ITP2.1がアフィリエイトに与える影響は?ASP各社の対応方法も解説

2019年2月に、Apple社はITP2.1の導入を発表しました。広告ツールとしてASPを運用している場合、大きな影響があると想定されます。

この記事では、そもそもITPとはどういう技術なのか、そして「ITP1.0」「ITP2.0」「ITP2.1」それぞれの概要やアフィリエイトに与える影響について詳細に解説します。また、ASP各社のITP対応方法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


ITPとは

ITPとはIntelligent Tracking Preventionを略したもので、クロスサイトトラッキングを抑制する機能を意味します。2017年9月下旬にApple社が発表した機能で、ブラウザにおけるプライバシーを保護する目的で導入されました

クロスサイトトラッキングとは、ECサイトのように複数のドメインをまたぐように構築されているサイトのセッション情報を正しく取得する機能のことです。「サイト間リンク」とも呼ばれています。この機能がなければ、そのサービスにおけるユーザーの動きなどのデータはそれぞれのドメインごとにしか計測できなくなります。

さらに、WebブラウザにはCookieという一時的な情報を保存する機能があります。このCookieにはファーストパーティCookieとサードパーティCookieがありますが、ITPはサードパーティCookie一定時間後に削除してサイトトラッキングを抑制します

ファーストパーティCookie

ファーストパーティCookieとは、ユーザーがアクセスしたサイトで発行されたCookieのことを指します。
ファーストパーティCookieは、ユーザーが自らアクセスしたサイトで発行されるため、ブロックされにくいという特徴があります。そのため、比較的精度の高い効果測定が行えます。一方で、同じドメインの中でしかCookieの情報が引き継がれません。

サードパーティCookie

サードパーティCookieは、閲覧しているWebサイト以外のドメインから発行されるCookieのことを指します。サイト閲覧の際にはさまざまな広告がバナーで表示されていますが、これらの広告を閲覧することでサイトとは別の広告配信のドメインからCookieが付与されます。

これをもとに広告の効果測定などを行いますが、閲覧履歴などがデータとして利用されるので、プライバシー保護の観点で長年の課題でもありました。


ITPがアフィリエイトに与える影響とは

ITPはユーザー側から見ればプライバシー保護の観点で有益ですが、サイト側からすればビジネスに非常に大きな影響があります。

具体的には、アフィリエイトやリターゲティング広告など、サードパーティCookieを利用した広告メニュー全般に影響があります。例えばアフィリエイトではトラッキングができないため流入元の特定が困難です。また24時間でサードパーティCookieが削除されるため、それ以降のコンバージョンを測定できないという問題もあります。

2017年9月にリリースされているSafari 11.0からデフォルト機能としてITPが採用されました。Safariは特にモバイルでは約66%と圧倒的なシェアを誇っているため、モバイル広告には大きな影響を与えます。

「ITP1.0」の概要とアフィリエイトに与える影響

アフィリエイト広告の場合、ファーストCookieからサードパーティCookieに移動したデータをトラッキングし、その広告がどこから流入したかを特定することで報酬を支払いますので、24時間後にはその特定ができなくなりました。

2017年9月に導入されたITP1.0では、24時間経過した後はクロスサイトトラッキングのCookieの中からサードパーティCookieが切り離されて使えなくなります。さらには30日以上経過すると、残るファーストパーティCookieを含めてすべてのCookie情報が利用できなくなります。そのため、24時間後に同じサイトにアクセスしても新規ユーザーとしてカウントされます。

「ITP2.0」での変更点とアフィリエイトに与える影響

サードパーティCookieをもとにしているリターゲティング・リマーケティングの機能が使えなくなり、広告の成果測定ができなくりました。アフィリエイト広告も同様です。

2018年6月に導入が発表されたITP2.0では、クロスサイトトラッキングの中のサードパーティCookieを24時間保持する仕様が強化され、即時削除されるようになりました。30日以上経過するとその他すべてのCookieが削除されますが、ユーザーが承諾した場合のみ、Storage Access APIを利用してファーストCookieを保持することができます。

「ITP2.1」での変更点とアフィリエイトに与える影響

アフィリエイト広告においては、ファーストパーティCookieを利用してCV測定やアクセス解析をしていても、それがドキュメントCookieであれば、8日目以降の計測ができなくなってしまいます。

Javaスクリプトが扱えるCookieにドキュメントCookieという形式があります。2019年3月にリリースされたITP2.1ではそのドキュメントCookieの有効期限が7日となり、8日目以降はファーストCookieであっても削除される仕様になります。

また、サードパーティCookieが即時無効化され、トラッキング拒否機能「Do Not Track(DNT)」も削除されました。


ASP各社のITP対応方法

従来のアフィリエイト手法に影響が大きいため、ASP各社でもITP対応を実施しています。

A8.net」のITP対応方法

A8.netを提供するファンコミュニケーションズでは、ITP2.0に関して2018年9月時点で対応状況を発表しています。具体的にはサードパーティCookieではなくファーストパーティCookieによるトラッキング方法に変更し、広告主ドメインでCookieを付与する方法に変更しています。

従来のASPがCookieを付与する形式から、ASPはCookieの付与指示のみを行い広告ドメインでCookieを付与することで、ファーストパーティCookieによる計測を行います。この方式ではサイトをまたいだトラッキング計測に当てはまらず、各種測定を行うことが可能です。

2019年3月31日時点でITP2.0対応プログラム数は約5000件となっています

参考:Safari11以降に追加された機能(ITP)への対応について | A8スタッフブログ
参考:[A8.net]新たにITPに対応したプログラムを確認しやすくなりました! | A8スタッフブログ
参考:A8.netのITP2.0対応状況に関しまして | A8スタッフブログ

バリューコマース」のITP対応方法

バリューコマースでは、ITPの導入に際して、広告主全社に対し個別導入対応のフォローを実施しました。

具体的にはCookieに依存しないデバイス推定技術によるトラッキングを新たに導入し並行して運用することで、既存のCookieを利用したコンバージョン計測への影響を最小限にしています。またメニュー画面でITP2.0対応のプログラムが検索できるようになっています。

参考:デバイス推定技術を用いたトラッキングを提供開始 | ASPのバリューコマース アフィリエイト
参考:【重要】Apple社が発表したITP2.0に関する取り組みについて | お知らせ | ASPのバリューコマース アフィリエイト

もしもアフィリエイト」のITP対応方法

もしもアフィリエイトにおいては、他のASPに比較して対応が遅れていたものの、順次ITPへの対応を進めています。

楽天やAmazonなど影響の大きいクライアントから対応を進めていることもあり、全体で約600件近い広告の中で対応完了しているものは2割弱となっています。

すでに対応が完了した広告については、ITP対応マークが付与されており、プログラム検索においてもITP対応の広告を限定して検索することが可能となっています。

参考:ASP7社のITP2.0対応状況をまとめてみた!
参考:ITP2.0がやってきた|国内アフィリエイトASPの対応状況まとめ

アクセストレード」のITP対応方法

アクセストレードでは、ITP対策を実施している最中であり、約半数の広告で対応が完了しています。ITPに対応した広告については、ITP対応マークが付与されており確認が可能です。

ITP2.0対応状況については、アクセストレードにログインした後に会員ページを見ると、対応状況のお知らせで確認できます。また、対応広告については、ITP2.0でも成果が適切に計測できることが検証されています。

参考:ASP7社のITP2.0対応状況をまとめてみた!
参考:ITP2.0がやってきた|国内アフィリエイトASPの対応状況まとめ

afb」のITP対応方法

afbでも早くからサードパーティCookieではなくファーストパーティCookieによるトラッキング方法に変更をすすめています。

ITP導入以前から対応を開始していて、対応している広告についてはITPマークが付与しており、すでに約8割近くが完了しています

会員ページのお知らせにおいても対応状況が随時掲載されており、ITP対応プログラムにおいてはITP2.0でも問題なく利用できることも確認されています。

参考:ASP7社のITP2.0対応状況をまとめてみた!
参考:ITP2.0がやってきた|国内アフィリエイトASPの対応状況まとめ


まとめ

ITPの導入は、ユーザー側からすればプライバシーの保護が強化されることになり歓迎すべき点もある一方、ASPや広告主側からすれば、ネット広告において大きな変換点でもあります。

現状、各ASPではITP2.1も含め順次対応を行っていますが、今後ITPがどのような進化を遂げるかはまだ未知数です。広告を出稿する場合はITPに対応した広告であることはもちろん、各ASPの対応状況を常に確認していくことも必要になるでしょう。

参考にしたサイト

ITP2.0が広告に与える影響を分かりやすく解説します!
ITPの概要とその影響について※2018年9月19日更新
ITPがWeb広告に与える影響について
safariのITP2.1とは?広告やアクセス解析への影響と対策について解説
ITP2.0が及ぼす広告への影響とGoogle/Facebook広告のトラッキング対策
ASP7社のITP2.0対応状況をまとめてみた!ASPによって対応状況はかなり開きがあるようです。
ITP2.0がやってきた|国内アフィリエイトASPの対応状況まとめ
A8net
バリューコマース
もしもアフィリエイト
アクセストレード
afb

コメント