マーケティングミックス(4P)とは?事例から学ぶ活用のポイント

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マーケティングミックス(4P)とは、ターゲットにアプローチするための具体的な施策を考えるツールです。

特に、「製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)」の4軸で考える方法が有名です。

今回は、マーケティングミックスを基礎から説明し、活用手順について事例を交えて説明いたします。ぜひ、実践的に使える知識を身につけていきましょう。

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1. マーケティングミックス(4P)とは

マーケティングミックス
参考:ダイヤモンドオンライン

マーケティングミックス(4P)はマーケティング戦略の一部で、ターゲットに働きかける具体的施策を考えるためのツールです
一方、マーケティング戦略というのは、誰に、どんな価値を、どうやって提供するかを決め、それを実施することです

「どうやって」の部分をコントロールできる様々な「手段」がマーケティングミックス(4P)であり、その中でもっとも典型的なものが製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つに分類した4Pと呼ばれる分類です。
ちなみに、4Pの各要素は独立したものではありません。4Pはそれぞれが、密接にかかわっているので、「整合性がとれているかどうか」に注意しながら施策を考える必要があります

4Pで考えた戦略をマーケティング施策に活かすには?

上記の図のように、4Pはマーケティング戦略の一部でしかありません。実際には、4P後におこなう施策も重要です。

最近では、マーケティングの施策を自動で実行する「マーケティングオートメーションツール」も登場しています。実行をAIなどで自動化することで、マーケティングにかかる工数を大幅に削減できます。

参考:マーケティングオートメーションツールの一覧 ≫


2. 4Pで成功!失敗!事例紹介

ヘルシア緑茶の成功事例

花王株式会社が緑茶飲料市場への新規参入として、2003年5月に発売した「ヘルシア緑茶」についてご紹介します。

ヘルシア緑茶は「中高年のビジネスマン」に「健康によい」という価値を提供しましたが、どのようにその価値を提供したか、4Pを用いて説明いたします。

製品(Product)
お茶に含まれるカテキンは体脂肪を燃焼させる効果がありますが、茶カテキンを高濃度に含んだ緑茶は苦味が強く、飲みにくいことが課題でした。そこで、花王はこの問題を解決し商品化しました。さらに、花王はヘルシア緑茶の健康機能を積極的に訴求するために、「特定保健用食品」(特保)の認可を厚生労働省から受け、パッケージでは「体脂肪が気になる方に」という、分かりやすいコピーを打ち出しました。

価格(Price)
350ml入りペットボトルで180円と緑茶飲料としては高価格でしたが、特保の認定を受け、有効性や安全性を提供することにより、ターゲット層に受け入れられるという見込みの元、販売しました。また、普通の緑茶より多少割高な方が有効性を感じることもあり、価格と製品の相乗効果が生まれたと言えます。

流通(Place)
多忙なビジネスマンでも、コンビニエンスストアの店頭で販売されているのであれば、毎日手にすることが容易であると考え、あえて販路をコンビニエンスストア限定販売商品としました。コンビニエンスストアの支援を受けて、店内の目立つ場所に大きなスペースをとって陳列され「CMではなく陳列してあることで商品を認知した」というターゲットも現れました。
この事象は、流通とプロモーションの相乗効果が生まれたと言えます。

プロモーション(Promotion)
ヘルシア緑茶をコンビニエンスストア専用商品として発売、一方で積極的にテレビ広告を投入、これが販売促進の追い風となりました。当時、花王がヘルシア緑茶の購買者に対しておこなったアンケートの結果では、テレビ広告でヘルシア緑茶を知ったと答えた人が3割、店頭で陳列されているのを見て手に取ったと答えた人が6割だったそうです。

こうして、花王にとって新規参入の飲料市場でありながら、2003年5月にヘル シア緑茶を発売後、2004年までの10ヵ月ほどのあいだに、ヘルシア緑茶は約 200億円の売上高を達成しました。

参考:
ビッグデータ時代の顧客ロイヤルティ戦略
NEXT LEADER

保湿クリームの失敗事例

ある化粧品会社が、「40代女性」に「肌の調子を良くする」という価値を提供しようとしました。
どのようにその価値を提供しようとしたかを4Pで説明します。

製品(Product)
40代の肌に会うように、たっぷり保湿成分を配合しました
価格(Price)
高級感あふれる赤いパッケージで、30gが5000円。高保湿で、エイジングケアもできます
流通(Place)
40代女性がよく利用するデパートの化粧品売り場で販売しました
プロモーション(Promotion)
テレビCMに大人気の女優を起用しました

この商品は、発売直後に20代女性に人気のヒット商品となりました。
しかし、アットコスメでの評価は低く、リピーターも獲得できなかったため、発売中止となってしまいました。
なぜでしょうか?

それは、CMに起用したのが20代女性に人気の女優だったためです。
CMの効果により20代女性を中心に売れましたが、40代用のクリームは20代には濃厚すぎました。そして、「べたつく」「肌に合わない」などの評価を受けました。
40代に絞って見ると、高い評価を受けていたのでCMに40代女性に人気の女優を起用していたら、ロングセラー商品となっていたかもしれません。

これは、プロモーションとその他の要素の整合性がとれておらず、ターゲット層とずれた層に刺さるCMとなってしまったために起きた失敗でした。


3. 総論!4P活用の3つのポイント

とにかく、まずは「誰に」「どんな価値を」提供するかが、明確に決まっていることが重要です。

ポイント1:4Pの矛盾を解消する

4Pの要素間で整合性のとれていない所がないか確認し解消しましょう。
和菓子屋さんでのマーケティングミックスの活用例から、4Pの整合性がとれていることの大切さは分かります。

製品=地元産で高品質
価格=高価格
場所=地元直営店
販売促進=地元顧客の口コミ

例えば、この栗きんとんを、低価格志向のスーパーで売った場合、このマーケティングは失敗します。

4Pの間には整合性がなくてはなりません。

引用元:NPO法人起業家支援ネット

高品質、高価格の栗きんとん、を低価格志向のスーパーで売った場合、そのスーパーに来るユーザーは「安いものが欲しい!」と思っているわけですから、失敗する可能性が高いです。
これは、流通(Place)の部分の施策が他の要素の施策と整合性がとれていないという状況です。

このように確認し、大きな不整合がないと分かったら、次のステップに進んでください。

ポイント2:4Pのバランスをとる

大きな矛盾点を解消できたら、次は各要素のバランスがとれているかを確認します。
4Pのバランスがとれていない場合、次のようなことが起こります。

書き出したマーケティングミックスの4つのPに大きな矛盾が無ければ、次にそのバランスを見る。

製品価格が安く利益率に乏しい製品で、大々的にマス広告を展開したらどうだろうか?
このアプローチも選択肢のひとつだろう。しかし、製品価格が高い方が広告費用の確保が簡単で、かつブランドを確立した者との差別化につながるため、このような組合わせではマス広告の展開については再度検討する価値がありそうだ。

マーケティングミックスのそれぞれのPの組合わせについて、このような相反する施策にならないよう、注意深くみていこう。

引用:カイロスのマーケティングブログ

これは、プロモーション(Promotion)の部分の施策が他の要素の施策と調和がとれていないという状況です。
整合性がとれ、調和がとれたら、次に目指すのは相乗効果です。

ポイント3:相乗効果を実現する

マーケティングミックス(4P)で相乗効果が実現できると、次のような効果があります。

青山のマーケティングミックス戦略は、きわめてうまく回転していた。その中でも、最も注目されるのが、製品戦略と価格戦略である。
青山が目をつけたのは実用衣料の分野である。大手百貨店の広大な紳士服フロアと方を並べるのではなく、①スーツの中でもいわばユニフォームとでもいうようなローリスク商品に焦点を絞り込んだこと、②PB品に極端に特化したこと、そして、③それを徹底した店頭在庫管理で効率化を測ったことがコストダウンに大きく貢献している。たとえ買い取り前提のPB品であっても、売れ筋の定番品であれば消化率が高く、シーズン後に売れ残っても処分しやすい。他店も展開なので店間の振替ができ、品切れサイズの他店舗からの取り寄せも容易である。つまり売れ筋に限定することで、選択された商品郡の中ではかえって豊富な品揃えを可能とし、顧客の体型や素材の好みに合わせたのである。これは百貨店のように商品の幅を広く持たせるより、幅を限定して厚みを持たせる戦略と言える。

引用:『MBAマーケティング』数江良一監修 株式会社グロービス著 ダイヤモンド社

この事例では、低価格戦略を実現できた背景に、製品の幅を絞り込んでPB商品に特化したことで、ローリスクかつ効率よく商品を販売できたことがあると思います。これは、4Pの相乗効果が出ている例といえます。

「矛盾解消」「バランス調整」「相乗効果」マーケティングミックスの活用の流れはわかりましたでしょうか?
次の項では、実際4Pの各要素についてどんな点について考えればよいのかをご紹介します。


4. 各論!4Pの各要素で考えるべき点の例

4Pの各要素で考えるべき点として、以下に例を挙げました。

製品(Product)
商品・サービスが提供する本質的な価格、その商品が提供する昨日、その商品に付随している補助的な無償サービスなど

価格(Price)
商品/サービスのコスト、市場浸透価格(ペネトレーションプライシング)(※1)、PLU(製品ライフサイクル)(※2)からみた価格戦略など

流通(Place)
実店舗かネットショップか、自社が直接販売しているか、代理店経由か、流通チャネルの長さと幅(※3)

プロモーション(Promotion)
プル戦略とプッシュ戦略(※4)、広告と広報、(狭義での)販促、AIDMAやAISAS(※5)

各要素について、さらに細かい戦略は「製品戦略」「価格戦略」「流通戦略」「プロモーション戦略」などのキーワードで調べてみることがおすすめです。


結論

企業では4Pの各施策を行う部署が分かれている場合が多々あります。
そのため、「誰に、どんな価値を提供したいのか」というところをしっかりと設定し、これを見失わずに4Pを活用して具体的施策を考える必要があります。
それだけではポイント2、3のようにバランスをとったり、相乗効果を実現したりすることが難しいので、各部で連携をとってマーケティングを進めていく必要がありそうです。

今回はマーケティングミックス(4P)の位置付け、概要、事例、活用方法をお伝えしました。
この記事が、マーケティングミックス(4P)の理解の一助となれば幸いです。


用語について

※1市場浸透価格(ペネトレーションプライシング):ペネトレーション・プライシングとは、市場シェアを獲得するために、価格設定をコスト以下、あるいはコストとほぼ同等に抑えることで、競合他社の追随を断念させるもの。市場浸透価格設定ともいう。新製品の、導入期の価格戦略の1つ。
※2製品ライフサイクル:一般的な製品に見られる、時間の推移に伴う売上高の変化。
※3チャネルの長さと幅:流通の段階数が長さ、各段階の流通業者の数が幅。
※4プル戦略とプッシュ戦略:プル戦略とは、顧客に対して広告やパブリシティなどを利用して購買意欲を喚起し、顧客が商品を指名して購入するプロモーション活動。プッシュ戦略とは、メーカーが卸売業者に対し財政面の援助、製品説明、販売方法指導、販売意欲喚起を促し、それを受けた卸売業者が小売業者に、小売業者が顧客に働きかけ、購買行動へと促すプロモーション活動。
※5AIDMAとAISAS:AIDMAとは、消費者の購買決定プロセスを説明するモデルの一つ。消費者はまず、その製品の存在を知り(Attention)、興味をもち(Interest)、欲しいと思うようになり(Desire)、記憶して(Memory)、最終的に購買行動に至る(Action)という購買決定プロセスを経る。このうち、Attentionを認知段階、Interest、DesireおよびMemoryを感情段階、Actionを行動段階と区別する。AISASとは、マーケティングにおける消費行動のプロセスに関する仮説のひとつで、消費者の購買にまつわるプロセスを「注意」「興味」「検索」「購買」「情報共有」のプロセスから成り立つとする理論のことである。特にeコマースのマーケティングモデルとして参照される。

参考:
グロービスMBA用語集
Educate.co.jp
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