明日からデータ活用を始めるためにおさえておくべき基本スキルと分析テクニック

企業は顧客の購買データありとあらゆるデータを持っていて、このデータを活用して売上アップや受注率の向上などにつなげています。

データ活用の重要性はもはや自明のこととは思いますが、具体的にどうやって活用すればいいのかわからず、膨大なデータの前で途方に暮れている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回はデータ活用の具体的な手順から方法、成功のポイントなどをまとめてご紹介していきます。

データ活用の入門書のようなイメージで記事をまとめているので、とりあえずデータを使ってみたいという方は必見です。

データ活用の精度向上のためのWEB広告レポート活用術



データの活用で実現できること

データの活用によって客観的な検証が可能となり、顧客のニーズに即したサービスの提供や、的確な経営判断・業務の効率化など、データ活用がもたらす恩恵は計り知れません。

顧客の嗜好を把握して売上をアップできる

データを活用することによって、顧客の趣味・関心を高精度で把握できるため、効率的に売上の向上を目指せます。

販売業界でも、ECサイトでの購入履歴やPOSデータを収集し、大雑把な売れ筋ではなく顧客の特性に合った商品を知ることで、売上向上に繋げています。

大手通販サイト「Amazon」では、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という、ユーザーごとの購入予測モデルである「リコメンデーション機能」を活用し、売上を増加させました。

どんな商品を買ったりチェックしたかというユーザーのデータと、類似性のある別のユーザーのデータを両方用い、ユーザー同士の購入履歴を関連づけることで情報提供に繋げているのです。

数多くのデータを蓄積して細かく分析できれば、商品の売れ筋や、各地域の売れ筋商品の違いなども知ることができるでしょう。

データの相関から新たな戦略を提案できる

データ活用の効果を上げている企業の特徴として、複数のデータを組み合わせて分析している点が挙げられます。

飲料メーカー「ダイドードリンコ」では、消費者アンケート等のデータに加え、消費者の視線を分析する「アイトラッキング・データ」を活用することで、自販機での売り上げアップに成功しています。

データ分析の結果から、飲料業界では常識とされていた、左上に人気商品を陳列(Z字型に視線が動くため左上に人気商品を陳列)するのを改め、左下に主力商品を置き売り上げを倍増させました。

このように、消費者行動に関するデータの種類を増やすことで、データ分析の効果が上昇する可能性があります。

事業を効率的に拡大できる

データを活用すると、経験則を客観的に検証することが容易となり、効果的な事業拡大につながります。

「スシロー」では、寿司皿にRFIDを取り付けて寿司の動向を把握することで、寿司ネタごとの売上や廃棄の動向、入店から会計までの客の利用動向なども、迅速に検証できるようになりました。 

この情報の分析を基に、適切なタイミングで適切なネタを提供することが可能となり、廃棄ロスを75%削減することに成功したのに加え、売上の安定化、顧客満足度の向上にもつながったのです。


データは4つの手順で活用していく

データを活用する際は以下の4つのステップを継続して行い、PDCAを回し続けていくことが大切です。

1.仮説を元にデータを収集する
2.検証内容に合った統計分析をする
3.分析結果をもとに意思決定をする
4.実行した施策のデータを分析する

1.仮説を元にデータを収集する

データ分析から、ちょっとした疑問や違和感を感じ取ったら、そこから仮説を立てて施策に落とし込み検証していくことで、大きな問題改善につながる可能性があります。

その際、ただ漠然とデータを収集をしただけでは、欲しい結果は期待できません。仮説を立てて検証に必要なデータを収集し検討することがポイントです。

しかし、過剰なデータ収集は、データ分析の時間や余計なコストがかかり、予算を超えてしまう場合もあります。

それを防止するためには、データ収集する際、どのようなデータを収集するのか、そしてどんな分析を行うのか、ある程度「アタリ」をつけ、事前に設計することが重要です。

2.検証内容に合った統計分析をする

データ分析には様々な手法があります。次に紹介する「クロス集計」「ロジスティック回帰分析」「決定木分析」「アソシエーション分析」「クラスター分析」などが代表的手法です。

それぞれの特徴を踏まえ、検証内容に合った統計分析を行うことで、効果的な問題改善が期待できます。

今回の記事では、データ分析の概要をお伝えします!更に詳しく知りたい方はこちらをご覧ください!

参考:蓄積した情報を売上につなげる「データ分析」の代表的な手法10選

クロス集計

クロス集計とは、アンケート調査で集めた回答データを、設問をかけ合わせて集計することができる手法のことです。

クロス集計を活用することで、回答データを「年代別」「男女別」「地域別」といった属性ごとに、さらに細分化して分析していくことが可能になります。

例えばあるアンケート調査で、「〇〇に対する満足度」という質問に対して「60%の人が満足していて、40%の人が満足していない」といった集計結果が出たとします。

その場合、クロス集計を使えば「全体では60%の人が満足していたが、満足度に男女差があり、女性では満足している人の割合が40%と低かった」という風にさらに深堀りできるのです。

クロス集計はExcelでも簡単にできるので、データ分析の入門編として最適な手法です。詳しい手順について知りたい方はこちらをご覧ください。

参考:相関性を見抜くクロス集計!エクセルで業務データを解析してみよう|エクセルサプリ

ロジスティック回帰分析

ロジスティック回帰分析とは、事象の発生確率を予測・説明するための分析手法です。代表的な例として「土砂災害発生予測」や「病気の発生率」などが挙げられます。

この分析を行うことで、「ダイレクトメールの反応率」や「見込み顧客の発見」などを予測することができ、マーケティング分野においても非常に便利な手法と言えます。

手順は、ダイレクトメールをきっかけに購入に至った顧客を1(100%)、購入に至らなかった顧客を0(0%)と定義して、目的変数と説明変数を設定していきます。

そしてデータの数値を以下の計算式に当てはめることで、ダイレクトメールを受けた人の1人当たりの購入確率を算出できます。

実際の計算は、主にエクセル、R、統計解析ソフト「SPSS」で行います。RやSPSSは初心者にとってハードルが高いため、まずはエクセルを使ってデータ分析に慣れていきましょう。

エクセルを使った詳しい手順はこちらをご参照ください。

参考:【ロジスティック回帰分析】使用例やオッズ比、エクセルでの使い方も紹介|Udemyメディア

決定木分析(けっていぎぶんせき)

決定木分析とは、影響力の強い要素から順番に上から下へと枝分かれ式にデータ分析をしていく手法で、名前の通り樹形図で表現されます。

出典:【第三回】決定木分析:要因を分析し、将来を予測する|Enterprisezine

上記の図のように「ある商品の購買有無」について、上から「性別」という属性、次に「購入回数」という属性ごとにデータを分割していきます。すると、最終的には「女性で過去に購入経験がある人がキャンペーン商品を買う可能性が高い」という具体的な結果が可視化されるのです。

このように、決定木分析を行うことで
「自社商品・サービスの購入見込みが最も高い人は、どのような人であるか」
「満足度やロイヤリティの高い生活者には、どのような属性があるのか」

といったことを知ることができます。

実際に決定木を作成してみたい方、詳しい分析手順を知りたい方はこちらをご覧ください。

参考:決定木モデルを作る|Classmethod

アソシエーション分析

アソシエーション分析とは、データ間の相関関係を発見する分析手法です。先ほど事例として挙げたAmazon.comのレコメンド機能は、この分析手法を応用しています。

アソシエーション分析を活用することで、市場で一緒に売れていく商品・サービスのルールが分かってきます。また、顧客の購買行動を分析して、商品が売れた際の頻出パターンを見つけることができます。

このように、より効果的なマーケティング戦略を考えるのに欠かせないアソシエーション分析は、以下の記事で具体的な手法を学ぶことができます。

分析と一口に言っても、手法は様々です。それぞれ比較しながら、自分に合った方法を見つけましょう。

Rを使ったアソシエーション分析の手順を知りたい方は以下をご確認ください。

参考:【初心者向け】Rによるアソシエーション分析(実践練習)|Winey Trade

エクセルを使ったアソシエーション分析の手順の詳細は以下の記事をご確認ください。

参考:第7回 アソシエーション分析1|ビッグデータ活用講座|ビッグデータ活用塾|ゼッタテクノロジー株式会社

クラスター分析

クラスター分析は、データ全体を似たもの同士の集団に分類する手法です。非常に大きなデータでもグループ分けで整理・分類したら、傾向や特徴を把握しやすくなります。

例として、「株式会社マクロミル」で実際に行われた階層クラスター分析について見ていきましょう。
こちらは、1万人から寄せられたおすすめメニューを分析した結果です。


出典:株式会社マクロミル

図のように、階層クラスター分析で「似た言葉」=「関連性の高い言葉」を近い順につないでいきます。すると人気メニューは大きく3つに分けられました。

一番左のラーメンクラスターでは、キーワードとして「こってり、豚骨」「スープ、味噌」「見た目、濃い、あっさり」「ネギ、塩、醤油」が挙げられています。

このことから、人気のメニューは「見た目は濃そうだが意外にあっさりしており、ネギがたっぷりのったネギ塩ラーメンとネギ醤油ラーメン」ということが分かりました。

クラスター分析は様々な手法に分けられます。

①階層的手法・・・・似たもの同士をまとめていって、いくつかのクラスターにまとめる
 (上記の事例を参照)
最短距離法(最近隣法)/最長距離法(最遠隣法)/群平均法/重心法/ウォード法
/その他

②非階層的手法・・・・似たもの同士が同じクラスターに所属するように全体を分割する
k平均法(k-means法)/その他

分析対象が30程度で、対象がいくつかのクラスターに結合されていく過程を丁寧に見たい場合は、階層的手法を選ぶと良いでしょう。逆に、分析対象が多い大規模データを取り扱う場合は非階層的手法をおすすめします。

それぞれの手法について詳しく知りたい!という方はをこちらをご参照ください。
・階層的手法・・・参考:
階層クラスター分析|MACROMILL

・非階層的手法・・・参考:
非階層クラスター分析|MACROMILL

クラスター分析は、エクセルを使って手軽に作成できます。

こちらの記事では説明に従うだけで、階層的手法を元に樹形図を作成することができます。ぜひ実践してみてください。

参考:クラスター分析─エクセル統計による解析事例|BellCurve

3.分析結果をもとに意思決定をする

検証内容に合ったデータ分析で得た結果は、「次にどうすればよいのか」という、意思決定をするための判断材料となります。

思い通りの結果が出るまで分析を繰り返すのではなく、たとえ、想定外の結果であっても事実として受け止め「なぜそうなったのか」を考察し、客観的に次の施策を立てることが大切です。

そのプロセスを繰り返すことで、問題の根本原因の見極めが可能となります。もっとも、この意思決定の過程がデータ分析の本質ともいえるでしょう。

意思決定し実行した施策をデータ分析

データ分析は、上記で紹介した1から3のプロセスを繰り返すことで、その効果の最大化が可能です。

全体を俯瞰できるダッシュボード(定点観測用の画面)を確認することで、ちょっとした変化や相関にも気づきやすくなり、仮説の構築もスムーズに行えます。

また、データ分析において何より大事なのは、1度の大きな発見による変化より、この工程を何度も繰り返すことにあると言ってよいでしょう。


データ活用を成功させるためのポイント

データ活用を成功させるには、活用の目的を明確化し、データ活用で得られた結果を計測して、戦略を見直すための軌道修正を定期的に行うことが重要です。

データ活用によって得られた効果を計測する

データを活用する明確な目的が決まり戦略を実行した結果、それによって得られた効果が、どの程度表れたかを計測することが大切です。

その検証結果から、今後どのようなビジネス戦略を立てればよいかが見えてきます。このように、解決すべき課題や、新たな課題・価値の創出も期待できるため、データ活用効果の計測は不可欠です。

データ活用の軌道修正を定期的に行う

データ活用の効果を計測したら、定期的に活用の軌道修正を行ないましょう。解決済みの課題や、新たに発生した課題などを洗い出し戦略を見直した後、データの活用方針も見直すのです。

そうすることで、使用していたデータが必要ないと分かったり、代わりに新たなデータを収集・分析する必要があると判明するかもしれません。

このように、軌道修正を繰り返すことで、収集すべきデータや利用すべき分析を知ることができます。

データの収集・分析を継続して行う

データ活用を成功に導くには、データの収集や分析を継続して行うことが大切です。

データは常にアップデートされ続けるため、収集と分析を止めてしまえば、その時々にあった戦略を立てることはできません。

「目標を明確化」「得られた効果を計測」「定期的な軌道修正」、これら一連のサイクルを継続することにより、データ収集と活用ノウハウが少しずつ蓄積されて、収益の反映につながります。


まとめ:データ活用するためにまず必要なスキルを身につける

データ活用初心者がデータ分析の感覚を身につけるには、実際にデータを活用するしかありませんが、最初から全てをやりこなす必要はありません。

まず、取り組みやすい簡単なデータ分析から行ってみましょう。最初は少数の目的に絞り、実際のデータを使用して練習を繰り返えすことで、必要なスキルを身につけることができます。

もっとも、一番大切なのはデータを活用して「何を達成したいのか」という目的です。目的意識を持ち同僚と協力しながら実践を積み重ねていきましょう。

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