STPマーケティング、またはSTP分析とは、市場から特定の顧客層を選定し、最適な製品やサービスを提供するためのフレームワークです。
STPとは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の略で、企業はフレームワークを活用することで特定の顧客層に最適化したメッセージを伝えることができます。
STPは、現代のマーケティングで戦略を策定するうえでの基礎的な役割を担っています。
しかし、具体的にはどのように活用すればよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、STPマーケティングの基礎から、それぞれの要素の活用方法、事例、近年のトレンドなどの情報を一挙にご紹介します。
STPを活用してマーケティング戦略を磨きたい方は、ぜひご一読ください。
目次
STPマーケティングとは、ターゲット顧客層に最適な商品を提供するためのフレームワーク
STPマーケティング、またはSTP分析は、市場を効果的に理解し、対象顧客に最適な製品やサービスを提供するための代表的なフレームワークです。
STPは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の各頭文字を取ったもので、マーケティング戦略を策定する際の基本的な手法とされています。
このアプローチにより、企業は特定の市場ニーズに焦点を当て、競合他社との差別化を図りながら、特定の顧客層に響くメッセージを伝えることができます。
STPマーケティングの役割は、選択と集中による効率的かつ効果的なマーケティングの実現
STPマーケティングの主な役割は、効率的かつ効果的なマーケティング活動の実現にあります。
企業は、市場のニーズと嗜好を理解し、それに応じて製品の位置づけを調整することで、効率的かつ効果的なマーケティング活動を実施することができます。
リソースを最も価値のある市場セグメントに集中し、ターゲット顧客に合わせた製品やサービスを開発したり、適切なコミュニケーション戦略を通じて顧客との関係性を強化することが可能となります。
セグメンテーションとは、市場の消費者を様々な共通項でグルーピングすること
セグメンテーションとは、市場の消費者を類似のニーズや特性を持つグループに分割するプロセスです。
この目的は、市場の広範囲に及ぶ多様な顧客の中から、企業が最も効果的にサービスを提供できる特定のグループを識別することにあります。
これにより、マーケティングのメッセージや製品開発を、それぞれのグループの具体的なニーズや嗜好に合わせて最適化することができます。
セグメンテーションの事例
たとえば、コンビニエンスストアは、市場を「オフィス街」と「住宅街」に分け、それぞれのセグメントによって商品を選別しています。
参考:参考:セグメンテーション|3つの有名事例から5分で活用法を身に付ける|LISKUL
セグメントは、行動や価値観など様々な要素からグルーピングできる
セグメンテーションには様々な方法が存在しますが、一般的な方法として、人口統計学的セグメンテーション(年齢、性別、収入、教育水準など)、地理的セグメンテーション(地域や国による分類)、心理的セグメンテーション(ライフスタイルや価値観)、行動的セグメンテーション(購買行動やブランドの利用状況)などがあります。
ターゲティングとは、価値あるセグメントを選定すること
ターゲティングとは、セグメンテーションで識別した顧客グループの中から、最もビジネスに適したセグメントを選択するプロセスです。
この選択には市場のサイズ、成長可能性、競合の状況、自社のリソースと能力などが基準として考慮されます。
ターゲティングを行うことで、企業は効率的にマーケティング活動を展開し、投資対効果を最大化することが可能になります。
ターゲティングの事例
たとえば、オフィス街のコンビニエンスストアの場合は、「ランチを買いに来る20~30代OL」などがターゲットとなります。
参考:ターゲティングで確実に成果を上げるための設定方法を徹底解説|LISKUL
ターゲット市場を選定する際には、自社の競争力も考慮する
ターゲット市場を選択する際には、市場の魅力度と自社の競争力を評価します。
市場の魅力度を評価するには、市場のサイズ、成長率、利益の可能性などを考慮します。
自社の競争力を評価するには、製品の独自性やブランドの強さ、販売チャネルなどを分析します。
これらの評価を通じて、企業は最適なターゲット市場を選択し、その市場に適したマーケティング戦略を策定することができます。
ポジショニングとは、差別化を図り価値を明確にすること
ポジショニングとは、製品やサービスが市場内でどのように認識され、顧客に受け入れられるかを決定するプロセスです。
ポジショニングの目的は、競合他社との明確な差別化を図り、顧客にとっての製品の価値と意義を強調することにあります。
効果的なポジショニングを得ることで、製品はターゲット市場において独特の地位を確立し、顧客が商品を選ぶ際に優位に立つことができます。
ポジショニングの事例
たとえば、セブンイレブンが始めた「1杯100円で挽き立てのコーヒー」は、「低価格で手軽に飲める本格的なコーヒー」としてポジショニングしています。
参考:ポジショニングを変えるだけで売上8倍?! 事例で学ぶポジショニングの活用手順|LISKUL
差別化を図るためには、競合と自社の状況を明確にすることが重要
ポジショニングを行う際には、まず競合分析を行い、市場内の他の製品やサービスとの関係を理解します。
その後、自社の製品が持つ独自の特徴や利点を明確にし、これを基に差別化戦略を策定しましょう。
競合と自社の置かれた状況を明確にすることで、企業はターゲット市場において差別化を図ったり、独自のブランド価値を創造したり、顧客のロイヤリティを高めることが可能になります。
差別化は、品質、価格、デザイン、ブランドイメージ、顧客サービスなど、様々な側面で行うことができるので、柔軟に検討しましょう。
STP分析で成功した3つの事例
事例1.ユニクロ
ユニクロは他のアパレルメーカーが気づかないようなユニークなセグメンテーションをおこない、差別化に成功しています。
セグメンテーション
顧客を性別や年齢で分けるのではなく、「カジュアル志向かフォーマル志向か」「トレンド志向かベーシック志向か」という2つのセグメントで分けました。
ターゲティング
セグメンテーションをもとに、「カジュアル志向かつベーシック志向」の顧客層をターゲットとしました。
ポジショニング
「低価格かつ高品質な衣料品を提供する企業」としてポジショニングしました。
参考:ユニクロのマーケティングから学ぶ!セグメンテーションが重要??|SONIDO
事例2.すき家
吉野家との差別化をはかったことで2008年以降に店舗数を伸ばし、現在は最大手の牛丼チェーン店となりました。
セグメンテーション
すき家は「牛丼市場」ではなく、「外食・中食・内食」というセグメントで市場を細分化しました。
「外食」に対して、「中食」とは外部で調理されたものを自宅で食べること、「内食」とは自宅で手作りの料理を食べることです。
ターゲティング
「外食・中食市場全体」にターゲットを設定することですき家は顧客層の幅を広げました。
さらに、それまでの牛丼チェーン店の顧客層のメインは男性一人客でしたが、すき家では「ファミリー層・女性層」をメインのターゲットとしました。
ポジショニング
すき家は「メニューが豊富でテーブル席もある、家族連れ・女性も入りやすい飲食店」としてポジショニングしました。
参考:牛丼「すき家」のマーケティング戦略 | 経営コンサルタント 戸塚友康 の推進力ブログ!
事例3.スターバックス
「家でも職場でもないくつろぎの空間」という「サードプレイス(家と職場の中間地点、第3の居場所)」と呼ばれるコンセプトは昨今では定番になっていますが、スターバックスは先駆けて、このサードプレイスのニーズに気が付き、成功したと言えます。
セグメンテーション
スターバックスは「大都市か地方都市か」、「経済的な地位が高いか低いか」などのセグメントで市場を細分化しました。
ターゲティング
セグメンテーションをもとに、「大都市で金銭面に余裕のあるオフィスワーカー」を主なターゲットとして設定しました。
ポジショニング
スターバックスは「高くて美味しいコーヒーをおしゃれで高級感のある空間で提供する」という、独自の路線を確立しました。
参考:【マーケティングの基本】STP分析を事例をもとに紹介 | セールスマーケティングラボ
現代のSTPのトレンド5つ
現代のSTPマーケティングは、デジタル技術の進化と消費者行動の変化により、新たなトレンドが出現しています。
これらのトレンドは、企業が市場を理解し、効果的に顧客にアプローチする方法に大きな影響を与えています。
1.テクノロジーの活用による効率化と精度向上が進んでいる
人工知能(AI)、機械学習、仮想現実(VR)などの新技術を活用することで、マーケティングの効率と精度が向上しています。
これらの技術は、顧客体験の向上や、市場予測の精度向上、製品開発の改善やコスト削減などに幅広く活用されています。
2.データ駆動型のセグメンテーションが行われている
ビッグデータと高度な分析ツールの活用により、より精密で詳細な顧客セグメントが作成されています。
たとえば企業は、消費者の行動や嗜好といったデータを分析し、マイクロセグメントを識別し、それぞれに適したメッセージを発信することが可能となりました。
パーソナライズしたアプローチが主流になりつつある
ソーシャルメディアプラットフォームやオンライン広告技術の進歩により、企業は個々の顧客に合わせたカスタマイズされたマーケティングメッセージを送ることが可能になっています。
この個別化されたアプローチを上手に活用することで、顧客エンゲージメントやブランド価値の向上が期待できます。
ダイナミックなポジショニングが行われている
市場環境と消費者の期待が常に変化するため、企業は柔軟で適応性のあるポジショニング戦略を採用しています。
たとえば、Web広告の配信面が、ユーザの反応によって自動的に最適化されるなど、市場の変動に迅速に対応することができるようになりました。
サステナビリティや社会的責任への関心が高まっている
消費者の意識の高まりにより、環境や社会的責任を重視するブランドポジショニングが重要になっています。
企業は、サステナブルな製品や倫理的なビジネスプラクティスを通じて、社会的責任を果たすことで消費者の信頼を獲得し、ブランド価値を高めています。
STPマーケティングに関するよくあるご質問
STPマーケティングを検討中の方に役立つQ&Aをまとめています。
Q.セグメンテーションを行う際の主なステップは何ですか?
A.セグメンテーションは、まず市場調査とデータ収集から始まり、その後、データに基づいて顧客グループを特定します。次に、ターゲット市場を選定し、最終的にポジショニング戦略を策定することが一般的な流れです。
Q.ターゲティングを行う際に考慮すべき要素は何ですか?
A.ターゲティングを行う際には、市場の規模、成長可能性、競合状況、自社のリソースと能力などを考慮します。これにより、最も効果的なセグメントに向けて資源を集中させることができます。
Q.STPマーケティングはどのような市場で効果的ですか?
A.STPマーケティングは、市場が多様で顧客ニーズが細分化されている場合に特に効果的です。多様なニーズに応じた戦略を策定することで、特定の市場セグメントで優位に立つことが可能です。
Q.セグメンテーションの主な分類方法は何ですか?
A.セグメンテーションの分類には、デモグラフィック(人口統計学的変数)、ジオグラフィック(地理的変数)、サイコグラフィック(心理学的変数)、ビヘイビアル(行動変数)などが含まれます。これらを活用することで、顧客の特性に合わせた戦略が立てやすくなります。
Q.STP分析を行う際に活用できる他のフレームワークは何ですか?
A.STP分析と併せて、3C分析やSWOT分析などのフレームワークを活用することが効果的です。これらのフレームワークを組み合わせることで、より深い市場理解と戦略策定が可能になります。
まとめ
本記事では、STPマーケティングの基礎から活用方法までを一挙に解説しました。
STP(Segmentation, Targeting, Positioning)とは、市場を効率的に分析し、ターゲット顧客に合わせた製品やサービスを提供するための重要なフレームワークです。
セグメンテーションでは、顧客を類似のニーズや特性を持つグループに分割し、ターゲティングでは、これらのグループの中から最もビジネスに適した市場セグメントを選択します。
そして、ポジショニングを通じて、製品やサービスを市場内で独特の地位に置き、競合と差別化を図ります。
現代のSTPマーケティングは、デジタル技術の進化と消費者行動の変化により、データ駆動型セグメンテーション、パーソナライズされたターゲティング、ダイナミックなポジショニング、サステナビリティといった新たなトレンドを取り入れています。
これらの進化は、企業がより効果的に市場にアプローチし、顧客のニーズに応える方法を提供しています。
STPマーケティングの理解と適切な実施は、企業が市場で成功を収めるために不可欠です。
このフレームワークを活用することで、企業は顧客に響く製品やサービスを開発し、効率的かつ効果的なマーケティング戦略を実行することが可能になります。
そしてフレームワークを活用して戦略を策定する際には、本記事で紹介した情報が一助となれば幸いです。