代替手段の確保は急務となっています。ドローン×AIは、まずこの「人」に関する問題を解決する強力な手段なのです。
AIとドローンで「人」の問題を解決すると「時間」・「生産性」の問題も解決する
さて、ドローン×AIは「人」の問題を解決すると紹介しました。実は「人」の問題を解決すると「時間」と「お金」の問題も軽減できるのです。ドローン×AIによる交通量調査を例にしてご説明します。
交差点で、たくさんの人がカウンターをカチカチカチカチ。おなじみの光景ですが、この人たちを雇用するのには当然準備が必要です。
何人雇用する必要があるのかを判断するには、調査したい道路の車線数や大体の交通量を見積もるなど、事前の調査が必要です。また、交通量調査は、直進・右折・左折、つまりはその地点からどちらに車が向かっていったかをカウントしなければなりません。正確な交通量調査をしようとすれば、車線数や道路幅によって雇用する人数も変わるため、現地の下見や準備が必要です。
一方ドローンであれば、広角レンズをつけて60メートルほど高所に飛ばせば広い範囲を一度にカウントすることができます。
「とにかくドローンを飛ばす」
調査の準備はこれだけです。準備の時間が軽減できます。
また広い範囲で高所から撮影できるため、複数交差点を捕捉することも可能です。それだけ人件費や雇用のための準備時間が短縮できます。
人手の確保には、人を募集し雇用する時間とお金が必要で労務の手続きも面倒です。ドローンであれば、操作者二人(実機操作一人、交代要員一人)で調査できますので、面倒な労務手続きも軽減できます。
交通量調査は、カウンターの数字を転記し、エクセルなどに入力しなおす必要があります。ドローンとAIの組み合わせなら、撮影した動画像をAIの解析エンジンにかけるだけ。交通量調査の時間が大幅に削減できます。
作業に要する時間が軽減できれば、おのずと人一人あたりの生産性も上がります。交通量調査を行う実際の作業手の他に、事前準備や労務手続きを行うバックヤードの工数も削減され、組織全体の生産性が上がることにつながります。
ドローン空撮画像とAI画像解析を強みとする会社
ご紹介してきたように、ドローン空撮とAI画像解析の組み合わせは応用範囲が広い分野です。自社でも活用してみたいとの話が出た際には、まず「ドローンとAIでなにがしたいか」を決めることが重要といえるでしょう。
また「ドローンとAIを使って〇〇をしたい」と決まったとしても、AI活用は幅広い知見やノウハウが必要になります。そこでまずは、ドローンとAIの組み合わせで活用事例を持っている専門家に相談してみることをお勧めします。
ドローンとAIを組み合わせたソリューションに強みを持つ会社3選
株式会社センシンロボティクス
太陽光発電設備や送電線などの設備点検などでドローンとAIを活用したソリューションを提供しています
株式会社オプティム
本文中でもご紹介している「スマート米」など、農業での取り組みを進めているほか、幅広く画像解析に関するソリューションを提供しています。
データセクション株式会社
こちらも本文中でご紹介している交通量調査など、ドローンとAI画像解析に強みを持つ会社です。
AIとドローンに関するよくあるご質問
AIとドローンの導入を検討中の方に役立つQ&Aをまとめています。
Q.AIとドローンの導入にはどれくらいの費用がかかりますか?
A.AIドローンの導入費用は、ドローンの種類や解析ソフトウェアの仕様によって異なりますが、一般的に数十万〜数百万円の初期費用がかかります。追加で運用・メンテナンス費用も必要です。詳しくは提供元にお問い合わせください。
Q.AIとドローンが「人」の問題をどう解決しますか?
A.人手不足や危険な作業の代替としてAIとドローンが使用されれば、作業の安全性向上と効率化に貢献します。
まとめ
ドローン×AIの技術がますます進めば、「人」「時間」「生産性」の問題も解決していく日もすぐそこです。
極寒の冬や酷暑の夏、山間でインフラ設備を点検したり、交差点でカウンターをカチカチする人の姿が、悠々と空を飛ぶドローンに置き換わる日も遠くなさそうです。
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