わかりにくい「UX設計」の理解を深めるサービス事例11選

UXという言葉が一般化してきて、多くの企業がUXを意識してサービスやサイトを設計していこうと考えています。

しかしUXという言葉は抽象度が高く、「言葉の意味は分かるけど、どういうものかはよくわかっていない」という方も多いのではないでしょうか。

かといって、いまさら「UXってなんですか?」と聞くのは抵抗がありますよね。

そこで今回は、UXをよりイメージしやすくなるよう、11個のUXの事例をご紹介していきます。わかりづらかったUXという言葉の解像度が上がると思いますので、ぜひ読んでみてください。


UXとは、商品やサービスで得られる「体験」のこと

UXとは、ユーザーがサービスや製品を利用したときに得られる「体験」「経験」を指します。

実際にユーザーがサービス・商品を通して、ユーザーが体験することがUXとなります。そのなかでも「楽しい」「うれしい」「心地よい」といったプラスの体験を作りだすことが、UX設計の目的です。

UXの説明をUIやCXと比較して解説

UXはよくUIと混同されることが多いですが、UIはUXを向上させるための一要素と考えると理解しやすいでしょう。

例えばスマホであれば「画面の解像度」「ボタンの配置」「タッチ部分の感度」など、実際にユーザーが触れる部分がUIです

一方UXは「画面がきれいで見やすい」「片手で楽に操作できる」など、ユーザーが製品・サービスを通して得られる体験にフォーカスしています。

UXは顧客への対応の質など、UI以外の要素にも左右されます。UX設計を考える際は、UIだけにこだわるのではなく、ユーザーに良質な体験を届けるために包括的に考える必要があります。

参考:UI/UXデザインとは?UIとUXの違いやUI/UX設計のコツ
   UX講座第1回:UXの考え方と、WebサイトのUX設計の必要性


UXを強く意識した設計で成功したWebサイト・アプリの事例7選

UXを意識して作られたWebサイトやアプリの事例を7つご紹介します。

「また使いたい」という感情を引き出して、ほかの料理アプリとの差別化に成功したクックパッドの事例

国内有料会員数190万人以上、海外では平均月間利用者数4,185万人を突破しているクックパッドでは、UXを意識したシステム設計をしています。

ユーザー同士の評価を分かりやすく表示する「キッチンレポート」や、スマホのような小さな画面でもレシピ名とユーザー名が一緒に載る画面設計など、ユーザーがよく使う空間を大切にしたUIが特徴です。

またクックパッドのアプリでは、料理の写真だけを自動で抽出し、毎日の料理記録を作成してくれる「料理きろく」という機能があります。ユーザーは手間をかけずに栄養管理や献立の作成が可能になるというポジティブな体験を味わうことができます。

参考:「UX」という言葉が聞こえないクックパッドのサービスデザインとは?

既存のメールアプリよりも使いやすく設計されたLINEの事例

日本でも多くの人が利用するLINEは、既存のメールアプリと異なるUIデザイン・機能が特徴です。既存のメールアプリよりも気軽にコミュニケーションがとれるよう設計されて作られています。

LINEでは、相手からのメッセージと自分のメッセージが縦に並んで表示されるため、どちらがメッセージを送ったか一目で分かります。

従来のメールのように受信フォルダや送信フォルダを別々に確認する必要もなく、会話の流れも1つの画面で確認可能です。

また複数人でまとめて会話できるため利便性が高く、スタンプの利用でより気軽なコミュニケーションが行えます。

参考:UXデザインとは?成功事例と新規事業におけるUXデザイン実践の4ステップ
   UXとは?成功したUXデザインの事例をご紹介!

手軽に欲しい情報が手に入りやすくなったTwitterの事例

Twitterではユーザーの履歴を元に、関連した新しいツイートを上方向から表示するデザインが2019年7月より適応されています。

このデザインでは上方向から新しいツイートが表示されるため、ユーザーは最新情報がすぐに分かります。

またこの時、リロードしなくても「新しいツイートを表示」というボタンを選べば良いため、ユーザーにとって欲しい情報を、より手軽な形で提供しているデザインへと切り替わっています。

参考:【Twitter】新UI登場!新デザイン⇔旧デザインを切り替える方法 – 『新しいTwitterを試す』

パスワードリマインダーの流れを改善し、年間1万人以上の離脱防止に成功したECサイトの事例

ECサイトのフェリシモは、パスワードリマインダーの流れを改善し、面倒・手間というユーザーの体験を好転させ、年間1万人の離脱防止に成功しました。

フェリシモではDMの送付で休眠顧客の活性化を進めていましたが、思うような成果が上がらず、多角的な視点で分析を進めていました。

分析の一環としてユーザーの行動を観察したところ、DMを見たユーザーの中には、うまくログインできずに断念しているということが発覚しました。

原因となっていたパスワードリマインダーの改善に着手したところ、1万人もの離脱防止につながっています。さらにパスワードの照会に成功し、再度ログインできるようになったユーザーが2万人も増加しています。

ユーザーとのタッチポイントを見直し、UXを改善したことが、成果につながった事例です。

参考:UXグロースハックで成功した4事例を紹介! ユーザー行動の背景ニーズを読み解く方法とは?
「あらためて顧客理解に注力する」創業54年のフェリシモに社内の巻き込み方を聞く

ユーザーを飽きさせない工夫が施されたビジネスマッチングアプリの事例

完全審査制AIビジネスマッチングアプリのyentaは、多種多様な専門領域のユーザーを短時間で繋げる工夫で300万件以上のマッチングに成功しています。

yentaでは「使い勝手が良いUI」「アプリに飽きさせないための、ユーザーとの距離感」「ワクワクを提供するUX」にこだわって、アプリを制作しています。

特徴的なのはマッチングできる人数に、あえて制限を加えて、アプリに対する「疲れ」「飽き」を抑制していることです。

yentaでは毎日正午に、10人のユーザーのレコメンドがあり、ユーザーはこの10人を「興味あり」「興味なし」のいずれかにスワイプして振り分けます。

ユーザー側が1日にできることはスワイプのみで、あとは20時に届く「マッチング結果」を待つのみです。

あえて1日の短時間だけ使える設計は、ユーザーも負担を感じづらく、ユーザーとアプリの適度な距離感を実現させています。

参考:yentaリリースまでの軌跡(後編:プロトタイピング、UX、リリース)

手軽にチャンネル登録ができるデザイン設計をしたニュースアプリの事例

SmartNewsではチャンネル登録を手軽に行えるUXデザインにより、利用者の継続率アップとアンインストール率の低下に成功しました。

興味のあるチャンネルを登録することでユーザーが必要とするニュースをプッシュ通知で発信するSmartNewsですが、一方で「プッシュ通知の許可が得られない」という課題がありました。

そこでユーザー登録時のユーザーの行動や思考の仮説を立て、プッシュ通知の許可による利便性が伝わるようなデザインやカラースキムの変更を行いました。

結果、ユーザーは興味のある情報を簡単に利用できるようになり利用者の継続率アップに成功しています。

参考:SmartNewsのUI/UXエンジニアが語る!「iPhoneの画面サイズと室町時代の違い棚」
   新規ユーザーのためのオンボーディングプロセスのリデザイン

ユーザーが楽しくポイントが貯められるように設計したCokeONの事例

コカ・コーラが提供するスマホアプリ「CokeON」は、2020年4月時点で累計1,900万ダウンロードを突破しています。CokeONでは、外出そのものを「楽しく」する、UXを意識した機能が特徴です。

CokeONはスマホと自販機が連動していて、1本購入するごとにスタンプが一つ貯まっていくのですが、スタンプを15個貯めると好きなドリンクがプレゼントされるというUXを提供しています。この機能によりユーザーはスタンプを貯めるというゲーム性と、ドリンクと交換できる喜びというポジティブな体験を得ることができます。

参考:【導入事例】日本コカ・コーラ株式会社様


UX設計で作られた、身近な製品・サービス事例4選

UX設計が活かされている事例は、Webサービス・製品だけには限りません。

皆さんの生活に何気なく利用している製品やサービスにもUXを意識して作られているものが多くあります。

商品の提供の仕方で他の喫茶店と差別化を図ったカフェの事例

スターバックスコーヒーでは、非日常間のある「リッチな時間」を提供し、ユーザーに経験してもらうことで他のカフェとの差別化に成功しています。

「スターバックスで経験できる価値」として、コーヒー以外にも、接客やインテリアなどにもこだわりぬいているのが特徴です。

例えば商品を提供する際には、商品をつくる様子を実際にユーザーが目にできるよう設計されています。コーヒーを受け渡す場所も印象的になるようライトが設計され、コーヒー提供から実際に味わうまでの時間を店舗全体で演出しています。

参考:スターバックスに学ぶ!経験デザインとは?
   UXデザインとは ~ 身近な事例から理解する ~

固定概念にとらわれないサービス提供で顧客を増やした料理教室の事例

ABC CookingStudioでは、女性がメインであった料理教室の固定概念を変え、健康をメインにしたプログラムなど様々な年齢層の人が入りやすいレッスン作りで顧客を増やしています。

少人数制のため講師とのコミュニケーションも取りやすく、興味のあるスタジオのレッスンが受けられます。また1回お試し500円で受けられるコースなど、趣味として通える料理教室として若い女性にも人気です。

「料理を学ぶ」以外の付加価値を加え、「料理を楽しむ」という体験をユーザーに提供しています。これまでの料理教室にはないUXの提供が、顧客の増加につながっている事例です。

参考:料理を「花嫁修行」から「趣味」へと変えた ABC Cooking Studio アカデミーヒルズ

シニア層にフォーカスして設計されたカップ麺の事例

日清食品はユーザーのヒアリングを通して生まれた「お椀で食べるカップヌードル」により、伸び悩んでいたシニア層の売上向上に成功しています。

シニア層へのヒアリングを実施した際、「カップ麺をそのまま出すのは気が引ける」「総菜はパックのまま出さずに器に移す」といった、主婦が抱く罪悪感に気付いたといいます。

この罪悪感をなくすために、標準的なお椀サイズに合わせてカップヌードルを開発しました。ちょうどよいボリューム感や見た目から、「食卓に一品加えたいときにちょうどいい」とシニア層に響くようになっていきます。

ユーザーのネガティブな体験をもとに製品を設計した事例です。

参考:カップヌードルをなぜお椀で? 「罪悪感」に商機あり

スマホだけでカンタンに使える「傘」のシェアサービスの事例

アイカサは傘のシェアリングという珍しいサービスを展開しています。「雨の日の新たなインフラ」として注目されているサービスです。

従来は突然の雨にあった時に傘がなければ雨宿りをするか、コンビニで購入するのが一般的でしたが、アイカサによって「傘のシェア」という新たな体験を提供しています。

アイカサは駅や店舗の空きスペースなどに傘スポットを設け、傘のシェアリングを行っています。

LINEでアイカサを友達登録すればすぐ使える利便性や、地図上でシェアリングスポットの傘の本数も分かる使いやすいUIも特徴です。

参考:コンビニの“ビニ傘”を代替、1日70円の傘シェアリング「アイカサ」が12月に公開へ


まとめ

今回はUXとは何かを理解するために、UXを意識して設計されたWebサービスやアプリ、製品の事例をご紹介していきました。

UX設計はサービス・商品によるユーザーの体験をより良いものへと変えるために行います。

事例からもわかる通り、ユーザー目線に立ってサービス設計することで、多くのユーザーを魅了するサービスが生まれています。

この記事が、これからUX設計をしていきたいと考えている方の助けになれば幸いです。