事務代行とは、その名の通り企業の事務を代行してくれる企業ないしサービスのことを指します。
事務代行はサービス、企業によって業務範囲はさまざまです。データ入力や書類の整理などもあれば、翻訳業務、Webサイト運用などを実施できるところもあります。
事務代行を依頼する場合、企業が提供する事務代行サービスを利用するか、クラウドソーシングで事務経験のある人材を探すかの2通りの方法があります。
今回の記事では「事務代行」のメリット・デメリットから依頼できる業務範囲、相場などをまとめています。
事務代行を「厳選された優秀な正社員スタッフ」に依頼できるサービス
そのうえで、失敗しない依頼先の選び方についても解説しています。
この記事を読むことで、事務代行を利用すべきかを判断できますし、そのうえで利用に向けた第一歩を踏み出せます。
目次
事務代行を依頼する2つの方法
事務代行の依頼形態は、事務代行会社に発注する場合と、クラウドソーシングを通して個人に委託する場合の2つの方法があります。
事務代行の依頼方法 | メリット | デメリット | 向いている用途 |
---|---|---|---|
事務代行会社に発注する | ・専門的な知識を持つスタッフに依頼しやすい ・まとまった仕事量を依頼できる ・サービスの品質が担保されている | ・代行会社やサービス内容によっては費用が高くなりがち | ・様々な業務を依頼したい場合 ・作業に専門的な知識が必要な場合 |
クラウドソーシングで発注する | ・コストを抑えやすい ・すぐに依頼しやすい | ・採用までに時間がかかる場合がある ・まとまった業務を依頼するのが難しい場合がある ・人によって品質が低かったり、納期に遅れたりする場合がある | ・単発ですぐに依頼したい業務がある場合 ・できるだけコストを抑えたい場合 |
参考:【2022年版】オンラインアシスタントサービスおすすめ47選を比較!
事務代行会社に発注する
多種多様な事務作業を代行することに特化した業務委託会社へ、事務代行を依頼する方法です。
会社によっては現場へスタッフを派遣したり、常駐させたりと、オフライン作業を依頼することもできます。
事務代行会社への依頼には、以下のような特徴があります。
- 営業やマーケティングなど専門分野の事務にも対応できる
- 月額制の料金形態が多く、まとまった仕事量を依頼をするのに向いている
- 対応できる業務の幅が広い
しかし、業務内容によっては別途オプションの追加が必要だったりするため注意が必要です。
クラウドソーシングで発注する
クラウドソーシングで事務経験のある人材を探し、個人に対して事務作業の代行を依頼する方法です。
クラウドソーシングで事務代行を利用する場合、以下のような特徴があります
- オンラインで発注が完結する
- 業務単位の発注が可能なためコストが抑えやすい
- 求める能力を持つ人に直接依頼できる
しかし、代行会社と違い、依頼した相手が必ずしも期待通りのスキルを持っているわけではないため、採用までに時間がかかる場合があります。
また、個人だと稼働できる時間が限られていることが多いため、まとまった業務を依頼するのが難しいケースがあります。
そのため、実際に作業する人材を見極めつつ、単発・短期間の業務発注を、出来るだけコストを抑えて依頼したい場合に、役立つサービスといえるでしょう。
事務代行で発注できる業務一覧
事務代行で依頼できる業務には、大きく分けて一般事務と専門事務の2通りがあります。
どちらの業務を発注したいのかによって、どういった事務代行に依頼するのか分かれるため、ハッキリさせておきたいポイントです。
以下それぞれで依頼できる業務の一例です。
事務の種類 | 業務内容 |
一般事務 |
|
専門事務 |
|
一般事務と専門事務の違いは、「どの部署でも起こりうる事務か」「担当者によって成果が変わる事務か」の2点です。
たとえば、名刺に記載された名前などのデータ入力業務は、名刺をもらう可能性があるどの部署でも発生します。しかし、誰が入力しても名刺のデータは同じであるため、得られる結果に変わりはありません。
一方で、専門事務は、限られた部署で行われる業務や、自社のサービスに深く関係する業務、社外の人が対応する場合は資格が必要な業務が挙げられます。
顧客データを管理するマーケティング部署などは専門的な知識がなければデータの入力ができないので専門事務といえます。
事務代行のメリット
事務代行を依頼するメリットは、大きく分けて3つあります。
- 主要な人材がコア業務に専念できる
- 人材採用・教育コストを削減できる
- 事務を得意とする人材(その道のプロ)に任せられる
主要な人材がコア業務に専念できる
事務代行の最大のメリットは、主要な人材がコア業務に専念できることです。
そもそも事務代行を依頼したいと考える理由が「時間を有効活用したい」であり、その根本にあるのが「成果に繋がる仕事に専念する」ことにあります。
社内で一番売り上げを上げる営業がとにかく営業に専念できる、マーケティングや広報はしっかりと市場のリサーチに専念し戦略が練れるなど、事務代行を活用することで、事務作業に取られていた時間が無くなるので、その分コア業務に専念できるでしょう。
また、時間を有効活用できるようになれば社内全体の業務効率化にも繋がり、不要な残業が少なくなることで社員のモチベーションが上がり、益々、良いサイクルが生まれることも期待できます。
このように、主要な業務に携わる人材が必要な時間を確保できることができれば、企業にとって大きなプラスとなるでしょう。
人材採用・教育コストを削減できる
事務代行を依頼することで、人材採用や教育にかけるコスト削減につながります。業務量が多いからといって、新しい人材を補充すれば、そこには採用コストから指導コストまで付随するためです。
株式会社マイナビが発表した「2023年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、上場企業の新卒入社予定者1人あたりの採用費用の平均は38.1万円、非上場では45.5万円でした。
事務代行サービスは月額固定制の場合、1ヶ月あたり5~10万円が相場のため、新卒採用1人あたりのコストで4~5ヶ月分の仕事を発注できます。中途採用のコストでもおよそ1ヶ月分が依頼できるため、より業務スケジュールに合わせた依頼を、コストを抑えて利用できます。
また、教育や管理監督にかける時間も減らせるため、ノンコア業務を増やさず済み、さらにコストを削減できるでしょう。
参考:マイナビ 2023年卒 企業新卒内定状況調査
新卒採用の予算について | 新卒採用入門 | 経営と人材をつなげるビジネスメディア「HUMAN CAPITAL サポネット」
事務を得意とする人材(その道のプロ)に任せられる
より専門的な知識を必要とする事務に関しても、事務代行を利用することでその道のプロに任せられます。
事務を得意とする人材が行う事務代行だからこそ、これまで自社内で着手したことがない業務であっても、高い専門性を持って対応可能だからです。
専門性のある事務とは、帳簿の知識が求められる経理事務や、契約や訴訟といった法務事務、英語力が求められる通訳・翻訳業務を含む事務などが挙げられます。
忙しい業務の合間を縫って社員に取り組んでもらうよりも、高い成果が得られるでしょう。
事務代行は、一般事務だけでなく、専門的な知識を求められる専門事務を任せる場合にも、メリットが大きいサービスといえます。
ノンコア業務はプロに任せ、社員にはコア業務に集中してもらうことは重要です。
事務代行のデメリット
事務代行を依頼することで起こりうるデメリットは、次の2つです。
- 自社にノウハウが蓄積されない
- 作業者の技量が分からない
ここでは、デメリットをふまえて、事務代行を依頼すべき企業とそうでない企業も解説します。事務代行によるデメリットが起こりうる状況を理解し、課題解決につながる発注を行いましょう。
自社にノウハウが蓄積されない
事務代行に任せきりになってしまうことで、自社で事務を知る人材が育たない、ノウハウが蓄積されないというデメリットが生じる場合があります。
自社内で「この事務処理はだれが、いつ、どのように行う」というノウハウが蓄積されず、事務代行会社に依存してしまう可能性も否定できません。
またノウハウの蓄積が妨げられると、自社内で専門性を持って手掛けた方がよい業務かどうか、判断する材料が失われる恐れがあります。
作業者の技量が分からない
事務代行会社へ発注する場合など、発注側に一任する場合は、実際に作業する人の技量がわからないのがデメリットです。
業務に当たってくれる人材の技量次第では、依頼した結果、逆に効率が悪くなるなどの不利益が生じる場合もあります。
事務代行の費用相場・料金形態
事務代行にかかる費用相場は、依頼内容だけでなく、料金形態によっても異なります。
料金体系は基本的に以下2つの種類があります。
料金体系 | メリット | デメリット | 向いている場合 |
---|---|---|---|
月額固定制 | ・費用の見通しが立ちやすい ・利用頻度が高くなっても、一定の料金で利用できる | ・利用頻度が低い場合、割高になる ・利用規模が拡大する場合、サービスによっては追加料金が発生する可能性がある | ・毎月一定の依頼業務量がある場合 ・長期的に利用するつもりがある場合 |
従量課金制 | ・利用頻度が低い月の場合、費用を抑えられる ・一か月未満の短期期間の依頼でも可能 | ・利用量に応じて費用が変わるため、予算管理がしにくい ・利用量が急増した場合、高額な請求が発生する場合がある | ・依頼量が不定期な場合 |
それぞれの料金体系について詳しく解説します。
月額固定制
月額固定制は、1ヶ月当たりの稼働時間や契約期間の長さに応じて、料金が異なる課金形態です。
契約した利用時間内であれば、毎月同じ料金で利用できるため、費用の見通しが立ちやすいというメリットがあります。
以下の表は、業務代行サービスが提供する月額課金制プランの一例です。比較しやすいように、1ヶ月あたりの稼働時間が30時間だった場合としています。
プラン例 | 必要契約期間 | 稼働時間 | 月額料金 |
A | 3ヶ月~ | 30時間以内 | 91,000円 |
B | 6ヶ月~ | 30時間以内 | 114,000円 |
C | 1ヶ月~ | 30時間以内 | 82,000円 |
D | 1ヶ月~ | 30時間以内 | 69,000円 |
月額料金や契約期間はサービスによって異なるものの、1ヶ月あたりの費用相場は5万円以上から、高くても10万円前後です。依頼内容の専門性が高く、多岐にわたるほど、費用相場は高くなります。
また1ヶ月30時間の契約では、たとえば事務・総務の仕事を依頼したとすると、以下のように仕事依頼が行えます。
- 領収書データ入力(60分)
- スケジュール調整(8分×30回)
- 出張手配(60分×1回)
- 会場手配(120分×1回)
- メール返信(15分×20回)
- 求人原稿作成(掲載媒体リサーチや問い合わせ込み60分2回)
- 求人一次対応(60分×15日)
月額固定制のため、契約期間は基本的に1ヶ月以上であることが前提です。1週間だけ、のように短期間の依頼が行えない点に注意しましょう。
参考:株式会社ニット:オンラインアシスタントがあなたの業務をサポート HELP YOU (help-you.me)
参考:I-STAFF[アイスタッフ]
参考:Radiceのオンラインアシスタントサービス「For your Business」
参考:株式会社YPP 月額料金
参考:30時間の活用例 | HELP YOU (help-you.me)
従量課金制
依頼された業務に対し、依頼した事務業務数や事務代行が行われた時間などを元に、より作業時間に合わせた料金請求が行われる課金形態です。
課金形態例 | 料金計算 | メール対応を依頼した場合の計算例 |
従量制 | 1業務あたりの費用×業務数 | メール1本あたり:150円 150円×200通返信=30,000円 |
時給制 | 時給×稼働時間 | 時給:1,600円 1,600円×10時間(100通返信)=16,000円 |
上記のように、依頼内容と稼働時間に応じて費用が決まるため、無駄な出費が発生しづらい点がメリットです。また月額制では難しい、2~3日のみなど、短期間の依頼も可能となります。
依頼したい業務の量や期間を把握し、どちらの料金形態が合うか判断していきましょう。
事務代行会社を選ぶ3つのポイント
事務代行会社を選ぶときには、以下のポイントを押さえてください。
対応業務が幅広いか
長期的に依頼する可能性がある場合は、発注できる業務の内容が明確で、かつ、扱っている業務の種類が多い企業を選ぶようにすると失敗しづらいです。
さまざまな仕事を発注できる依頼先なら、後から依頼したい業務が増えても、調整が簡単になります。
たとえば「営業の一般事務」と言っても、その内容はアンケート入力やデータ処理、見積書作成代行、企画書作成補助など多岐にわたります。
現状の依頼内容が「アンケート入力」だけだったとしても、後々になってデータ処理や企画書作成補助を検討する可能性はゼロではありません。このような業務も、依頼先の発注対応内だとわかっていれば、いつでも追加依頼できます。
あらかじめ、対応できる業務が明確で、種類も豊富か確認することで、長期依頼や変更に対応できる発注先を選べるでしょう。
実績が豊富か
過去の実績は最初に確認すべき重要な指標です。
特に、自社の業種や業界に関する実績を確認しましょう。自社の業種に関する実績数が多い依頼先なら、経験値も高いと想定できます。
また、実績を確認することで、担当した仕事の量や対応時の状況などが、明確な数値と共に分かります。他の依頼先との比較に活用しやすいため「業界」と「業種」双方の専門性が高い依頼先を選べるでしょう。
即時対応が可能か
過去の実績を聞くとともに、管理体制を確認し、ホームページや資料からだけでは読み解けない、サービスが持つ「対応力」を見極めましょう。
具体的には、まず次のようなポイントを確認し、管理体制の把握を行いましょう。
- 依頼した案件を担当者はどのようにサポートしてくれるのか
- 土日に依頼できるのか
- 即日で修正に対応してくれるのか
- 追加予算は発生するのか
- 過去の一般事務に関する実績にはどのような業種があるか
管理体制の把握は、納期を守ったうえで品質の高いサービスが得られるか、判断する材料となります。複数の担当者がチームを組んで依頼に対応する、チーム体制が整っている依頼先だとなおよいでしょう。
事務代行の人材をクラウドソーシングで探す場合の2つのポイント
クラウドソーシングで事務代行を探す場合、以下の2点を必ず確認しましょう。
- 実績件数の量
- プロフィール以外の情報
基本的にクラウドソーシングで人材を探す場合、評価件数以上に「実績」を重視しましょう。
また、一般的な採用のように「プロフィール欄」に書かれた内容だけではなく、その方の名前・ハンドルネームで検索してみることをおすすめします。
実績件数の量
評価の高さだけではなく、実績件数が多いワーカーから選びましょう。なぜなら、評価が高いことが、信頼性に直結するわけではないためです。
多くのクラウドソーシングサービスでは、サイト内で請け負った業務数と、依頼者側が付けた評価がプロフィールに掲載されます。
しかし、たとえ評価点が同じでも、作業件数が5件のワーカーと作業件数が100件を超えるワーカーでは、実績という母数が多い人材ほど信頼性が高いです。
もちろん評価点があからさまに低い人材は避けるべきですが、5段階中4以上の評価を受けている人材であればおおむね問題ないでしょう。
それよりも「何件の業務をこなしてきたか」という基準で判断するのが良いでしょう。
プロフィール以外の情報
Googleや各種SNSで検索し、プロフィール以外の情報収集を行いましょう。
請け負った事務代行の内容を許可なくSNSへ投稿しているワーカーや、極端に納期を守らないワーカーかどうかは、プロフィールだけでは分かりません。中には、所持していない資格を、依頼を受けられるようにあえて明記しているケースもあります。
- Google検索でワーカーの名前を検索する
- SNSでワーカーのIDや名前を検索する
- 他のクラウドソーシングサービスでワーカーのIDや名前を検索する
- 最後に受けた依頼の日時をチェックする
プロフィールや表示される作業数を鵜呑みにせず、出来る限り情報収集しておくことをおすすめします。
事務代行運用する際の注意点
事務代行サービスを契約した後は、事務代行によって得られた成果を確認し、適切な運用を目指しましょう。不足するサービスがあれば追加し、不要になれば自社内で事務を行うようにする必要があるためです。
ここでは、一般事務や専門事務、クラウドソーシングサービスのいずれを利用した場合でも、成果を出すためにおさえておきたい注意点を2つ解説します。
ルールがあいまいだと、逆効果になる可能性もある
ルール・レギュレーションがあいまいだと、アウトプットが求めるクオリティに達することができず、結果として確認作業に時間をとられる恐れがあります。
品質を安定させるためにも、次の3つのポイントを実行しましょう。
- 依頼物に関するルールを作る:納期や依頼の目的は明確にする
- 自社のマニュアルを元に業務を依頼する:成果を確認しやすい
- 依頼内容を書面やメールに残す:言った言わないを避ける
これらのポイントを実行することで、依頼した仕事の内容が明確になり、いつまでに、何を確認すればよいのかが明らかになります。
不備があった場合の指摘もやりやすくなるため、ルール・レギュレーションを明確にすることが重要です。
「任せきり」は避ける
事務全般をすべて任せきりにしてしまうのは避けましょう。
ミスや失敗が生じた結果、顧客やユーザーが被害を被った場合でも、「自社」が負わなければなりません。かならず進捗や状況を確認できる担当者を立てましょう。
担当者がいることで、社内の業務責任者が不在になることもなく、最終確認を効率よく行えます。また、万が一、被害が起きる恐れがあった場合も、迅速な対応に繋げられるでしょう。
あくまでも事務代行であることを意識し、業務を完全に丸投げして「社内ではこの業務に詳しい人が誰もいない」という状況を招かないように運用しましょう。
事務代行に関するよくあるご質問
事務代行に関するよくあるご質問をQ&A方式でまとめました。
Q.事務代行は単発でも利用できますか?
A.はい、単発でも利用できるサービスも中にはあります。
Q.事務代行はどのような料金体系になっていますか?
A.料金体系はサービスによって異なります。例えば毎月払う料金が固定の場合もあれば、作業の単価や時給によって払う金額が変わる従量課金制の場合もあります。
Q.事務代行はすぐに利用できますか?
A.依頼する会社や依頼業務によって利用までのスピードは変わってきます。場合によっては契約から一か月ほどかかる場合があります。詳しくは提供元にお問い合わせください。
まとめ
事務代行は、事務作業によってコア業務に時間が取れない状況を解決し、さらなる企業の業績アップを目指すためのサービスです。そのため、現時点で負担になっている事務作業を洗い出し、目的別に依頼することが重要となります。
今回紹介した目的別のポイントを参考に、事務代行を選ぶ水準を明確にしましょう。依頼後、運用で成果をだせるようにルール・レギュレーションを明確にし、専属の担当者を設置ておくことも重要です。
事務代行を活用して、事務仕事の悩みを解決していきましょう。