販売戦略とは?販売を促進しシェアを拡大するための基礎まとめ

販売戦略

販売戦略とは、企業がターゲットとする市場での自社製品やサービスの販売を促進し、利益を最大化するためのアプローチです。

市場ニーズの理解、ターゲット顧客の特定、価格設定、販売チャネル選定、プロモーション活動、差別化などのアクションを行い、市場シェア拡大を目指します。

近年では販売経路の複雑化により、顧客とのタッチポイントは増えており、企業は多様なアプローチ方法から自社に適したものを選択する必要が出てきました。

しかし、戦略にはどのような種類があるのか、具体的にはどのように実行すればよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、販売戦略の基礎や、マーケティングや営業戦略との違い、戦略の種類、代表的なフレームワーク、戦略構築の流れ、販売戦略のトレンドなどの情報を一挙にご紹介します。

販売戦略の構築にお悩みの方は、ぜひご一読ください。

目次


販売戦略とは、効率的な販売活動を実現するための戦略

販売戦略とは、自社商品・サービスを「誰に」「どのように」販売していくかの道筋や方法を決め、効率的な販売活動を実現していくための戦略です。

この戦略では、市場のニーズを理解し、製品の価値を顧客に伝え、競合他社と差別化する方法を定義します。

具体的には、ターゲット顧客の特定、価格設定、販売チャネルの選定、プロモーション活動の計画などの計画が含まれ、売上の増加や、市場シェア拡大、企業の成長促進などを目的としています。

販売戦略とマーケティング戦略の違い

次に、販売戦略とマーケティング戦略の違いについて説明します。

「販売を促進する」という点でしばしば混同されることが多い二つの戦略ですが、マーケティング戦略が「顧客に製品をどのように望ましいものと感じさせるか」を考えるのに対し、販売戦略は「顧客に製品をどのように購入させるか」について考えます。

項目マーケティング戦略販売戦略
焦点市場ニーズの理解と製品開発製品を顧客に販売する方法
目的製品やサービスに対する需要の創出売上の増加と市場シェアの拡大
活動内容市場調査、製品開発、ブランディング、広告価格設定、販売チャネルの選定、プロモーション活動など
対象幅広い市場と潜在顧客顕在化した顧客層

また、マーケティング戦略では、市場のニーズや欲求を理解し、その情報を基に製品やサービスを市場に合わせて開発することに焦点を当てるのに対し、販売戦略は、すでに市場に導入された製品やサービスをどのようにして最終的な顧客に販売するかに焦点を置いていることも大きな違いです。

販売戦略と営業戦略の違い

次に、販売戦略と営業戦略の違いについてもご紹介します。

販売戦略は「何を売るか、誰に売るか、どのように価値を伝えるか」に関するものであり、営業戦略は「どのようにしてその取引を成立させるか」に注力します。

項目営業戦略販売戦略
焦点リード生成と顧客との関係構築製品のポジショニングと販売目標の達成
目的個別の顧客や取引の獲得売上の増加と市場シェアの拡大
活動内容リードの追跡、顧客とのコミュニケーション、契約締結価格設定、販売チャネルの選定、プロモーション活動など
対象個別の顧客市場全体

営業戦略は、販売戦略の一部として機能し、直接的な顧客との関係構築、リードの生成とフォローアップ、契約の締結に重点を置きます。

つまり、営業戦略は販売プロセスの実行面に焦点を当て、個別の顧客や取引における具体的な技術や方法に関わります。

一方、販売戦略はより広範囲にわたり、製品のポジショニング、価格設定、販売チャネルの選択など、企業全体の販売目標達成に必要な方針や手段を定義します。


販売戦略の代表的な5つの手法

販売戦略を成功に導くためには、市場の状況や企業の強みに応じた適切な手法を選択することが重要です。

そこで、販売戦略の代表的な手法を5つご紹介します。

1.コストリーダーシップ戦略

コストリーダーシップ戦略は、業界内で最低コストの生産者となることを目指す戦略です。

規模の経済や効率的な運営を通じてコストを削減し、低価格で製品を提供します。

この手法は、価格に敏感な顧客を引き付け、市場シェアを拡大することを目的としています。

2.サンドイッチ戦略

サンドイッチ戦略では、高品質かつ中価格帯の製品を市場に提供し、上位市場と下位市場の両方をターゲットにします。

この戦略は、価格と品質のバランスを重視する顧客層を捉えることを狙いとしています。

3.ニッチ化戦略

ニッチ化戦略は、市場の特定のセグメントやニーズに焦点を当て、そのニーズを満たす製品やサービスを提供することで競争から抜きん出る手法です。

特化した製品やサービスにより、競争が少ない市場ニッチで強固な地位を築きます。

4.バンドル効果を用いた戦略

バンドル販売戦略は、複数の製品やサービスをセットにして販売することで、顧客に追加価値を提供し、全体の販売を促進する方法です。

この戦略は、顧客が個別に購入するよりも価値を感じることで、売上と顧客満足度の向上を目指します。

5.ランチェスター戦略

ランチェスター戦略は、市場の弱点を突いた攻撃的なマーケティング活動に重点を置く戦略です。

少数の強力な競合に対しては集中攻撃を、多数の弱小競合に対しては分散攻撃を行い、市場での優位性を確立します。

この戦略は、特に競争が激しい市場において、明確なポジショニングと強力なブランドイメージの構築を目指します。


3つの販売方法(直販/間販/ネット販売)

販売方法を細分化すると多くの方法が存在しますが、大別すると以下の3つに分けることができます。

1.直接販売(直販)

直接販売とは、企業が直接顧客に製品を販売する方法です。

この方法では、企業は顧客と高いレベルの接点を持ち、直接的なフィードバックを得ることができます。

2.間接販売(間販)

間接販売とは、小売業者や代理店などの第三者を通じて製品を市場に提供する方法です。

この方法を用いることで、企業は広範囲の市場アクセスを確保することができます。

3.ネット販売(オンライン販売)

ネット販売とは、インターネットを通じて製品やサービスを販売する方法で、直販・間販の両形態をとることがあります。

この方法は、コスト効率が高く、世界中の顧客にリーチできるなどの利点があります。


販売戦略のフレームワーク

販売戦略を策定する際にはフレームワークを用いることが有効です。

以下に、販売戦略に活用される代表的なフレームワークを5つ紹介するので、企業の目標や状況に応じて積極的にフレームワークを活用しましょう。

1.AIDAモデル

顧客の購買プロセスを「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲望)」「Action(行動)」の4段階に分けて考えるフレームワークです。

販売戦略において、顧客が製品に気付き、興味を持ち、購入したいと思い、最終的に行動に移すまでの過程を戦略的にサポートします。

2.SWOT分析

企業の「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」を分析することで、戦略を立てる際の基礎となるフレームワークです。

販売戦略においては、市場の機会を捉えつつ、脅威を回避し、企業の強みを活かしながら弱みを補う形で戦略を策定します。

3.4P分析

製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)の4つの要素を分析するマーケティングのフレームワークで、販売戦略の策定にも用いられます。

これらの要素を適切に組み合わせることで、ターゲット市場に製品を効率的に届け、売上を最大化します。

4.バリュープロポジションキャンバス

顧客のニーズと企業の製品・サービスが提供する価値をマッチングさせることを目的としたフレームワークです。

顧客の課題と欲求を深く理解し、それに対する解決策を製品やサービスでどのように提供できるかを考えることで、魅力的な価値提案を明確にします。

5.セールスファネル

顧客が製品やサービスの購入に至るまでのプロセスを、広い入口から狭い出口へと進むファネル(漏斗)に例えたモデルです。

意識認知から関心、検討、購入に至るまでの各段階で、顧客に対してどのようなアプローチを取るべきかを戦略的に計画します。


効果的な販売戦略を構築するための8つのステップ

次に、販売戦略の策定と実行の流れを8つのステップに分けてご紹介します。

1.市場分析の実施

市場のニーズ、サイズ、成長の機会、トレンドを理解することがスタート地点です。

競合他社の分析も含め、市場の全体像を把握することで、機会を見極め、脅威を特定します。

2.ターゲット顧客の特定

理想的な顧客プロファイルを作成し、ターゲット市場を明確に定義します。

顧客のニーズ、購買行動、好みなどを深く理解することが重要です。

3.競争優位の確立

自社の製品やサービスが提供するユニークな価値を特定し、競合と差別化します。

このユニークセリングポイント(USP)は、販売戦略の中心となります。

4.販売目標の設定

具体的かつ測定可能な販売目標を設定します。

これらの目標は、企業の長期的なビジョンと連携している必要があり、短期的、中期的、長期的な計画に分けて設定します。

5.販売チャネルの選択

製品を市場に提供するための最適な販売チャネルを選択します。

直接販売、間接販売、オンライン販売など、製品と市場に最適な組み合わせを見つけ出します。

6.販売促進戦略の策定

製品の認知度を高め、購買意欲を刺激するためのプロモーション戦略を計画します。

割引、セールスプロモーション、広告キャンペーン、コンテンツマーケティングなどが含まれます。

7.実行計画の作成

戦略を実行に移すための詳細なアクションプランを作成します。

この計画には、タイムライン、予算、担当者、必要なリソースが含まれます。

8.モニタリングと評価

販売戦略の効果を定期的にモニタリングし、目標達成度を評価します。

KPI(重要業績評価指標)を設定し、データを収集して分析することで、必要に応じて戦略を調整します。


販売戦略を立てるときに意識すべき3つのポイント

販売戦略を立てるにあたり、「顧客ニーズの把握」「市場における自社の立ち位置の把握」「販売手法・販売経路の精査」の3つを意識しましょう。

1.顧客ニーズの把握

販売戦略において何よりも重要なのは顧客ニーズの把握です。

商品・サービスの品質が良くても、市場にニーズがなければ売れません。

まずは市場にニーズがあるのか、提供する商品・サービスがニーズに合っているのかを確認しましょう。

2.市場における自社の立ち位置の把握

市場における自社のポジショニングを客観的に判断しましょう。

「自社は業界内でどのような立ち位置にあるのか」「競合他社と比較した時の自社の強み・弱みは何か」などを言語化していきます。

ターゲットやサービス内容、販売の方法・経路などの検討材料になります。

3.販売手法・経路の精査

どのように販売していくのか、具体的な方法や販売経路を決定していきます。

販売方法や経路の精査には以下のような情報収集が必要です。

  • ターゲットのニーズ
  • 見込み顧客の関心度
  • 既存顧客の顧客層
  • 既存顧客数・売上・顧客単価・利益率

販売経路の精査にはSTP分析や4Pなどのフレームワークを活用します。


販売戦略のトレンド10選

最後に、販売戦略のトレンドを10個ご紹介します。

近年の急速なテクノロジーの進歩の影響から、デジタル技術を用いつつ、マーケティングと並行して実行する戦略が用いられることが多いです。

1.Eコマースとオムニチャネル戦略

オンライン販売の増加に伴い、Eコマースプラットフォームを最大限に活用し、オムニチャネル戦略を採用する企業が増えています。

オンラインとオフラインの販売チャネルを統合し、顧客にシームレスな購買体験を提供します。

2.リモートセールスとバーチャル体験

パンデミックによる影響で、リモートワークやオンラインコミュニケーションが普及し、バーチャルセールスやオンラインでの製品体験が一般的になりました。

これにより、地理的な制約なく、より広い顧客層にリーチし、製品やサービスを紹介する新たな機会が生まれています。

3.ソーシャルメディアの活用

ソーシャルメディアは、ブランドの認知度を高め、製品やサービスに関する情報を広く拡散する強力なツールです。

企業はソーシャルメディアを利用してターゲット顧客と直接的にコミュニケーションを取り、顧客エンゲージメントを高めます。

4.インフルエンサーマーケティングの活用

ソーシャルメディアインフルエンサーとのパートナーシップを通じたマーケティングは、特に若年層の顧客に対するリーチと影響力を増大させます。

信頼されるインフルエンサーによる製品やサービスの推奨は、ブランド認知度の向上と購買意欲の促進に効果的です。

5.コンテンツマーケティング

価値あるコンテンツを提供することで、顧客の関心を引き、信頼関係を築きます。

教育的な記事、ビデオ、インフォグラフィックなどを通じて、製品やサービスの価値を伝え、顧客の購買意欲を刺激します。

6.SEO(検索エンジン最適化)

ウェブサイトやコンテンツを検索エンジンに最適化することで、オーガニック検索からのトラフィックを増やし、見込み客を獲得します。

キーワード戦略、ユーザー体験の向上、高品質なバックリンクの構築が重要です。

7.データ分析とパーソナライゼーション

顧客データを収集・分析し、個々の顧客に合わせたパーソナライズされたマーケティングメッセージを送ることで、より高いコンバージョン率を目指します。

顧客の購買履歴、行動パターン、好みなどを基に、カスタマイズされたオファーを提供します。

8.人工知能と機械学習の活用

人工知能(AI)と機械学習は、顧客データの分析、顧客サービスの自動化、パーソナライズされたマーケティングコミュニケーションの提供など、販売戦略の多方面で活用されています。

これにより、企業は顧客の行動や好みをより深く理解し、効率的にニーズに応えることができます。

9.カスタマーエクスペリエンスを重視

顧客体験を向上させることは、販売戦略においてとても重要です。

オムニチャネル戦略の強化、カスタマーサポートの質の向上、購買プロセスの簡素化などを通じて、顧客満足度を高めることが、長期的な顧客ロイヤルティの確保につながります。

10.サステナビリティや地域社会への貢献を取り入れる

環境への配慮や社会的責任を重視する消費者が増えているため、サステナビリティや倫理的なビジネスプラクティスを取り入れた販売戦略が注目されています。

エコフレンドリーな製品やサービス、透明性の高いサプライチェーン、地域社会への貢献などが、購買決定において重要な要素となっています。


まとめ

本記事では、販売戦略の基礎から、マーケティングや営業戦略との違い、様々な戦略の種類、代表的なフレームワーク、戦略構築の流れ、そして現代の販売戦略トレンドなどの情報を一挙に紹介しました。

販売戦略は、市場ニーズの理解、ターゲット顧客の特定、価格設定、販売チャネルの選定、プロモーション活動、そして差別化など、多岐にわたる要素を組み合わせることで、企業の売上増加、市場シェアの拡大、そして成長促進を目指します。

販売戦略の成功には、市場の変化に柔軟に対応し、顧客ニーズに合わせて戦略を調整する必要があります。

コストリーダーシップ、サンドイッチ戦略、ニッチ化、バンドル販売、ランチェスター戦略といった異なる手法から状況に合った戦略を選択しましょう。

また、Eコマースやソーシャルメディアなどのデジタル技術の活用などの現代のトレンドを取り入れることで、より効果的な販売戦略を構築することが可能となります。

自社の製品やサービスを市場に効率的に販売し、目標を達成するための戦略を策定してみましょう。

そして戦略策定の際には、本記事で紹介した情報が一助となれば幸いです。

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