ユーザーインタビューとは?種類や実施の流れ、ポイントを紹介

ユーザーインタビュー

ユーザーインタビューとは、自社商品・サービスの利用者や潜在的な顧客に対してインタビューすることで、商品・サービスの開発に役立てる調査のことです。

ユーザーインタビューを実施することでユーザーの生の声を拾い上げることができるので、普段気づけないニーズや市場の状況に気付けるようになります。

本記事ではユーザーインタビューの概要から、実施の流れ、調査のコツ・注意点をご紹介していきます。


目次

ユーザーインタビューとは

ユーザーインタビューとは、インタビュー形式でユーザーから意見をもらう定性調査の一種です。実際のユーザーや潜在的な顧客と直接対話し、ニーズ、経験、意見を理解していきます。

ユーザーインタビューの主な目的は、製品やサービスがユーザーの要求にどのように応えるかを理解し、ユーザー中心の設計を進めることにあります。これにより、ユーザー体験の向上や製品の品質改善に貢献します。


ユーザーインタビューの種類

ユーザーインタビューの種類について説明します。主に構造化インタビュー、半構造化インタビュー、非構造化インタビューの3つに分かれています。

種類特徴メリット適用場面
構造化インタビューあらかじめ決められた質問リストに従って行われる一貫性と比較可能性が確保される大規模な調査や統計的分析が必要な場合
半構造化インタビュー基本的な質問指針に沿いつつ、質問の順序や表現に柔軟性を持たせる柔軟性があり、深い洞察を探求しやすい被験者の経験や意見に焦点を当てた探索的な研究
非構造化インタビュー事前の質問リストがほとんどなく、対話の流れに従って質問を展開する被験者の深い感情や思考を引き出しやすい新しい洞察やアイデアを生み出す探索的な状況

構造化インタビュー

構造化インタビューとは、あらかじめ定めた特定の質問リストに従って行われるインタビューです。

質問はインタビュー前に詳細に決定されており、インタビュアーはそのリストに沿って話を進行します。

構造化インタビューは同一の質問を複数のユーザーに投げかけるので、データの集計や比較をしやすいです。特に、大規模な調査や統計的分析が必要な場合に適しています。

ただし、質問が決まっているので、ユーザーごとの回答の意図を深掘りするのには適していません。

半構造化インタビュー

半構造化インタビューは、事前に決めた質問と、その質問への回答に追加で質問する形式のインタビューです。

この形式では、インタビュアーはいくつかの指針に基づいた質問を用意しますが、同時に質問の順序や具体的な表現を柔軟に変更できます。

半構造化インタビューでは流れに合わせてより深い洞察を探求することが可能になります。被験者の経験や意見に焦点を当てた探索的な研究に有効です。

ただし、インタビュアーのスキルによって情報量や質に差が生まれてしまうというデメリットがあります。

非構造化インタビュー

非構造化インタビューは、最も自由度の高い形式です。インタビュアーは、被験者の話に基づいて質問を展開し、対話の流れに自然に従います。事前に定められた質問リストはほとんど、あるいは全くありません。

この手法は、被験者の深い感情や思考を引き出すのに適しており、新しい洞察やアイデアを生み出す可能性があります。しかし、データの比較や一般化が難しい場合があります。


ユーザーインタビューを実施する5つのメリット

ユーザーインタビューを実施するメリットは以下の5つです。

  • ユーザーの課題やニーズを正確に把握できる
  • 市場のニーズや動向をリアルタイムで把握できる
  • 自社製品の改善に素早く取り組める
  • 市場での競争地位を強化できる
  • 事業開発の効率が向上する
  • ユーザーの課題やニーズを正確に把握できる

    ユーザーのニーズを深く理解することは、製品やサービスの市場適合性を高める上で重要です。

    ユーザーインタビューを通じて、製品やサービスに対する直接的なフィードバックを得ることができます。開発者やチームは、実際のユーザー体験に基づいた具体的な洞察を得ることが可能となり、効果的な製品改善や戦略策定につなげることができます。

    市場のニーズや動向をリアルタイムで把握できる

    市場は常に変動しており、その変化を追い続けることがビジネスには不可欠です。ユーザーインタビューにより、市場の微細な動きや新しいニーズをいち早く捉えることが可能になります。

    特に変化の速い市場においては、リアルタイムのフィードバックが製品開発の方向性やマーケティング戦略を決定する上で重要です。

    自社製品の改善に素早く取り組める

    ユーザーのフィードバックは、製品やサービスの質を向上させるための貴重な情報源です。

    ユーザーからの具体的なフィードバックを活用することで、製品やサービスの弱点を素早く特定し、改善策を迅速に実施することができます。

    その結果、顧客満足度の向上とブランドの信頼性の強化が期待できます。

    市場での競争地位を強化できる

    ユーザーの声を基に製品やサービスを改善し続けることで、競合他社との差別化を図ることが可能です。

    ユーザーインタビューを通じて得た洞察を活用することで、市場での競争力を高めることができます。

    事業開発の効率が向上する

    ユーザーインタビューによって得られたフィードバックは、新製品やサービスの開発に役立ちます。ユーザーの利用パターンや好みからターゲット市場を精確に特定し、効果的な戦略を策定することが可能です。

    これにより、開発コストの削減や市場投入までの時間短縮が可能になり、事業開発の効率の改善が見込めます。また、ユーザーの声をヒントに、事業モデルの改善や新たな事業戦略の策定にもつながります。


    ユーザーインタビューの基本的な手順

    ユーザーインタビューを実行する手順は以下の7ステップに分かれています。

    1. 目標の明確化
    2. インタビュー対象の決定
    3. 質問の設計
    4. 募集要項・契約書の作成
    5. 対象ユーザーの採用
    6. インタビューの実施
    7. 振り返りの実施

    参考:ユーザーインタビューのやり方|5つの手順と実施時のコツをわかりやすく解説

    ステップ1. ユーザーインタビューの目的を明確にする

    インタビューの目的をはっきりさせることがスタートポイントです。例えば、新しいアプリのUI/UXが使いやすいかどうかを評価する場合、その目的を明確にします。

    ステップ2. 対象ユーザーと人数を決定する

    ターゲットユーザーを特定し、インタビューする人数を決めます。

    対象ユーザーの例として、20〜30歳のスマートフォンユーザーを選び、彼らの使い勝手や好みに重点を置きます。少なくとも5人、理想的には10人以上をインタビューする計画を立てます。

    ステップ3. 質問項目を設計する

    インタビューで聞く質問をリストアップし、類似項目をカテゴリー分けして整理します。質問の順番や時間配分も事前に決めておきます。

    質問の例として、「このアプリのどの機能が最も気に入りましたか?」や「このアプリを使って感じる不便さは何ですか?」などを用意します。これにより、ユーザーの正直な意見を引き出すことができます。

    ステップ4. 募集要項や契約書などを作成する

    インタビュー参加者の募集要項を作成し、年齢層や興味・関心、インタビューの日時、報酬などを明記します。

    ステップ5. 対象ユーザーをリクルーティングする

    ソーシャルメディアやリクルーティングプラットフォームを使用して、募集要項に合致する対象ユーザーを募集します。

    ステップ6. インタビューを実施する

    オフライン会場やオンラインミーティングツールを利用し、事前に設計した質問項目に基づいてインタビューを行います。

    ステップ7. 結果を振り返り事業に役立てる

    インタビューの結果をチーム内で共有し、得られたフィードバックを元にUI/UXの改善点や新機能の開発アイデアを検討します。

    例えば、ユーザーが特定の機能を使いづらいと感じている場合、その部分を改善するための具体的な提案をチームで議論します


    効果的なユーザーインタビューを実施する6つのコツ

    ユーザーインタビューの実施時には以下のポイントをおさえておくと、より効果的な回答を得られやすくなります。

    1. 検証したい事柄を整理しておく

    インタビューの目的と目標を明確にし、検証したい内容を事前に整理しておくことが重要です。これにより、インタビューが目指すべき方向性がはっきりとします。

    2. 対象ユーザー数は多すぎない方がよい

    一般的に5〜6人のインタビューである程度の傾向が把握できます。特に日本の文化的要因を考慮すると、グループインタビューでは人数が多すぎると発言しづらくなる人が出る可能性があります。

    3. オープンエンドクエスチョンを使う

    オープンエンドの質問を使うことで、より深い洞察を引き出すことができます。例えば「昨日の旅行はどうでしたか?」のような質問は、回答者が自由に発言する余地を与えます。

    4. 背景や動機に焦点を当てた質問で深掘りする

    ユーザーの感情や動機を探るために、間接的な質問を活用します。例えば「○○を購入することでどんな状態を期待したか」などの質問が有効です。

    5. ユーザー自身の経験から回答できる質問にする

    直接的なニーズを尋ねるのではなく、ユーザーの個人的なストーリーや経験から答えを引き出します。これにより、ユーザー自身も気づいていないニーズを把握することができます。

    6. 実施後の分析は1人分ずつ行う

    インタビュー後は、記憶が新鮮なうちに各参加者ごとに分析を行います。これにより、インタビュー時のコンテクストを忠実に捉え、より具体的なインサイトを得ることが可能です。


    ユーザーインタビューをする際の注意点

    インタビューの実施時には以下の3点に注意が必要です。

    1.ユーザーに圧迫感を与えない

    ユーザーインタビューを実施する際、対象に圧迫感を与えないよう配慮することが求められます。

    例えば、ユーザーに対して「なぜ?」と直接訪ねると圧迫感を与えやすいです。代わりに「これを選んだときに、どんなことを期待しましたか?」のように、より柔らかい表現で質問します。

    2.ユーザーが返答に困っていても誘導しない

    ユーザーが答えに困っている場合でも、「要するに〇〇ですか?」と結論付けたり、答えを誘導したりしないようにします。これは対象者の心理にバイアスをかけることにつながり、真実の意見を得ることが難しくなります。

    3.目を引かれた意見だけにとらわれない

    特に好意的な意見や印象的な発言に意識が向きがちですが、それらが必ずしもインタビューの答えに直結するわけではありません。

    様々な意見を平等に受け止め、全体の傾向を理解することが重要です。


    まとめ

    ユーザーインタビューは、製品やサービスを改善するための効果的な方法です。これにより、ユーザーのニーズや市場の動きを深く理解し、製品の改善や顧客満足度の向上に役立てることができます。

    インタビューを始める際には、目的をはっきりさせ、対象となるユーザーを選び、質問を慎重に準備します。インタビューのコツとしては、オープンエンド質問を多用し、ユーザーの経験に基づく回答を促すことが有効です。

    また、ユーザーに圧迫感を与えたり、答えを誘導したりしないこと、そして特定の意見にとらわれ過ぎないことが重要です。

    これらの点に気をつけることで、ユーザーからの貴重な意見を得ることが可能になり、製品やサービスの品質向上につながります。

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