パブリッククラウドとは?プライベートクラウドとの違いと海外・国産種類別・主要サービス比較一覧

パブリッククラウドとは、サーバーなどのクラウド環境をインターネット経由で提供するサービスのことです。自社にサーバーなどを置く必要がなく、企業でも個人でも利用したい時に、必要なだけ使えるのが特徴です。

よく対比される、プライベートクラウドとの違いは、クラウド環境を「共有」するか「専有」するか、にあります。

プライベートクラウドが企業・組織がクラウド環境を「専有」し、構築・利用するのに対し、パブリッククラウドは専用のハードウェアなどを所有せず「共有」する点が大きく異なります。(※詳細は後ほど解説していきます。)

また、近年では、さらに「ハイブリッドクラウド」という概念も注目を集めており、それぞれのメリットや仕組み、具体的なクラウドサービスの種類についても理解しておく必要があります。

本記事では、クラウドの基本的な知識から、パブリッククラウドとプライベートクラウドの違いはもちろん、国内外の代表的なサービスや選ぶ時のポイントや注意点まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説していきます。

目次


1. そもそも「クラウド」って?今さら聞けない基礎知識

パブリッククラウドとプライベートクラウドの違いを理解する前に、前提となるクラウドの知識について説明しておきます。すでにご存知の方も復習を兼ねてお付き合いください。

クラウドサービスの概要

クラウドサービスを簡単に説明すると「インターネットを介してソフトウェアやハードウェアを利用できるサービス」という意味になります。

ユーザーはクラウドサービスへアクセスすれば、必要なだけソフトウェアやハードウェアを利用できます。クラウドを使えば、ユーザー自身がハードウェアやソフトウェアを準備する必要はありません。また、サーバーがどこでどのように稼働しているのか気にする必要もありません。

クラウドサービスのメリット・デメリット

とても便利なクラウドサービスですが、メリットだけでなく、デメリットもあります。

メリット

  • ソフトウェアやハードウェアを購入する必要がないため、初期コストが低減できる
  • 使いたい時にスピーディーに導入・利用できる
  • ソフトウェアやハードウェアのメンテナンスが削減され、運用コストが低い
  • 自社にマッチしなければ、短期間で解約できる

デメリット

  • 自社の要件に合わせてカスタマイズできない場合がある
  • インターネットがある環境でしか利用できない
  • 中長期的に見ると、「オンプレミス(自社で構築する方法)」の方が、コストが安い場合がある

2. パブリッククラウドとは?プライベートクラウドの違いって?

クラウドは、パブリッククラウドとプライベードクラウドの大きく2つに分けることができます。パブリッククラウドを理解するためには、プライベートクラウドを理解して、その違いを知っておく必要があります。

パブリッククラウドとは

パブリッククラウドは「共有するクラウド」です。クラウドの中でも、不特定多数のユーザーがサーバーやソフトウェアなどを共有する形態のクラウドサービスのことを指します。

パブリッククラウドはクラウドサービスの最大の特徴である「低コストで、使いたい時に、使う分だけ」利用できることを最大限に享受できます。また、インフラなどの運用、管理はサービス提供元が行うので、運用コストも最低限で済む点も魅力です。

プライベートクラウドとは

プライベートクラウドは、特定の企業や個人のために構築されたクラウドサービスのことを呼びます。パブリッククラウドと違って、システムを「専有」して利用するのが特徴です。

システムを専有するメリットとしては「カスタマイズ」と「セキュリティ」にあります。

カスタマイズ

従来の社内システムのように設計・管理できるので、柔軟なサービス設計が可能です。自社の特徴にあわせたシステム構成が実現できます。

セキュリティ

クローズドなシステムで独自の要件を採用することができるため、高度なセキュリティを確保することができます。

どういう場合には、どっちを使う?

コストをおさえて、使いたい時に使いたい分だけ、クラウドサービスを使いたいというほとんどの場合には「パブリッククラウド」が選ばれます。

なぜならば、パブリッククラウドのセキュリティレベルやシステムの柔軟性も上がってきているからです。まずはパブリッククラウドで実現できないか検討して、難しい場合にパブリッククラウドを検討する、というのが一般的です。

もし、パブリッククラウドでは対応しきれない、高度なセキュリティ要件や柔軟なカスタマイズ要件を満たしたい、という場合には、プライベートクラウドを検討します。

(参考)近年流行の兆しの「ハイブリッドクラウド」って?

ハイブリッドクラウドとは、近年注目を集めているクラウド形態です。パブリッククラウド、プライベートクラウド、そしてオンプレミスを組み合わせて、最適なITシステムを構築する形態のことを指します。

それぞれの形態のメリットを活かしつつ、要件に合わせてシステムを利用することができます。

例えば、特にセキュリティを重視しなければいけない、重要なデータをプライベートクラウドに保存し、それほどセキュリティを重視しないものはパブリッククラウドを利用するといった切り分けをすることができます。

また、費用の面においても、オンプレミスのIT資産をすべてクラウドに移行すると高額になりますが、必要なものだけクラウドに移行することで費用を抑えることができます。


3. 海外と国産で把握するパブリッククラウドの種類

パブリッククラウドは海外サービスと国産サービスに種類がわかれます。

パブリッククラウドといえば、グローバルで大きなシェアを持つAWS(Amazon Web Services・アマゾンウェブサービス)を中心とした海外サービスが有名で、国内でも多く利用されています。

その一方、知識に自信がなくサポートが必要な企業や、日本企業ならではの商習慣などへ適応を求める企業を中心に国産サービスの導入が広がっています。

パブリッククラウドを選ぶ際には、海外サービスと国産サービスの特徴を理解した上で臨むと良いでしょう。

海外サービスのパブリッククラウドの特徴・メリット

全世界数十カ所にあるデータセンター

世界中のデータセンターから、どのデータセンターを利用するか選ぶことができます。利用場所とデータセンターが離れているとパフォーマンスに影響が出ますので、複数のデータセンターから選べることはとても重要です。

最先端技術への対応

さまざまなSaaS、PaaS、IaaSサービスを提供しており、それぞれ高機能であることが特徴です。近年では、AIやVR、IoTなどの先端技術を開発するプラットフォームなども提供されています。

グローバルでの利用実績

最先端のハードウェア(CPUやメモリー、ストレージ)を搭載したサービスを提供していますので、大規模サービスなど高い性能を必要とするサービスでも幅広く利用されています。

海外サービスのパブリッククラウドのデメリット

高度な専門知識とスキルを必要とする

海外サービスの多くは高機能な分複雑なサービスがほとんどで、初心者やエンジニア以外の人には操作が困難です。例えば、シェア1位のAWSは分厚い書籍になるほどの知識量が必要となります。

決済方法がクレジットカードのみの場合がある

決済方法がクレジットカードしか使えない場合があり、日本の一般的な商習慣である請求書払いに対応していないサービスがあります。

カスタマーサポートが充実していない

海外サービスは、カスタマーサポートがホームページ経由のお問い合わせのみで、かつ平日日中しか対応していない場合があります。電話対応や夜間対応、オンサイト対応などは、各サービスと提携しているSIerが提供している場合がありますが、別途費用が必要です。

「かゆいところに手が届く」国産サービスのパブリッククラウド

海外サービスが対応しきれない、日本ならではのニーズに対応しているのが国産のパブリッククラウドです。以下の特徴を踏まえて、海外サービスが良いか、国産サービスが良いか、という視点を持っておくと良いでしょう。

日本の商習慣へのフィット

国産サービスは、当然ながら日本の商慣習にフィットしています。

従量制が大半の海外サービスの場合、利用量が読みづらく予算組みが難しいため、予算編成ありきの日本企業では対応に苦慮する場合も多いようです。国産サービスは、この点にきめ細やかに対応しており、月額固定の料金体系など、柔軟に対応できます。また、請求書払いにも当然対応してくらます。

カスタマーサポートの充実

電話での問い合わせや担当者の指名、オンサイトサポートなどカスタマーサービスが充実していることが多いです。サービスによっては、利用前から営業担当者がヒアリングや提案まで行ってくれるものもあります。

一般的に使われる範囲においては海外サービスとの差はない

一部、AIやVR、IoTといった先端技術や、高度な機能においては、海外サービスに強みがあります。しかし、基本的な安定性やインフラ基盤の性能などは、ほとんど差はありません。


4. パブリッククラウドのシェアと主要サービス比較一覧

次に主な海外サービスと国産サービスを紹介します。

海外サービスはシェア上位3位のサービスを取り上げます。国産サービスは、信頼できるシェアデータがないため、取り上げられることの多い3サービスを取り上げます。

海外パブリッククラウドのシェア

米国のSynergy Research Groupの調査 によると、2017年度の第4四半期におけるクラウドサービスの市場シェアは以下となっています。

1位:Amazon Web Service(AWS)
2位:Microsoft Azure
3位:IBM Cloud

Amazonが首位で35%程度、2位はMicrosoftで13%程度、3位はIBMで8%程度となっています。首位のAmazonが2位以下を大きく引き離していることがわかります。

※出典:Cloud Growth Rate Increases; Amazon, Microsoft & Google all Gain Market Share

主要な海外パブリッククラウド3選

Amazon Web Services(アマゾンウェブサービス)

現在、世界でもっとも利用されているサービスです。AmazonはECサイトで培った技術を利用し、AWSというクラウドサービスを世界でいち早く展開しました。ワールドワイドに90を超えるサービスが提供されています。

サーバーやストレージ、データベースやネットワーク等の基本的なインフラを提供するほか、機械学習やIoT等の先端技術に関するサービスも提供しています。
高度な知識と技術もった方には特におすすめのWebサービスです。

Microsoft Azure(マイクロソフトアジュール)

Microsoftが提供するAzureは、データベース等のミドルウェアを提供するPaaSとしてスタートし、その後、仮想マシンなどを提供するIaaSの提供を開始しました。

Azureの特徴の一つは、企業が利用することを前提としていることです。また、オンプレミスとクラウドが連動して動作するよう設計されており、ハイブリッドクラウドを採用しやすいという特徴があります。

IBM Cloud(アイビーエムクラウド

IBMが提供するサービスは、一般的なIaaSに加えて、AIとして有名な「Watson」の開発環境やERPシェア大手のSAPのプラットフォーム、IoTやブロックチェーンなどの先端技術プラットフォーム、ハイブリットクラウド対応などの観点からシェアを集めています。

主要な国産パブリッククラウド3選

ニフクラ

富士通クラウドテクノロジーズ株式会社が提供する純国産のパブリッククラウドサービス、6,500以上の導入実績があります。

海外サービス含め、ほとんどのサービスが従量課金である中、従量課金と定額課金の2タイプのプランを提供しています。

また、スペック別に61ものプランを提供しており、小規模サービスから大規模オンラインゲームまでさまざまな領域で利用されているサービスです。インフラ構築の提案から運用業務の委託(BPO)、オペレーターが対応するヘルプデスクなどきめ細かいサービスが特徴です。

ConoHa(コノハ)

GMOが提供するサービスで、低額かつシンプルな作りになっていることからスタートアップやベンチャー企業を中心に利用されているサービスです。

個人で利用する人も多く累積で13万アカウント以上の実績があります。平日日中のみとなりますが、電話でのサポートも対応しています。

さくらインターネット

さくらインターネットは、インターネットが普及しはじめた90年代後半にいち早くサービスを提供した歴史あるサービスです。

個人から中小企業、スタートアップなど幅広い企業に利用されています。カスタマーサポートは、メール、電話、チャット、担当者指名、対面から指定できます。


5. まとめ

本記事では、パブリックの概要やメリット・デメリット、海外サービスと国産サービスの違い、主なサービスについて解説しました。

パブリッククラウドを活用することで、初期費用を低減し、かつ導入期間も大幅に短縮することができます。世界はクラウド利用の潮流ですので、ぜひこの機会にパブリッククラウドを利用してみてはいかがでしょうか。