データ活用が当たり前となった現代においてBIツールという言葉を聞く機会が増えたと思いますが、実際に「BIツールがどういうものかよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。
BIツールとは「ビジネスインテリジェンスツール」の略で、社内に蓄積されたデータを活用して、企業の意思決定を支援するツールです。
本記事では、BIツールとは何か、機能やメリット、導入までのステップを分かりやすく解説します。BIツールの導入で成果を上げた事例や、ツールの選び方のポイントもまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
【広告代理店必見】広告データをBIツールと連携しより高度な分析を行うには>>
目次
BIツールとは、社内データをわかりやすく統合して企業の意思決定を助けるツール
BI(ビジネスインテリジェンス)ツールとは、社内のデータを活用して企業の意思決定を高速化するツールです。
多くの企業はデータの収集や分析に大きなリソースを割いています。それを瞬時にデータを活用できる状態にしてくれるため、BIツールは経営者にとって最高のサポート役になります。
無料で簡単に使えるとして人気のBIツールが、Googleデータポータルです。
以下の記事で、Googleデータポータルについて詳しく解説しています。
参考:Googleデータポータルとは?機能・メリット・注意点・導入方法まで解説!
BIツールを構成する3つのプロセス
具体的にBIツールとはどういうものなのでしょうか?BIツールは以下の3つのプロセスで構成されています。
- インプット
- 分析
- アウトプット
ここでは、それぞれの役割を解説します。
プロセス1. インプット
はじめに、会計や販売、営業、在庫などのさまざまな社内データを取込んで統合します。データの形式も社内のデータベースなどの業務システムからExcelまでそれぞれ違う場合もあります。
プロセス2. 分析
集めたデータ集計や計算、分析をします。期ごとの売上げ、原価、利益、在庫など、どのような指標を見たいか?数字をベンチマークしたいか?などをBIツールに指示するだけで、膨大なデータを見つけ、集計をしてくれます。これで大量のデータが処理できるのが、PCの強みです。
プロセス3. アウトプット
データをグラフや表など内容がわかるように、わかりやすく出力できます。複雑なデータの分析結果がシンプルに見られるため、経営の意思決定が迅速になります。
参考:BIツールとは?基本から仕組みまでかんたん図解|LaKeel BI
BIツールの4つの機能
それでは、BIツールでどのような分析ができるのかを見ていきましょう。BIツールには、主に4つの機能があります。
- レポーティング
- OLAP分析
- データマイニング
- プランニング
ここでは、それぞれの機能を解説します。
機能1. レポーティング
レポーティング機能はデータを可視化します。
社内に蓄積されたテータをタイムリーに分かりやすく表現することで、ビジネスの全体像を把握しやすくなり、問題の早期発見に役立ちます。
BIツールで作成したレポートがWebブラウザー上で確認できるようになり、情報の共有化も進むでしょう。
機能2. OLAP分析
OLAP分析機能は、さまざまな角度から複数のデータとの関係性を分析します。
OLAPとは「On Line Analytical Processing(オンライン分析処理)」の略です。何か問題が発生した際に、立てた仮説の検証を行えます。
例えば、ある店舗で急激な売上の増加があった場合、OLAP分析によって「同日に店舗の近くでイベントが開催されていたのが要因」であることが分かります。
機能3. データマイニング
データマイニング機能は、膨大なデータの中から関係性や傾向などを探し出します。
仮説を立てずに「クロス分析」「相関分析」「回帰分析」などの分析手法を用いて、問題解決の糸口へと導いてくれます。
例えば、データマイニング機能での分析で「ある店舗の利用者が減少した要因の一つは天候である」ことが分かった場合、その情報を活用して「雨の日10%OFFキャンペーン」などを実施すれば集客につながるでしょう。
機能4. プランニング
プランニング機能は、事業計画の根拠をシミュレーションします。
経営層が予算編成をする際にプランニング機能を活用すれば、利益や売上計画の根拠が得られるため、より具体的な予算計画が立てられるでしょう。
参考:BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)とは?基本と事例と知っておくべき留意点|データのじかん
【図解】BIツールとは?機能や目的、種類などわかりやすく徹底解説!|ITトレンド
BIツール導入を成功させるための基本の3ステップを解説!|ITトレンド
BIツールを使う2つのメリット
BIツールを使うメリットは、以下の2つが挙げられます。
- 高度なスキルがなくてもデータ集計ができ、業務コストが削減できる
- リアルタイムにデータ活用ができる
ここでは、それぞれのメリットを紹介します。
メリット1. 高度なスキルがなくてもデータ集計ができ、業務コストが削減できる
今まで限られた社員がマニュアルで行っていたデータ加工などが、基幹データベースなどから集積されたデータを使い、高度なスキルがなくても誰でも簡単にグラフ表示できます。
その結果、データを活用しやすくなるだけでなく、業務コストの削減にもつながります。
メリット2. リアルタイムでデータ活用ができる
リアルタイムで数値をグラフ化できるため、急に必要になったデータでも確認ができ、現状把握がしやすくなります。これにより、迅速な意思決定が可能になるでしょう。
BIツールの導入で成果を上げた事例3選
BIツールは他のシステムよりも、比較的高額であることもあり、費用対効果は気になるところです。
また導入前にどれくらいの効果があるか?がイメージしにくく、検討しづらいという面もあります。そこでBIツールを導入することによって、コストを大きく削減した事例を3つご紹介します。
【事例1】ExcelからBIツールに切り替え、労働コストを大幅に削減
会社名:株式会社スノーピーク(アウトドア用品メーカー)
株式会社スノーピークは「これまで世の中にないものを作る」をコンセプトとするアウトドア用品メーカーです。
手作業で行なっていた作業をBIツールの導入で自動化し、労働コストの大幅削減に成功しました。
課題
- 事業の成長に伴い新たな分析ニーズが増えていったものの、情報分析はシステム担当者が基幹システムにアクセスし、Excelで集計していた。
- 情報の分析に時間がかかり、鮮度の高い情報を取得できなかった。
- 特に月末は帳票作成のリクエストが集中し、その対応作業に追われていた。
BIツール導入後
- 情報把握スピードと情報活用レベルが向上した。
- 手作業で行っていた帳票作業が自動化された。
- 日次月次の定期作業で約60時間、ユーザー依頼の随時作業で約30時間、合計すると月間で約90時間の労力を削減できた。
- さらに、新規帳票作成時に1件あたり約40万円のコストが発生していたものがゼロになった。
【事例2】1000万円のコスト削減と経営のスピードアップ
会社名:有限会社トップリバー
有限会社トップリバーは「儲かる農業」をビジョンに掲げ実践する農業生産法人です。地域の発展を担う農業経営者を育成するためITを活用し、情報管理や生産計画・実績管理といった業務のシステム化に積極的に取り組んでいます。
帳票作成に手間や時間がかかっていましたが、BIツールでデータを可視化することで、コスト削減と経営のスピードアップを実現しました。
課題
各システムに蓄積されたデータから毎年バージョンアップを行っていたが、ベンダーに新しい帳票を一つ作ってもらうのにも、ニーズの伝達をはじめ開発スピードに課題を感じていました。
BIツールを導入後
- データが可視化され、わずか半年足らずの短期間のうちに100種類を超えるダッシュボードを作成した(もし、旧システムでこれと同じ感覚で次々に帳票を作っていたとすると、1,000万円を超える膨大なコストと開発時間が必要であった)。
- 収益の推移をすぐに把握できるようになり、経営のスピードもアップした。
参考:農業生産法人 有限会社トップリバー|導入事例|ウイングアーク1st
【事例3】約600種類の紙の帳票をなくし、業務効率化
会社名:神東塗料株式会社
神東塗料株式会社は、塗料の製造・販売および化成品の受託生産を行っている会社です。かねてからデータ活用に精力的に取り組んでいました。
以前はシステム部門が、営業の売上情報や生産情報など約600種類の紙ベースの帳票を作成して全社配布したり、Excelファイルで営業スタッフへデータ提供したりしていました。BIツールの導入で営業部門以外でもデータを活用するようになり、業務が効率化されました。
課題
- システム部門の労力が大きかった。
- 社員の要望に応えるうちにExcelファイル数も増加し、データ提供のコントロールが困難になっていた。
BIツールを導入後
- 営業部門のみならず、生産部門や物流部門、検査部門などの他部門にも利用が広がった。
- 営業部門にとっては予算と実績を確認するための実績ツールとなっている。
- 煩雑な作業を要する倉庫内の在庫管理でも活用するようになり、業務が効率化された。
- 約600種類もあった紙ベースの帳票をなくしたことで、システム部門への負担も軽減し、結果ペーパーレス化へつながった。
BIツールを導入する3つのステップ
BIツールは以下の3ステップで導入できます。
ステップ1. 利用目的を明確にする
ステップ2. 自社に必要な機能を持つBIツールを選択する
ステップ3. BIツール導入後、初期設定をする
ここでは、BIツールを導入するステップについて解説します。
ステップ1. 利用目的を明確にする
自社の課題を洗い出し、BIツールを利用する目的を明確にしましょう。
例えば、まず「現行のExcel管理では、タイムリーな分析ができない」「帳票を作成する手間を削減したい」など、具体的な自社の課題を挙げます。そして、その課題を解決するために、業務の見直しや社内システムの改善を行い、BIツールで何をしたいのかを決めましょう。
BIツールを導入する目的を明確にしておけば、効果的にツールを活用できます。
ステップ2. 自社に必要な機能を持つBIツールを選択する
自社に必要な機能を持つBIツールを選択しましょう。
前述したとおり、BIツールには「レポーティング」「OLAP分析」「データマイニング」「プランニング」の4つの機能があります。企業によっては、すべての機能が必要でない場合もあるでしょう。必要な機能を精査することで、開発や導入の費用をぐっと抑えられます。
また、BIツールでRFP(=提案依頼書)を作成する際には「セキュリティ、データソートの利便性、ユーザーインターフェース、Webブラウザー操作などの機能がどの程度の必要なのか」を精査するのがおすすめです。
ツールによって特化した機能があるので、必要な機能を見極めて自社の環境や状況に合ったBIツールを選びましょう。
下記の記事では、BIツール31種類を料金や特徴を比較しながら紹介しています。
【2021年版】BIツール厳選31選を徹底比較!絶対失敗しない選び方のポイントまで解説
ステップ3. BIツール導入後、初期設定をする
BIツールを導入したら、初期設定を行いましょう。
利用する機能によって初期設定の内容は異なり、難易度が高い設定が必要な場合もあります。初期設定は情報システム部門の協力を仰ぎながら、計画的に進めると良いです。
また、操作マニュアルを用意しておくと、ツールの属人化を防げます。誰でも使える環境を整え、BIツールを最大限に活用しましょう。
参考:BIツール導入を成功させるための基本の3ステップを解説!|ITトレンド
BIツール導入後の初期設定とは?ツールの種類ごとに詳しく解説!|ITトレンド
広告レポートツール『ATOM』からBigQueryに連携→Googleデータポータルに出力することができる、ATOMの「BigQuery連携機能」について以下の記事で詳しく解説しています。
広告運用されている方で、BigQueryやGoogleデータポータルなどのBIツールを活用したいという方は是非ご一読ください。
BIツールを選ぶ前に確認したい2つのポイント
では、実際に自社でBIツールを導入するには、どのようにツールを検討したら良いのでしょうか?BIツールを選ぶ際のポイントは以下の2つです。
- 自社のデータの状態がどうなっているか?
- 誰がどのようにデータを活用するのか?
それでは、具体的に選ぶ際のポイントを解説します。
ポイント1. 自社のデータの状態がどうなっているか?
まずは、社内システムやデータがどのような状態かを確認しましょう。すでに特定のデータベースやシステムを利用しているのであれば、既存システムとの互換性を重視してツールを選ぶ必要があります。
例えば、SAPのERPなどを利用しているのであればSAPのBIツールを検討します。エクセルなどでデータ蓄積を行っているのであればエクセルからデータをインポートできるツールを検討しなければいけません。
ポイント2. 誰がどのようにデータを活用するのか?
社内でどのようにデータを活用するのかを明確にし、利用目的に合ったツールを選びましょう。
自社に必要な機能を搭載しているBIツールを選ぶことは重要ですが、利用者が使いやすいツールを選ぶことも大切です。しかし、単に操作が簡単なツールを選べば良いというわけではありません。
例えば、営業部門でデータの可視化や分析をしたい場合は、操作が簡単な事前設計されたツールを選ぶと良いでしょう。
一方、経営層が意思決定に使用する資料を専門の分析スタッフが作成する場合は、データを自由に活用できるツールを選ぶ必要があります。また、複数のレポートを1つにまとめられるダッシュボード機能やレポート機能があると便利です。
このように、利用者目線でデータの活用目的に合ったツールを選びましょう。
参考:BIツール選定における7つのポイントとは?自社に最適な製品を選ぼう|ITトレンド
BIツールのメリットと選び方・比較|BI製品かんたん紹介|アシスト
BIツールを導入する2つの方法
社内である程度、案が固まったらいよいよ導入です。BIツールを導入するには主に2種類の選択肢があります。
- BIツールを提供するSAPやOracleなどのベンダーに直接頼む場合
- インスタレーションや保守を事業として行っているSIerを通して導入する場合
どちらの選択肢が良いかは社内の状況によるので、事前にシステムを把握する必要があります。
パターン1. 案件の規模が大きくない場合は、SIerへ
あまり案件の規模が大きくない場合は、SIerなどを通した場合の方が有利な契約を結べる場合があります。まずは、見積もりを取るために、めぼしいSIer数社にコンタクトをとり、それから細かい要件を詰めていきましょう。
パターン2. 大型案件は、直接BIツールを提供するベンダーへ
大型案件の場合はデータベースや関連パッケージソフトの刷新なども視野に検討する必要がありますので、自社が利用しているERPやDBを提供しているベンダーに相談する方がトータルで良い条件を引き出せる可能性があります。
まとめ
BIツールを活用することでビジネスの経営判断をスピードアップして、ヒューマンエラーを防ぎながらデータを可視化することができます。
今はまだBIツールは流行り物という認識かもしれませんが、遅かれ早かれ今後、どの企業も導入する方向に舵を切ることは明確です。BIツールのメリットを正しく理解して、導入のポイントを押さえながら社内で検討すれば、あなたのビジネスに必要なBIツールの力がおのずと見えてくるはずです。
(無料Ebook)BIツール徹底解剖&国内BIツール4社を徹底比較
【広告代理店必見】広告データをBIツールに自動で取り込み業務効率化
本記事ではBIツールについて説明しました。BIツールを活用するためには社内データをBIツールに取り込む必要があります。
しかし、複数の媒体のWEB広告を運用している場合、手作業でデータを取り込むのは非常に手間がかかります。
その場合は「レポート作成自動化ツール」を活用するとWEB広告データをBIツールに自動で取り込むことができるようになります。
例えば、「ATOM」は累計500社以上に導入されているレポート自動化ツールの代表的な例です。参考にしてみてください。
コメント