ベネフィットとは?メリットとの違い・見つける方法・ポイントを分かりやすく解説

ベネフィットとは_アイキャッチ

ベネフィットとは「利益」「恩恵」を意味する「benefit」を語源とした言葉で、ビジネスにおいては「商品やサービスが、ユーザーの生活やビジネスにどのような良い影響をもたらすか」を指します。

商談時に、自社の製品やサービスの特長を詳しく説明したにもかかわらず、顧客の反応が薄かったり、導入の決め手に欠けると指摘されたりした経験はないでしょうか。

それは、顧客にとってのベネフィットを十分に示せていないことが原因かもしれません。

本記事では、ビジネスで多用されるマーケティングの視点からベネフィットを解説し、メリットとの違いや効果的な見つけ方や伝え方を説明します。

商談や広告運用など、相手のニーズを汲み取ってベネフィットを意識すべき場面は多岐にわたります。ぜひご一読ください。


ベネフィットとは

ベネフィットとは英語の「benefit」を語源とする言葉で、直訳すると「利益」「恩恵」などを指す言葉です。

ビジネスにおけるベネフィットは、商品やサービスを利用することでユーザーが得られる利益、つまり嬉しい変化や好影響を指します。

たとえば、軽量素材のランニングシューズであれば、「けがのリスクを減らし、長く走ることができる」「速く走ることができるので目標を達成しやすい」などがベネフィットとなります。

ベネフィットという言葉を理解しやすいよう、以下に具体例をまとめております。

商品やサービスごとに想定されるベネフィットの例

このように、「その商品やサービスが、ユーザーの生活やビジネスにどのような良い影響をもたらすか」を示すものがベネフィットです。


ベネフィットとメリットの違い

ベネフィットとメリットは混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。

ベネフィットは製品やサービスによって得られる「価値や利益=ユーザーが得られる良い変化」、メリットは「機能や特長=製品やサービスができること」に焦点を当てています。

以下の画像で、具体的な違いや具体例をまとめていますので、ご参照ください。

ベネフィットとメリットの違い


ビジネスでベネフィットが重要視される理由

ビジネスにおいてベネフィットが重要視される理由をシンプルに説明すると、ベネフィットが成果に直結する概念だからです。

ユーザーの課題を起点に、ベネフィットを意識した提案や商品開発を行うことで、ユーザーの購買意欲を高めることができます。

一般的に、顧客は商品やサービスを選ぶ際、機能や料金を比較しているように見えます。しかし、実際の購買行動の決め手となるのは、「それを利用することで何を実現できるのか」というベネフィットです。

商材の価格や機能だけでなく、顧客にとってのベネフィットを明確に伝えることで、他社との差別化が可能になります。

また、顧客が単なる商品選びではなく、「自分に最適な選択肢」と感じられるようになることで、信頼関係が生まれ、長期的な関係を築くことができるようになります。

ベネフィットの重要性について提唱した「ドリルの穴理論」

この考え方を象徴するマーケティング理論のひとつに、ハーバード大学大学院のセオドア・レビット教授が提唱した「ドリルの穴理論」があります。この理論は、「顧客が本当に求めているのは商品そのものではなく、それによって得られる価値である」という考え方を示したものです。

【ドリルの穴理論】
「ドリルを買いにきた人が欲しいのは、ドリルではなく『穴』である」
 
ある人がドリルを購入するとします。
 
しかし、その人の本当の目的は「ドリルを持つこと」ではなく、「壁に穴を開けて棚を設置し、部屋を整理すること」です。
 
さらに言えば、部屋を整理することで「快適な空間を作りたい」「作業効率を上げたい」といった欲求が根底にあるかもしれません。

ビジネスにおいては、単に商品やサービスの特徴を伝えるのではなく、それが顧客のどのような課題を解決し、どのような価値を提供するのかを明確にすることが重要です。

たとえば、クラウドストレージのサービスを販売する場合、「大容量のデータ保存が可能」ではなく、「データを安全に保管し、どこからでもアクセスできることで業務効率が向上する」といったベネフィットを伝えることで、顧客の関心を引きやすくなります。


商材のベネフィットを見つける3ステップ

実際に商品やサービスなどのベネフィットを言語化するための3ステップをご紹介します。

「誰に、なぜ興味を持ってもらえるのか」が明確にしてユーザーに響くメッセージを作るため、具体的な商品やサービスを想定しながら、ベネフィットを考えてみましょう。

※この章では、SEOツールを例に解説します。

Step1:商材の特徴を書き出してメリットを考える

まずは特徴や機能を具体的に書き出し、「この機能で何ができるのか?」という視点で、それが利用者にどのようなメリットを生むか考えます。

機能・特長メリット
競合サイトの流入キーワード分析競合が狙っているキーワードを把握できる
自社サイトのSEOスコア診断改善点を明確にし、効果的な施策を打てる
コンテンツ提案機能ユーザーの検索意図に沿った記事を作成しやすくなる

機能をリストアップし、それぞれがどのような「便利さ」を生むのかを明確にすることで、次のステップでベネフィットへと落とし込む準備が整います。

Step2:メリットをベネフィットに変換する

商品やサービスの「メリット」を「ベネフィット」に変換するために、「だから何?」という問いをくり返し、自分が伝えたいことを徹底的に掘り下げましょう。

メリット「だから何?」最終的なベネフィット
競合キーワードを把握できる競合に勝てる戦略が立てられる検索上位を狙いやすくなり、安定的な流入を獲得できる
SEOスコア診断で改善点が明確に具体的な施策を打てる効率的なSEO対策で、短期間で成果を出せる
コンテンツ提案機能検索意図に合う記事を作成しやすいユーザーに求められるコンテンツが増え、リード獲得につながる

ブレイクダウンする基準は、「利用者がその行動を通じて最終的に何を得たいのか」に行き着くまでです。「だから何?」を繰り返し、それ以上深掘りできない地点が、ベネフィットとなります。

ユーザーが得られる利益や生活の変化を考え、感情的な側面(安心・満足・充実感など)も含めて検討することで、ベネフィットを見つけることができます。

Step3:ターゲットごとにベネフィットをあてはめ、適切な訴求を行う

ターゲットを設定したうえで、ベネフィットを見つけて仮あてすることで訴求点を見つけましょう。

抱えている課題や求める解決策が異なるため、同じ商材であっても、人によってベネフィットは異なります。

「どんな人(=ペルソナ)にどのようなベネフィットを提示すべきか」を明確にし、それに応じた言葉や手法を選ぶことが大切です。

ペルソナとは、商品のターゲットとなる顧客を具体的に想定した人物像です。ペルソナの設定方法については、この記事をご参照ください。
参考:ペルソナとは?言葉の意味や具体的な設定方法まで詳しく解説!│LISKUL

実際に、SEOツールの提供を例にして、ターゲットごとに「課題」と「提供すべきベネフィット」を整理すると、以下のようになります。

ターゲット詳細課題ベネフィット
個人ブロガー28歳・副業でブログ運営記事が検索上位に表示されないSEO対策を自動化し、PV数を増やせる
企業のWeb担当者35歳・事業会社のマーケティング担当SEOの専門知識がなく、対策が手探り改善点が明確になり、戦略的にSEOを実施できる
広告費を削減したい経営者45歳・中小企業の代表広告依存の集客に不安があるSEOでオーガニック流入を増やし、広告費を抑えられる

このように、ターゲットごとに抱えている課題が違うため、画一的な訴求では「自分向けのものではない」と思われる可能性があります。ターゲットごとに明確なベネフィットを含めて提示できれば、自分にとって最適な選択肢だと認識してもらえるようになります。


ユーザーにとってのベネフィットを会話の中で示す3ステップ

この章では、ユーザーと直接会話できる商談などの場面で、商材購入によって得られるベネフィットをユーザー自身に理解してもらいやすくするための具体的なステップを解説します。

初心者でも実践しやすい方法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。

参考:売れる営業マンが実践する話し方のコツ8選│LISKUL

※この章では、SEOツールの営業を例に解説します。

Step1:商品・サービスの説明をする前に、まずユーザーの状況を聞く

ユーザーの現状や悩みを知ることが、適切な解決策を提案するための第一歩です。

いきなり商品の特長を説明するのではなく、「現在どのような課題を抱えているのか」「その課題をどのように解決しようとしているのか」 を具体的に尋ねましょう。

営業:「現在のWeb集客の状況はいかがですか?」
 
顧客:「特に大きな問題はないですね。広告もうまく回っていますし。」
 
営業:「なるほど、広告でしっかり成果を出されているのですね。ちなみに、検索からの流入も順調でしょうか?」
 
顧客:「うーん……正直、そこはあまり伸びていませんが、まあ広告でカバーできているので。」
 
営業:「広告の成果が安定しているのは素晴らしいですね。ただ、将来的に広告費が増えたり、CPA(顧客獲得単価)が上がるリスクもありますよね。その点で、オーガニックの流入も伸ばせると、より安定した集客ができるかと思いますが、どうでしょう?」
 
顧客:「まあ、それは確かに……広告だけに頼るのもリスクですけど。」

このように、顧客が「特に問題はない」と思っている場合でも、質問を工夫することで、潜在的な課題を引き出せます。

ステップ1では、ユーザーの課題を掘り出して整理し、どのような解決策が求められているのかを一緒に探ります。

Step2:共感しながら掘り下げる

ユーザーのニーズを深く理解するために、現状の課題がどのような影響を及ぼしているのか、理想の状態はどうあるべきかを掘り下げます。

例えば、現在直面している問題が現場にどのような負担を生んでいるかを聞き出し、共感しながら具体例を引き出してみてください。このステップを丁寧に行えば、相手にとって価値ある解決策を導き出せます。

営業:「オーガニックの流入が伸びていないとのことですが、社内では何か対策をされていますか?」
 
顧客:「一応、記事は増やしてます。」
 
営業:「なるほど。どんなキーワードを狙って、どのように記事を作成されていますか?」
 
顧客:「うーん……正直、とりあえず検索ボリュームがありそうなものを選んで、記事を書いている感じですね。」
 
営業:「そうなると、せっかく記事を作っても効果が出にくいですよね。その結果、記事制作にも余計な手間がかかってしまっていませんか?」
 
顧客:「そうなんですよ。毎月10本くらい作っていますが、調査や分析にかなり時間を取られていて……他の業務にも影響が出てきているんです。」

このステップでは、「課題」→「その影響」の順で深掘りすることがポイントです。共感を示しながら具体的な情報を整理して、次の提案につなげる準備を整えましょう。

Step3:ユーザーの言葉を使ってベネフィットを確認する

会話の中で出てきた言葉を使うことで、ユーザー目線の価値に寄り添いながら、提案します。

例えば、「〜ということですね」と言い換えたり、「それが解決すると、〜できるようになりますね」といった形で、ユーザーの反応を確認しながら話を進めましょう。

営業:「狙うべきキーワードやSEOの改善点が明確になれば、コンテンツ制作の時間を短縮しながら、より効果的な記事を作れるようになりますね。」
 
顧客:「そうですね。でも、本当にそんなにうまくいくんですか?」
 
営業:「弊社のSEOツールでは、貴社のサイトと競合を分析し、狙うべきキーワードや改善点を自動で提示します。たとえば、今まで手作業で5時間かかっていたリサーチ作業を、30分以内で完了できるようになります。」
 
顧客:「そんなに短縮できるんですか? それなら、記事作成の負担もだいぶ減りそうですね。」
 
営業:「そうですね。実際に導入された企業様では、オーガニック流入が広告流入を超えた例もあります。」
 
顧客:「なるほど……それなら、詳しく話を聞いてみたいですね。」

このようにユーザーの言葉を使って課題や理想を確認すると、自社の製品やサービスが提供できるベネフィットを提示し、顧客から前向きな反応を得ることができます。


ベネフィットを効果的に活用する3つのポイント

発見したベネフィットを相手に響く形で伝えられれば、提案の成功が高まります。

ここで重要なのが、数値による裏付け、Before/Afterといった導入の具体例、顧客視点での言葉選びの3つの要素です。

この章では、SEOツールを例に、これらのポイントを具体的に解説し、どのように実践すれば相手にしっかりと伝わるかを説明します。

1.数値やエビデンスで裏付けて信頼性を高める

発見したベネフィットを信頼性のあるものにするためには、数値やデータの裏付けが重要です。

たとえば、「SEOを改善できる」という抽象的な表現よりも、「検索順位が平均○位向上し、オーガニック流入が○○%増加する」 という具体的な数値のほうが、説得力が格段に高まります。

また、既存顧客の成功事例や第三者機関による調査結果など、客観的なエビデンスを使用すると、より信頼感を得られます。 なお使用する数値やデータは、正確で検証可能なものにしましょう。

2.具体例を伝えて導入後の効果をイメージさせる

相手の心に響く提案をするには、導入した後の姿をイメージさせることが重要です。共感を得るために、相手の状況に合わせた具体例を挙げ、Before/Afterが明確に分かるように伝えましょう。

たとえば、「導入前はSEO施策が手探りで、検索順位が上がらずアクセスが増えなかった企業が、導入後は競合分析とキーワード戦略が明確になり、3か月で検索流入が○○%増加した」というような事例は、相手に変化のイメージを持たせやすくなります。

3.相手や状況に応じた使い分けで訴求効果を高める

同じ商品やサービスでも、相手(ターゲット)や状況(利用シーン)に応じて訴求方法を変えることで、より高い効果を得ることができます。顧客の関心やニーズは、置かれた環境や購買プロセスによって変化するからです。

「誰に」「どんな状況で」伝えるかを意識し、適切な言葉や情報を選ぶことが、訴求効果を高めるポイントとなります。

ポジション別の例

役職や立場によって、ベネフィットとして捉える内容は異なる可能性があるため、注意しましょう。

  • 経営層:マーケティングROI向上・広告費削減・長期的な競争優位性の確立
  • マーケティング責任者:SEO施策の効率化・競合分析の精度向上・チームの生産性向上
  • コンテンツ担当者:記事作成の時間短縮・効果の高いコンテンツ制作・SEOノウハウの蓄積

提案時には、相手に響きやすいように下記のような言葉を選ぶと効果的です。

  • 経営層向け:「SEO経由の流入増加により、広告費を○○%削減できます」
  • マーケティング責任者向け:「競合サイトの流入キーワードを分析し、効果的なSEO戦略を策定できます」
  • コンテンツ担当者向け:「AIによるキーワード提案機能で、検索上位を狙いやすい記事を効率的に作成できます」

コミュニケーション手段別の例

ターゲットに響く訴求を行うためには、「何を伝えるか」だけでなく、「どの手段でどのように伝えるか」も重要です。

同じ内容でも、コミュニケーション手段によって受け取り方や影響力が変わるため、方法に合った言葉を選ぶことが訴求効果を高めるポイントとなります。

  • Web広告:短く直感的に伝え、インパクトを重視
  • LPやカタログ:導入事例や詳細情報を交え、納得感を高める
  • プレスリリース:業界の動向や社会的意義を絡め、信頼性を強化
  • 営業資料:具体的な数値やデータを示し、意思決定をサポート
  • 製品マニュアル:ユーザーの操作を想定し、実用性を重視
  • 会社案内:企業のミッションや社会貢献と結びつける
  • 採用資料:働く環境やキャリアの魅力を伝え、共感を得る

媒体ごとのキャッチコピーの例は下記のとおりです。

  • Web広告:「検索順位を○○位アップ!競合に負けないSEO対策を簡単に」
  • LPやカタログ:「導入企業の成功事例を公開!SEOで○○%の流入増加を実現」
  • プレスリリース:「業界初のAI SEO分析ツールで、検索戦略を効率化」
  • 営業資料:「導入企業の○○%が実感!オーガニック流入を年間△△%増加」
  • 製品マニュアル:「誰でも簡単!3ステップでSEOスコアを改善する方法」
  • 会社案内:「SEOの力で企業の成長を支え、持続的な集客基盤を構築」
  • 採用資料:「成長できる環境で、マーケティングのプロを目指そう」

まとめ

この記事では、ビジネスシーンで重要な「ベネフィット」の意味と見つける方法などについて詳しく解説しました。ベネフィットは単なる「メリット」ではなく、ユーザーにとっての利益を指します。

商材やサービスの特徴を正確に理解し、相手のニーズに合ったベネフィットを見つけ、ストーリーやエビデンスで強化する方法をお伝えしました。本記事が、商談や広告運用など、相手のベネフィットを見つける場面において、一助となれば幸いです。

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