掴めそうで掴めないInstagramのトレンド。ストーリーズ動画広告でコンバージョンを出しまくった運用者がやったこと

国内で4人にひとりがアクティブユーザーであると言われているInstagram。業界問わず期待を集めるSNSの代表格です。

とりわけストーリーズ機能は、アクティブユーザーのうちの7割が利用しているという調査結果も報告されている期待の星。Instagramを起動したらまずはストーリーズをチェックしているという実感のある方もいるかもしれませんね。

ストーリーズの広告機能は2017年から開始され、、トレンドの移り変わるあまりのスピーディーさから、表立ったノウハウに限りがあります。

  • 写真映えするようなオシャレな商材じゃないと効果ないのでは?
  • 若い世代や女性向けの商材じゃないと効果でないのでは?
  • Instagramはブランディングの手段で、直接コンバージョンは取れないのでは?

といった疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回はソウルドアウト株式会社のSNSマーケティング部でFacebook/Instagram広告を担当している松原めぐみ氏に、ストーリーズ広告の運用で成果を挙げた事例と、本格的に攻略するための鉄則についてお話を聞いてきました。

本記事はストーリーズ広告運用のノウハウを詰め込んだ内容となっておりますので、着実な成果につながる運用ができるようになります。


Instagramストーリーズ広告が当たってコンバージョン数3倍に


ソウルドアウト株式会社 SNSマーケティング部 松原 めぐみ 氏

―まずはバックグラウンドや、普段のお仕事についてご紹介いただけますか?

地方・中小企業の事業支援を行っているソウルドアウト株式会社で働いています。所属はSNSマーケティング部で、現在入社2年目です。よろしくお願いいたします!

業務は、運用面のご提案からクリエイティブの制作まで、包括的に担当しています。商材は女性向け下着の単品通販ですとか、検討期間の長い企画住宅まで多種多様です。より広い業界から、SNS広告への期待が集まってきていることを感じますね。

SNSマーケティング部は現在8名が在籍しており、その多くは女性なんです。それぞれが特技を持っていて、お互いの知見やセンスをシェアすることも多々あります。

私はクリエイティブ制作、とりわけイラストの作画を得意としています。3歳の頃から絵を描くことが好きで、高校では美術部に入り油絵に取り組んでいました。

その後、在学時からオリジナルブランドを立ち上げてグッズの制作通販に挑戦したり、大学の学園祭で横10メートルのステージ背景の制作をしたり、何かを作るという行為には、常に関わっていましたね。

ソウルドアウトに入社してからはデザインにまつわる本を手に取るようになりました。色や配置について勉強するうちに、理論立てて考えるのが楽しくなって。そんな私のことを、チームのメンバーは職人みたいって言います。

コスメやファッションにも興味があるので、インスタグラムを中心に、情報は常に追いかけています。SNS広告運用は、そういった元来の関心事を生かせる仕事なんですよね。

―直近で最も大きな実績を出せた事例を教えてください。

ここでは具体的な会社名は控えさせていただきますが、脱毛サロンのInstagram広告の事例がございます。ストーリーズ広告で動画クリエイティブに注力し、コンバージョンを急増させることができました。CTR2倍、CVR60%改善、CPA65%改善と大きな成果を出せたプロジェクトです。


ストーリーズ広告攻略のための動画素材をスマホで撮影

―そのケースでは、成果を出すまでにどのような施策を実施したのでしょうか?

ストーリーズ広告に最適な動画クリエイティブをイチから制作しました。既成素材や他媒体で使用した動画の使い回しをせず、当キャンペーン専用に企画から編集までを実施したものになります。実際に店舗へ伺い、脱毛サロンで実際に施術を受けている様子のイメージムービーを撮影しました。

広告色が強すぎると敬遠されてしまうタイプの商材だと判断したので、一般ユーザーが投稿するストーリーズに馴染むような広告の企画をしました。例えば、撮影機材はiPhoneを選定。文字入れや装飾などの編集に使ったソフトウェアも、Instagramの標準機能のみです。

―動画の撮影では、具体的にどのようなプロセスを踏みましたか?

まずモデルをアサインしました。適切な演者を見つけることは、制作の現場でしばしば課題とされますよね。この案件ではターゲットに近い年代の女性を起用いたしました。

撮影当日はクライアント様の店舗にもご協力いただき、モデルが実際の施術を受ける様子を撮影。構図のディレクションも、私が担当いたしました。様々なレイアウトが試せるよう、寄り絵、引き絵、右寄せ・左寄せなどいくつかのパターンで撮影できたのはよかったです。

―撮り下ろし動画を、広告クリエイティブとしてどのように活用したのでしょう?

効果的な装飾を探りました。中でも効果的だと感じたのは、ページ遷移のスワイプを促すCTAに装飾を施したことです。丸い図形や矢印を置くことで、視点を誘導しました。

少し毛色の違う施策ですが、ストーリーズに標準搭載のアンケート機能も活用しました。

任意の場所に配置できるアンケートスタンプを使って、ユーザーからのリアクションを回収するというものです。Instagram公式からも、ストーリーズ動画でアンケートスタンプを使用したキャンペーンのうち9割が、3秒長く再生されたという公表もありました。

実際の運用でも、回答してもらったときのクリック率が高かったです。ユーザーがリアクションしたり、広告に対して長い滞在時間を記録すると、広告の品質が評価されるので、平均連動率が上がりやすいためだと思います。

アンケート項目は、クライアント様が気になっているトピックを落とし込んで作成しました。広告と並行して、「そっちの方がお客さんは興味あるのは意外だった」ですとか、「予想通りの結果が出た」などの気づきを収穫できます。

SNS広告で欠かせない配信先の選定については、いくつかの検証を行いました。ターゲティングは、地域・年齢などのデモグラフィック条件、興味関心などの属性条件、既存顧客のデータをもとに作成した類似オーディエンスの3パターン。配信面は、フィードとストーリーズの2種類で試しました。

およそ2か月かけて、80万程度の予算を消化した結果、ストーリーズ広告を興味関心でソートしたセグメントへ配信するという条件下でもっとも効果を発揮することがわかったんです。それ以降はストーリーズを中心に活用してきました。


インスタ映えの「#キラキラ女子」が、クリックベースのCPAを合わせに行く「#ゴリゴリ女子」に変貌を遂げるまで

―そもそも、ストーリーズ広告で、直接コンバージョンを狙えるものなのでしょうか?

目指せます。Instagramといえば、若い女性が使うアプリとして、少し上の世代の方からは、未知のものとして捉えられがちです。しかしソウルドアウトのクライアント様は実際に効果を出されていますし、他のSNS広告同様、しっかりCPAを追いながら運用ができる広告媒体だと思います。

―コンバージョンとは少しかけ離れたイメージですが、女性ならではの感性を生かした運用も強みとなるのでは?

Instagram広告がまだ珍しかった頃は、そういう面も強みとなっていました。現在のSNS広告チームに女性が多いのもその名残で、“ストーリーズ6姉妹”なんて名乗ったりもして。

日頃からSNSにどっぷり触れているぶん、「かわいさ」「おしゃれさ」といったような、ありのままの感性でクリエイティブに向き合うことができたんですよね。

【vol.1】自己紹介|note、はじめました🎉(難波)|ソウルドアウト|SNSチーム|note

しかし時代が変わってきたというか、近年はそれだけでは通用しなくなってきた背景もあって、ここ1年はやり方を大きく変えてきました。側から見ればキラキラ女子と思われがちなのですが、その実、CPAを最適化に向けてデータ分析とPDCAを愚直に繰り返すゴリゴリ女子なんですよ!


【鉄則】動画素材は撮影から。0.2秒で掴み、テキスト勝負

―直接コンバージョンを出す上でのポイントを教えてください。

現場の運用実績から導かれた3つの鉄則があります。

その1 : 動画素材は己の手で撮影するべし。

ストーリーズ専用に撮影した縦型動画は、商材にかかわらず効果が期待できます。先ほどご共有した脱毛サロンの事例でも、縦型動画を撮影した実績をお伝えさせていただきましたが、CTR2倍、CVR60%改善、CPA65%改善と大きな成果を出せた要因はこのストーリーズ動画であると考えています。

しかし多数の広告主が、フィード用に作った正方形動画をストーリーズにも転用するというやり方を現在も実践しています。広告予算を多く割けず、この手法をとる方も多くいらっしゃると思います。

この場合、ストーリーズの規定と異なる画角ですから、ストーリーズに使いやすいよう計算した上で撮影された動画と比べ、試せることが限られてきます。

ストーリーズは全画面で表示されるので、天地左右の余白がシビアなんです。装飾や文字入れする上での制限が発生するのでもったいないんですよね。

特にCTAに関わる動画の下部に適切な装飾が付けられるかは重要なポイントです。Facebook社は、CTAを強調したキャンペーンがより多くのコンバージョンを獲得する可能性が89%であると公表しています。

クライアント様の予算が限られている場合の手法でいえば、静止画をスライドショーのようにつなげた動画を使用する場合もあります。しかし、静止画と動画では伝えられる情報にどうしても差が生まれてしまうものです。

そのため、撮り下ろし動画に比べ効果が劣る傾向にあります。ストーリズ動画広告に本気で取り組みたいと思ってくださるのであれば、動画をご用意いただいた方が成果が出やすいと思います。クオリティは、スマホ撮影レベルのものでも差し支えありません。

その2 : 世界観に逃げるべからず。

Instagramにはお洒落なイメージがありますから、ブランディングを意識した運用にこだわる方もいらっしゃいます。実際、美しい写真や動画を掲載し世界観を表現しているアカウントも存在しますよね。しかし経験上、直接コンバージョンを狙う上では、そのような投稿が当たった試しがありません。

具体的にいうと、画像単体のクリエイティブで間接的にメッセージを伝えるよりも、ストレートなコピーやテキストで伝えたいことをはっきり伝えたクリエイティブの方が当たる傾向にあります。

重要なのは、サービス名やどのような商材であるかを必ず入れること。キャンペーン内容によって、セールの告知であったりとか、お試し価格の訴求ですとか、より直接的なメッセージが効果的です。

例えば新規購入の促進で「初回お試し500円」のキャンペーンをしているのなら、絶対に「500円」と入れるべきです。ブランディングを意識してお金の話をすることを敬遠してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

しかしストーリーズは、1秒に満たないスピードで離脱されててしまう世界。伝えたいこととストレートに、クリエイティブに落とし込みユーザーの興味を引くことが大切だと考えています。

その3 : 0.2秒で掴め。

タップだけで遷移ができるストーリーズで、ユーザーの関心を引くには工夫が必要です。Facebook社はInstagram day 2019イベントの場においても、動画の冒頭0.2秒で心を掴まなければスキップされてしまう可能性を示唆しました。これは運用の現場でも大いに実感することです。

攻略法としては、ダイナミックな動きをつけること。視界にバンって飛び込んでくるような文字の置き方をするですとか、真っ黒な画面にインパクトのあるバナーをインさせるですとか、これらはよく使う手法ですね。

―ストーリーズに最適なクリエイティブの精度は、よりシビアに求められているのですね。

そうですね。ユーザー視点でトレンドを追うことも、InstagramやFacebookがアップデートする情報を追うことも、怠ればすぐに取り残される気がします。何より実際に運用してみないとわからないことが多いので、こういった鉄則みたいなものを、自分たちで見つけなくてはなりません。

鉄則に加えるものがあるとしたら、撮影する対象に人を選ばない、ということでしょうか。

ストーリーズに限らずFacebook広告全般に言えることですが、商品を持って決め顔した自撮り画像や、イメージのためにただ配置されただけの人の素材より、「商品単体」や「実際の利用シーン」のほうがが当たりやすい傾向にあります。

それから、当たり前ですが広告コピーのクオリティで差がつきます。私の案件でも、コピーは必ず複数パターン用意しています。差し替えたり組み合わせを変えたりして最適解を探しているんです。

ちなみにストーリーズで最も効果の高かったコピーは他の素材と組み合わせても当たる可能性が高いです。デザインや映像も重要ですが、訴求は枯れないと部内で言っているように、訴求検証やコピーにも力を入れた方が、息の長い運用できると思います。

―巷でよく語られる、一般投稿風の動画を使ったクリエイティブが効果が良いというのは本当でしょうか?

いろいろ運用した結果、投稿風の動画が適しているケースとそうでないものがあるというのが実感です。一般投稿と差別化したテイストの動画、ここでは“インスタ映え動画”と呼ばせていただきますが、実はそういった動画が勝つこともあるんです。

具体的にいうと、インフルエンサーのポスト向けに作られた素材を加工した投稿や、CANVA(デザインテンプレートが豊富な無料ツール)を使って作成したグラフィックなどです。

最近は素材を文字なしで入れたものでしかとれないなど、広告色が強いものが敬遠される傾向もあります。

また、同じ利用動画というくくりでもCMのようにきれいに機材やスタジオ、モデルを用いて撮影したものよりもスマホで自撮りしたようなより投稿風のもの、同じ商品画像でもハンガーにかけたものより置き画で成果がよいなど、よりオーガニック投稿と馴染むInstagram広告の作り方が好まれる傾向が他社含め強いです。

あくまで”インスタ映え動画”であることが大切で、マス向けTVCMのようなテイストのものとは異なります。

実際にマス広告で使った動画を使ったストーリーズ広告の検証もしていますが、相性がとても悪いんですよね。過度に作り込まれた動画よりも、ユーザー目線で実際に使ってみたとか、商品開けてみた、といったインスタグラムらしい動画の方が、CPAは安くなる傾向があります。

―なるほど。依然、“インスタ映え”とはなにかを理解している必要もあるということですね。他にもヒントはありますか?

ここまでの話と乖離を産むようなトピックですが、動画よりも静止画の方が効果的であるというケースもあります。

どちらに軍配が上がるかは、伝えたい情報量に依存するところです。動画に含まれる情報は、静止画の450倍と言われています。そういう特性を生かして、利用しているイメージを具体的に持たせる必要のある商材ですとか、複雑なサービス、新しいサービスなどに動画を活用するのがいいと思います。

特にBtoB商材のような、詳しい説明を聞かない理解しづらいものなんかも、適していると思います。BtoB商材の課題となりがちな、斬新なサービスに対する不信感を払拭するのにも役立つでしょう。

ちなみに冒頭でご紹介した脱毛サロンの動画の場合、脱毛=痛そうというイメージを払拭し安心感を与えられたのが効果的だったと考えられます。

逆に静止画を起用するなら、一覧性の高さが武器となりますから、一目みてもらうだけで理解ができる商材で効果を発揮しやすいです。例えばアパレル商材は、デザインがわかればユーザー的には十分だったりしますよね。

アパレルといえば、カラーバリエーションをカルーセルで見せる手法が長らくポピュラーでした。でも最近その傾向が変わってきていて、全てのカラーバリエーションを1枚のグラフィックで見せた方が効果が良いようなんです。

ユーザーは毎日のようにストーリーズに触れていますから、情報処理速度が進歩し、一目でより多くの情報を把握できるようになりつつあるのかもしれません。

このような傾向から、ストーリーズの本懐である動画を試してみることを大いに推奨するとともに、静止画のバージョンも入れて検証することもおすすめしたいですね。


若者や女性向けじゃなくてもコンバージョン出るしCPAも合う

―若者や女性向けじゃなくてもInstagramでコンバージョン出るのでしょうか?

男性や、40代以上をターゲットにしたキャンペーンでも効果は出せます。例えば不動産や浄水器といった、Instagramのメインユーザー以外を対象にした商材でも、優秀なCPAを出せた実績があるので。

特に不動産とInstagramの相性は、最近注目しています。カルーセルのように連続していろいろな部屋を見せることができるので、向いていると思うんですよね。

ただ、フィードとストーリーズで得意領域が異なるなという実感があって、最近の事例ではオーダースーツのプロモーションがそれにあたります。プロジェクト開始時、ブランドのメインユーザーは40〜50代。20〜30代の独身貴族にターゲットを変えるために、SNS広告に挑戦したいというご相談でした。

若年層の利用が多いストーリーズへの出稿をご提案し、運用開始したところ、狙い通り20〜30代のCVを多く獲得しました。同時にフィードへも出稿していたのですが、そちらで獲得できたのは40〜50代がメインでした。

『Instagramは若い人のツールで少し上の世代には関係のないもの』というイメージをお持ちの方もらっしゃるかもしれません。けど実は、ユーザーの分布は均されてきていますし、広告に関しても40〜50代でもコンバージョンを取れています。

―とはいえ、Instagramを見ているとCV目的の広告より、ハイブランドなどのブランディングを狙った広告が目立ちますよね。

ハイブランドのような、そもそものブランド力が高いアカウントなら、そのような施策が効果的でしょう。ユーザーもハイブランドとしての振る舞いを求めていますから。逆にいうと、ゴリゴリコンバージョン目的の広告を出せない立場でもあります。

ソウルドアウトの場合は、クライアント様のほとんどが地方中小企業です。そのようなクライアント様向けには、ブランディング目的よりも直接コンバージョンを狙う施策を推奨させていただいています。リソースも予算も限られている中でやるべきことを的確にご支援させていただきたいと考えています。


運用と制作を1人で完結。高速PDCAを回す。

―成果を挙げるために取り組まれていることを教えてください。

シンプルですが、速いスピードでPDCAを回していくことが大切だと考えています。ソウルドアウトの場合は、運用と制作の両方をひとりの担当者が丸ごと引き受けることで、素早いサイクルを実現しました。数値を追っている本人だからこそ、当たる傾向を踏まえたクリエイティブを生み出しやすくもあります。

最近ですとダイエット商品の案件があります。ダイエット商品ですから、ターゲティングのキーワード候補にまず挙がるのは、「ダイエット」ですよね。しかし商材ドストライクなキーワードには競合も多くいるはず。激戦が予想されます。

ならば少し視野を広げて、ダイエットと関連のありそうなキーワードを用いたターゲティングにしてみるのはどうかと考えました。実際にダイエットを必要としているユーザーをペルソナとしてイメージし、そのユーザーが関心を持つであろう項目へと思考を広げていきます。

そうして選定したワードの一つが「旅行」。一見関係なさそうですが、ユーザーからしたら新鮮に感じ、クリックしてもらいやすくなります。これは、ひとりの担当者が運用と制作を兼ねていれるからこそ生まれた発想だと思います。

―その他にコンバージョンを出す上で、注意すべきことはありますか?

使っている管理画面によってコンバージョン状況のレポートに乖離が発生することがあります。具体的には、Facebook広告の広告アカウントで計測しているコンバージョン数より、Google Analyticsやアドエビスで計測される数値の方が少なく表示されるという現象が起こっているんです。

この原因は、Facebookが他のツールで計測できないCVパターンを拾うことができている点にあります。Facebookの計測機能はかなり優秀なので、セッション切れや別のデバイスからのアクセスを、かなり緻密に拾い上げることができるんです。

例えばアプリ内ブラウザの場合、ユーザーがそのままホームやカートの方にサイト遷移する中で参照元が書き変わってしまうことがあり、計測できないケースがあります。

クライアント様が今後の広告戦略をお決めになる上で、正しい数値を踏まえた判断をしづらくなってしまう。これは現場を悩ませてる現象でもあるんですよね。

悩みといえば、クリエイティブを当てることって、すごく難しいんですよ。営業チームとの連携で感じるは、『勝ちクリエイティブ』というものが存在していると思われがちであるということ。

実際、勝ちをを生み出すためには、何種類ものクリエイティブを作り、入稿し、修正を重ねていくしかないものなんです。一度いい反応が取れたとしても、それが永久不滅の『勝ちクリエイティブ』というわけではなく、継続して検証し続けないと、戦局が変わってきます。

当たったところですぐ枯れちゃうから、また練り直すという繰り返ししかないんですよね。なんか愚痴みたいになってしまってすみません。(笑)


「最適化」に必要な予算を確保して、相性の良い面を攻略する

―改めて、まだストーリーズ広告をやっていない、一度やったけどやめてしまった企業向けに注意すべき点を教えてください

ストーリーズの有用性には太鼓判を押せますが、かといってはじめからストーリーズだけを意識した戦略を練らないことです。

最適化を目指すための順序としては、まずFacebook広告全般の予算を確保します。Facebook広告の高度なターゲティング機能を生かすには、初めからストーリーズだけと指定するのではなく、プラットフォーム全体に予算を投下する必要があるんです。

ある程度配信して見ると、広告面によってパフォーマンスの優劣が出てくるので、その結果をもとに戦略を立てていく、という流れになります。

配信の結果、商材とストーリーズの相性がいいということがわかった段階で、はじめてストーリーズに特化したクリエイティブを準備して攻略しに行きます。

クライアント様からストーリーズ広告のみの運用のご相談をいただいても、まずFacebook広告全般への配信をご提案したいですね。

―本格的に攻略する場合、費用はどれくらい必要ですか?

Instagram広告はFacebookと同じ配信システムを利用しています。Facebook広告のターゲティングは機械学習で行われており、広告セットごとにデータを収集して学習をさせる必要があります。最適化に至る学習のためには広告セットごとに日に15件、それができなくても1週間に50件が必要と言われています。

最適化学習が優れている一方で、データが足りてないと本領発揮できない媒体ではあるので、最初の1週間は我慢の時期であることをご理解いただいた方がよろしいかと思います。

ですから、CPA10,000円と仮定した場合、Facebook広告全体に100万くらいの予算を確保していただく必要があります。

あまり多くの予算を割けないという場合、学習を早めるため、フォームやランディングページを中間コンバージョン地点に設定しコンバージョンを積極的に促すこともできます。

しかしそうして集められた学習はライトコンバージョンに最適化したもの。結果的にCVRが落ちてしまいます。

例えば、カートまでは進むけれど購買に至らないユーザーが続出してしまったり。予算と学習効率の両輪をバランス良くみながら進めていくことが、とっても難しいんです。


当たるポイント仮説「トリビア」を持ち寄りチームで検証

―現在、特に注力して攻略しているポイントはどのあたりでしょうか?

静止画と動画を組み合わせたクリエイティブ作りに、チーム全体で注力しています。画面上の一部分が動画で、その上下に静止画パーツを組み合わせたものです。

半年くらい前に私が担当した案件で、静止画と動画を組み合わせたフォーマットが有効であることがわかりました。この話を早い段階からチーム内で共有し、いろんな案件でトライしてみたんですね。さらに検証を進めると、様々な商材にも同じ効果が期待できることが明らかになったのです。

このようなトリビアを、チームで持ち寄り検証する機会を積極的に設けています。それぞれが日々の業務の中で見つけた新しい発見、検証したいことなどを常時シェアして、お互いの知見をアップデートしているんです。まだ検証はできていないものも含め、実践で生かせそうなトリビアがふつふつと誕生しています。

―最近の「トリビア」で良かったものはどんなものですか?

最近では、YouTubeで反応良好だった動画が必ずしもInstagramで反響を得るわけではないこと、逆にYouTubeで負けた動画が、Instagramなら勝ちとなるケースもあることが明らかになりました。

YouTube用に作った動画をFacebook広告でいかに活用するかという取り組みがホットですね。YouTubeで使ったものをそのまま配信するべきか、上下に枠をつけるべきか、動画自体を4:5の画角に変更するべきかなど、様々なパターンを検証中です。

近頃探っているトピックでいえば、女性向けの案件でのカルーセルの可能性です。従来までカルーセルはカラーバリエーションなど並列なものを並べる場所をして使われてきました。しかし最近では、起承転結のある直列的な内容を扱うのが流行ってきているんです。

あるコスメの案件で、使用感レビューの一般投稿に寄せたテイストのクリエイティブを投下してみたんです。

カルーセル1枚目に、『使ってみた』『使用レポ』のなどのタイトル画像、2枚目以降には、使い方や質感を伝えるような画像を入れました。4枚目には、使った結果などを報告する内容の画像を入れ、合計4枚綴りのカルーセルです。インスタグラムの発見タブに、こういう企画っぽい投稿がよく表示されるんです。

この施策が当たったので、他のメンバーの案件でも同様に試してみてもらいました。そしたらアパレルや下着の案件でも通用することがわかって、今となっては女性向けの案件ではカルーセルのレポ風クリエイティブが主流になってきつつあります。

この施策は主に女性に向けの案件で広く受け入れられています。少し毛色の違う商材だと、車の買取の訴求で、主婦層向けに広告を出したことがありました。

カルーセルで、お得に買い取る方法を紹介したところ、節約に興味のある女性からの反応が良好でした。なので、ライフハックに繋がる商材では広く使えるトレンディな手法だと考えています。

画像単体の“映え”る力に依存せず、コピーやテキストをしっかり書いたほうが反応を得られやすいという全体的な傾向とも一致していますね。

トレンドといえば、最近は漫画クリエイティブがめっきり減りましたよね。その理由はどうやら、漫画特有のニヒルさが原因だったようです。コンプレックスを刺激する漫画や誇張するようなが漫画が頻発した影響で、ネガティブなコメントが飛び交っていた時期がありました。InstagramでもTwitterでも、炎上している光景をよく見かけます。

漫画クリエイティブそのものがネガティブな印象を纏ってしまい、ユーザーから徐々に敬遠されていっている。私もそのことを少し前から察し、案件でもその手法を遠ざけるようになっていきました。

ただ、コメントがつくこと自体は、広告にとっていいことなんですよね。媒体はコメントの中身の如何にかかわらず、そのクリエイティブがユーザーに響く内容であることを評価してくれます。結果CPCが下がったりするんですけど、そこはイメージアップとコストダウンのバランスを見つつ、戦略を取っていく必要がありますね。

このようなノウハウを蓄積していく取り組みをチームをあげて実施しています。トレンドの移り変わりが早いSNSですが、コンバージョンをゴリゴリ取っていけるよう、地力をあげていきたいですね。

Instagramユーザードンピシャ世代の私たちは、普段から親しみを持ってInstagramに接しています。プロジェクト外でも、「このアイディアは使えるんじゃないか」という気付きを自然と得やすんですよね。トレンドっていうのは、どんなジャンルにおいても、ど真ん中にいる人が一番知ってるものだと思うんです。

あとは、Instagramが媒体として非常に魅力的であることを強調させていただきたいですね。アップデートがすごく頻繁に行われているし、特に日本ではFacebookよりInstagramの開発に力を入れているように思います。それだけ広告効果の高い媒体であると、多くの期待を集めている証拠でしょう。今後も広告商品の展開に注目ですね。


まとめ

この記事では、SNSマーケティング部で日頃から広告運用と制作に携わる松原さんに、ご自身が実践されたInstagram広告の運用事例を始め、ストーリーズ動画広告の攻略ポイントについてお伺いしました。

SNS広告のノウハウとは、つかんだと思ったときには、手のひらから滑り落ちている。それくらい流動的なものなのかもしれません。だからこそ、絶えずトレンドを追い検証を重ね、最適解を見つけ出そうとするプロの力が必要とされている業界なのでしょう。

話を聞いた人

松原 めぐみ(まつばら めぐみ)

2019年に新卒としてソウルドアウト株式会社に入社。同年7月よりメディアソリューション部SNSチーム(現SNSマーケティング部)に所属。Facebook・Instagram/Twitter広告運用に従事し、業界別事例集作成・全社展開を推進。集約した事例・ノウハウや幼少期から培った制作スキルを活かし、運用からクリエイティブ制作までを一貫して担当。