「web3(ウェブスリー)」または「web3.0(ウェブサンテンゼロ)」とは、インターネットの新たな形を表す概念で、次世代の分散型インターネットの総称です。
こちらの概念に対して、「なんとなく知っているけれど専門用語が多く、明確に理解できていない」、あるいは、「なぜ注目されているのか、どんなメリットがあるかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、web3とはそもそも何なのかや従来のweb1.0や2.0との違い、どのようなメリットがあるのかについて、わかりやすく説明します。
本記事を読めば、web3の概要がわかり、今後ビジネスにどう活用していけるか検討材料にすることができます。
目次
web3(web3.0)とは特定の企業に依存しない分散型インターネットの総称
web3(web3.0)とは、インターネットの新たな形を表す概念で「分散型インターネット」とも呼ばれます。
ここでいう「3.0」という言い回しは、ソフトウェアのバージョンの管理のときに使われる表現です。
具体的には「特定のプラットフォーマーに依存することなく、ブロックチェーン技術によってデータを個人に分散させる」ことを目指したインターネット概念を指します。
つまり巨大テックのプラットフォームを介さずに、ユーザー同士で直接、データやコンテンツ、お金のやり取りができることを目指しています。
従来オンライン上でサービスを利用する際には、決められたルールに従って活用する必要がありました。
場合によってはユーザーのアカウントの凍結や、少人数が作るアルゴリズムの中でプラットフォーム側の収益化が可能でしたが、このような中央集権的な情報権力を分散させるために、web3という概念ができたという経緯があります。
参考:「デジタル時代のコンテンツ」戦略の方向性と課題の整理 | 政策会議
web1.0とweb2.0との違い
web3以前に存在していたweb1とweb2について、それぞれの概念を簡単に説明します。
まず、以下の図表をご覧ください。
web1(web1.0)
web1は、テキストを読んだり、メールをやり取りしたりする「一方通行のインターネット」時代のことです。
web1が主流だったのは1990年代半ばから2000年代前半までです。
データの処理はサーバーが行い、ユーザーのデバイスはPCでした。
当時はインターネットの接続速度が遅かったため、画像を表示させるのに時間がかかってしまっていたこともあり、コンテンツはテキストと静止画像が中心でした。
バナー広告やドメイン名売買などが主な事例です。
当時webサイトは「ホームページ」と呼ばれていて、情報発信者はごく一部の限られた人が行っていました。
また、SNSやブログなどのように双方向性の機能は存在していませんでした。この時代、メールでの通信は可能でしたが、チャット機能はまだ存在していなかったため、情報通信は一方的でした。
インターネットは「情報を閲覧すること」を中心に利用されていた点が、大きな特徴です。
web2(web2.0)
web2は、「双方向コミュニケーションのインターネット」時代のことです。
インターネットの目的は、web1の時代には「情報の閲覧」であったのに対し、web2では「情報の交換」へと変化しました。
参考:SNSマーケティングとは?6つの事例から学ぶ始め方と成功させるコツ|LISKUL
また、画像や動画の配信ができるようになり、双方向の情報通信が可能になったことが大きな特徴です。
代表的なサービスとして、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)や、チャット機能が誕生しました。
しかし、ユーザー同士で流通しているお金をプラットフォームが収集して分配するというスタイルであるため、プラットフォームの利用で個人情報や行動データ、手数料も収集されてしまい、データの所有権が自分自身にはない状態になっている点が問題視されています。
参考:次世代インターネット「Web3(3.0)」とは 理解すべき4つの要素|日経クロストレンド
web3(web3.0)で実現できること
1990年代以降、web1とweb2と変化しているネット環境ですが、web3でできるようになることは以下の3点です。
- 仲介組織を介さずに自由に通信ができる
- セキュリティが向上する
- 人種や国境を超えてサービスを利用できる
仲介組織を介さずに自由に通信ができる
web3の時代になると、データ通信にサーバーを管理する仲介組織を介さずに通信することができます。
ブロックチェーンの仕組みにより、P2P(ピア・ツー・ピア)と呼ばれるネットワーク接続が実現すると、特定の企業によるデータ管理の必要がなくなり、企業とユーザーが直接、自由に通信ができるようになります。
個人間で自由にやりとりできるようになれば、従来であれば構造上支払っていた中間マージンが不要になります。
セキュリティが向上する
web3のブロックチェーン技術による分散型ネットワークでは、取引履歴などの情報を暗号化するため、セキュリティが頑丈になります。
web2での問題点は、ハッカーがひとつのサーバーのハッキングに成功すれば、自由に情報を盗んだりデータの書き換えができるなど、サーバー攻撃が容易でした。
しかし、ブロックチェーンによる分散型ネットワークなら、ひとつのサーバーが攻撃されてしまえば、すぐに情報流出してしまうといったトラブルを防ぐことができます。
また、 web3のサービスを使う場合、個人情報の提供は不要です。個人情報を扱わないので、流出や悪用されるリスクがありません。
参考:【2024年最新版】サイバー攻撃対策ソフトおすすめ27選を比較!選び方も紹介|LISKUL
人種や国境を超えてサービスを利用できる
web3のサービスであるDApps(分散型アプリケーション)は、人種や国境を越えて誰でも利用できます。
このDAppsを活用したサービスは、分散型ストレージや身分証明、ブロックチェーンゲームなどがあり、世界中の誰もがサービスにアクセスできるという特徴があります。
また、匿名で利用できるため、国や企業は規制することはできません。
web3(web3.0)に関連するトレンド技術3つ
web3はビジネスにどのように活用する動きがあるのでしょうか。
ここからは、web3に関連するトレンド技術を3つご紹介します。
- NFT(非代替性トークン)
- DAO(自立分散型組織)
- DeFi(分散型金融)
NFT(非代替性トークン)
NFT(Non-Fungible-Token:非代替性トークン)とは、アート作品や音楽作品、イラストなどあらゆるデジタルデータに、暗号資産に用いられるブロックチェーンを組み合わせることで、作品としての唯一性を持たせる技術のことです。
NFTはデジタルデータの所有権を公的に証明できるため、NFTを活用することで取引に透明性が生まれるのが利点のひとつです。
最近ではNFTを利用したデジタルアートや、知的財産(IP)ホルダーがキャラクタービジネスを活用したNFTに参入したりと、さまざまな事例が登場しています。
海外では「Beeple」というアーティストのアート作品が、約6,900万ドル(約75億円)で落札されたという事例もあります。
参考:NFTを活用するなら知っておきたい事例11選!活用方法・注意点も解説 | LISKUL
DAO(自立分散型組織)
DAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)とは、「株式会社」のアップデートとも言われる新しい組織の形のことです。
特定の所有者や管理者が存在せず、分散したメンバーによる一定のルールを通じて意思決定が行われるのが特徴で、意思決定の際には全員が同等の発言権を持ちます。
DAOでは、同じ目的を持つ人たちが集まって資金を集め共同で管理し、あるプロジェクトに共同出資したり、NFTを収集したり、独自のコミュニティを築いたりします。
DAOは、ブロックチェーン上に構築され、年齢や性別、国籍関係なく世界中の人々が参加できます。
また、すべての契約や取引などがブロックチェーン上に履歴が残るため、透明性と公平性が高いことが大きな特徴です。
SocialToken(ソーシャルトークン)
SocialToken(ソーシャルトークン)とは、簡単に言うと仮想通貨のことで、インターネット上でメディア製品を作成する個人やコミュニティのための暗号化されたトークンのことです。
「トークン」とは、デジタルマネーや、ネット決済時に使う認証デバイスのことを指します。
ソーシャルトークンは、特定の人物(多くの場合は有名人)や特定のコミュニティ、特定のブランドに関連したトークンであるというように定義されています。
パンデミック以来トレンドになっており、観客とのコミュニケーションや、自分のアートや活動の収益化が難しくなったことから、ソーシャルトークンを活用してファンサービスやコミュニティーのメンバーシップを充実させる有名人もいます。
参考:「パンデミックで登場したソーシャルトークンという新概念」分析記事 | BTCBOX Blog
DeFi(分散型金融)
DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)とは、ブロックチェーンのネットワーク上に構築される金融エコシステムのことで、ブロックチェーンの契約の自動化により、金融機能を自動化する仕組みです。
従来の金融システムとは違い、銀行などの仲介業者が存在せず、ユーザー同士で直接取引を行います。
そのため、取引時に発生していた手数料などのコストを抑えられるのが特徴です。
また、取引がすべてブロックチェーン上で行われるため、取引の内容を誰でも確認することができます。
送金や決済だけでなく、仮想通貨ウォレットがハッキングされたときの保険(例:Etherisc)やレンディングサービスが登場しています。
web3(web3.0)が活用されている業界
web3は、現段階では特に以下の業界で活用されています。
- ゲーム市場
- 音楽市場
- 小売・EC業界
- アニメ、漫画市場
web3の特徴は、ブロックチェーン技術によってデジタル上でデータの改ざんや虚偽ができないようにすることです。
そのため、これまで簡単にコピーされてしまっていたゲームや音楽などの作品に価値を見い出せるようになっています。
また、現実に近い世界観を仮想空間上に構築するメタバースの技術によって、仮想の国や土地、店舗などでさまざまな体験をすることが可能になりました。
これらの特徴を特に活かせる業界が上記にあたりますが、それ以外のアパレル、不動産業界など企業もweb3に進出しています。
参考:【メタバース活用事例8選】歴史や定義・NFT/Web3との関係を解説! | XR-Hub
web3(web3.0)を活用したサービス例
web3を活用した具体的なサービス例をご紹介します。
- Webブラウザ「Brave(ブレイブ)」
- NFTマーケットプレイス「OpenSea(オープンシー)」
- NFTゲームアプリ「My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)」
- 分散型ソーシャルグラフ「CyberConnect(サイバーコネクト)」
Webブラウザ「Brave(ブレイブ)」
Brave
引用:BraveBrave
Brave(ブレイブ)は、広告ブロック機能やプライバシー保護機能などを搭載した次世代のブラウザです。
従来のブラウザと比べて、個人情報の保護機能が強化されているのが特徴です。
広告ブロック機能や、マルウェアなどの有害プログラムをブロックする機能が搭載されています。
第三者機関の調査でBraveがChromeやSafariよりも高速なブラウザとして認定されているほか、Chromeの拡張機能はそのまま利用できるなど、動作面でも快適になっています。
また、仮想通貨トークンと連携し「見るだけで稼げるブラウザ」として、新しい広告運用やシステムの実現を目指しています。
参考:初心者でもわかるリスティング広告とは?費用から運用のやり方まで徹底解説!|LISKUL
NFTマーケットプレイス「OpenSea(オープンシー)」
OpenSea
引用:OpenSea
OpenSea(オープンシー)は、世界最大手のNFTマーケットプレイスです。
NFTマーケットプレイスとは、アートや音楽などのNFT作品を売買できるプラットフォームのことです。
OpenSeaでの個人間のNFTの取引は、ウォレットを連携させれば完了し、従来の決済システムは必要ありません。
参考:【初心者でもわかる】ネット決済の導入方法とは?種類や費用面も徹底解説!|LISKUL
OpenSeaの具体的な取引方法については、以下の記事を参考にしてみてください。
参考:NFTを活用するなら知っておきたい事例11選!活用方法・注意点も解説 | LISKUL
NFTゲームアプリ「My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)」
My Crypto Heroes
My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ、通称:マイクリ)は、日本で開発されたNFTゲーム(ブロックチェーンゲーム)です。
プレイしながら仮想通貨を稼げるゲームとして注目されており、課金して得たキャラクターやアイテムなどの価値が保証されているのが特徴です。
NFT化されているキャラクターやアイテムを手に入れることができるので、それらをOpenSeaなどのマーケットプレイスで売買することが可能です。
参考:My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)とは?特徴や始め方・稼ぐ方法を徹底解説 | Market α
分散型ソーシャルグラフ「CyberConnect(サイバーコネクト)」
CyberConnect
引用:CyberConnect
CyberConnect(サイバーコネクト)は、従来のSNSとは違った新しいタイプのSNSで、web3の思想が反映された世界初の分散型ソーシャルグラフです。
ソーシャルグラフとは、SNSでの交流を通して形成されるweb上の人間関係のことです。
分散型ソーシャルグラフは、管理者は存在せず、登録時の個人情報の入力が不要なのが特徴のひとつです。
ユーザーが主体となってフォロワーなどのデータを管理することができます。
アカウントを作成するには、仮想通貨を扱うウォレットを接続するだけでOKです。
web3(web3.0)を活用するにあたり注意すべきこと
次世代のインターネットであるweb3には、メリットだけでなく注意すべき点があります。
web3は新しい概念でまだ浸透していないため、トラブルが生まれる可能性があります。
そのため、web3関連のサービスを扱う際は以下2つのことに注意をしましょう。
法的な整備が行われていない
web3の概念は新しく、登場しているサービスに関しても、明確な法律が定められていないのが現状です。
今後法整備が進み、web3が広く浸透するためにはまだまだ時間がかかりそうです。
国会でも議論が活発化しており、成長戦略の要とすべきといった声もあがっているトレンドでもあるので、今後も注目して情報を集めていくようにしましょう。
利用上のトラブルはすべて自己責任となる
web3は、データの所有権はユーザー個人にあり、自己管理の必要があります。
IDやパスワードが不要になりわずらわしさから解放される一方、トラブルに遭っても救済を求められる企業も組織も現時点で存在しません。
web2の時代より、自己責任が問われる点には注意が必要です。
web3(web3.0)に関するよくあるご質問
web3.0に関係するQ&Aをまとめています。
Q.web3の普及に伴う法的な課題は何ですか?
A.web3の分散性は法的な枠組みと対立することがあります。特に、規制の適用や法的責任の所在が不明確になるケースがあり、各国での法整備が求められています。
Q.web3におけるプライバシー保護の重要性とは?
A.web3では、ユーザーが自分のデータをコントロールできることが重要視されています。ブロックチェーン技術を利用してデータの透明性を確保しつつ、プライバシーを保護する仕組みが求められています。
Q.web3がもたらす新しいビジネスモデルにはどのようなものがありますか?
A.web3では、ユーザーがデータやコンテンツの所有権を持ち、その価値を直接交換できる新しいビジネスモデルが登場しています。例として、NFTマーケットプレイスや分散型金融(DeFi)プラットフォームが挙げられます。
Q.web3の開発に必要なスキルは?
A.web3の開発には、ブロックチェーン技術、スマートコントラクトのプログラミング言語(例:Solidity)の理解、分散型アプリケーション(dApps)の開発スキルが求められます。また、セキュリティに関する知識も重要です。
Q.web3の普及に伴うデジタル著作権の管理方法は?
A.web3では、デジタルコンテンツの所有権をNFT(非代替性トークン)として管理する方法が検討されています。これにより、著作権侵害を防止し、クリエイターが自分の作品の価値を直接制御できます。
まとめ
「web3(ウェブスリー)」または「web3.0(ウェブサンテンゼロ)」は、インターネットの新たな形を表す概念で、次世代の分散型インターネットの総称です。
限られた企業が情報を集める中央集権的なインターネットに代わる新たな仕組みとして提唱された概念として注目を集めています。
ゲーム業界を中心にすでにさまざまなサービスはスタートしているものの、現状では法律が未整備であり利用には自己責任が伴うなど問題があり、広く浸透するには時間がかかりそうです。
まだまだ発展途上であるweb3ですが、世界の多くのビジネスに影響を与える可能性のある概念です。
将来的なビジネスチャンスにつながる可能性もあるため、今のうちからweb3の動向に注目しておきましょう。