ポジショニングとは?差別化を図り競争優位を獲得する方法

ポジショニング

ポジショニングとは、製品やサービスの市場における独自の立場を戦略的に定義し、目立たせるプロセスです。

ポジショニングを行うことで、競合他社との差別化を図ったり、消費者の心に自社製品やサービスの印象を残し、ブランドや製品の価値を高めることができます

しかし、具体的には、どのようにしてポジションを決めたらよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ポジショニングの基本から、効果的なポジショニング戦略を構築するための具体的な手法や注意点などの情報を一挙に解説します。

市場での差別化を図りたい、ターゲット顧客の期待に応えたい、企業の長期的な戦略的目標を支えたいと考えている方は、ぜひご一読ください。


目次

ポジショニングとは、製品やサービスの位置を戦略的に定めること

ポジショニングをひとことで説明
ポジショニングは、市場における製品やサービスの位置付けを戦略的に定め、顧客の認識を形成するプロセスです。

この手法により、企業は自社の提供する価値を明確にし、競合他社との差別化を図ることができます。

効果的なポジショニングには、製品の特徴、価格設定、プロモーション戦略が一致している必要があり、これによって製品の独自性と魅力が消費者に伝わりやすくなります。

市場調査を基にしたデータドリブンなアプローチが求められ、ターゲット顧客のニーズと期待に応えるポジションを確立することが不可欠です。

ポジショニングが重視される理由は、競合優位性の獲得に欠かせないから

企業や事業のポジショニングが重視される理由は、競合性の高い市場ではブランドの目立ちやすさや競争優位性の獲得がビジネスの成功には欠かせないためです。

消費者の選択過程において、ポジショニングは製品やサービスを他とは明確に異なるものとして印象づける役割を果たします。

そのため、戦略的なポジショニングは、消費者の意思決定を強く影響し、購買行動を促進します。

また、市場の変化に対応するためには、定期的なポジショニングの見直しが必要であり、これが持続可能な成長とブランドの価値を支える基盤となります。

STP分析のPにあたる工程

STP分析の「P」にあたるポジショニングは、市場のセグメンテーションとターゲティングの後に続く重要なステップです。
画像説明

この段階では、製品やサービスがターゲット市場内でどのように認識され、評価されるかを計画的に策定します。

ポジショニング戦略を効果的に構築するためには、顧客の課題を理解し、それに対する解決策を如何にして提供するかが鍵となります。

これにより、企業は市場内での独自の立ち位置を確立し、顧客にとっての選択肢としての魅力を高めることができます。


ポジショニングの目的3つ

次に、ポジショニングの主な目的を3つご紹介します。

1.市場での差別化を図る

ポジショニングの最も重要な目的は、製品やサービスを市場で際立たせることです。

多くの選択肢がある市場において、消費者が特定の製品を選ぶ理由を明確にする必要があります。

効果的なポジショニングによって、企業はその製品が提供するユニークな価値を強調し、消費者の心に強い印象を残すことができます。

これは競合他社との明確な違いを打ち出すことで、ブランドの独自性を確立し、市場での視認性を高めるために不可欠です。

2.ターゲット顧客の期待に応える

ポジショニングでは、ターゲットとする顧客層が抱えるニーズや問題点を深く理解し、それに対する解決策を提供することが目的です。

企業は顧客の生活や価値観に合わせて製品を位置付け、それがどのように顧客の日常や課題解決に役立つかを明示することが重要です。

これにより、製品やサービスが顧客にとって意味のあるものとして認識され、その結果、顧客のロイヤルティや満足度が向上します。

3.企業の長期的な目標達成を支える

ポジショニングは、企業の長期的なビジョンや戦略的目標の達成に貢献します。

市場での立ち位置を確固たるものにすることで、企業はその製品ラインやブランドイメージを徐々に強化し、持続可能な成長を目指すことができます。

また、市場や顧客の動向が変わるにつれて、ポジショニングの再評価や調整を行うことで、企業は常に時代の一歩先を行く革新を続けることが可能になります。


ポジショニングの種類5つ

ポジショニング戦略は、様々な角度から研究されており、いくつかの基本となる考え方があります。

ここではその中でも代表的なポジショニングの切り口を5つ紹介します。

1.価格ベースのポジショニング

価格ベースのポジショニングは、製品やサービスを市場で最も低い価格で提供することに焦点を当てる戦略です。

このアプローチは、価格に敏感な消費者を引きつけることを目的としており、大量生産やコスト削減の技術を駆使して価格競争に優位性を持たせます。

ディスカウントストアや低価格ブランドがこの戦略を用いることで、広い市場層にアピールしています。

効果的な価格ポジショニングは、ブランドが「コストパフォーマンスの高い」選択肢として消費者の心に位置づけられることを保証します。

2.品質ベースのポジショニング

品質ベースのポジショニングは、製品の高品質や独自性を前面に押し出し、市場での差別化を図る戦略です。

このタイプのポジショニングは、特に高級ブランドや専門製品に有効で、顧客に最高の性能や素材、職人技を提供することで価値を訴えます。

たとえば、高級車やデザイナーブランド、専門的な医療機器などがこのカテゴリに含まれます。

品質に基づくポジショニングは、顧客が高価格でも購入する理由と価値を明確にする必要があります。

3.利便性に基づくポジショニング

利便性に基づくポジショニングは、製品やサービスの使いやすさ、アクセスの良さ、または購入しやすさを重視します。

この戦略は、特に忙しい現代の消費者や都市部に住む人々に適しており、時間や労力を節約できることを強調します。

オンラインショッピングプラットフォーム、ファーストフードチェーン、モバイルアプリケーションなどがこの戦略を利用しており、日常生活におけるストレスや手間を軽減するソリューションとして位置づけられています。

4.ライフスタイルに基づくポジショニング

ライフスタイルに基づくポジショニングは、特定の社会的または文化的アイデンティティや生活様式に訴えることで、製品の感情的価値を高めます。

この戦略では、製品が顧客の日常生活や個人の価値観にどのように適合するかを強調し、同じ価値観を共有するコミュニティ内での地位を築きます。

エコフレンドリーな製品、アウトドア用品、フィットネス製品が良い例です。

これらは特定のライフスタイルを持つ人々に特化しており、そのライフスタイルを象徴するアイテムとなることを目指しています。

5.競合比較に基づくポジショニング

競合比較に基づくポジショニングは、他社製品と直接比較することで自社製品の優位性を訴える戦略です。

このアプローチは、広告やマーケティングキャンペーンで競合製品との違いを強調し、特定の機能、価格、利便性の面で優れている点を明確にします。

消費者が製品選択を行う際に明確な比較基準を提供することで、意思決定プロセスを支援し、製品の選択肢としての魅力を高めます。


ポジショニングを行う方法4ステップ

次に、ポジショニングを行う方を4つのステップに分けて説明します。
ポジショニングのフロー図

1.市場調査を実施する

ポジショニングの第一歩は、市場調査を通じてターゲット市場のニーズ、欲求、および行動パターンを理解することです。

市場のトレンド、顧客の意見、競合他社の戦略を詳細に分析することで、ポジショニングの方向性が見えてきます。

どのニッチ市場が利用可能か、またはどの市場セグメントが最も収益性が高いかを特定していきましょう。

参考: 5分でわかる市場調査とは?4つの種類と代表的な7つの方法を徹底解説│LISKUL

データは以下3つの方法で収集するのが効果的です。

1-1.デスクリサーチ(二次情報の収集)

■ 業界レポート
各種業界団体や市場調査会社が発行する業界レポートや市場予測を利用します。これらのレポートは、業界のトレンド、市場規模、成長見込みなどの貴重なデータを提供します。

■ 競合分析
競合他社のウェブサイト、年次報告書、投資家向けプレゼンテーションなどからデータを収集します。これにより、競合の製品、価格戦略、市場シェアなどを把握できます。

参考:競合分析とは?分析の手順と役立つフレームワーク7選│LISKUL

■ 公的統計
政府や公的機関が提供する統計データも有効です。人口統計、経済成長率、消費者支出などのデータが、市場の潜在的な規模を理解するのに役立ちます。

■ 業界ニュースと出版物
専門のニュースサイト、業界誌、ビジネスジャーナルなどから最新の業界動向や技術革新の情報を得ることができます。

1-2.フィールドリサーチ(一次情報の収集)

■ アンケート調査
ターゲット顧客を対象にオンラインまたはオフラインでアンケートを実施し、製品やサービスに対する意見やニーズを直接聞き取ります。

参考:アンケート調査の5つのステップ【アンケート作成のテンプレ付き】│LISKUL
   はじめてのアンケート作成で失敗しない3つのコツと4つの注意点、便利ツール5選│LISKUL    

■ フォーカスグループ
特定の製品やサービスに関心がある小グループを集め、詳細なディスカッションを通じて詳細な意見を収集します。

■ インタビュー
業界の専門家や重要顧客に対して個別インタビューを行い、深い洞察や意見を得ます。

参考:ユーザーインタビューとは?種類や実施の流れ、ポイントを紹介│LISKUL

■ 観察
実際の店舗やイベントで顧客の行動を観察し、実際の購買行動や製品に対する反応を分析します。

1-3.デジタルデータ分析

■ ソーシャルメディア分析
ソーシャルメディアプラットフォーム上での顧客の言及や評価を分析することで、顧客の意見やトレンドを把握します。

■ ウェブアナリティクス
自社のウェブサイトのトラフィック分析を通じて、顧客の興味や行動パターンを理解します。

2.ターゲット顧客を明確に定義する

次に、ターゲットとなる顧客層を明確に定義します。

このステップでは、市場調査で得られたデータを基に、理想の顧客プロファイルを作成します。

顧客の年齢、性別、所得、ライフスタイル、購買行動などの詳細を把握し、製品やサービスを誰に向けて販売するのかを明確にすることがポイントです。

最終的には、これらターゲット顧客のニーズに合わせて製品をカスタマイズを行っていくため、この工程で手を抜くのは禁物です。

ターゲティングについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

参考:ターゲティングとは?基礎や種類から近年のトレンドまで一挙解説!│LISKUL

3.差別化ポイントを決定する

ターゲット顧客が明確になったら、競合から差別化するポイントを決定します。

製品の独特な特徴、価値提案、または利便性を強調することが重要です。

どのようにして自社製品が他社のオファリングと異なるか、またはより優れているかを顧客に明確に伝える必要があります。

このステップは、ブランドメッセージを通じて、消費者の心に残る独自のブランドイメージを作り上げるために欠かせません。

4.コミュニケーション戦略を実行する

最後に、定義したターゲット市場と差別化ポイントを基に、効果的なコミュニケーション戦略を計画および実行します。

マーケティングチャンネルの選定、プロモーション活動の計画、そしてブランドメッセージの一貫性を保つことが重要です。

消費者に対して一貫したメッセージを提供し、ブランドの認知度を高めることで、ポジショニング戦略の成功を確実なものにします。

たとえば、顧客に伝えたいメッセージをもとにキャッチコピーを作成し、商品パッケージ、HP、Web広告などで一貫して使用しましょう。

キャッチコピーの作り方について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

参考:【5分で学ぶ】響くキャッチコピーの4つの特徴と作り方│LISKUL


ポジショニングで失敗しないための4つのポイント

次に、ポジショニングで失敗しないために抑えておくべきポイントを4つ紹介します。

1.メッセージには一貫性をもたせる

顧客にポジショニングを理解してもらうためには、ブランドメッセージの一貫性が不可欠です。

製品の広告、プロモーション、顧客サービスに至るまで、すべてのコミュニケーションで一貫したメッセージを維持することが、ブランドの信頼性を高め、顧客との関係を強化します。

2.市場やトレンドの変化に気を配る

市場の動向は常に変化しています。ポジショニング戦略もこれに応じて柔軟に調整する必要があります。

顧客のニーズや市場のトレンドが変わった際には、ポジショニング戦略を見直し、時代に合ったものに更新することが成功を保証します。

3.過度な細分化を避ける

ターゲット市場を細分化することはポジショニングにおいて重要ですが、過度に細分化してしまうと、市場が小さくなりすぎてビジネスが持続不可能になるリスクがあります。

バランスの良いセグメンテーションを心がけ、十分な市場規模を確保することも重要です。

4.顧客の意見を取り入れながらチューニングしていく

顧客からのフィードバックを収集し、それをポジショニング戦略に反映させることも重要です。

アンケートやインタビューなどで顧客からの直接的な意見を収集したり、アクセス解析ツールなどで行動パターンを分析し、それに基づいて製品やメッセージを調整することで、市場での適応性を高めることができます。


ポジショニングに関するよくあるご質問

ポジショニングについて役立つQ&Aをまとめています。

Q.ポジショニングとブランディングの違いは何ですか?

A.ポジショニングは市場での製品やサービスの位置付けを明確にするプロセスで、競合との差別化やターゲット顧客への訴求を目的とします。一方、ブランディングはブランド全体のイメージを確立し、長期的な顧客の信頼や認知を構築することを指します。

ブランディングについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

参考:11個の要点でちゃんと理解する「ブランディングってなんなのよ?」

Q.ポジショニングマップとは何ですか?

A.ポジショニングマップは、競合製品との相対的な位置付けを視覚的に示すツールです。縦軸と横軸に異なる属性(例:価格と品質)を設定し、自社製品が市場内でどの位置にいるかを把握するのに役立ちます。

Q.市場が狭い場合、ポジショニングはどうすべきですか?

A.市場が狭い場合、ニッチ戦略を採用し、特定の顧客層に特化したポジショニングを行うことで、強い顧客ロイヤルティを構築し、競合他社との競争を避けることが有効です。

Q.USPとポジショニングの違いは何ですか?

A.USPは製品の独自の強みや差別化ポイントに焦点を当てる概念で、ポジショニングはその強みを市場でどのように位置づけるかを決める戦略です。USPはポジショニングの一部と考えられます。

Q.STP分析とは何ですか?

A.STP分析とは、マーケティング戦略のフレームワークで、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の3つのプロセスを通じて、市場を細分化し、特定のターゲット市場に向けた戦略を立て、自社製品やサービスを競合と差別化する方法です。

STPについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

参考:STPマーケティングとは?基礎から活用方法まで一挙解説!


まとめ

本記事では、ポジショニングの基本から、効果的なポジショニング戦略を構築するための具体的な手法や注意点などについて解説しました。

ポジショニングとは、企業が如何にしてその製品を消費者の心に刻み込むか、そして市場内で独自の認識を築くかに関する戦略的な取り組みです。

ポジショニング戦略を成功させるためには、市場調査に基づく正確なデータの分析、ターゲット市場の明確な定義、競合との明確な差別化、そして一貫性のあるコミュニケーション戦略の実行が重要です。

また、市場や顧客のニーズが変化するにつれてポジショニングを適宜調整する柔軟性も必要です。

これらのポイントをおさえてポジショニングを定義することで、消費者に製品の価値を認識してもらい、持続的な競争優位を築き、市場で成功を収めることが期待できます。

競争優位や持続可能性を強化したいとお考えの方は、これを機に自社製品やサービスのポジショニングの定義に挑戦してみてください。