15社のビッグデータ活用事例から学ぶ、成果につながる活用の方法

「ビッグデータ」というワードがビジネス界で飛び交うようになって数年がたち、最近はデータを活用した事例も増えてきたように思います。

そこで、今回はネット上に存在する売上向上やコスト削減につながる最新のビッグデータの活用事例を集めてみました。

ビッグデータに詳しい方は利用方法のいちアイデアとして、ビッグデータの内容を知らない方はどんなものなのかを理解するために、ご一読いただければと思います。

目次


そもそもビッグデータとは?

ビッグデータとは「事業の拡大に役立つ膨大なデータ」のことを指します。楽天やローソンなどの企業はこの膨大なデータを管理、分析して売上を上げたり、仕入れの最適化をおこなっています。

身近な例で言えば、SuicaやPASMOなどのICチップ付き交通カードもビッグデータを活用しています。

ICチップには乗車・降車の履歴や購買履歴などのデータが蓄積されます。それによって、ユーザーが自由に交通機関を利用できるだけではなく、エリアマーケティングにも役立つビッグデータを集めることが可能です。

このように、日々のあらゆる場面でビッグデータの活用が行われ、今では企業や人にとってなくてはならない存在となっています。

ビッグデータの活用で得られる価値の例

ビッグデータを活用することで、以下のようなメリットを生み出すことが可能です。

・業務フローの最適化によるコストの削減
・商品の組み合わせ変更による売上の最大化
・未来の売り上げ予測
・事業の問題や課題箇所の特定
・新たな仮説や可能性の発見

参考:ビッグデータとは?メリットや活用事例、注意点、活用までの流れ

ビッグデータは今テクノロジーの進化によって注目されている

ビッグデータと聞いて「ただの膨大なデータだ」「今までと何が違うのか?」「なぜ今更話題に上がっているのか?」と考える方もいるのではないでしょうか。

今ビッグデータが注目されているのはテクノロジーの進化によってデータを使ってできることが増えたためです。

テクノロジーの進化によって、
1.今まで取得できなかったデータを取得できるようになった
2.今まで記録や保存が難しかった量のデータを管理できるようになった
3.今まで活用できなかった量のデータを処理できるようになった
ということがあげられます。

たとえば、スマホの登場により皆さんの日々の活動データを取得できるようになりましたし、それを記録するデータベースの容量も日々増加しています。さらにこれらを組み合わせて分析するためのCPUやメモリも進化しているため、膨大なデータを処理・活用することができるようになりました。

ビッグデータを分析するための具体的な手法や、分析・活用を円滑にするおすすめのBIツールについては以下の記事を参考にしてください。

参考:【やさしく解説】ビッグデータの分析手法、成功事例、必要な前準備

最近は中小企業もビッグデータを活用

近年、ビッグデータ活用の機会は確実に身近になってきています。以前は実際のところ、膨大なデータを溜め込むことも、企業に適した分析を行うことも相当のコストがかかり、主にビッグデータを活用しているのは大企業でした。

最近では中小企業がビッグデータを活用している事例も出てきており、これもビッグデータの注目度が高まってきている要因と考えられます。

参考:アクセス解析ツールの一覧 ≫


ビッグデータを活用するメリット3つ

ビッグデータの活用は何となく便利になるイメージがありますが、実際には以下の3つのようなメリットがあります。

  • 現状を高精度で把握できる
  • 新しいビジネスを生み出すヒントになる
  • 実行した内容の検証が容易になる

ビッグデータを集めることで、高精度な分析を行うことができます。たとえば、「今人気のある商品」や「このユーザーが買いそうな商品」など、販売戦略に活かせるデータを素早く更新することが可能です。

また、ビッグデータの存在により、今までになかったビジネスを創り出すことができます。ビッグデータを活用して新しいビジネスを作ったり、データをもとにビジネスの課題を抽出することができるようにするなど、企業の発展にも役立てることが可能です。

メリットについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

参考:ビッグデータとは?メリットや活用事例、注意点、活用までの流れ


ビッグデータの活用事例15社を紹介

ビッグデータを活用して成果を出した、様々な業界の企業の事例を紹介します。

具体的にどのようにビッグデータを活用したのかわかるため、ビッグデータの活用に興味がある方はぜひ参考にしてください。

事例1. ダイドードリンコ:アイトラッキング分析と
購買データの組み合わせで売上が前年比1.2%増

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ダイドードリンコはZの法則に従い、主力シリーズ「ブレンドシリーズ」を左上に配置していました。しかし、自動販売機にアイトラッキングを取り付けて調査したところ、自動販売機に限っては下段に視線が集まることが分かりました。

その後、下段に主力製品を配置したところ、売り上げが前年比1.2%増となりました。このように常識と考えられている事柄も、ビッグデータを分析することで覆る可能性があります。

参考:これまでの常識をくつがえすビッグデータ分析シリーズ ~第一回:常識にとらわれない発見で売り上げ増加~|ビッグデータマガジン

事例2. TRUE&CO:自分の体ににあったブラをオンライン購入できるシステムを開発

TRUE&COは、過去の顧客の注文と返品データを分析することで、メーカーによるサイズのばらつきなどを数値化し、オンラインで、自分の体にフィットするブラジャーを購入できるシステムを開発しました。ユーザーは初回アクセス時に日頃着用しているブラジャーのブランド名とサイズ、好みのフィット感、服のサイズなどの情報を入力することで、以降は、その人にフィットする商品のみが表示されます。

このように、精度の高いパーソナライズを実現するためにもビッグデータは活用されています。

参考:ビッグデータ活用で売上を伸ばすオンライン小売業の成功事例|JNEWS.com

事例3. スシロー:皿にICタグをとりつけ、レーンに流れる寿司の鮮度や売上状況を管理し売上向上

スシローはすべての寿司皿にICタグをとりつけ、レーンに流れる寿司の鮮度や売上状況を管理しています。どの店で、いつどんな寿司がレーンに流されいつ食べられたのか、どのテーブルでいつどんな商品が注文されたのかなどのデータを毎年10億件以上蓄積することで、需要を予測し、レーンに流すネタや量をコントロールしています。

スシローのケースのように需要を予測することは、ビッグデータの代表的な使い方のひとつと言えます。需要を予測するということは、機会の獲得や無駄コストの削減につながるため、直接的に利益に跳ね返ります。

参考:ビッグデータの高速分析で、隠れていた課題や問題点を可視化回転寿司業界のNo.1を支える迅速な経営判断と店舗オペレーションを実現|アシスト|

事例4. GEO:王道的なビッグデータのクラスタリングでテコ入れ

GEOは会員向けアプリをリニューアルすることでビッグデータを取得し、他社のネット通販やVOD(ビデオ・オン・デマンド)などの攻勢に立ち向かっています。具体的なデータの利用方法としては、会員を「趣味別」及び「売上貢献別」にクラスタリングすることで、趣味に応じたクーポンの発行やメールを送付し売上の向上を測ったり、新作DVDの仕入れを最適化しています。

このケースでは、個人の趣味と、同じ趣味を持つ人の傾向を蓄積することで、各々に最適なレコメンドを提供するCRMの一部としてビッグデータが活用されています。

参考:マーケティングにおけるビッグデータの位置付けを整理する(ゲオホールディングスの場合)|IDEAim|BusinessMemo4

事例5. ローソン:売上31位のほろにがショコラブランを売り続ける理由

ローソンはポンタの導入により、ビッグデータの分析が進んでいます。分析の結果、例えばほろにがショコラブランが「1割のヘビーユーザーが6割の売り上げを占めている」と分かりました。その分析結果をもとに、リピート率の高いほろにがショコラブランは、今も継続的に販売されています。

このケースでは、ビッグデータを活用することで、短期的に見ると売上の低い商品を、他の商品と比較しつつ長期的に観察することで、仕入れの最適化を行っています。扱う商品数が増えれば増えるほど、仕入れの管理は困難になるため、効率よく仕入れの最適化を行う上で、ビッグデータを活用が重要性を増してきます。

参考:今注目をあつめる「ビッグデータ」活用事例|feedforce全力ブログ

事例6. 大阪ガス:コールセンターの依頼内容から修理に必要な部品を割り出す

大阪ガスは、過去数百万件にわたる修理履歴や機器の型番データを保有しています。また、コールセンターに寄せられる給湯器などの修理依頼の内容も同時に蓄積しています。これらの情報を組み合わせることで、ケースごとに必要となる部品を自動的に割り出すことに成功しました。

このケースでは修理作業員が行う作業を自動化するためにビッグデータが活用されています。人件費はサービス業においてウェイトが重いため、非常に有効な活用法であると考えられます。

参考:ビッグデータを価値につなげる活用事例15(その1)IT Leaders|

事例7. 城崎温泉:観光客のニーズをつかみ売上増

城ヶ崎温泉は、携帯電話やスマートフォンをお財布代わりに使えるシステムを導入することで、観光客の利用履歴を蓄積し、定量的な分析を行いました。何時頃に観光客が多いか、人の組み合わせは親子連れが多いのか、男女ペアが多いのか、また、どこの外湯が一番人気なのかなどを分析することで、より効果の高い施策を実施したり、温泉街の街づくりやサービス、広報の方法などの改善につながりました。

また、花火など観光客が立ち止まって楽しむイベントよりも、灯篭流しなど観光客が街を歩くイベントのほうがお店の売上増に貢献するという発見もされました。このケースでは、ビッグデータを活用しユーザのニーズを見極めることで、彼らに対して行う施策の取捨選択や最適化を図っています。

参考:ビッグデータ活用の本質とその進め方~城崎温泉の事例にみるデータ活用のポイント~|salesforce

事例8. 株式会社開園システム:タクシー乗務員用アプリで機会獲得&業務効率化

株式会社開園システムは、タクシー業界向けにビッグデータを活用したアプリを提供しています。GPSで蓄積された過去の乗車位置を、月・曜日・時間帯別に地図上に表示したり、リアルタイムの実写位置を表示したりすることで、どこで顧客が増えているのかが把握できます。

また定期的に長距離の乗車する顧客の曜日や時間を割り出すことで、長距離乗車目的の顧客を効率よく獲得することができます。稼働中の車両の位置、状態を地図上に表示し、条件にあった車両の検索、お客様からの迎車依頼に対して、お客様に近い順の通知することで配車係のコストも削減しています。

上記のケースでは、ビッグデータをスマホやタブレット向けのアプリと組み合わせることで、GPSを活用した情報を取得しています。

参考:ビッグデータ有効活用で売上はまだ伸びる! 論より証拠。発案者自身が乗務し、結果を出した仕組みの提供開始|IT批評

事例9.カルフォルニア州オークランド:犯罪データを蓄積して、未然に予防

アメリカ カルフォルニア州オークランドは全米屈指の犯罪都市で、観光客や、市民が犯罪に巻き込まれないための注意を呼びかけるシステムにビッグデータを活用しています。犯罪の種類別(殺人・強盗・から泥酔まで様々)、日にち別、時間別に、フィルタが可能で色別に確認することができ、一見してその日その時に危険な場所を特定できるため、利用者は危険を避けることが可能となります。

このように一般人が利用する公的なシステムにもビッグデータは活用されています。

Oakland Crimespotting: Map

参考:犯罪をゼロにできる!?場所や種類が一目でわかる犯罪MAP|OptDataScienceLab

事例10. 楽天:レコメンドだけでなくランキングの更新頻度とジャンルの細分化で売上向上

代表的なレコメンド機能を活用するだけで30%の売上向上が可能と言われていますが、楽天は更新頻度の短縮と、ジャンルの細分化を試みて大きな成果をあげました。これはビッグデータを分析することで、ランキング頻度が高いほど売上は増加し、ジャンルが細かいほど全体の売上があがるという結果に基づいた改善施策です。

情報の更新頻度が高いほどサイトへの信頼感が増すことは利用者の誰しもが漠然と感じているかと思いますが、それを数値として確認できるのもビッグデータの恩恵といえるでしょう。

参考:流通BMS.com|楽天の執行役員がビッグデータでEコマースの売上げを急伸させた秘策を公開 ――流通システム標準普及推進協議会 2014年度通常総会――

事例11.ホームセンター:従業員の配置を調整して売り上げ15%アップ

ホームセンターの売り上げデータと従業員の行動データや、商品の陳列データを蓄積したところ、顧客単価の高いスポットの特定に成功しました。そしてそのスポットに従業員を重点配備したところ、売り上げが15%もアップしたという、まさに予測通りの結果となったそうです。

参考:ビッグデータ+人工知能と人間の幸福感がビジネスの業績を向上させる|WEB担当者Forum

事例12.コールセンター:休憩中のスタッフ同士の雑談を増やして売り上げ27%アップ

受注率の異なるコールセンターのスタッフにセンサーを取り付けてデータを検証したところ、受注率の高いコールセンターのスタッフの方が低いコールセンターのスタッフよりも休憩中の活動が活発だということが判明しました。また休憩中にスーパーバイザーがスタッフに声をかけていくとスタッフの雑談が盛り上がるということもわかりました。

そこで休憩中にコミュニケーションを活性化させるような施策を1年間実施したところ、コールセンターの売り上げが27%増加したとのことです。

参考:ビッグデータ+人工知能と人間の幸福感がビジネスの業績を向上させる|WEB担当者Forum

事例13.ヤクルト社:自社商品による顧客の奪い合いを解消して売り上げ20%増加

ヤクルト社の商品は1つのカテゴリに150点も存在し、店頭で顧客を奪い合っていました。またその組み合わせを分析し最適化しようにも、俗人的に作成されたスプレッドシートが社内に分散していました。

そこでそれらのデータを一元管理し分析したところ、15本パックと7本パックは購入する顧客層が異なるため、並べて販売すると両方の売り上げが増加するということを発見しました。そしてこのような分析と改善を繰り返した結果、20%の売り上げ増につながりました。

参考:ヤクルトの売り上げを大幅に伸ばしたデータアナリティクスの秘密|ITmedhiaエンタープライズ

事例14.アンデルセン:データから製造量を決定し売り上げ増加

広島県でパンの製造・販売事業者であるアンデルセン社では元々、各店舗の店長が自身の経験から製造量を決定していました。そこでアンデルセン社は販売履歴と来店客数をを関連付けて分析し、商品の売れ行きパターンを予測しました。

その予測を取り入れなかった店舗に対して、予測通りに製造量を決定した店舗は2%ほど売り上げが高かったそうです。

参考:第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか|総務省

事例15.石川県羽咋市:農業で人工衛星の画像データを活用して収益アップ

石川県の中部に位置する羽咋市は、地場の民間企業とともに人工衛星の画像データから米の味の計るシステムを開発しました。

そして画像からタンパク質の含有量を測定することで、一般的に美味いと言われる量のタンパク質を含有した米を安定して収穫できるようになり、低タンパク米をブランド化して販売したところ、収益も増加したとのことです。

参考:第1部 特集 「スマートICT」の戦略的活用でいかに日本に元気と成長をもたらすか|総務省


ビッグデータの活用の流れ

ビッグデータの分析〜活用までの流れは、大まかに以下の通りになります。。

  1. 仮説を立ててデータを収集・加工
  2. 知りたい内容に合わせて分析を開始
  3. 分析結果を元に顧客へ適切なアプローチ方法を考える
  4. アプローチ方法を検証してPDCAを回す

ビッグデータは特別なツールが必要というイメージがありますが、実際は地道なデータ収集と仮説検証、改善の流れが基本です。

そのため、ビッグデータの活用は長期間に渡って行わなければなりません。

ビッグデータの活用の流れについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

参考:ビッグデータとは?メリットや活用事例、注意点、活用までの流れ


ビッグデータを扱う上での注意点2つ

ビッグデータはただデータを収集して分析すればいいわけではありません。

コストをかけてデータを収集できたとしても、思うように活用仕切れない場合があります。

そのため、ビッグデータを活用する際は以下の2つを注意しましょう。

定量だけでなく定性的なデータも見る必要がある

デ-タを活用する上で定性的なデータも非常に重要な役割を担います。数字だけを分析していても結局何が起こっているのかを正確に把握することは困難です。

定性的なデータを調べるためには行動観察が効果的です。
参考:行動観察で分かる! ユーザー行動の「なぜ」

相関関係ではなく因果関係が重要

さまざまなデータの変動からその変動の原因を探る際、複数の事象の「相関関係」を探るのではなく、「因果関係」を見出すことが重要です。

一見相関性があるデータも擬似相関である可能性があるので、目的と仮説をもって検証を行い、因果関係を見出しましょう。

参考:達人が教える、わかりやすいデータ分析の考え方|ZDNetJapan|


まとめ

本記事ではビッグデータの活用方法をご紹介させていただきました。ビッグデータは、様々な業界で売上増、コスト削減、業務効率化などの目的のために活用されています。使い方次第で絶大な効果を発揮するビッグデータですが、数字ばかり見ていると一見相関性があるように見える擬似相関などに騙されてしまう可能性があるので、分析には注意が必要です。

活用の際には目的や仮説を持ち、擬似相関に騙されることなく因果関係を見極め、成果につながる施策につなげましょう。