RPAとは、ホワイトカラー業務をソフトウェアに組み込んだロボットが代行するシステムのことで、今多くの企業が注目しています。(参考:RPAとは?いまさら聞けないRPAの仕組みと、3つの導入メリット)
しかし、何となくRPAは知っているけれど、具体的な導入イメージがわからなくて、導入判断がつかない企業も少なくないでしょう。
RPAは、定型業務を自動化して業務削減ができるため、とくに業務効率の改善や社員のはたらき方改革を目的とする企業にとって効果的です。
今回の記事では業界別に分けて、RPAの導入事例をご紹介します。
この記事を読むことにより、「この事例をヒントにして、自社のRPA導入をはじめる」判断ができるようになるでしょう。
目次
- RPAとは事業プロセスを自動化するソフトウェアのこと
- 【業界別】RPAを導入した成功事例20選
- ITスキルに格差のある職員の定型業務の効率化により最大99.1%の作業時間を削減した【公的機関】の事例(2018年)
- 260の業務を自動化して年間94,830時間の業務削減に成功した【銀行】の事例(2017年)
- 負担のかかる実績レポート作成業務をRPA化して、月間600時間の労務自動化に成功した【デジタルマーケティング支援事業】の事例(2020年)
- 40の業務システムを自動化して年間1,700時間の余力化に成功した【住宅業界】の事例(2018年)
- 1日最大4,000件の給付金申請手続きの自動化を実現した【地方公共団体】の事例(2020年)
- 業務適応範囲の拡大と年間28,000時間の業務削減に成功した【地方銀行業界】の事例(2017年)
- 年間5万時間の業務余力の創出により早出残業のない職場環境作りができた【生命保険業界】の事例(2017年)
- 大学職員の年間25万件におよぶ定型業務を自動化した【私立教育機関】の事例(2018年)
- 8台のロボット投入で2時間かけていた仕分け作業が3分に短縮できた【ガスエネルギー業界】の事例
- 180分かかる作業を8分で完了させ約300,00時間の業務削減に成功した【製薬業界】の事例(2017年)
- 全国展開事業の本部管理業務を月間3,650時間削減した【生活雑貨専門店】の事例(2018年)
- 医療事務業務の自動化により合計4,157時間の業務削減を実現した【医療業界】の事例(2018年)
- 125の事務系業務を自動化して年間341,567時間削減した【運送業界】の事例(2018年)
- 3,850時間の業務削減により1,700名の担当者業務の生産性向上に成功した【医薬品事業】の事例(2018年)
- 6万件の業務を自動化して2~3分かかっていた登録作業を20秒に短縮した【施設管理事業】の事例(2018年)
- 販売予算作成の自動化により年間3,490時間の業務削減に成功した【建設業】の事例
- 増大していく業務を社員0.6人分がRPA化となる【情報通信事業】の事例(2019年)
- グローバル化による人手補充をRPAで代替して年間3,700時間の業務削減した【プラスチック製造業】の事例(2019年)
- 非効率な業務フローの改善となる手動業務月間22時間の工数を削減した【ホテル業界】の事例
- 事例の中で共通するRPAを導入するためのコツ
- RPAに関するよくあるご質問
- まとめ
RPAとは事業プロセスを自動化するソフトウェアのこと
RPAとは、Robotic Process Automationの略称で、事業プロセスを自動化するソフトウェアのことです。
RPAでは、次のような業務を自動化できます。
- 定型的な単純作業
- コールセンターや自動音声を活用したカスタマーサポート業務
- データの収集や分析業務
RPAでできることとは、定型的で単純な作業です。従来ある複雑な作業を分解して見直すことにより、RPA化できる作業が明確になります。ただし、属人的な業務やイレギュラー業務をRPAで対応することは難しいでしょう。
【業界別】RPAを導入した成功事例20選
RPAを導入して、業界別に先駆者となる企業の成功事例を紹介します。
20の業種から、20社の自動化した業務内容と、RPAにより達成できたことを取り上げました。それぞれの業界によって、「どんな業務を自動化して実績を出せたか?」について、焦点をあてて紹介します。
ITスキルに格差のある職員の定型業務の効率化により最大99.1%の作業時間を削減した【公的機関】の事例(2018年)
公的機関の横浜市では、定型的な事務作業の効率化のため、RPAを活用して最大99.1%の作業時間を削減しました。
導入にいたる背景
横浜市は、市職員のITスキルに格差があり、ITスキルの統一化と事務作業の効率化を課題としていました。長時間労働是正の取り組みとして、業務改善が必要となり、RPAの導入に至ったのです。
自動化した業務
- 手書き対応をタブレット入力へ切り替え
導入効果
- 最大99.1%の作業時間削減
参考:RPAによる公的機関での業務効率化、横浜市の活用事例をもとに|Smiley
260の業務を自動化して年間94,830時間の業務削減に成功した【銀行】の事例(2017年)
住信SBIネット銀行株式会社は、2017年のRPA本格導入により住宅ローン審査手続き業務の自動化で業務削減に成功しました。
導入にいたる背景
住信SBIネット銀行株式会社では、ITと金融の融合により、ネット銀行の需要が増え、審査申請業務や口座開設業務などの人手不足が課題となっていました。
自動化した業務
- 住宅ローン申し込み者の審査業務
- 260の事務業務をRPA化
導入効果
- RPAの導入で年間94830時間の業務削減
- BPR(業務の見直し)によるムダな業務の削減
- 派遣社員の残業がなくなる
- ロボットが処理するため金額の入力ミスがなくなる
参考:導入事例「住信SBIネット銀行株式会社様|UiPath株式会社
負担のかかる実績レポート作成業務をRPA化して、月間600時間の労務自動化に成功した【デジタルマーケティング支援事業】の事例(2020年)
セプテーニ社では、広告を運用する顧客へ実績レポートを作成する業務に人的リソースがかかり過ぎていたことから、RPAを導入しました。時給86円ではたらくロボットに月間600時間の業務を割りあてられたのです。
導入にいたる背景
セプテーニ社では、顧客へ広告運用での実績レポートの作成に人的リソースがかかっていました。
バックオフィス業務のオペレータ―担当は、新規案件が増えると人員も増やさなければ業務時間を足りなくなる状況でした。常にリアルタイムに近い実績レポートを作成するために、手動による実績レポート作成が、時間的な課題だったのです。
自動化した業務
- レポート作成
- 掲載画面の確認作業
- 競合他社による広告出稿状況の確認作業
- 人気アプリの調査
導入効果
月間600時間の労働時間をRPA化
参考:【クラウドRPAの導入事例】時給86円!? クラウドRPAで月間600時間の業務自動化を実現したセプテーニ社の挑戦|BizteX cobit
40の業務システムを自動化して年間1,700時間の余力化に成功した【住宅業界】の事例(2018年)
フジ住宅株式会社では、ITに情通したシステム室の社員の提案から、40のシステムで年間1,700時間の業務余力化に成功しました。
導入にいたる背景
フジ住宅株式会社では、システム室のITに情通した社員が提案した「RPAに関するレポート」を社内報で共有し、RPAによる利便性が社内に拡散しました。他部署からの要望もあり、2018年からRPAの本格導入となったのです。
自動化した業務
- 設計における図面の自動振り分け
- アフターサービスにおける案件数自動入力
- 企画管理における最報告書の簡略化
- 経理における貯蔵品集計
- 企画管理における進行基準売上転記の自動化など
導入効果
- 年間1,700時間の業務余力の創出に成功
参考:事例|フジ住宅株式会社 ~IBM i連携を重視し、AutoMateに切り替えて開発を加速|iMagazine
1日最大4,000件の給付金申請手続きの自動化を実現した【地方公共団体】の事例(2020年)
地方公共団体の鹿児島県奄美市役所では、手書き書類のスキャンとRPAの連携により、27,000件の特別定額給付金申請業務を短期間で給付金システムに自動登録。特別定額給付金の申請から給付まで、RPAにより最短4日の支給を実現しました。
導入にいたる背景
2020年の政府が発令した緊急事態宣言により、特別定額給付金を全世帯に支給することが急務になりました。鹿児島県奄美市役所では、手書きの申請書の登録に人手をかけないで、RPAによる自動化を取り入れました。
自動化した業務
- 給付金システム登録までの一連作業を自動化
- テキストの画像データ化
- データ化された申請書の自動登録
- データの給付金システムへ情報を自動投入
導入効果
- 1日最大4,000件の自動入力が可能
- 申請から最短4日、平均6日以内での給付可能
参考:WinActor®導入事例・自治体編【鹿児島県奄美市役所】高精度なAI-OCRサービスとWinActorの連携により特別定額給付金の支給を最短4日で実現|NTT Data
業務適応範囲の拡大と年間28,000時間の業務削減に成功した【地方銀行業界】の事例(2017年)
株式会社伊予銀行は、RPAの導入とBPRによる年間28,000時間の業務削減に成功しています。
導入にいたる背景
株式会社伊予銀行は、地方が抱える人口減少という問題を抱えていました。人口減少から来店率も減ることに対して、業務をデジタル化して定型業務のRPA化に取り組みました。
自動化した業務
- 営業店舗での商品販売実績集計業務
- ATM利用件数の集計業務
- CRMシステムに蓄積された顧客との交渉履歴を抽出・レポート作成
導入効果
- 年間28,000時間の業務削減
- RPAによる業務適応範囲の拡大
年間5万時間の業務余力の創出により早出残業のない職場環境作りができた【生命保険業界】の事例(2017年)
日本生命保険相互会社は、現場が女性中心の環境から、フレキシブルなはたらき方の実現に向けてRPAを導入しました。
年間5万時間の業務余力をつくりだし、早出残業のない職場環境を整えることに成功しました。
導入にいたる背景
日本生命保険相互会社は、RPAが国内で認知される以前から、定型業務の自動化に取り組んできました。2017年以降からRPAが注目されはじめたのを契機に、会社全体でRPAによる業務の自動化に取り組みました。
自動化した業務
- 保険の契約事務(ファイルの転記・システム登録)
- 保険金請求手続き(契約者からの契約情報をシステムに登録)
導入効果
- 年間5万時間の業務余力を創出
- システム間のデータ連動の自動化
- 職員のはたらき方改革に成功(早出不要・臨時職員の教育不要)
参考:【金融RPA事例】保険事務の正確さを支えているのは、経験豊かな現場の女性。ミスしないロボットを味方に、新たな働き方を創造していってほしい|RPA Technologies
大学職員の年間25万件におよぶ定型業務を自動化した【私立教育機関】の事例(2018年)
京都に本部をおく私立大学の立命館大学では、RPA導入により、年間25万件発生していた定型業務の自動化に成功しました。
導入にいたる背景
立命館大学では、これからの労働人口減少に向けた対策として、労働力の効率化と創造的な業務を生み出すことに取り組みはじめました。大学職員の業務を効率化して、経営に役立つ情報を引き出すためにRPAの導入による定型業務の自動化を目指したのです。
自動化した業務
- 支払い手続き確定操作
導入効果
- 1回の処理に3,000回の「確定」実行が必要だった操作を自動化
- 1回4時間かかっていた会計システムERP上のデータ調整作業をRPAにより自動化
- 総合的に年間25万件の定型業務を自動化
参考:WinActor®導入事例【立命館大学】キーワードは「定型」「定期的」「大量」。RPAは大学の業務との相性が抜群|NTT DATA
8台のロボット投入で2時間かけていた仕分け作業が3分に短縮できた【ガスエネルギー業界】の事例
西部ガス情報システム株式会社の場合、経理業務で2時間かかっていた仕訳入力作業を3分で完了できる業務自動化に成功しました。
導入にいたる背景
西部ガス情報システム株式会社の経理業務では、単純な定型作業が山積み状態の連続でした。仕訳入力では単純な作業を手入力で行っていたことも要因となり、業務改善の洗い出しから、定型業務の自動化のためRPAを導入したのです。
自動化した業務
- 100行の仕訳入力とチェック作業
- 諸経費の配賦計算と仕訳入力
- 事務所家賃と高熱空調費配賦計算と仕訳入力
- 労務費配賦計算と仕訳入力
- 会計ソフトの仕訳データをもとに各グループの業績データを作成
- 労務費の決算整理仕訳入力
導入効果
- 2時間かけていた仕訳入力が3分で完了
- 3名の経理スタッフと8台のロボットで業務が実行できている
参考:事例に学ぶRPA活用「成功の秘訣」とバックオフィス業務にもたらすメリット|OBC360°
180分かかる作業を8分で完了させ約300,00時間の業務削減に成功した【製薬業界】の事例(2017年)
中外製薬株式会社は、RPA導入を機に業務プロセスの見直しに力を入れて、全社規模で約3万時間の業務の自動化を実現しました。
導入にいたる背景
中外製薬株式会社は、製薬業界の厳しい法規制やレギュレーション規制があるため、業務内容も複雑です。高齢化社会が進み薬の需要が高くなってきたため、業務の効率化が必要になりました。
自動化した業務
- 顧客の問い合わせメール・アンケート集計業務
- 定時退社の一斉メール送信
- 保管する資料のキャビネット利用申請書作成
- 手順書や契約書作成のリマインドメール機能
導入効果
- 180分かかっていた承認作業が8分で完了できた
- 約30,000時間の業務削減
- 14の業務においてヒューマンエラーが削減された
参考:規制対象業務の効率化やグローバル化にロボットで対応―製薬業界におけるRPA活用|UiPath
全国展開事業の本部管理業務を月間3,650時間削減した【生活雑貨専門店】の事例(2018年)
生活雑貨専門店の LOFT(ロフト)は、2018年にRPAを導入して管理系業務をはじめとする社内各部門の業務を80~99%削減できました。
RPAの業務改善をすすめた結果、2020年7月現在、2名のRPA推進チーム体制で全社187体のロボットを活用し、月間3,650時間の削減を達成しました。
導入にいたる背景
ロフトは、直営105店舗でフランチャイズ19店舗による全国展開事業において、本部の管理系業務の負担が課題となっていました。そのため管理本部内に事務サポート部署を設置舌のです。しかし事務サポート部署では、月間1,000件の請求書等入力作業を手作業で処理していました。
ロフト管理本部では、入力作業による作業時間の見直しやミスの減少に向けて、2018年にRPA導入を進めました。
自動化した業務
- 請求書処理業務(情報取得・入力)
導入効果
- 導入して1年間で6,000~7,000の業務削減成功
- RPA推進チーム2名体制で月間3,650時間の業務削減
- 社内各部門で80~99%の業務削減
参考:RPA推進チーム2名体制で月間3,650時間を創出。情報システム部との連携で体制を整え「全員がRPAを使える未来」を目指す|RPA
Technologies
医療事務業務の自動化により合計4,157時間の業務削減を実現した【医療業界】の事例(2018年)
名古屋大学医学部付属病院によるRPA事例では、医療事務業務の自動化により、合計415.7時間の業務削減に成功しました。
導入にいたる背景
名古屋大学医学部付属病院は、医療現場の人手不足や過重労働が深刻化から、単純な事務作業を自動化して、医療事務スタッフの余力時間を医師や看護師の事務サポートにあてることにしました。
自動化した業務
- 会議開催案内メール自動送付
- 医療勤務時間計算業務
- 患者数統計作成
- 過誤納リスト作成
- 薬剤師一覧自動作成
導入効果
- 9体のロボットにより合計415.7時間の業務削減に成功
125の事務系業務を自動化して年間341,567時間削減した【運送業界】の事例(2018年)
物流サービスの日本通運株式会社では、労働人口の減少にともない、非IT職員も含めた約18,000人の事務系業務をRPA化することに成功しました。年間341,567時間の業務削減です。(導入RPA:Uipath)
導入にいたる背景
日本通運株式会社では、少子高齢化による生産人口が減少する中、社員のはたらきやすい環境づくりを目的に業務の自動化に取り組みました。非IT職員に理解してもらうため、社内にIT推進部を創設して、2018年よりRPAの本格導入となったのです。
自動化した業務
- 18,000人がたずさわる事務系の定型業務を自動化
導入効果
- 125の業務でロボットの自動化により削減効果が年間341,567時間
- 労働力の確保につながる「働きやすい環境づくり」を提供
3,850時間の業務削減により1,700名の担当者業務の生産性向上に成功した【医薬品事業】の事例(2018年)
米国を拠点とするイーライリリーカンパニーの子会社「日本イーライリリー株式会社」は、医薬品の製造・開発・販売において、有効的な医薬品の提供を迅速に行うため、生産性の低い業務をRPA化しました。効率化された業務は3,850時間におよびます。
導入にいたる背景
日本イーライリリー株式会社では、カスタマーエンゲージメントの変革を目的として、他社との差別化に取り組みはじめました。日本イーライリリーは、販売業務においてセールス担当者から依頼される情報を管理スタッフが手作業で入力している処理が医師たちへの報告遅れを発生させていました。
そのため2018年6月より、1,700名のセールス担当者の業務生産性向上を目指し、デジタル化と合理化の実現となるRPAの採用を開始しました。
自動化した業務
- 販売担当者への謝礼金の支払い通知
- 営業部門向けのコングレスセミナー関連業務
- 医師への迅速な通知
- 臨床開発部門向けのドキュメントの生成・通知
導入効果
- 3,850時間の業務削減
- 147万ドルのコスト削減
参考:日本イーライリリー社が自動化でエクスペリエンスの向上と生産性アップを実現|Automation Anywhere
6万件の業務を自動化して2~3分かかっていた登録作業を20秒に短縮した【施設管理事業】の事例(2018年)
株式会社日本ファシリティでは、施設管理を依頼する新規顧客が増えるたびに、事務処理も増える状況から、2,000時間以上の業務削減が見込めました。
導入にいたる背景
株式会社日本ファシリティは、年間6万件発生する事務作業に対して、業務の負担の多さを課題としていました。新規顧客となる管理する施設が増えるたびに、事務処理も増加して、報告書の登録など担当者の負担も大きくなっていました。
そこで課題を克服するために、事務処理業務を自動化するためにRPAを導入しました。
自動化した業務
- 基幹システムへの報告書登録
導入効果
- 2,000時間以上の業務時間削減見込み
- 1回の登録が導入前2~3分が20秒
- ミスがなくなる
参考:【導入事例】株式会社日本ファシリティ 様「年間約6万件発生する事務作業をRPAにより自動化し、2,000時間以上の業務時間を削減」|SoftBank
販売予算作成の自動化により年間3,490時間の業務削減に成功した【建設業】の事例
住宅建材製品や水回り製品をあつかう株式会社LIXILでは、システムインフラや営業管理業務の効率をはかりRPAを導入しました。販売予算作成の自動化に成功して、年間8,486時間かかっていた工数を4,996時間まで短縮できました。
導入にいたる背景
株式会社LIXILでは、経理部門の課題となる「営業部門における販売予算の作成」の業務負担が課題でした。品目が増えてきたことから、従来のAccessやExcelを活用したデータ管理では作業に限界がみえてきたためです。
株式会社LIXILの特徴として、5つの建材・設備メーカーが統合したグローバル企業となったことで、ふくれあがった情報量を効率よく管理することが必要となったのです。情報管理の効率をあげるために、予算策定期間の短期化とシンプルなシステムが必要になり、RPAを導入となりました。
自動化した業務
- 販売予算作成
導入効果
- 年間3,490時間の工数短縮
参考:販売予算の作成をCELFでシンプル化に部門間のやり取りを縮小し、運用負荷を軽減。時間の短縮に成功し、働き方改善へ|CELF
増大していく業務を社員0.6人分がRPA化となる【情報通信事業】の事例(2019年)
情報通信事業の株式会社ブロードバンドタワーの場合、営業事務部門で活用する基幹システムとの連携にRPAを採用しました。2020年12月には、営業スタッフ4名の定型業務30%を自動化できることになります。
導入にいたる背景
株式会社ブロードバンドタワーは、ITインフラの影響を受けてクラウドサービスの需要が高まる中、顧客数の増加による業務量の増加が課題となりました。とくに営業事務において、手動による入力や転記が負担となり、スタッフ増員ではなく定型業務の自動化による業務改効率化を目指したのです。
現場の営業スタッフからの要望により、RPAによる業務の自動化を検討し始めました。
自動化した業務
- 見積書発行に必要な情報入力
- 受注登録・請求
- 週次・月次集計表作成
- 消費税率変更による過去データ再計算処理
導入効果
- 定型業務の30%を自動化
参考:株式会社ブロードバンドタワー|ベリントシステムズジャパン
グローバル化による人手補充をRPAで代替して年間3,700時間の業務削減した【プラスチック製造業】の事例(2019年)
プラスチック製造業のポリプラスチックス株式会社では、バックオフィス業務となる経理業務などRPA化して、年間3700時間の業務削減に成功しました。
導入にいたる背景
ポリプラスチックス株式会社は、2012年頃からアジア市場だけではなく欧米まで販路を拡大し、グローバル化を展開しています。グローバル化にともない、従業員の必要人数を確保することが課題になりました。そこで人手を補充する対策として、業務合理化チームを設置し、改善策となったのがRPAによる自動化だったのです。
自動化した業務
- 会計報告資料のデータを抽出してExcelに投入し加工する工程
導入効果
- 年間3,700時間の業務削減
- RPA導入部署の残業がなくなる
- 余力時間を分析業務や報告書作成にあてられる
参考:導入事例「ポリプラスチックス株式会社様|UiPath株式会社」
非効率な業務フローの改善となる手動業務月間22時間の工数を削減した【ホテル業界】の事例
株式会社芝パークホテルの場合は、訪日客増加のため多くなった業務への対応をRPA化して、月間22時間の工数削減が実現しました。(導入RPA:Robo-Pat)
導入にいたる背景
訪日客の多い株式会社芝パークホテルは、働き方改革の流れから業務効率を見直し、非効率なフローの改善を目指しました。毎日の手動による業務を自動化するためにRPAの導入を決めたのです。
自動化した業務
- 日別売上データの収集業務の自動化
- 売上管理システム登録額と現金徴収額との差異チェック
- 施設・宴会場データ照合
- 売上の内訳をExcel管理表へ転記
導入効果
- 手作業工数がなくなり、月間22時間の工数削減
参考:RPA導入をきっかけに業務フローを見直し月間22時間の工数削減に成功|ReiWorQ
事例の中で共通するRPAを導入するためのコツ
いままで紹介してきたRPA導入20の企業事例から、RPAを導入すべき企業の共通する特徴があげられます。
- 人手不足の解消への対策
- はたらき方改革により社員の雇用維持
- 業務効率向上による生産性の向上
これら共通する特徴から、RPAを導入してきた企業が目的を達成するために実行したコツをまとめてみました。
- RPAに対して社内の理解度を高める(IT部署の創設など)
- 導入前に業務の見直しをする(定型業務と属人的業務の仕訳)
- 小さな作業から自動化をはじめて実績を積み重ねる
こちらの記事では10の主要RPAツールを比較しています。参考にしてみてください。
参考:RPAとは?いまさら聞けないRPAの仕組みと、3つの導入メリット
社内の理解度を高める
事例で紹介したほとんどの企業は、導入前に社内での「RPA導入によりできること」を認知させることからはじめています。
その理由は、社内において1つの部署だけで成果を出すよりも、会社全体で取り組むことにより次のようなメリットが得られるからです。
- スケールメリットが大きくなる
- 運用管理担当の負担が軽くなる
とくにグループ展開している企業や複数の部門に分かれている企業であれば、社内全体でRPAを展開していくことにより、大きな効果が期待できます。その理由は、RPAによる部門をまたいだ業務フローの自動化ができる点です。部門間でRPAを共有できれば、企業全体のスケールメリットも大きくなるでしょう。
また会社全体でRPAを運用することにより、運用管理担当の負担も軽くなります。社内全体で運用ルールを共有できれば、RPA担当者に負担が集中することがありません。そのためには、社内で共有できる運用ルールの策定が必要になります。
運用ルールの策定などRPAを理解してもらうには、RPA専門のIT部署の設置が必要です。事例であげた企業では、ツール選びからテスト導入まで、IT人材が中心となって取り組んでいいます。現場主導でRPAを展開した場合、担当した部署だけのノウハウとなり、社内全体に広がりません。
社内にIT部署を創設することにより、会社全体にRPAの管理体制を明確にできます。IT部署の創設は、部門をまたいだヒアリングや業務案件の募集など、協力体制を生み出すことになるでしょう。
導入前の見直しをする
RPAを導入するには、事前に定型業務と属人的な業務を明確にして、「どの定型業務を自動化するか」見直すことが必要です。
RPAの導入前に業務プロセスの見直しができれば、RPAを採用しなくても削減すべきムダな工数を見つけられます。
RPA導入前に、「どの業務をRPA化すべきか」について、工数や業務プロセスを可視化することが、導入による費用対効果の指標となるでしょう。導入前の見直しにより、RPA化すべき業務が明確になり、自動化する業務の規模や担当リソースによる費用対効果を見積もれます。
小さな作業から自動化をはじめる
成功している企業では、小さな業務の自動化からテスト導入しているケースがほとんどです。小さな業務を自動化した実績があれば、社内においてRPA導入によるメリットを理解されやすくなります。
社内において、RPAへの理解度が高まることによりRPA運用に向けた協力体制も整いやすくなるのです。そのためには、小さな作業の自動化からRPAによる実績を積み重ねていくことが必要です。ただし全社展開する場合は、小さな作業ばかりを自動化することにより導入効果が発揮できないことも考えられます。
小さな作業の自動化を積み重ねていくには、RPA適用にふさわしい業務分析による自動化業務の選定が大切です。
RPAに関するよくあるご質問
RPAを検討中の方に役立つQ&Aをまとめています。
Q.RPAの導入効果はどのように計測できますか?
A.RPAの導入効果は、作業時間の削減や業務の効率化、エラーの減少などで計測されることが多いです。例えば、RPA導入によって年間9万時間以上の業務削減が達成された事例もあります。
Q.RPAを導入するときの初期コストはどのくらいですか?
A.RPAの初期コストは導入するツールや自動化する業務の範囲によって異なります。一般的に、ライセンス費用や導入サポート費用が含まれますが、具体的な金額については提供元にお問い合わせください。
コストについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
参考:【2024年最新版】RPAおすすめ30選を比較!口コミ・選び方も紹介
Q.在庫管理にRPAを活用することは可能ですか?
A.はい、RPAを使えば、在庫数や出荷予定数の管理を自動化できます。在庫状況をリアルタイムで把握し、営業担当者に自動的に通知することで、在庫切れを防ぐことが可能です。
Q.RPAとAIの違いは何ですか?
A.RPAは定型業務を自動化するツールであり、標準化されたルールに従って動作します。一方、AIはデータを基にして自ら判断を下す能力を持つため、複雑なデータ分析や意思決定が可能です。
詳しくは以下の記事を参考にしてください。
参考:業務を自動化する方法3つと対象業務、注意点について徹底解説
まとめ
この記事では、RPAの事例について、業界別で20社の成功事例と業務別の活用事例を紹介してきました。
紹介してきた事例からみえることは、業界関係なく定型的な事務作業からRPA化して、自動化による成果を実感できれば社内各部署からの支援が得られるという点です。
RPAは、ほとんどの業界で活用できる要素をもっています。RPAによる業務の自動化は、既存の業務を改革できるきっかけとなるでしょう。