Webだけを変えても、本当の変化は生まれない。老舗オーダースーツメーカー「花菱縫製」のマーケティングとは

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インターネットを使えばいろいろなことがうまくいく、という印象をお持ちの方もいるかもしれません。しかしあくまでもWebは1つの手段にすぎません。ビジネスで真の成果を出すためには、根本的な変化をする”覚悟”が必要です。

そこで今回は数年前に根本的にマーケティングを見直し、Webマーケティングを実施した「花菱縫製」の執行役員の星野雄司様に、Webマーケティング導入の意志決定の裏側と想いを伺いました。

国内縫製オーダースーツのパイオニア「花菱縫製」

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1935年創業の「花菱縫製」は、オーダースーツの製造と販売をしている会社です。日本で初めてオーダースーツの工程の一部を機械化し、お客様の要望に合わせながらも買いやすい価格帯のオーダースーツをはじめました。

多くの衣料品が中国・ベトナム・ミャンマー・タイなどの海外の工場で作られている中、花菱縫製のオーダースーツは国内完全縫製しています。さらに分業が当たり前のアパレル業界では珍しい、製造から販売まで一括をして行う業態をとっています。

そもそも、マーケティングの概念が浸透していなかった

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―Webマーケティングに取り組むことになったのは、どのような背景があったのでしょうか。

星野雄司さん(以下、星野さん):数年前の花菱縫製は、そもそも「マーケティングの概念」が社内にあまり浸透していませんでした。アパレルはイメージ、つまりブランドが大切な商材です。しかし、花菱縫製のスーツは性能的にはとても良いにもかかわらず、ブランドイメージを良くするための施策は行っていませんでした。

また販売の戦略もポスティングや時流に全く合わない広告を作ることもあり、Webサイトや宣伝や店舗の雰囲気もイマイチ。店舗もお客さんを集められず、値下げをしている。安売りをすれば目の前の売上は作れますが、ビジネスの基本である“商品に付加価値をつけて高く売る”という考え方があまりありませんでした。

―そこから具体的には何を変えていっていたのでしょうか。

星野さん:まずは、自分たちのポジションを明確にしました。オーダースーツも個人店から大手紳士服チェーン系までさまざまありますが、飛び抜けて強いブランドはありません。そもそもスーツ市場の中でオーダースーツが占めるのは1割ほどで、残りの9割は既製スーツです。その1割のお客様を、競合のオーダースーツブランドと奪い合っている状況でした。

中小企業では既存客に目が行きがちですが、既存客は必ず減っていくので、新規のお客様との出会いを作らないといけません。そこで決めたのが、全てのお客様が「気軽に入れて、安心してオーダースーツを楽しめる」こと。これがブランドコンセプト、そして戦略です。

そして、ターゲットとなるお客様も「オーダースーツを買ったことがない初心者層」と決めました。年齢や性別で区切るのではなく、百貨店などで売られている7万円代以上の既製スーツを買う方が、「オーダースーツを買ってみようかな」と思った時に、花菱を選んでもらえるようにしたい。

お客さんが感じるブランドのイメージというのは、お客様と花菱縫製との接点で作られます。そのためお客様とのタッチポイントである、製品(Product)、価格(Price)、店舗(Place)、プロモーション(Promotion)、つまり4Pのフレームワークがどうなっているのか?を見直していきました。

―「4Pを見直す」とは、具体的にはどういうことをされたのでしょうか

星野さん:自分たちのもっている強みや特徴を洗い出しました。まず製品(Product)の特徴は、国内縫製であること。それは、高い品質や安全性につながります。価格帯(Price)も調整し、ロゴなども刷新していきました。
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ステッチと針で表現した「縫製の花菱」。二つの針は、①お客さんの服に対するこだわりや楽しみや思いと、②職人さんの服をつくる技術。そのふたつが交差して初めて花菱のクォリティと品質が花咲く(花びら)様子を表現しているそうです。

全国に18ある店舗(Place)は、すべて1階の開かれた路面店で、初心者でも比較的入りやすい場所にありました。しかし駅からは少し歩く必要がある立地のため、通りすがりの人ではなく「花菱縫製に行こう」という意志を持ったお客様をお店に連れてくる必要がありました。

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2014年9月リニューアルオープンした池袋店。JR池袋駅から徒歩7分。店内は明るくて開放的な雰囲気です。

そこで、店舗の役割を変えました。店舗は集客ではなく、「来たお客さんにどれだけいい接客をするか?」「購入してもらう単価をあげるか?」「リピートしてもらうか?」に注力してもらい、お客様を店舗に送る機能は本部の役割として切り分けることにしました。そして、そのお客さまを送る方法として選んだのがWebです。

店舗にお客様を集めるためにWebマーケティングを行う

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―店舗にお客様を集めるために、どのようなWebプロモーションを選んだのですか。

星野さん:Webを選んだのは少額からできるという予算設定と即効性が、私たちの条件に合ったからです。テレビ広告は費用がかかりすぎるし、雑誌広告はゆっくりと効果がでてくるものです。

今取組んでいるWebプロモーションは、「初めて花菱縫製でオーダースーツをつくるお客様向けのWebクーポン」です。オーダースーツは、商品を買うためには必ず来店してもらわないといけません。しかしその場で購入するわけではないので、結果としてお客さんにと花菱縫製との最初の接点の敷居が下がりました。

今は、そのクーポンのダウンロード数を増やすために、リスティング広告や記事広告などのWeb広告を活用しています。

その結果、1年前と比べて全体の売上は2桁増を継続、Webがきっかけとなったスーツの売上は70パーセント増加しました。

―店舗への集客だとWebの効果が測りにくいとイメージされる方も多いと思います。その点は、何か工夫をされているのでしょうか。

星野さん:クーポンの効果を知るために、接客時には「ご来店のきっかけは?」「きっかけとなったキャンペーンは?」など、店頭スタッフに必ずヒアリングしてもらい、そのデータを本部で集計しています。オーダースーツはご注文いただくために必ずスタッフと会話するので、ヒアリングは徹底しやすいというのもあります。しかし、Webマーケティングの成果改善だけではなく、社内からのWebプロモーションの理解を得るためにも、こういったデータの集計をしておくのは重要だと思います。

4Pの背景には組織やそこで働く人材がいます。大きな効果を出すためには、Webだけではなくてリアル領域も変えていかないと意味がありません。例えば、どんなにプロモーションと商品が良くても、店舗での接客が悪いとお客様は離れてしまいます。

そこで、店長会議や店頭スタッフの集まる会議で何度も理解ができるようにマーケティングや戦略の重要性や、変えたことによる成果を丁寧に伝えてきました。CVがこれだけ増えて、SEOのKPIをこれだけ達成してという細かい情報から、その結果「どういう成果があったのか?」「費用対効果がどれだけよくなったのか?」までを理路整然と説明していると、徐々に多くの社員に会社の変化が伝わっていきます。

最初はWebのことがわからなくても、学ぶ覚悟を

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―星野さんは、Webマーケティングをどのように勉強をされたのでしょうか。

星野さん:これまでリアル領域のマーケティングには携わってきましたが、Web広告もWebサイトも全くの素人でした。しかしWebの必要性を感じたので覚悟を決めて、50歳を過ぎてから勉強をはじめました。それこそ、CPAなどの基本的な用語も1つずつ覚えていくようなイメージです。

何かを習得したいときは、まず本を読みますね。まずは、本を3冊買ってきて読みました。1冊目では解らなくても、2冊目の書き方でピンと来たり、読み直したりすることで分かることがあります。

今は本の種類もたくさん出ていますし、60代、70代の方でもスマホを使いこなしていらっしゃいます。見ていれば分かる部分もあるので、勉強のハードルは簿記などの他のビジネスの分野と比べても、難易度は高くないと思います。

―特にWebマーケティングの専門的な部分では他社のパートナーと一緒に仕事をすることもあると思います。パートナーを選ぶ時に大切にしていることはありますか。

星野さん:最終的には「人が信頼できるかどうか」でパートナーは決めます。ただ、それを判断するために知識は必要ですね。もし私がWebマーケティングを自分で学んでいなかったら、マーケティングパートナーはうまく選べないと思います。例えばWebサイトのリニューアルする時に、制作会社がデザインだけ重要視してSEOをあまり考えていなかったら大変です。

自分で勉強をしてから営業マンと話すと、あまり詳しくなかったり、知ったかぶりをしていたり、質問しても答えられなかったり、という方がいるのに気が付きます。

そのパートナーを選ぶために知識をつけるのだとしても、本3冊ならせいぜい5,000円程度です。しかし、Web広告などの販促費は年間でその何百倍にもなります。それが活きるかどうかの世界なので、最低限でも勉強したほうがいいと思います。

中小企業こそ、高いレイヤーの方にWebマーケティングを学んでほしい

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—最後に、Webマーケティングへの取り組みに抵抗を感じている企業さんへメッセージがあれば、お願いします。

星野さん:花菱縫製は製造部門も合わせれば、700名以上の従業員がいますが、直営小売部門は百数十人の中小企業です。その中で私は営業とマーケティング部門の全般の責任者だったので、商品から店舗までさまざまな部分とWebを連動させて、マーケティングの施策を行うことができました。

Webは非常に強い武器です。ちゃんとしたものを持っていないと競合にやられてしまうし、Webだけを変えても本当の変化は生まれません。

だからこそ特に中小企業なら社長さんなどのビジネスの全体がある程度見られる方こそ、Webマーケティングを学ぶべきだと思います。

—ありがとうございました。

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鬼頭佳代

鬼頭佳代

愛知県出身。当サイト「LISKUL」の運用と広報を担当中。 役に立つWebマーケティングの情報を、「たくさん」「分かりやすく」お届けできるように頑張ります。

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