詐欺師が機関や個人を装い個人情報を騙し取るフィッシング詐欺の手口は年々巧妙になっており、個人レベルでの対策の必要性が高まっています。
騙されてしまった場合に「詐欺とは知らなかった。気づかなかった」と言えばお金が戻ってくるわけではないので、事前に自身を守る必要があります。
しかし具体的には、どのような手口があるのか、どのようにして身を守ればよいのか分からないという方も多いと思います。
そこで本記事では、フィッシング詐欺の基礎や、代表的な手口、詐欺を見分けるポイント、代表的な対策などの情報を一挙に紹介します。
繰り返しにはなりますが、起きてしまってからでは遅いので、これを機に自身を守る知識を身につけましょう。
フィッシング詐欺の代表的な6つの手口
次に、代表的なフィッシング詐欺の種類を6つ紹介します。
知らなければ対策もできないので、まずはこれらの手口があるということを認識しましょう。
種類 | 概要 | 防御策 |
---|---|---|
1.メールフィッシング | 攻撃者が正式な機関を装って個人情報の提供を促すメールを送信します。 | メールに含まれるリンクをクリックせず、公式サイトに直接アクセスする。 |
2.SMSフィッシング(スミッシング) | 緊急を要する内容のSMSを送り、受信者を偽のWebサイトに誘導します。 | SMSのリンクに直接アクセスせず、公式のサイトやアプリを直接起動して確認する。 |
3.SNSフィッシング | 攻撃者が偽のアカウントや乗っ取られたアカウントから誤解を招くリンクや詐欺的な広告を投稿します。 | 予期しないリンクやファイルに警戒し、知人からのものでも確認を行う。 |
4.ボイスフィッシング(ヴィッシング) | 電話を通じて公的機関を装い、個人情報や金融情報の提供を促す手法です。 | 電話での個人情報の提供を避け、公式の連絡先を使用して直接問い合わせを行う。 |
5.スピアフィッシング | 特定の個人や組織を狙い、事前に収集した情報を基にパーソナライズされたメッセージを送ります。 | メールの出所を疑い、必要であれば情報の確認のために直接連絡を取る。 |
6.検索エンジンポイズニング | 検索エンジンのランキングを悪用して悪意あるサイトを高ランクに表示させ、フィッシング詐欺に誘導する手法。 | 信頼できる情報源からのみ情報を得る。不審なWebサイトにはアクセスせず、URLを確認する。 |
1.メールフィッシング
メールフィッシングは、一般的なフィッシングの形態であり、多くの人々が日常的に使用するメールを通じて行われます。
詐欺師は銀行、有名企業、政府機関などを装って、正式そうなメールを送信します。これらのメールには、通常、ログイン情報や個人情報の更新を促す内容が含まれており、リンク先での情報入力を求められます。
リンク先の見た目は正規のサービスのログインページと酷似していますが、実際には詐欺師が設置した偽のページであり、ここに入力された情報は全て詐欺師の手に渡ります。
このタイプの攻撃を防ぐためには、メールに含まれるリンクを直接クリックすることなく、公式サイトに直接アクセスすることが推奨されます。
2.SMSフィッシング(スミッシング)
SMSフィッシング、通称スミッシングは、詐欺師がSMS(ショートメッセージサービス)を通じて個人情報を詐取する手法です。
攻撃者は通常、緊急を要する内容や誘惑的なオファーを含んだメッセージを送り、受信者を偽のWebサイトに誘導します。
例えば、「お使いのカードが不正利用された可能性があります。安全を確保するため、こちらのリンクから確認してください」というメッセージがこれに該当します。
このリンクをクリックすると、偽の銀行サイトなどに誘導され、ログイン情報が盗まれることがあります。
スミッシングの防止策としては、SMSで送られてくるリンクには決して直接アクセスせず、問題があるとされるサービスの公式サイトやアプリを直接起動して確認することが推奨されます。
3.SNSフィッシング
SNSフィッシングは、ソーシャルネットワーキングサービスを利用した詐欺行為です。
攻撃者は偽のプロフィールを作成したり、既存のアカウントを乗っ取って友達やフォロワーを騙します。
彼らはメッセージや投稿を通じて、誤解を招くリンクや詐欺的な広告、悪意のあるアプリケーションへの誘導を試みます。例えば、友達を装って「この面白いアプリを試してみて!無料だよ!」といったメッセージで、マルウェアを含むアプリへのリンクを送ることがあります。
SNSフィッシングから身を守るには、知人からの予期しないリンクやファイルには警戒し、確認のために直接連絡を取ることが有効です。
4.ボイスフィッシング(ヴィッシング)
ボイスフィッシング、またはヴィッシングは、電話を使ったフィッシング詐欺で、通常、攻撃者が金融機関や警察などの公的な機関の職員を装って電話をかけてきます。
この種の詐欺では、緊急を要する事態を偽装し、被害者が感情的になりやすい状況を作り出します。
例えば、詐欺師は被害者の銀行口座に不審な取引があったと報告し、その解決のために個人情報や銀行のピンコードの確認を求めることがあります。
ヴィッシングから身を守るには、電話で個人情報を共有することを避け、不審な呼び出しに対しては、公式の連絡先を使用して機関に直接問い合わせをすることが効果的です。
5.スピアフィッシング
スピアフィッシングは、特定の個人や組織をターゲットとするより洗練されたフィッシング手法です。
攻撃者は、そのターゲットについて事前に詳細な情報を収集し、その情報を利用して非常に説得力のあるカスタマイズされたメッセージを作成します。
例えば、攻撃者はターゲットが関与しているプロジェクトや個人的な詳細をメールに盛り込むことで、メールが内部から送信されたかのように見せかけます。
この手法の危険性は、そのパーソナライズされたアプローチにより、一般的なメールフィッシングよりも見抜くことが困難である点にあります。
スピアフィッシングの被害を避けるには、予期せぬメールに対して高い警戒心を持ち、必要であれば直接連絡を取って情報の確認を行うことが重要です。
6.検索エンジンポイズニング
検索エンジンポイズニング(SEOポイズニング)は、攻撃者が検索エンジンのアルゴリズムを悪用し、特定のキーワードで自分の悪意あるサイトを高ランクに表示させる手法です。
これにより、何も疑わないユーザーがそのリンクをクリックしやすくなります。
サイトにアクセスしたユーザーはフィッシング詐欺に遭遇したり、マルウェアに感染する可能性があります。例えば、最新ニュースや緊急を要するイベント関連のキーワードがよく狙われます。
SEOポイズニング自体は直接的なフィッシング詐欺ではありませんが、フィッシング詐欺への誘導手段として利用されることがあります。
例えば、SEOポイズニングを使って検索結果の上位に表示させたページから、ユーザーが信頼できると思われる偽のログインページ(フィッシングサイト)に誘導するケースです。この方法で、ユーザーから直接的に個人情報を盗み出すことが可能になります。
SEOポイズニングに対する防御は、常に信頼できるソースから情報を得ることが重要です。
また、不審なWebサイトにアクセスした際は、URLを確認し、セキュリティソフトウェアを最新の状態に保つことが効果的です。
怪しいと思ったリンクはクリックしない、または正規のWebサイトを直接タイピングしてアクセスするなどの対策を取ることが推奨されます。
フィッシング詐欺を見分ける10のポイント
フィッシング詐欺を見抜くためには、以下のような怪しいポイントに注意を払うことが重要です。
これらの兆候に気づくことで、不正な試みから自身を守ることができます。
1. 緊急性を訴えるメッセージ
フィッシング詐欺の多くは、被害者に迅速な行動を促すために「ただちに行動が必要」といった緊急性を訴えます。
公的機関や企業は通常、メールで極めて重要な決定を求めることは少ないため、緊急を要するメッセージは疑ってかかるべきです。
2. 公式サイトと異なるURLへリンクやボタンで誘導する
メールやメッセージ内にあるリンクやボタンが、公式のWebサイトと異なるURLへ誘導している場合、それはフィッシングの可能性が高いです。
リンクにカーソルを合わせてURLを確認するか、疑わしい場合はリンクをクリックせずに、公式サイトを直接ブラウザに入力して訪れることが安全です。
3. おかしな文法やスペルミス
公式からの通信では文法やスペルに極めて注意が払われます。
文法的な間違いや奇妙な言い回しが含まれているメールやメッセージは、フィッシング詐欺の可能性を示唆しています。
4. 個人情報を要求してくる
信頼できる組織は、セキュアな方法を除いてはメールを通じて個人情報や金融情報の提供を求めることはほとんどありません。
メールやメッセージでの個人情報の要求は、フィッシング詐欺の警告信号と考えるべきです。
5. 公式と微妙に異なるデザイン
フィッシング詐欺師は、しばしば公式のロゴやブランディングを模倣して信頼を得ようとします。
しかし、細部にわたって完璧にコピーすることは難しく、微妙な違いが見受けられることがあります。
公式の素材と比較し、ロゴの解像度や配置、色使いに違和感がないか確認してください。
6. 不審な添付ファイル
メールに予期せず添付されているファイルがある場合、それはフィッシング詐欺やマルウェアの感染のリスクがあります。
特に、実行ファイル(.exe)、PDF、Word文書などが添付されている場合は非常に注意が必要です。これらのファイルは開かず、疑わしい場合は送信元に確認を取るべきです。
7. セキュリティ質問の答えを要求してくる
多くのオンラインアカウントがセキュリティ質問を利用していますが、これらの質問の答えをメールやメッセージで求めるのは不審な行為です。
セキュリティ質問の答えは非常に個人的な情報であり、これを外部に漏らすことはアカウントの安全を著しく脅かします。
8. 無料の商品やサービスの提供をうたっている
フィッシング詐欺師はしばしば無料の商品やサービスを餌にして個人情報を引き出そうとします。
「無料でプレゼント!」や「あなたが当選しました!」といった言葉には特に警戒が必要です。
これらのオファーは、個人情報を入力するための偽のフォームへと誘導することが多いです。
9. 送信元が公式と異なるメールアドレス
送信元のメールアドレスが公式のものと異なる、または一見して怪しいアドレスである場合は、フィッシングの可能性があります。
例えば、公式のメールアドレスに似せた微妙に異なるアドレス(例えば “help@bankofamericaa.com” などの誤字を含むアドレス)から送信されている場合、それは詐欺の可能性が高いです。
10. 通常と異なるプロセスの要求をしてくる
もしメールやメッセージで通常のプロセスとは異なる方法で情報の確認やアクションを求められた場合は、それは疑問を持つべきです。
例えば、銀行が通常電話で行う手続きをメールで要求してくる場合などです。
フィッシング詐欺への対策10個
フィッシング詐欺を見抜くことは、個人情報の保護と財産の安全を守るために不可欠です。
以下の方法を実践することで、詐欺の試みを効果的に防ぐことができます。
1.リンクや添付ファイルは不用意にクリックしない
不審なメールやメッセージに含まれるリンクや添付ファイルをクリックする前に、送信元のメールアドレスやURLを確認してください。
正規のアドレスかどうかを検証し、疑わしい場合はリンクをクリックせず、直接公式サイトにアクセスするか、公式の連絡先に問い合わせて確認してください。
2.メッセージの緊急性や誘惑を疑う
フィッシング詐欺師は、受信者に迅速に行動を起こさせるために、「直ちに対応が必要」といった緊急性を強調する内容を使用することがあります。
これに惑わされず、落ち着いて内容を再評価し、急いで情報を提供することを避けましょう。
3.文体や言語の不備を警戒する
公式機関や企業からの通信であれば、文法やスペルの誤りはほとんどないはずです。
文体が不自然であったり、誤字脱字が多いメッセージは、フィッシング試みの可能性が高いため注意が必要です。
4.二段階認証を活用する
アカウントの安全性を高めるために、可能な限り二段階認証を設定してください。
これにより、万が一、フィッシングによってパスワードが漏れたとしても、不正アクセスを阻止する追加の保護層が働きます。
参考:不正アクセスを防ぐ「ワンタイムパスワード」とは?利用シーンやSMSを使った発行方法まで解説│LISKUL
5.定期的にアカウントや取引履歴をチェックする
定期的に自身のアカウントのログイン履歴や金融取引を確認し、不審な活動がないかをチェックしてください。
早期に不正アクセスや不審な取引を発見することが、大きな損失を防ぐ鍵となります。
6.デジタル証明書を確認する
Webサイトが安全であることを確認するために、デジタル証明書(SSL証明書)をチェックしましょう。
ブラウザのアドレスバーに表示される鍵のアイコンや「https」の開始部分を確認することで、サイトが暗号化されているかどうかがわかります。
特に金融情報を入力する場合は、この確認が重要です。
「https = 安全」というわけではありませんが、金融機関や大手企業のページで個人情報や重要事項をやり取りする際に「https」ではなく「http」になっているということは考えづらいです。
情報入力を求められたページが「http」から始まるURLだった場合には注意しましょう。
7.公式アプリケーションを使用する
SNSや銀行サービスなど、アプリを通じて情報を提供する場合、公式のアプリケーションを使用することが安全です。
公式アプリはApp StoreやGoogle Playなどの正規のアプリストアからダウンロードしてください。
8.カスタマーサポートへ確認する
不審なメッセージやメールを受け取った際には、その企業や機関の公式Webサイトを通じてカスタマーサポートに直接問い合わせることが有効です。
公式サイトに記載されている連絡先を使用し、メールの内容について確認しましょう。
9.セキュリティソフトウェアを導入する
セキュリティソフトウェアを導入し、常に最新の状態に保つことで、フィッシング詐欺やマルウェアからの保護を強化できます。
これにより、不審なリンクやダウンロードをブロックする助けとなります。
10.情報教育を受講する
フィッシング詐欺の手口は日々進化しています。
定期的にセキュリティ関連の情報教育を受けることで、最新の詐欺手口に対する意識を高め、防ぐことができます。
被害に遭った場合の対処法
次に、万が一被害にあってしまった際の対処法を紹介します。
被害にあってしまった場合には、すぐに適切な行動に移ることで被害を最小限に抑えられる可能性があるので、頭の片隅に置いておきましょう。
被害に気づいた際の初動対応3つ
1.金融機関に連絡する
最初に行うべきことは、不正取引があった場合に備えて、すぐに銀行やクレジットカード会社に連絡することです。
これにより、アカウントを凍結または監視状態にして、さらなる損失を防ぐことができます。
2.警察に報告する
フィッシング詐欺の被害に遭ったことを警察に報告し、詐欺事件として記録してもらいます。
警察の報告書は、今後の身元盗用などの問題に対処する際に有用な証拠となります。
3.関連するサービスプロバイダに通知する
もしフィッシング詐欺が特定のサービス(例えば、ソーシャルメディアや電子メールアカウント)と関連している場合、該当するサービスプロバイダにも連絡し、アカウントのセキュリティ対策を強化してもらうように依頼します。
身元情報の保護と損失の最小化のためにできること2つ
1.パスワードの変更
すべての関連アカウント(特に被害に遭ったアカウント)のパスワードを直ちに変更します。
また、同じパスワードを使用していた他のアカウントについても、パスワードを変更してください。
2.重要な文書の保管とコピー
警察の報告書や通信記録など、詐欺事件に関連するすべての文書を安全な場所に保管し、必要に応じてこれらの情報のコピーを作成しておきます。
フィッシング詐欺対策の参考サイト
最後に、フィッシング詐欺や対策に関する情報は、総務省や警察庁などで随時発信しています。
詐欺の手口も年々巧妙になっているので、定期的にこれらの情報をキャッチアップしたり、違和感を感じたらまずは情報を確認する癖をつけましょう。
参考:フィッシング詐欺 – 国民のためのサイバーセキュリティサイト|総務省
フィッシング対策|警察庁Webサイト
まとめ
本記事では、フィッシング詐欺の基礎や、代表的な手口、詐欺を見分けるポイント、代表的な対策などの情報を紹介しました。
フィッシング詐欺は、日常生活で頻繁に使用するデジタルツールを通じて私たちの個人情報を狙います。
この記事で紹介したフィッシング詐欺の手口の理解と、それを見分けるポイントを把握することは、自己防衛の第一歩です。
また、具体的な対策方法、如何にして個人情報の漏洩を防ぎ、不正アクセスや身元盗用のリスクを最小限に抑えるかについての知識も非常に重要です。
被害に遭った際の対処法を知っておくことで、もしもの時に冷静に対応できるようになります。
そしてフィッシング詐欺から自分自身を守るためには、情報の更新を怠らず、常に警戒心を持ってオンライン活動を行うことが求められます。
本記事で紹介した情報は、すぐに実践できるものが多いと思いますので、今日から警戒や対策を始めましょう。