リテールメディアとは、小売業者が自社のWebサイトや、店舗内のポップやデジタルサイネージを通じて広告配信を行ったり、広告スペースを提供する広告モデルのことです。
リテールメディアを活用することで小売業者は、ブランド認知度の向上や消費者の購買行動を促すキャンペーンを実施できます。
またメーカーは、小売業者のプラットフォームを利用して、自社製品を消費者に直接宣伝することが可能になり、消費者は自分の興味やニーズに合った商品情報に容易にアクセスできるようになります。
このようにメリットの多いリテールメディアですが、具体的には何をすればよいのか、どのように進めたらよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、リテールメディアの基礎や、注目されている背景、メリット、種類、実施の方法、注意点などの情報を一挙にご紹介します。
リテールメディアを活用して売上を増加したい小売業者やメーカーの方は、ぜひご一読ください。
目次
リテールメディアとは
リテールメディアとは、小売業者が自社のオンラインプラットフォームや店舗内のデジタルディスプレイを通じて広告スペースを提供する広告モデルのことです。
この手法により、小売業者はオンラインとオフラインの両チャネルで統合されたメッセージを発信したり、両チャネルから得た顧客情報を活用して、効果的なキャンペーンを発信することができます。
また、メーカーは小売業者の保有するWebサイトなどのチャネル上に広告を配信することで見込み顧客との接点を増やし、小売業者は広告収益を手にし、消費者は興味度合いの高い商品と出会う機会が増えるなど、多くの利点が存在します。
このように、リテールメディアはマーケティングにおいて、ブランドの認知度向上、消費者の購買行動への直接的な影響、そして広告収入の新たな源泉として、小売業者にとって重要な戦略的ツールとなっています。
リテールメディアが注目されている背景にある3つの要因
リテールメディアが注目されている背景には、消費者の購買行動の変化とデジタル技術の進化が大きく関係しています。
中でも主な要因を3つご紹介します
消費者の購買行動が変化しオンラインとオフラインの境界がなくなった
現代の消費者は、オンラインとオフラインの境界なく情報を得て購入を行うようになり、この変化に適応するため、リテールメディアという新しい広告形態が登場しました。
消費者のショッピング体験への期待は高まっており、パーソナライズされた情報を提供するリテールメディアは、これらのニーズに対応することができるツールです。
デジタル技術の進化で興味や行動に連動したターゲティングが可能になった
デジタル技術の発展は、リテールメディアの可能性を広げています。
データ分析、AI、機械学習などの技術を活用することで、小売業者は広告の効果を最大化し、消費者体験を向上させることができます。
これらの技術は、消費者の興味や行動を正確に把握し、ターゲット広告の精度を高めることに貢献しています。
強まる個人情報保護規制への対策として注目度が高まった
近年、消費者のプライバシー保護に対する意識の高まりと共に、個人情報保護に関する規制が強化されています。
特に、3rd Party Cookieを利用した消費者追跡とデータ収集に対する規制が厳しくなっており、1st Party Dataの活用の重要性が高まっています。
1st Party Dataとは、企業が直接顧客から得るデータです。
小売業者が自社のWebサイトやアプリ、店舗などから得た顧客のデータを基に、パーソナライズされた広告やプロモーションを効果的に展開できます。
小売業者はリテールメディアを活用することで、個人情報保護規制の影響を受けることなく、顧客に対してより関連性の高いマーケティングを実施することが可能となります。
参考:【総まとめ】Cookie規制の影響とマーケティングにおける対策
リテールメディアのメリット6つ
リテールメディアは、小売店、メーカー、消費者の三者にとって異なるメリットをもたらすもので、新しい消費者と企業の間のコミュニケーション方法となっています。
ここでは代表的な6つのメリットを小売店、メーカー、消費者に分けてご紹介します。
リテールメディアの種類7つ
小売店へのメリット
1.新たな収入源の創出
小売店は、自社のオンラインプラットフォームや店舗内のデジタルディスプレイを利用して広告スペースを提供することで、新たな収入源を創出することができます。
2.顧客データを活用できる
小売店は、リテールメディアを通じて収集した顧客データを活用し、顧客の購買行動や嗜好をより深く理解することができます。
この情報を基にしたマーケティング戦略は、より効果的な広告展開や商品の在庫管理に役立ちます。
メーカーへのメリット
3.消費者にリーチする機会が増える
リテールメディアを利用することで、メーカーは自社の商品やブランドを直接消費者に紹介することができます。
特に、購買意欲が高いターゲット顧客へのアプローチは、ブランド認知度の向上や販売促進に直結します。
4.プロモーション効果の最大化が期待できる
メーカーは、小売店のプラットフォームを通じて行うプロモーション活動で、即時性や関連性の高い広告を展開することができます。
これにより、新製品のローンチや季節限定のキャンペーンなどが効果的に消費者へと伝えられます。
消費者へのメリット
5.パーソナライズされたショッピングを体験できる
リテールメディアは、消費者一人ひとりの興味や購買歴に基づいたパーソナライズされた広告を提供します。
これにより、消費者は自分に合った商品やサービスの情報を容易に得ることができ、ショッピング体験が向上します。
6.情報取得が容易になる
リテールメディアを通じて、消費者は新商品やプロモーション情報を迅速に入手することが可能になります、購買決定も容易に行うことができます。
リテールメディアの種類7つ
リテールメディアには、様々な種類が存在します。ここでは代表的なものをオンラインとオフラインに分けてご紹介します。
オンラインのリテールメディア4つ
1.オンラインストア内広告
代表的なリテールメディアのひとつとしてオンラインストア内で表示される商品リストやバナー広告が挙げられます。
消費者が商品を検索または閲覧している際に関連商品やプロモーションを紹介し、購買意欲を刺激します。
顧客データをターゲティングに活用することで、消費者の関心に基づいたパーソナライズされたショッピング体験を提供することも可能です。
2.ソーシャルメディア広告
小売業者が運用するFacebook、Instagram、Twitterなどのソーシャルメディアプラットフォームを利用した広告です。
小売業者はこれらのプラットフォーム上で直接消費者と対話し、新製品の発表、セール情報、ユーザーレビューなどを共有することができます。
ソーシャルメディアの広告は、高いエンゲージメントを生み出しやすい点が大きな特徴です。
3.Eメールマーケティング
顧客データベースに基づいた個別のEメールを送信するマーケティング手法です。
新商品の紹介、限定セールの案内、顧客ごとのおすすめ商品など、パーソナライズされた情報を提供することで、顧客との関係を深め、リピート購入を促進します。
参考:メールマーケティングとは?プロが教える、費用対効果抜群の3つの使い方
4.モバイルアプリ広告
小売業者の公式モバイルアプリ内で展開される広告です。
プッシュ通知やアプリ内バナーを通じて、ユーザーに直接プロモーション情報を届けます。
アプリユーザーは既にブランドに興味を持っているため、高い転換率を期待できるメリットがあります。
オフラインのリテールメディア3つ
5.店頭デジタルサイネージ
店舗内に設置されたデジタルスクリーンを活用した広告です。
最新のセール情報、商品の使用方法、顧客レビューなど多岐にわたるコンテンツをリアルタイムで表示します。
店舗の物理的空間を活用して、消費者の購買体験を豊かにすることが可能です。
参考:【2024年最新版】デジタルサイネージ配信システムおすすめ23選を比較!選び方も紹介
6.QRコードキャンペーン
店舗内に設置するポップなどに記載されたQRコードをスキャンすることで、消費者を特定のWebサイトやプロモーションページに誘導します。
このインタラクティブなアプローチは、消費者の好奇心を刺激し、新商品の詳細情報や限定オファーに簡単にアクセスさせることができます。
7.郵送
商品と郵送時にカタログやクーポン、サンプルなどを消費者の自宅に直送する手法です。
デジタル化が進む現代においても、直接手に取ってもらえるメリットを活かしたプロモーションは、特に高齢層などのインターネットの利用が限られた層に対して有効です。
リテールメディアを実施する流れ7ステップ
次に、リテールメディアを実施する際の流れを7つのステップに分けてご紹介します。
ステップ1:目的の設定
リテールメディア成功への第一歩は、目的の設定から始まります。
売上増加、ブランド認知度の向上、新商品のプロモーション、顧客ロイヤルティの強化など、達成したい具体的な目標を定めます。
例えば認知度を向上するためには、複数のチャネルでその商品やメッセージを繰り返し配信することが重要ですし、顧客ロイヤリティを高めるためには興味関心に応じたオファーを用意するなど、目的に応じてすべきことが変わってきます。
ステップ2:ターゲットオーディエンスの選定と理解
効果的なリテールメディアキャンペーンを実施するためには、ターゲットとなる消費者層を定めて、深く理解することが重要です。
年齢、性別、興味関心、購買行動など、ターゲットオーディエンスの特性から分類や分析を行いましょう。
ステップ3:チャネルの選定
前述のとおり、リテールメディアの種類は多岐にわたります。
目的とターゲットオーディエンスに基づき、チャネル(オンライン広告、ソーシャルメディア、店頭ディスプレイなど)を選定します。
例えば、若年層をターゲットとする場合、若年層の利用率が高いSNS媒体などを選定することでリーチできる可能性が高まります。
また、オフラインのチャネルを利用する際には計測の方法も検討する必要があります。
例えば来店したユーザを計測するためにはBeacon設置などが必要となります。
ステップ4:コンテンツやキャンペーンの開発
選定したチャネルに適した、魅力的でパーソナライズされたコンテンツやキャンペーンを開発します。
商品の特徴や利点を強調し、消費者の興味を引きつけるビジュアルやコピーを用意しましょう。
ステップ5:キャンペーンの実施とデータ収集できているかの確認
ここまでの準備が整ったらキャンペーンを実施しましょう。
実施後の状況に応じて戦略やコンテンツを調整するためにも、データがしっかりと収集できているかを確認することが重要です。
ステップ6:効果測定と分析
キャンペーン終了後、設定した目的や目標に対する成果を測定します。
トラフィック、コンバージョン率、売上、ROIなどの指標を分析し、得られた洞察を次のキャンペーンに活かしましょう。
ステップ7:最適化と再実施
効果測定と分析の結果を基に、キャンペーンの最適化を行います。
成功した要素はさらに強化し、期待通りの成果をもたらさなかった部分は改善策を講じます。
改良されたキャンペーンを再度実施し、継続的な改善を目指しましょう。
その他:広告サービスの設計と営業
リテールメディアでメーカーからの広告収益を上げるためには、課金形態、料金、契約期間などのサービス設計が必要です。
自社の売上増加を目的に実施した結果をもとに、値付けを行うなどして広告メニューを準備して、メーカーへ声掛けを行いましょう。
リテールメディアを実施する際の注意点4つ
最後に、リテールメディアを実施する際の注意点を4つご紹介します。
効果的なキャンペーンを展開するためにも以下の点にはご注意ください。
1.ターゲットオーディエンスのニーズに応じた情報を提供する
リテールメディアを効果的に実施するためには、ターゲットオーディエンスのニーズと興味を深く理解することが重要です。
そして、セグメントごとにカスタマイズされたキャンペーンなどの情報を用意することで、高いエンゲージメントと効果を期待できます。
逆に、提供するコンテンツは、ターゲットオーディエンスにとって価値があり、関連性の高いものでなければならないとも言えます。
低品質または無関係な広告コンテンツは、ブランドイメージを損なう原因となり得ます。
2.データプライバシーと規制を遵守する
リテールメディアキャンペーンを実施する際には、個人情報保護法を遵守し、消費者のプライバシーを尊重する必要があります。
他にも、GDPRなどのデータ保護法も一般化しており、これらの情報を計画段階で必ず確認するようにしましょう。
参考:総務省|個人情報保護
EU(外国制度) |個人情報保護委員会
3.一貫したメッセージを発信する
リテールメディアの成功には、複数のチャネルを効果的に統合し、シームレスな消費者体験を提供することが重要です。
チャネル間でのメッセージの一貫性を保ち、オンラインとオフラインの戦略を連携させることで、全体のキャンペーン効果を高めます。
4.競合との差別化を意識する
競合他社との差別化を図ることが、消費者の注意を引き、ブランドの魅力を高めるためには不可欠です。
自社のデータを活用してキャンペーンを行うことで効率の向上は期待できますが、それを行うだけで競合優位性を手に入れられるというわけではありません。
独自の価値提案やクリエイティブなキャンペーンアイデアによって、ターゲットオーディエンスの心を捉えましょう。
リテールメディアに関するよくあるご質問
リテールメディアの実施を検討中の方に役立つQ&Aをまとめています。
Q.リテールメディアがECに与える影響は?
A.リテールメディアは、EC(電子商取引)のプラットフォームにおいて広告主が特定の顧客層に対してターゲティング広告を提供する手段として活用されており、売上向上に寄与しています。広告効果の測定がより容易になり、より精度の高いマーケティング施策が可能となるでしょう。
Q.リテールメディアが従来の広告モデルとどのように違うか?
A.従来の広告モデルは広範なオーディエンスをターゲットにしていたのに対し、リテールメディアは特定の顧客行動データを活用して、より細分化されたターゲティングが可能です。これにより、広告主は広告費を効率的に活用できるようになっています。
Q.リテールメディアの導入による店舗売上への影響は?
A.オンラインとオフラインのデータを統合することで、リテールメディアは店舗での売上向上にも寄与します。例えば、オンライン広告が店舗への来店を促進し、結果的に売上が増加するケースがあります。
Q.リテールメディアが中小企業に与える影響については?
A.リテールメディアは大企業だけでなく、中小企業にも新しい広告機会を提供します。特に、特定のニッチな市場をターゲットにした広告が可能となり、限られた広告予算で効果的なマーケティングが実施できます。
Q.リテールメディアがDX化に与える役割は?
A.リテールメディアは、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる要素の一つです。広告データのデジタル化と活用により、企業はより効率的なマーケティング戦略を展開できるようになります。
まとめ
本記事では、リテールメディアの基礎や、注目されている背景、メリット、種類、実施の方法、注意点などの情報を紹介しました。
リテールメディアとは、小売業者、メーカー、消費者にまで利益をもたらす広告の新しい形です。
小売業者にとっての売上促進だけでなく、メーカーにとっての宣伝の場でもあり、消費者にとっては快適なショッピング体験につながります。
しかし、その効果を最大化するためには、ターゲットオーディエンスの理解や、適切なチャネルの選定、パーソナライズされたコンテンツの提供などが欠かせません。
また、プライバシー規制の遵守などへの注意も必要です。
これらのポイントに注意して、データに基づく継続的な分析と最適化を行うことで、リテールメディアキャンペーンを効果的に実施することが期待できます。
そして検討や実施の際には、本記事で紹介した情報が一助となれば幸いです。